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引返
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ひっかえ
ふりがな文庫
“
引返
(
ひっかえ
)” の例文
西の
方
(
かた
)
に山の見ゆる町の、
上
(
かみ
)
の
方
(
かた
)
へ遊びに行つて居たが、約束を忘れなかつたから
晩方
(
ばんがた
)
に
引返
(
ひっかえ
)
した。
之
(
これ
)
から
夕餉
(
ゆうげ
)
を
済
(
すま
)
してといふつもり。
処方秘箋
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「トム、トム……。」と、二三度呼んだが、犬は
食物
(
くいもの
)
に気を
奪
(
と
)
られて、主人の声を
聞付
(
ききつ
)
けぬらしい。市郎は
舌打
(
したうち
)
しながら
引返
(
ひっかえ
)
して来た。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
倉蔵は目礼したまま大急ぎで庭の方へ
廻
(
ま
)
わった。村長は腕を組んで
暫時
(
しばら
)
く考えていたが
歎息
(
ためいき
)
をして、自分の家の方へ
引返
(
ひっかえ
)
した。
富岡先生
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
そこで彼女は、ほっとしたように急いで、
主館
(
おもや
)
の方へ
引返
(
ひっかえ
)
して行った。そして間もなく私達は物置の中へはいって、
銘々
(
めいめい
)
に秤へ懸りはじめた。
死の快走船
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
といって
引返
(
ひっかえ
)
してまごまご探していようものなら、足の早い日本空軍の爆撃機は、私の知らぬうちに頭上へ現れるだろう。
今昔ばなし抱合兵団:――金博士シリーズ・4――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
室
(
へや
)
を出てからもう一度
引返
(
ひっかえ
)
して様子を窺った足跡を、
室
(
へや
)
に這入る前に窺ったものと見たために、女の殺意を認めたのです。面目次第もありません
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
母はいつもと違う空を仰いで、こう云いながらまた元の座敷へ
引返
(
ひっかえ
)
して来た。兄はすぐ立ってまた欄干へ出た。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
一度洋館の方へ
引返
(
ひっかえ
)
して、何か邸内の人に頼んでいる様子だったが、間もなく炊事用の
摺鉢
(
すりばち
)
を抱えて来て、最もハッキリした一つの足跡の上にそれをふせた。
何者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
それなら早く帰る方がよいだろうと、その車で出たが、車屋がすぐ
引返
(
ひっかえ
)
してきて、お客様が変だとおろした。
旧聞日本橋:03 蕎麦屋の利久
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
何うも気に成るから振り
返
(
かえ
)
て見ると、其の若い者がバタ/\/\と
下手
(
しもて
)
の欄干の側へ参り、又片足を
踏掛
(
ふんが
)
けて飛び込もうとする様子ゆえ、驚いて
引返
(
ひっかえ
)
して抱き留め
文七元結
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
細君の一行も、またリヴァプールまですごすごと
引返
(
ひっかえ
)
さなければならなかった。
臨時急行列車の紛失
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
潮
(
しお
)
は今ソコリになっていてこれから
引返
(
ひっかえ
)
そうというところであるから、水も動かず浮子も流れないが、見るとその浮子も
売物浮子
(
うりものうき
)
ではない、木の
箸
(
はし
)
か何ぞのようなものを、明らかに少年の手わざで
蘆声
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
それがために
皆
(
みんな
)
が
一雪崩
(
ひとなだれ
)
に、
引返
(
ひっかえ
)
したっていいますが、もっとも何だそうで、その
前
(
さき
)
から風が出て大降になりました様子でござりますな。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
もう
斯
(
こ
)
うなると次の列車を待つてはゐられません。わたくしは湯河原へ
引返
(
ひっかえ
)
すことにして、再び小田原行の電車に乗りました。
停車場の少女:――「近代異妖編」
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
と看護婦は、急にニヤニヤ笑い出しながら
引返
(
ひっかえ
)
して来た。真赤な唇をユの字型に
歪
(
ゆが
)
めて私の寝台の端に腰をかけた。
一足お先に
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
大多数の見物は、この辺でとどめを刺されて、愈々
引返
(
ひっかえ
)
す気になるのであろうが、博士達は引返さなかった。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
大辻老は
向
(
むこ
)
うへ懐中電灯をたよりに
引返
(
ひっかえ
)
