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噬
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か
ふりがな文庫
“
噬
(
か
)” の例文
主人の花紋のある長い上衣の褄が、砂の上を曳いてゐる。そして手には長い杖を衝いてゐて、折々その握りの処を歯で
噬
(
か
)
む癖がある。
復讐
(新字旧仮名)
/
アンリ・ド・レニエ
(著)
幼
(
いとけな
)
き保の廊下に
遊嬉
(
いうき
)
するを見る毎に、戯に其臂を執つてこれを
噬
(
か
)
む勢をなした。保は遠く柏軒の来るを望んで逃げ
躱
(
かく
)
れたさうである。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
原来彼の黄金丸は、われのみならず
畏
(
かしこ
)
くも、大王までを
仇敵
(
かたき
)
と
狙
(
ねら
)
ふて、
他
(
かれ
)
が
足痍
(
あしのきず
)
愈
(
いえ
)
なば、この山に
討入
(
うちいり
)
て、大王を
噬
(
か
)
み
斃
(
たお
)
さんと計る由。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
血みどろな、敗れてもなお
弾
(
はじ
)
き立つ情念、老いてもまだ衰えぬ生存慾、力尽きて海中に
噬
(
か
)
み落された弱者、老大獣の必死の争奪戦。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
千悔、万悔、
臍
(
ほぞ
)
を
噬
(
か
)
んでいる胸元を貫くような
午砲
(
ごほう
)
の
響
(
ひびき
)
。それと同時に「
御膳
(
ごぜん
)
で御座いますよ」。けれど、ほいきたと云ッて降りられもしない。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
▼ もっと見る
また天宝中
巴人
(
はじん
)
太白廟前の大松を伐る、老人ありて止むれど聴かず、老人山に登り
斑子
(
はんし
)
と呼ぶと群虎出で巴人を
噬
(
か
)
んだ、また嘉陵江側に婦人あり
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
母親は、
主婦
(
あるじ
)
に
噬
(
か
)
みつくように言われて、切なげに子供を負って馬車から降りると、二度も三度も
店頭
(
みせさき
)
を往来して、そのあげくにやっと入って行った。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
倒崖の
仆
(
たふ
)
れかゝらんとする時、猛虎の躍り
噬
(
か
)
まんとする時、
巨鱷
(
きよがく
)
の来り呑まんとする時、泰然として神色自若たるを得るは、即ちこの境にあるの人なり。
各人心宮内の秘宮
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
この時我は我胸を
噬
(
か
)
む卑怯の
蛆
(
うじ
)
の兩斷せらるゝを覺えしが、そは一瞬の間の事にて、蛆は
忽
(
たちまち
)
又
蘇
(
よみがへ
)
りたり。われは
復
(
ま
)
たいかなる決斷をもなすこと能はざりき。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
「それはいわゆる『
報寃蛇
(
ほうえんだ
)
』です。人がそれに手出しをすれば、百里の遠くまでも追って来て、かならず其の人の
心
(
むね
)
を
噬
(
か
)
みます。その蛇は今夜きっと来るでしょう」
中国怪奇小説集:11 異聞総録・其他(宋)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
十兵衞いよ/\五重塔の
工事
(
しごと
)
するに定まつてより寐ても起きても
其事
(
それ
)
三昧
(
ざんまい
)
、朝の飯喫ふにも心の中では塔を
噬
(
か
)
み、夜の夢結ぶにも
魂魄
(
たましひ
)
は九輪の頂を繞るほどなれば
五重塔
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
人を
噬
(
か
)
んだ犬を
晒者
(
さらしもの
)
にする刑罰があるかと思えば、ローマの十二表法には、四足獣が傷害をなしたときは、その所有者は賠償をなすかまたは行害獣を被害者に引渡して
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
一本腕は何一つ分けてやろうともせずに、口の中の物をゆっくり丁寧に
噬
(
か
)
んでいる。
橋の下
(新字新仮名)
/
フレデリック・ブウテ
(著)
