トップ
>
労
>
いたわ
ふりがな文庫
“
労
(
いたわ
)” の例文
旧字:
勞
よそ
行着
(
ゆきぎ
)
を着た細君を
労
(
いたわ
)
らなければならなかった津田は、やや重い
手提鞄
(
てさげかばん
)
と小さな
風呂敷包
(
ふろしきづつみ
)
を、自分の手で
戸棚
(
とだな
)
から
引
(
ひ
)
き
摺
(
ず
)
り出した。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
わたくしが、たゞ、こどものようにかぶりを竪に振ったり横に振ったりしさえすれば返事になる、相手はそつのない
労
(
いたわ
)
り方でした。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
妹に向うと特にそうであるが、愛情や
労
(
いたわ
)
りをやさしい言葉で表わせない、わざと怒ったりふきげんになるのが、いつもの兄の癖であった。
おばな沢
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
労
(
いたわ
)
り、あんたは無暗に駈けるから歩けやアしない、どうも私は草臥れていかぬ、それじゃア三十両お呉んなさい、その方が私は仕合せじゃ
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
としみじみ
労
(
いたわ
)
って問い慰める、真心は通ったと見えまして、少し枕を寄せるようにして、小宮山の方を向いて、お雪は
溜息
(
ためいき
)
を
吐
(
つ
)
きましたが
湯女の魂
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
美しい女子ではあり、先方から参ったものではありして、拙者、遠慮なく、
労
(
いたわ
)
り、介抱いたし……女子も満足いたしたかして眠ってござる。
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
殿下もまた、快くこれらの哀れなる者たちを御引見になって、それぞれの福祉機関へお世話になったり、
労
(
いたわ
)
って金品をお恵みになっている。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
その貧しい間にありながら、妻は何の不平もなく五人の子供を育て、私を
労
(
いたわ
)
り励ましてきた。よく、貧乏に堪えた。そして、愛を護ってきた。
盗難
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
そして、正勝の姿が物陰に消えてから、紀久子は急所の重苦しい痛みに悩んでいる敬二郎を静かに部屋の中へ
労
(
いたわ
)
り入れた。
恐怖城
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
と、信長から
労
(
いたわ
)
られたことは、最大なお
賞
(
ほ
)
めであると
欣
(
うれ
)
しく思われたので、寝不足の
瞼
(
まぶた
)
に、思わず涙が沁みたのであった。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
私はね、分けて貰った金で
小商売
(
こあきない
)
でもしたいし、当分は身体の方も
労
(
いたわ
)
ろうと思うの。それよりね、そんな事が、いつまで続くとは考えていないさ。
地虫
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
相川が、もっともらしい口吻で、
労
(
いたわ
)
るような視線を向けると、おかみさんは膝にもたれて眠っている三つくらいの女の子の髪の毛を撫であげながら
十三夜:――マニラ籠城日記
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
度のすぎた
労
(
いたわ
)
りや祝辞は云々は全く恐縮で、これから本当にお止め? しかし、もし相当ちゃんとしているのだとしたら、お止めの理由もないわけね。
獄中への手紙:08 一九四一年(昭和十六年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
猟師さんのほかに、わたくしを
労
(
いたわ
)
って下さる方があることを知って、これはその方のお住居だなとさとりました。
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
太郎左衛門はその
室
(
へや
)
へ出入して、二人の者を
労
(
いたわ
)
っていたが、その
目前
(
めのまえ
)
には
壮
(
わか
)
い白い顔が浮ぶようになっていた。
切支丹転び
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
そして、
哀
(
あわ
)
れなものを、
労
(
いたわ
)
るかと
思
(
おも
)
えば、また、いじめるというふうに、
矛盾
(
むじゅん
)
した
光景
(
こうけい
)
を
空
(
そら
)
へ
描
(
えが
)
きながら。
からす
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
お婆さんの態度には、いたずら娘を
労
(
いたわ
)
っている母親のようなやさしさが感ぜられた。また人間と犬との違いはあっても、女は女同士といったようなところもあった。
犬の生活
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
