必定ひつぢやう)” の例文
必定ひつぢやう悪魔波旬はじゆん仕業しわざ。……(忽ち南蛮寺の門に気付きて)あれ、此処は邪法の窟宅くつたく、南蛮寺の門前なるよな。さてこそ必定邪法の手練てれん……
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
此処ここは筑前国、第四十四番の札所ふだしよにして弘法大師の仏舎利ぶつしやりを納め給ひし霊地なり。奇特の御結縁なれば和尚様の御許しを得む事必定ひつぢやうなるべし。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
すゝめもなさずるものは日々ひゞうとしの俚諺ことわざもありをだにれば芳之助よしのすけ追慕つゐぼねんうすらぐは必定ひつぢやうなるべしこゝろながくとき
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
うした機会はずみかカ君の剣が中程から折れて敵手てきしゆの上に飛んだ。その刹那せつな人人は鋒尖きつさき必定ひつぢやうマス君の腹部を突通つきとほしたと信じた。中止の号令がくだつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
容易ならぬことの一語に、危殆きたいの念愈々いよ/\高まれる大和は、躊躇ちうちよする梅子の様子に、必定ひつぢやう何等の秘密あらんと覚りつ、篠田を一瞥いちべつして起たんとす
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
討取うちとらば此度の公事は必定ひつぢやう勝利しようりならん右兩人を討取うちとり手段てだてを一こくはやくさるが捷徑ちかみちなりと申ければ主税之助は首をかたぶけ兩人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
思ふに天主もごへんの信心を深うよみさせ給ふと見えたれば、万一勤行ごんぎやう懈怠けたいあるまじいに於ては、必定ひつぢやう遠からず御主『えす・きりしと』の御尊体をも拝み奉らうずる。
きりしとほろ上人伝 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
人間は心のなかまではどうにも自由にするわけにはゆかない。一時の暗さを通り過ぎた以上は、二人にとつて、陽気な人生への希望を思ひ起させるのは必定ひつぢやうなのである。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
仮令たとひ此状に不審ありとも一向宗の輩は和泉守に力を合せ兄淡路守をひ侍りしこと隠れもなし、されば檜垣の衆とても必定ひつぢやうかたきにて侍るものを早や/\誅戮ちうりくを加へてべとて
必定ひつぢやうは公武一ぐわん
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
餘程たらぬ生れ付にて下女仲間にても馬鹿々々ばか/\とて遊びものにされる者あり吾助は思ふやう此女ならば必定ひつぢやう我が言ことを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それからしてらぬとおつしやりまする、うかとつてすこしなりともわたし言條いひでうてゝけぬ御返事おへんじをしましたらそれとつてにてゆけとはれるは必定ひつぢやう
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
然者しかれば先年一閑斎を狙ひ候は此の者の所為なること必定ひつぢやうに候。かのみぎり此の者の首は戦場に打棄て、観音の厨子づしと文ばかりを人知れずふところに入れて帰陣致し候間、桔梗の方逆心のことは誰一人も悟らず候。
川へながしたるに女の首のみやなぎえだとまりたるは則ちえんも引ものか左右とかくあやしき所なり必定ひつぢやう此公事は願人共の不筋ふすぢならんと流石さすが明智めいち眼力がんりき洞察みぬかれしこそ畏こけれ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
此方こつちに理が有らうが先方さきが悪るからうが喧嘩の相手に成るといふ事は無い、謝罪わびて来い謝罪て来い途方も無い奴だと我子を叱りつけて、長吉がもとへあやまりに遣られる事必定ひつぢやうなれば
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此方こつちらうが先方さきるからうが喧嘩けんくわ相手あひてるといふことい、謝罪わび謝罪わび途方とほうやつだと我子わがこしかりつけて、長吉ちようきちがもとへあやまりにられること必定ひつぢやうなれば
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
おもへば明日あすよりの閑居かんきよいかならん、甚樣じんさまはしばしこそれをしたひてきもしたまはめ、ほどへなばおのづとわすれて、姉樣ねえさまたちにたまはんは必定ひつぢやうれはぎるヽことこひしさ日毎ひごとさりて
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)