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そよかぜ
ふりがな文庫
“
微風
(
そよかぜ
)” の例文
秋の夜はしずかで、高いポプラの枝が
微風
(
そよかぜ
)
に揺らいでいます。空は
夥
(
おびただ
)
しい星でした。少年は目をあけてじっとそれをながめました。
フランダースの犬
(新字新仮名)
/
マリー・ルイーズ・ド・ラ・ラメー
(著)
ものゝ影が映るなどゝは思ひも寄らぬのに——嗚呼、そこには私と雪太郎の上半身が
微風
(
そよかぜ
)
の気合ひも知らずに、あざやかに生息してゐる。
バラルダ物語
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
あなたの大きくみひらいた眼には、果てなき大空の藍色と見渡す草原の緑とが映り紅を
潮
(
さ
)
した
頬
(
ほお
)
には日の光と
微風
(
そよかぜ
)
とが知られた。
少年・春
(新字新仮名)
/
竹久夢二
(著)
つとめて起き、窓おしあくれば、朝日の光
対岸
(
むこうぎし
)
の林を染め、
微風
(
そよかぜ
)
はムルデの河づらに細紋をゑがき、水に近き草原には、ひと群の羊あり。
文づかひ
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
その小鳥の群れも、ぱっと羽音をのこして、飛び去ると、もう
微風
(
そよかぜ
)
の音もしなかった。水を打ったように、街道はひそまり返る。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
顔も手も足も、
煎
(
い
)
りあげるように熱い南の
陽
(
ひ
)
が、照っていて、ゆるやかな、ひだをたたんだ波の上を、生あたたかい
微風
(
そよかぜ
)
がかよって行った。
秘境の日輪旗
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
軒の
風鈴
(
ふうりん
)
をさえ定かには鳴らし得ぬ
微風
(
そよかぜ
)
——河に近い下町の人家の屋根を越して唯
緩
(
ゆる
)
く大きく流動している夜気のそよぎは
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
二人の上に垂れた楓の枝が
微風
(
そよかぜ
)
に揺れて、葉洩れの日影が清子の顔を明るくし又暗くしたことさへ、鮮かに思出される。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
其時は
心地
(
こゝろもち
)
の好い
微風
(
そよかぜ
)
が鈴蘭(君影草とも、谷間の姫百合とも)の花を渡つて、初夏の空気を匂はせたことを思出した。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
有るか無きかの
微風
(
そよかぜ
)
にも、その
初毛
(
うぶげ
)
のやうな、また
綿
(
わた
)
のやうな花が軽く静かに飛んで行く。いや花では無くて、やはり花の後に著ける綿なのである。
満蒙遊記:附 満蒙の歌
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
微風
(
そよかぜ
)
が
日毎
(
ひごと
)
林檎林を軽く吹いて通つた。欣之介はその中で何かの仕事をしながら、「眼には見えないが花粉がうまい工合に吹き送られてゐるんだ!」
新らしき祖先
(新字旧仮名)
/
相馬泰三
(著)
と、行く手に竹藪があって、出たばかりの月に、
葉叢
(
はむら
)
を、薄白く光らせ、
微風
(
そよかぜ
)
にそよいでいたが、その藪蔭から、男女の云い争う声が聞こえて来た。
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
主人は庭を
渡
(
わた
)
る
微風
(
そよかぜ
)
に
袂
(
たもと
)
を吹かせながら、おのれの
労働
(
ほねおり
)
が
為
(
つく
)
り出した快い結果を極めて満足しながら味わっている。
太郎坊
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
若草の中の
微風
(
そよかぜ
)
のやうな子等の寝息、鏡子のこがれ抜いたその春風に寝る事も鏡子にはやつぱり寂しく思はれた。
帰つてから
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
なよたけ 飛んで行け! 飛んで行け!
微風
(
そよかぜ
)
に乗って飛んで行け!……
誰
(
だれ
)
も知らないしあわせな所へ飛んで行って、綺麗なお花を一杯咲かせておくれ!