していった。そしてしきりと路上にかがまっては探していたが
地中魔
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
さりとて途中で
引返
(
ひっかえ
)
すことも出来ず、駕籠に附いてまいります
中
(
うち
)
に、吹雪が風にまじって顔へ当ります。舁夫は慣れて居りますから、登るに従って
却
(
かえ
)
って足が早うございます。
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
打置きてすごすごと
引返
(
ひっかえ
)
せしが、
足許
(
あしもと
)
にさきの石の二ツに砕けて落ちたるより
俄
(
にわか
)
に心動き、拾いあげて取って返し、きと毒虫をねらいたり。
竜潭譚
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「畜生……
到底
(
とても
)
駄目だ。」と、市郎は呟きながら
引返
(
ひっかえ
)
して来ると、安行も
丁度
(
ちょうど
)
駈付
(
かけつ
)
けた。トムは
咽喉
(
のど
)
を深く抉られて、既に息が絶えていた。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
と
独言
(
ひとりごと
)
を云い云い
引返
(
ひっかえ
)
して、箱崎松原の中に在る黒田家の菩提所、崇福寺の境内に忍び込んだ。門内の無縁塔の前に在る大きな
拝石
(
おがみいし
)
の上にドッカリと座を占めた。
斬られたさに
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
柾木はのろまな子供の様に赤面して、
引返
(
ひっかえ
)
す勇気さえなく、ぼんやりと二人の立話を眺めていた。紳士は待たせてある自動車を指して、しきりと彼女を
誘
(
いざな
)
っていた。
虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
と気遣いながら元の処へ
引返
(
ひっかえ
)
してまいりますと、
何
(
いず
)
れへ行ったか旅人も舁夫も居りませぬ。
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
で、急いで明石町から
引返
(
ひっかえ
)
して、赤坂の方へ向うと、また、おなじように飛んでいる。群れて
行
(
ゆ
)
く。
歯科医
(
はいしゃ
)
で、椅子に掛けた。
縷紅新草
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
重太郎は
潔
(
いさぎ
)
よくお葉を思い切ったのであろうか。彼はお葉から
受取
(
うけと
)
った椿の枝を大事に抱えて、虎ヶ窟の
方
(
かた
)
へ
悄々
(
しおしお
)
と
引返
(
ひっかえ
)
した。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
間もなく
扉
(
ドア
)
が開いて、見知り越しの若い書生が顔を出した。諸戸に逢い
度
(
た
)
いと云うと、彼は一寸引込んで行ったが、直ぐ
引返
(
ひっかえ
)
して来て、私を玄関の次の応接間へ通した。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
その生命を代償として、妾を威嚇致します準備が整っております旨を承わりました妾は、余りの恐ろしさに魂も身に添わず、病気のように相成りましてこの教会に
引返
(
ひっかえ
)
し
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
スルと奥の方で若い女の声がして甚兵衞爺さんも婆さんも
頻
(
しき
)
りに慰さめている様子。ハテ悪いところへ来たわい、誰か客があるのか知らんと思いましたが、
引返
(
ひっかえ
)
して出て
行
(
ゆ
)
くも変ですから
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
引返
(
ひっかえ
)
した処で寝る家もない場合。梓一人が迷惑して
困
(
こう
)
じ切っている処を、
灯
(
あかり
)
がないと、交番で
咎
(
とが
)
められたが、
提灯
(
ちょうちん
)
の用意はなし、お前さん。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
わたくしも
引返
(
ひっかえ
)
して改札口の方へ行きますと、大勢の人たちが
繋
(
つな
)
がつて押出されて行きます。
停車場の少女:――「近代異妖編」
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
という言葉が口を
衝
(
つ
)
いて出た。そうしてそのまま表の説教場に
引返
(
ひっかえ
)
すと、そのまん中の椅子の間に書記を連れた熱海検事が茫然と突立っていたが、私を見ると
恭
(
うやうや
)
しく帽子を脱いだ。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
行違
(
ゆきちが
)
いまして、又ぞろ江戸へ
引返
(
ひっかえ
)
してまいるような事になりました、此の上は松平公の御家中藤原
氏
(
し
)
を頼み、手続きをもって尋ねましたなら、蟠龍軒の
居所
(
いどこ
)
の知れぬことも無かろうと思います
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
霜に
緋葉
(
もみじ
)
の散る道を、
爽
(
さわやか
)
に故郷から
引返
(
ひっかえ
)
して、再び上京したのでありますが、福井までには及びません、私の故郷からはそれから七里さきの
雪霊記事
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