折角の深い交際が
疎
(
おろそ
)
かになったり、恩義ある人に悪感を抱かせたり、又は大切の得意を
失策
(
しくじ
)
ったりして、後悔
臍
(
ほぞ
)
を
噬
(
か
)
む共及ばぬような大事件が
出来
(
しゅったい
)
するその最初の一刹那なのである。
謡曲黒白談
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
今にして文字への
盲目的崇拝
(
もうもくてきすうはい
)
を改めずんば、後に
臍
(
ほぞ
)
を
噬
(
か
)
むとも
及
(
およ
)
ばぬであろう
云々
(
うんぬん
)
。
文字禍
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
舌は半ば
噬
(
か
)
み切りありたり。上腹部に大いなる挫傷あり。恐くは膝頭にて圧したるものならん。本人の断定に依れば、レスパネエ家の娘は未詳の数人の絞殺するところとなりしならんと云ふ。
病院横町の殺人犯
(新字旧仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
あれは宋の
秦檜
(
しんかい
)
さ、忠良を害し、君を欺き、国を滅したから、こんな重罪を受けておる、他の者も皆国を誤ったもので、この者どもは、国の命が
革
(
あらた
)
まるたびに、引出して、毒蛇に肉を
噬
(
か
)
まし
令狐生冥夢録
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
ところをハイエナの牙めく牙にひどく
噬
(
か
)
まれて、11650
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
少佐夫人は
生憎
(
あいにく
)
口に一ぱい物を頬張つて
噬
(
か
)
んでゐる。
祭日
(新字旧仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
淘去淘来海噬山(
淘
(
ゆ
)
り去り淘り
来
(
きた
)
り海、山を
噬
(
か
)
む)
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
この話を聞きて今更に
臍
(
ほぞ
)
を
噬
(
か
)
む。
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
その角張った顔が何やらに似ている。西洋人が
胡桃
(
くるみ
)
を
噬
(
か
)
み割らせる、恐ろしい口をした人形がある。あれを優しく女らしくしたようである。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
飛
(
とん
)
でかかれば黄金丸も、
稜威
(
ものもの
)
しやと振り
払
(
はらっ
)
て、また
噬
(
か
)
み付くを
丁
(
ちょう
)
と
蹴返
(
けかえ
)
し、その
咽喉
(
のどぶえ
)
を
噬
(
かま
)
んとすれば、
彼方
(
あなた
)
も去る者身を沈めて、黄金丸の
股
(
もも
)
を噬む。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
ああ、初て部屋へ来た時、何故私は物を言わなかったろうと、
千悔万悔
(
せんかいばんかい
)
、それこそ
臍
(
ほぞ
)
を
噬
(
か
)
むけれど、
追付
(
おッつ
)
かない。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
岸を
噬
(
か
)
む水は、石に觸れて倒立し、
鹹沫
(
しぶき
)
は飛んで二人の面を
撲
(
う
)
てり。ポツジヨの興は風浪の高きに從ひて高く、掌を
抵
(
う
)
ちて哄笑し、海に對して
快哉
(
くわいさい
)
を連呼せり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
十兵衛いよいよ五重塔の
工事
(
しごと
)
するに定まってより寝ても起きてもそれ
三昧
(
ざんまい
)
、朝の飯
喫
(
く
)
うにも心の中では塔を
噬
(
か
)
み、夜の夢結ぶにも
魂魄
(
たましい
)
は九輪の頂を
繞
(
めぐ
)
るほどなれば
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
朝
(
あした
)
に平氏あり、
夕
(
ゆふべ
)
に源氏あり、
飄忽
(
へうこつ
)
として去り、飄忽として
来
(
きた
)
る、
一潮
(
いつてう
)
山を
噬
(
か
)
んで一世紀没し、一潮退き尽きて他世紀来る、歴史の載するところ一潮毎に葉数を減じ
富嶽の詩神を思ふ
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