これは伝道の助手としてのみでなく、イエスの
伴侶
(
はんりょ
)
として、イエスの愛の特別の対象として、またイエスを身近く
労
(
いたわ
)
り慰むべき者として選み出されたものでしょう。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
あれ程までに自分の恋したっていた葉子、あれ程までに自分を
労
(
いたわ
)
ってくれていた由子——それが、この一寸した手違いから、もう遠く自分から離れてしまったのだ。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
家の前途を、一人で背負って悩んでいる新子は、時には誰かに慰め
労
(
いたわ
)
られたいような気持がした。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
娘を
労
(
いたわ
)
る心とてはなく、かへつてその身の衣服まで
売却
(
うり
)
なして今は親子三人が着のみ着のままなる
困苦
(
くるしみ
)
をば、ひとへに夫の意気地なきに帰して、夫を罵り、お袖にあたり
小むすめ
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
ものにこだわらない明るい気性で、後で考えると私共を実によく
労
(
いたわ
)
ってくれたことがわかる。
回想録
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
そのまっ黒によごれた手をいきなり引っつかんで熱い口びるでかみしめて
労
(
いたわ
)
ってやりたいほどだった。しかし思いのままに寄り添う事すらできない
大道
(
だいどう
)
であるのをどうしよう。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「それはそれは、とんだ苦労をなされましたな」と、小平太も相手を
労
(
いたわ
)
るように言った。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
不断に武装をつづけて、多端な政務に張り切っていた心が、ふと家臣を
労
(
いたわ
)
ってやったことから、計らずも人の心に立ちかえって思わぬまに湧き上った涙だったに違いないのである。
老中の眼鏡
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
しきりに
労
(
いたわ
)
っておいでになりましたが、私は、あなたの毎朝の、おいとこそうだよ、という歌を歌っておいでになるお姿を思い出し、何がなんだか
判
(
わか
)
らなくなり、しきりに可笑しく
きりぎりす
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
ヴィテルの病院で、マタ・アリは、盲目の恋人を
労
(
いたわ
)
りながら、飛行隊の将校連と日増しに親しくなりつつある。と思うと、ぞくぞく不思議なことが起こって、飛行機の恐慌に
陥
(
おちい
)
った。
戦雲を駆る女怪
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
ヨブの病中は
傍
(
そば
)
に寄りつく事だにしなかった兄弟姉妹知友たち、今ヨブが病
癒
(
い
)
えて昔日以上の繁栄に入るや、
俄
(
にわか
)
に彼の家を
訪
(
おとの
)
うて飲食し、
既
(
すで
)
に慰めいたわる必要なきヨブを慰め
労
(
いたわ
)
り
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
亡母
(
はは
)
によく似ている年とったそこもとをよく
労
(
いたわ
)
って進ぜたなら、草葉のかげで母もさぞかし喜ぶであろうとこう思うによって、これからはそこもとを実の母同様に扱うから、そちも
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
階段を駆け下りた女たちは、
労
(
いたわ
)
るようにみのりを
長椅子
(
ながいす
)
に連れていった。
宝石の序曲
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
兼康は、とかく、あとあと宰相から恨まれるのがこわいから、かゆいところに手の届くような
労
(
いたわ
)
り方で、少将の心を何とか慰めようとするのであるが、少将の方は一日として楽しまぬのである。
現代語訳 平家物語:02 第二巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
孔子は郷人とともに酒を飲んだのであり、そうして郷党の老人を
敬
(
うやま
)
い
労
(
いたわ
)
ったのである。また郷人の行なう祭儀にはまじめに共感を表明したのである。そこには村落共同態への従順な態度が見られる。
孔子
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
検事は子供を
労
(
いたわ
)
るように立上って、草川巡査の背中を撫でた。
巡査辞職
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「心の臓を
労
(
いたわ
)
ってくれよ」とあの人は仰言る。
雨の玉川心中:01 太宰治との愛と死のノート
(新字新仮名)
/
山崎富栄
(著)
この中老の女とて終始、子供のためを想うとか幼なごゝろを飽くまで