(炉の前へ
引返
(
ひっかえ
)
して来る。)おまえは
無暗
(
むやみ
)
に追い出したが、おれは何だか気の毒でならねえ。
影:(一幕)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
イヤモウ……みんな青くなったの候のって……覚悟の前とか何とか、大きな事を云っていた船長が、日本人の癖にイの一番に慌て出して、
全速力
(
フルスピード
)
で
新嘉坡
(
シンガポール
)
へ
引返
(
ひっかえ
)
すと云い出したもんだ。
焦点を合せる
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
また
腕車
(
くるま
)
を急がせて根岸のはずれまで
引返
(
ひっかえ
)
して来た。
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
この
大
(
おおい
)
なる鯉が、
尾鰭
(
おひれ
)
を
曳
(
ひ
)
いた、波の
引返
(
ひっかえ
)
すのが棄てた棹を
攫
(
さら
)
った。棹はひとりでに底知れずの方へツラツラと流れて
行
(
ゆ
)
く。
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
成程と心付いて其のまま
引返
(
ひっかえ
)
して、私に其の噺をするから、ハテ不思議だと三人一所に、再び其の木かげへ往って見ると、エエ何の事だ、鴨は
扨
(
さて
)
措いて、第一に其の池もない
木曽の怪物:――「日本妖怪実譚」より
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
二人とも何気なくバットの吸いさしを投棄てて、薄暗い汽鑵場へ
引返
(
ひっかえ
)
した。
オンチ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
此の
大
(
おおい
)
なる鯉が、
尾鰭
(
おひれ
)
を
曳
(
ひ
)
いた、波の
引返
(
ひっかえ
)
すのが
棄
(
す
)
てた
棹
(
さお
)
を
攫
(
さら
)
つた。棹はひとりでに底知れずの方へツラ/\と流れて行く。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
引返
(
ひっかえ
)
して構内を
覗
(
のぞ
)
きましたが、矢はりそれらしい人は見付からないので、わたくしは夢のやうな心持がして、しきりに
其処
(
そこ
)
らを見廻しましたが、あとにも先にも其娘は見えませんでした。
停車場の少女:――「近代異妖編」
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
額
(
ひたい
)
の中央から鼻の下まで切り割られた
痕
(
あと
)
を、太い麻糸でブツブツに縫い合わせられたまま、奇妙な泣き笑いみたような表情を凝固させているのを見返りながら、ソロソロと入口の
扉
(
ドア
)
の前に
引返
(
ひっかえ
)
した。
一足お先に
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そろそろ
引返
(
ひっかえ
)
したんです、母様がね。休んでいた車夫に、今のお嬢さんは真中の家へですか。へい、さようで、と云うのを聞いて帰ったのさね。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
独言
(
ひとりごと
)
を云い云い白い笠を目当に
引返
(
ひっかえ
)
して来た。
斬られたさに
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
雛妓に言付けて、座敷を
斜
(
ななめ
)
に切って、
上口
(
あがりくち
)
から箪笥の前へ
引返
(
ひっかえ
)
すと、一番目の
抽斗
(
ひきだし
)
が半ば
開
(
あ
)
いていた。蝶吉は
衝
(
つッ
)
と立って
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お妙はずんずん小使について廊下を
引返
(
ひっかえ
)
しながら、怒ったような顔をして、振向いて同じように胸の
許
(
もと
)
を
擦
(
さす
)
って見せた。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「島野さん、お
連
(
つれ
)
様もお見え遊ばしたし、失礼いたしますから、お嬢様にはどうぞ、」も震え声で口の
裡
(
うち
)
、返事は聞きつけないで、
引返
(
ひっかえ
)
そうとする。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
出発の朝、空模様が悪いのを見て、雨が降ったら途中から必ず
引返
(
ひっかえ
)
せ、と心づけています。道は余程難儀らしい……
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
こちら様はお
一方
(
ひとかた
)
、御婦人でいらっしゃいます事ゆえ念のために、
私
(
わたくし
)
お伺いに出ました儀で、直ぐにという御意にござりましたで、
引返
(
ひっかえ
)
して、御案内。
伊勢之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
(はい、)といって、
小戻
(
こもどり
)
をして、黒塀の板戸の角、鴨川勝手口とある処へ
引返
(
ひっかえ
)
したが、何となくその
首
(
こうべ
)
を垂れた。
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
引
常用漢字
小2
部首:⼸
4画
返
常用漢字
小3
部首:⾡
7画
“引”で始まる語句
引
引込
引摺
引張
引掛
引籠
引立
引緊
引出
引越