小粒こつぶ)” の例文
路用から湯治たうぢの雜用を併せて三兩二分ばかり、あとに殘つたのは、煙草入に女房のお靜が入れてくれた、たしなみの小粒こつぶが三つだけです。
毒樣どくさまなこつたが獨活うど大木たいぼくやくにたゝない、山椒さんしよ小粒こつぶ珍重ちんちようされるとたかことをいふに、此野郎このやらうめとひどたれて
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
議場ぎぜう政治家せいちかでも、両国れうこく土俵とへう力士りきしでも、伝統的でんとうてきなものがほろびて、段々だん/\小粒こつぶになつてるのにも不思議ふしぎはない。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
あめかためてある百姓ひやくしやうにはつちにも蔊菜いぬがしら石龍芮たがらし黄色きいろ小粒こつぶはなたせて、やのむねにさへながみじかくさしやうぜしめる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
まつろうしばしのあいだおしたけのこるような恰好かっこうをしていたが、やがてにぎこぶしなかに、五六まい小粒こつぶ器用きようにぎりしめて、ぱっと春重はるしげはなさきひろげてみせた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
しかるに、幸運であつた天気が、忽ちにして雲霧となり、下界をば全く隠蔽いんぺいしてしまつた。飆々へうへうとして流れくる雲霧は小粒こつぶ雨滴うてきとなつて車窓の玻璃はりらすやうになつた。
ヴエスヴイオ山 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
附木つけぎ一枚を手形がわりにして持っていったりしたことを、風通しのよい、青い林檎りんごの実ったのが目のさきにある奥二階の明り窓のきわで、小粒こつぶ二朱金にしゅきん金盥かなだらいで洗ったり
ついに免れ切れなくなって、雌魚は柳のひげ根に美しい小粒こつぶの真珠のような産卵を撒き散らして逃げて行く。雄魚等は勝利の腹を閃めかして一つ一つの産卵に電撃を与える。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
最初さいしょはありのやつめ、綿わたあしをとられて、こまっていたが、そのうちに平気へいきでそれをえてしたからがっていくもの、うえから、小粒こつぶきとおる蜜液みつえきいてりてくるもの
戦友 (新字新仮名) / 小川未明(著)
試合場しあいじょう城戸きどから、八ちょう参道さんどうとよぶひろ平坦へいたんさかをかけおりてゆくうちに、燕作の小粒こつぶなからだはみるみるうちにされて、とてもこれは、比較ひかくにはならないと思われるほど
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たらぬがちの生活にも、朝な朝なのはたきの音、お艶の女房にょうぼうぶりはういういしく、泰軒は毎日のように訪ねて来ては、その帰ったあとには必ず小粒こつぶがすこし上がりぐちに落ちている。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
果実は小粒こつぶ状のかた分果ぶんかで、灰色をていして光沢こうたくがあり、けばえるから、このムラサキを栽培することは、あえて難事なんじではない。ゆえに往時おうじは、これを畑に作ったことがあった。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
小粒こつぶに替え、銭にかえたら幾ら——西暦一九三三年前後、世界各国が、金の偏在と欠乏に苦しんで、それぞれ国家が金の輸出を禁止し、日本の国に於ても、公定相場が持ちきれなくなり
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それを今まで出頭に及ばず、しかも焼打を恐れて今頃になってノコノコと出向いて来るさえあるのに、下妻の戸山ともあろうものが、二百金のものを小粒こつぶを混ぜて五十両とは何だ! それへ直れっ!
天狗外伝 斬られの仙太 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
「無理もないな、——ところでもう一つ、これを知つてゐたら、今度は穴のあいたのぢやない、ピカリと小粒こつぶをやらう」
小初はやにわに薫のくびと肩をとらえて、うすむらさきの唇に小粒こつぶな白い歯をもって行く。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
宿やどなしどもの一人ひとりは、おじいさんののつかないあいだに、ふくろのすみにちいさなあなけて、そのなかのものをようとしました。すると、なかからは小粒こつぶくろ種子たねのようなものが、こぼれてきました。
珍しい酒もり (新字新仮名) / 小川未明(著)
二百金のものを小粒こつぶを混ぜて五十両とは何事だ! それへ直れっ!
斬られの仙太 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
お房の口はやうやくほぐれて行きます。尤も平次は、煙草入から小粒こつぶを一つ掴み出して、鼻紙に包んで、お房の膝の下に押し込んだ早業も相當藥味やくみがきいたことでせう。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
前の日、謎の金箱から出た小粒こつぶを三つ四つ、平次は八五郎の手に握らせるのです。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)