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
もの倦いかすかな
微風
(
そよかぜ
)
が吹く。しかし早くも不動の大気の中に、ひそかな威嚇があり、重苦しい予感がある。
ベートーヴェンの生涯:02 ベートーヴェンの生涯
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
やさしい星は斷層をなした
土手
(
どて
)
の眞上に瞬いてゐた。夜露が
降
(
お
)
りた、慈愛の籠つた
柔
(
やさ
)
しさをもつて。
微風
(
そよかぜ
)
もない。自然は、私の眼には、情け深い親切なものに見えた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
唐物問屋
(
とうぶつどんや
)
の荷蔵の裏になって、ずっと高い蔵つづきの日かげなので、稗蒔屋はのどかになたまめ
煙管
(
キセル
)
をくわえ、風鈴屋はチロリン、チロリンと
微風
(
そよかぜ
)
に客をよばせている。
旧聞日本橋:14 西洋の唐茄子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
微風
(
そよかぜ
)
に乗って舞うともなく白いものが落ちてくるので、振り仰ぐと、いままで気がつかなかったが、屋敷の横から饗庭家との境へかけて、これはまたみごとな老桜の林
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
不思議な
薫
(
かおり
)
よりも、乳色に澱んでいる異様な空の色よりも、いつから始まったともなく、春の
微風
(
そよかぜ
)
の様に、彼等の耳を楽しませている、奇妙な音楽よりも、或は又、
千紫万紅
(
せんしばんこう
)
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
微風
(
そよかぜ
)
が吹くと、
百合
(
ゆり
)
の匂いが青空に昇って行くのよ。そして、皆いつでもその匂いを吸っているのよ。小さい子達は花の中を駈け廻って、笑ったり、花輪を造ったりしているの。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
一月の二十日過ぎにはもうよほど春めいてぬるい
微風
(
そよかぜ
)
が吹き、六条院の庭の梅も盛りになっていった。そのほかの花も木も明日の約されたような力が見えて、
杜
(
もり
)
は
霞
(
かす
)
み渡っていた。
源氏物語:35 若菜(下)
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
この島では、打ちよせる浪の音は、たくみに、
補助動力
(
ほじょどうりょく
)
に使われ、そして音を消してあった。だから、時折、頬のあたりをかすめる
微風
(
そよかぜ
)
が、蜜蜂の
囁
(
ささや
)
くような音をたてるばかりだった。
地球要塞
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そそるような
微風
(
そよかぜ
)
が、
温
(
あたた
)
かに彼女の力を吹出して宇宙の中に満ち渡った。
不周山
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
その水面は鏡のように静かに光って、どこにも
微風
(
そよかぜ
)
の吹くあとさえ見えなかった。その向う岸には、殆ど谷間を横に仕切ったように、ながながと寝そべったような恰好のモニュメント山があった。
ワンダ・ブック――少年・少女のために――
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
が心に
微風
(
そよかぜ
)
が吹く——あとから、あとから微風が吹いて通る——。
追慕
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
明るい街を、
碧
(
あお
)
い眼をした三人の尼さんが、真白の帽子、黒の
法衣
(
ほうえ
)
の裾をつまみ、黒い
洋傘
(
こうもり
)
を日傘の代りにさして、ゆっくりと歩いて行った。穏やかな会話が
微風
(
そよかぜ
)
のように彼女たちの唇を漏れてきた。
橋
(新字新仮名)
/
池谷信三郎
(著)
この話題は、それきりに、夏の夜の
微風
(
そよかぜ
)
とともに流れて行つた。
光は影を
(新字新仮名)
/
岸田国士
(著)
掌
(
て
)
はみづにかくれ
微風
(
そよかぜ
)
の夢をゆめみる
未生
(
みしやう
)
の薔薇の花。
藍色の蟇
(新字旧仮名)
/
大手拓次
(著)
春永うしていたづらに吹く
微風
(
そよかぜ
)
に垂尾の
雉子
(
きゞす
)
あらはれにけり
雀の卵
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
恐ろしいザワめきが、一座を
微風
(
そよかぜ
)
のように渡ります。
銭形平次捕物控:146 秤座政談
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
われは聞く、
唯
(
たゞ
)
微風
(
そよかぜ
)
の音なひ
咽
(
むせ
)
び泣く水の
聲
(
こゑ
)
カンタタ
(旧字旧仮名)
/
ポール・クローデル
(著)