ブラウン夫婦とジユリエツトと僕とは、小さい卓を囲んで据わつて、トルコの菓子や
阿月渾子
(
あるごんす
)
を
噬
(
か
)
みながら、ぼんやりして水のささやきと木の葉のそよぎとを聞いてゐた。
不可説
(新字旧仮名)
/
アンリ・ド・レニエ
(著)
その眼はいなずまのごとく、その
牙
(
きば
)
はつるぎの如くで、そこを通る象の一類はみな呑まれたり
噬
(
か
)
まれたりします。その難に遭うもの幾百、もはや逃げ隠れるすべもありません。
中国怪奇小説集:07 白猿伝・其他(唐)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
一夜、鶏が誤って夜半に鳴き、
命
(
みこと
)
、周章舟を出したが
櫓
(
ろ
)
を置き忘れ、
拠
(
よんどころ
)
なく手で水を掻いて帰る内、
鰐
(
わに
)
に手を
噬
(
か
)
まれた。因って命と姫を
祀
(
まつ
)
れる出雲の美保姫社辺で鶏を飼わず。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
偶
(
たまたま
)
不平を以って鳴けば、
遽
(
にわか
)
に多言の
咎
(
とがめ
)
を獲、悔、
臍
(
ほぞ
)
を
噬
(
か
)
むも及ぶなし。尾を
揺
(
うご
)
かして憐を乞うを恥ず。今其罪名を責むるを蒙り、其状を
逼
(
せま
)
らる。伏して竜鱗を
批
(
う
)
ち竜頷を探る。
豈
(
あ
)
に敢て生を求めんや。
令狐生冥夢録
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
この
靭
(
しわ
)
いお料理を
噬
(
か
)
んでいるから、知っています。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
某これより諸国を
巡
(
め
)
ぐり、あまねく強き犬と
噬
(
か
)
み合ふて、まづわが牙を鍛へ。
傍
(
かたわ
)
ら仇敵の
挙動
(
ふるまい
)
に心をつけ、
機会
(
おり
)
もあらば名乗りかけて、父の
讐
(
あだ
)
を
復
(
かえ
)
してん。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
嗚呼
(
あゝ
)
墳墓、汝の冷々たる舌、汝の常に餓ゑたる口、何者をか
噬
(
か
)
まざらん、何物をか呑まざらん、而して墳墓よ、汝も亦た遂に空々漠々たり、水流滔々として洋海に
趣
(
おもむ
)
けど
富嶽の詩神を思ふ
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
宋帝の
後胤
(
こういん
)
趙生てふ貧民が、木を伐りに行って大きな白蛇己を
噬
(
か
)
まんとするを見、逃げ帰って妻に語ると、妻白鼠や白蛇は宝物の
変化
(
へんげ
)
だといって夫とともに往き、蛇に随って巌穴に入り
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
下女が欠を
噬
(
か
)
み殺す。そういう風で大分の間過ぎたのだそうだ。そのうちある晩
風雪
(
ふぶき
)
になって、雨戸の外では風の音がひゅうひゅうとして、庭に植えてある竹がおりおり
箒
(
ほうき
)
で掃くように戸を
摩
(
す
)
る。
独身
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
我は彼等に
對
(
むか
)
ひて立ち、手に持ちたる刑法の卷を開きてさし示し、見よ、分を
踰
(
こ
)
えたる衣服の
奢
(
おごり
)
は國法の許さゞるところなるぞ、我が告發せん折に
臍
(
ほぞ
)
を
噬
(
か
)
む悔あらんと
喝
(
かつ
)
したり。工人は拍手せり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
どんなにかあの鳩が蛇のように
噬
(
か
)
むでしょう。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
長
(
たけ
)
三尺、頭尾均等、而して尾尖らず、槌の柄なきものに似る、故に俗に呼びて野槌と名づく、和州吉野山中、菜摘川、清明の滝辺に往々これを見る、その口大にして人脚を
噬
(
か
)
む、坂より走り下り
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
丈夫な白い歯で
旨
(
うま
)
そうに
噬
(
か
)
んだ。
牛鍋
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
噬
漢検1級
部首:⼝
16画
“噬”を含む語句
反噬
呑噬
噬臍
一噬
乱噬
噬斃
搏噬
相搏噬
齕噬