なら)” の例文
黒天鵞絨くろびろうどの薄い小形の不断使いの座蒲団が順好くならんで、その間に煙草盆が、五歩に一楼十歩に一閣という塩梅式あんばいしきに置かれてある。
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
美女桜、ロベリヤ、松葉菊及びかば色の草花、これは先日碧梧桐へきごとうの持つて来てくれた盆栽で、今は床の間の前にならべて置かれてある。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
朋は月に非ずして鳳である。昔は月を二ツならべるのではなくして鳳を二ツ書いたものだそうだ。鳳は人を引き付ける霊鳥で東西共にいる。
イエスキリストの友誼 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
フランスの所謂「アンシークロペディー」とならんで、之を改版した模造百科辞典が少なからず造られた時代であったのである。
はらされよと云つゝかね省愼たしなおきたる具足櫃ぐそくびつならびに差替さしかへの大小までも取出し此通り國難まさかの時の用意も致し居る拙者なり他人の物を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
小穂には第二図中の「ロ」に示すが如く小軸と称する中軸ありて、その中軸の両側に互生して二列に相ならぶものは、すなわちこれその花なり。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
で私はその二方ふたかたがれいれいとならべてまつってあるということについて、実に言うに言われぬいやな感じがいたしました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
身寄でも親類でもねえが其処そこ情合じょうあいだ、己は遊んで歩くから、家はまるで留守じゃアあるし、お前此処に居て留守居をして荒物や駄菓子でもならべて居りゃア
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
巣の内のひなが親鳥の来るのを見つけたように、一列にならんだ娘達が桃色のくちびるを開いて歌ったことであろう。
花子 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
應接間おうせつまとほると、おほきな洋卓テーブル周圍まはり天鵞絨ビロードつた腰掛こしかけならんでゐて、あはしてゐる三四人さんよにんが、うづくまるやうあごえりうづめてゐた。それがみんなをんなであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
彼等は節義を説けり、善悪を説けり、然れども彼等の節義も、彼等の善悪も、寧ろ人形をならべたるものにして、人間の根本の生命の絃に触れたる者にあらざるなり。
内部生命論 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
都指揮使謝貴しゃき七衛しちえいの兵、ならびに屯田とんでんの軍士を率いて王城を囲み、木柵ぼくさくを以て端礼門たんれいもん等のみちを断ちぬ。朝廷よりは燕王の爵を削るのみことのり、及び王府の官属をとらうべきの詔至りぬ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
その夜文三は断念おもいきッて叔母に詫言をもうしたが、ヤてこずったの梃ずらないのと言てそれはそれは……まずお政が今朝言ッた厭味に輪を懸け枝を添えて百万陀羅まんだらならべ立てた上句あげく
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
カピューレット長者ちゃうじゃさきに、おなじく夫人ふじん乳母うばならびに下人げにんかふおついて出る。
日本の使節が港から船に乗ろうと云うその道は十町余りもあったかと思う、道の両側に兵隊をずっとならべて見送らした。れは敬礼を尽すのではなくして日本人をおどかしたに違いない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
八畳ほどの座敷はすっかり渋紙しぶかみが敷いてあって、押入のない一方の壁には立派な箪笥たんすが順序よく引手のカンをならべ、路地の方へ向いた表の窓際には四、五台の化粧鏡が据えられてあった。
夏の町 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
例せば『類聚名物考』に猴大根を食わしめてよし、またカヤの実を食すれば甚だげんあり、猴舞わしの家常に用ゆ、甚だ蟹の殻ならびに手のはさみを嫌うなりとあるなど経験に拠ったのであろう。
つとめ父傳藏に至り水損すゐそん打續うちつゞき其上災害さいがいならび至りて田畑殘りなく失ひせがれ傳吉十六歳のときおや傳藏は病死なし母一人殘り孝行かうかう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
白、黒、黄、青、紫、赤、あらゆる明かな色が、大海原おおうなばらに起る波紋はもんのごとく、簇然そうぜんとして、遠くの底に、五色のうろこならべたほど、小さくかつ奇麗きれいに、うごめいていた。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
けれども出来上って見ると巧拙にかかわらず何だか嬉しいので、翌日もまた痲痺剤の力をかりてそれに二、三輪の山吹と二輪の椿とをならべて書き添え、一枚の紙をとうとう書きふさげてしもうた。
病牀苦語 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
十方三世の諸仏たちならびに本師釈迦牟尼仏しゃかむにぶつ
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
応接間へ通ると、大きな洋卓テーブル周囲まわり天鵞絨びろうどで張った腰掛がならんでいて、待ち合している三四人が、うずくまるようにあごえりうずめていた。それが皆女であった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
其方儀村役中不正ふせいの儀多くことに九助妻里と密通みつつうに及び九助親類しんるゐいつはり水田屋藤八方より金子百八十兩餘かたり取り其後下伊呂村にて石川安五郎妻ならびに馬士まご松五郎の兩人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
代助はこう云って、嫂と縫子の蝙蝠傘こうもりがさを提げて一足先へ玄関へ出た。車はそこに三挺ちょうならんでいた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
代助は斯う云つて、あによめ縫子ぬひこ蝙蝠傘かはほりがさげて一足ひとあし先へ玄関へた。車はそこに三挺ならんでゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
家の門を這入はいると、玄関に誠太郎のらしいくつ叮嚀ていねいならべてあった。門野に聞いたら、へえそうです、先方さっきから待って御出ですという答であった。代助はすぐ書斎へ来て見た。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
うちもん這入はいると、玄関に誠太郎のらしいくつが叮嚀にならべてあつた。門野かどのいたら、へえ左様さうです、先方さつきからつて御出おいでですといふこたへであつた。代助はすぐ書斎へた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
代助はその昔し、麦酒ビールびんを互の間にならべて、よく平岡と戦った事を覚えている。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「なあに。これでも足はまだ達者だからね。——しかし御蔭でひげも何もほこりだらけになっちまった。こら」と右手めての指を四本ならべてくしの代りにあごの下をくと、果して薄黒いものが股について来た。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)