労
(
いたわ
)
るとかそういう筋目の
徹
(
とお
)
った性質ではございません。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「さーてね」老人はちょっと考えてから、
労
(
いたわ
)
るように云った、「——あるかもしれないな、世間ずれのしていない、箱入り女房ともなればな」
季節のない街
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
駈け寄って来た人々が、ほっと、
安堵
(
あんど
)
のいろを浮かべ、そして左右から
労
(
いたわ
)
りぬくのを、ばばは殆どよろこぶ様子もなく
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
美人は鉄を
労
(
いたわ
)
りて、「お前、何悪いことをしやったえ。お丹はあの通り
気短
(
きみじか
)
だから
恐怖
(
こわ
)
いよ。私が
詫
(
わび
)
をしてあげる。」
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
一つは体を
労
(
いたわ
)
られるため、一つは粘液質の鈍感者流が自分の云っていることが自分に解らず、その
為
(
た
)
め人にも解るまいと、そこで眼を怒らせ声を大にし
小酒井不木氏スケッチ
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
逆に彼を
労
(
いたわ
)
り、母親ぶり「貴女に判らないこともあるのですよ」と云いたげな口つきをしているではないか。
或る日
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
用水桶の蔭に隠れていた浪人
体
(
てい
)
の怪しの者は、背に引きかけていた一人を
労
(
いたわ
)
って駕籠の中へ入れると
大菩薩峠:10 市中騒動の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
併し、青は、坑内に働いている誰からも愛されていた。
惨
(
みじ
)
めな老人を
労
(
いたわ
)
るようにして労られていた。
狂馬
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
「小母さん、そう働らいちゃ悪いだろう。先生の膳は僕が洗って置くから、
彼方
(
あっち
)
へ行って休んで
御出
(
おいで
)
」と婆さんを
労
(
いたわ
)
っていた。代助は始めて婆さんの病気の事を思い出した。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
祖父なども私たちを授りものというような心持で、非常に
労
(
いたわ
)
ってくれた。
回想録
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
朝な夕なに他の女子がその
良人
(
おっと
)
を
労
(
いたわ
)
るを見て、我独り旧時の快を忘るべけんや、ああ神よ我が
良人
(
おっと
)
をして
恙
(
つつが
)
なからしめよ、彼の行路をして安からしめよ、今我は彼に着き
纏
(
まと
)
い心を尽す能わずとも
基督信徒のなぐさめ
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
こう愛情で心身の撫育を添え
労
(
いたわ
)
りながら、智子の教え込む色別を三木雄は言葉の上では驚くべき速度で覚えて行った。
明暗
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
独り泣く
病
(
やまい
)
のある少年には、独り泣くたましいの楽しみが同時にあった。泣いて泣いて泣きぬいていると、天地があわれと
労
(
いたわ
)
り慰めてくれるのである。
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
すっかり聞き終ってから、みつ枝はやさしく
頷
(
うなず
)
き、弟を
労
(
いたわ
)
るように微笑した、「そしてその方とは、その後もずっとお
信
(
たよ
)
りを交わしていらっしゃいますの」
百足ちがい
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
片手に
洗髪
(
あらいがみ
)
を握りながら走り寄りて、女の児を
抱起
(
だきおこ
)
して「危いねえ。」と
労
(
いたわ
)
る時、はじめてわっと泣出だせり。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お母さんは余りこれまで御丈夫でなかったし、御無理だったから、すこしこの際お
労
(
いたわ
)
りになる方がよいのです。そちらもこんなにいい天気でしょうか。どうかお元気に。
獄中への手紙:04 一九三七年(昭和十二年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
“労”の解説
労(ろう)とは律令制の官人が官職に勤務すること及びその勤務期間を指す。労効(ろうこう)ともいう。また、特定の官職における勤務期間を年労(ねんろう)とも称した。
(出典:Wikipedia)
労
常用漢字
小4
部首:⼒
7画
“労”を含む語句
疲労
労働者
労働
徒労
辛労
労苦
博労
塵労
足労
労力
苦労人
心労
功労
勤労
気苦労
苦労
御苦労
気労
慰労
労症
...