重い
帷
(
とばり
)
が
微風
(
そよかぜ
)
を受けてそよいでいる。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
あはれ、
微風
(
そよかぜ
)
、さやさやと
海潮音
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
ひとつは
微風
(
そよかぜ
)
に
春鳥集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
夜目にもさかんな月見草が
微風
(
そよかぜ
)
に揺れてゐる河堤で漸く私は馬車のうしろにぶらさがつた。鞭の昔が痛々しく
空
(
くう
)
に鳴つてゐた。
武者窓日記
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
ネルロにとっては、
微風
(
そよかぜ
)
にそよぐポプラ並木の朝の景色も、もはや以前のように、たのしげに晴々しくは見えませんでした。
フランダースの犬
(新字新仮名)
/
マリー・ルイーズ・ド・ラ・ラメー
(著)
薄暗い
穹窿
(
きゆうりゆう
)
の
下
(
もと
)
に蝋燭の火と薫香の煙と白と
黄金
(
きん
)
の僧衣の光とが神秘な色を呈して
入交
(
いりまじ
)
り、静かな
読経
(
どくきやう
)
の声が洞窟の奥に
谺
(
こだま
)
する
微風
(
そよかぜ
)
の様に吹いて居る。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
長い草は
微風
(
そよかぜ
)
にふかれながらも、人形を
誰
(
だれ
)
からも見えないように、上手にかくしてくれました。だから人形は、日がくれてもじっとそこに寝ていました。
博多人形
(新字新仮名)
/
竹久夢二
(著)
西班牙の夕暮の美しさ! 真昼の暑さは名残り無く消えて、涼しい
微風
(
そよかぜ
)
が庭園の上や家々の
周囲
(
まわり
)
を吹き巡る。
西班牙の恋
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
今の時間でいうと、午前十一時頃の、春は
爛漫
(
らんまん
)
と
天地
(
あめつち
)
に誇っていて、
微風
(
そよかぜ
)
の生暖かく吹いている日であった。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この人は——運命はこの人にだけ何時も
心地
(
こゝち
)
よい
微風
(
そよかぜ
)
を送つてゐるやうであつた——その後間もなく互ひに思ひ合ふ人が出来、やがて願ひが
叶
(
かな
)
つて結婚の式をあげ
新らしき祖先
(新字旧仮名)
/
相馬泰三
(著)
護摩堂
(
ごまどう
)
から
笠神明
(
かさしんめい
)
へかけて、二十軒建ちならぶ江戸名物お福の茶屋、
葦簾
(
よしず
)
掛けの一つに、うれし野と染め抜いた小旗が
微風
(
そよかぜ
)
にはためいているのが、
雑沓
(
ざっとう
)
の頭越しに見える。
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
石榴
(
ざくろ
)
の花と
百日紅
(
ひゃくじつこう
)
とは燃えるような強い色彩を
午後
(
ひるすぎ
)
の炎天に
輝
(
かがやか
)
し、眠むそうな薄色の
合歓
(
ねむ
)
の花はぼやけた
紅
(
べに
)
の
刷毛
(
はけ
)
をば
植込
(
うえご
)
みの蔭なる夕方の
微風
(
そよかぜ
)
にゆすぶっている。単調な蝉の歌。
夏の町
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「このごろの
微風
(
そよかぜ
)
に
焚
(
た
)
き混ぜる物としてはこれに越したにおいはないでしょう」
源氏物語:32 梅が枝
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
草わかば黄なる小犬の飛び
跳
(
は
)
ねて走り去りけり
微風
(
そよかぜ
)
の中
桐の花
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
恐ろしいザワめきが、一座を
微風
(
そよかぜ
)
のやうに渡ります。
銭形平次捕物控:146 秤座政談
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
微風
(
そよかぜ
)
なげけば、花の
香
(
か
)
ぬれつつ
身悶
(
みもだ
)
えぬ。
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
あはれ、
微風
(
そよかぜ
)
、さやさやと
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
海経てきぬる
微風
(
そよかぜ
)
の
閑天地
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
“微風”の意味
《名詞》
微風(びふう、そよかぜ)
かすかに吹く風。
(出典:Wiktionary)
微
常用漢字
中学
部首:⼻
13画
風
常用漢字
小2
部首:⾵
9画
“微”で始まる語句
微笑
微
微塵
微行
微妙
微暗
微酔
微醺
微温
微睡