分銅ふんどう)” の例文
切っさきをたもとにくるんで、あわや身につきたてようとしたときである。ブーンと、飛んできた分銅ふんどうが、カラッと刀のつばへまきついた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
法師丸はそれらを一つ/\調べて行くうちに、偶然にも丸に分銅ふんどうの紋の附いた立派な幕が眼についたので、覚えずその前に足を止めた。
さう言ひ乍ら、お百姓が、まきや炭や野菜などを量るために使つて居るらしい、恐しく、大きな棒秤ぼうばかりと、でつかい分銅ふんどうを持つて來たのです。
老中水野越前守が造り残した数百万両の金銀の分銅ふんどうはその時に費やされたといわれ、公儀の御金庫おかねぐらはあれから全く底を払ったと言われる。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
例えば早い話が教科書や試験問題には長さ一メートルの物差とか一グラムの分銅ふんどうとかいう言葉が心配げもなく使ってあるが
物理学実験の教授について (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
奈何いかに頭をほてらせて靈魂の存在を説く人でも、其の状態を眼前まのあたり見せ付けられては、靈長教の分銅ふんどうが甚だ輕くなることを感得しなければなるまい。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
其の島ぢやげると不可いけないからつて、足を縛つて、首から掛けて、またあいだへ鉄の分銅ふんどうるんだつて……其処そこへ、あの、黒い、乳の膨れた女は買はれたんだよ。
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「どうしておめえ、はかりなんざあ檢査けんさしたばかりだもの一でもとほねたりれたりして、どうしてんだはなしだ」商人あきんど分銅ふんどうおさへてまたんだ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
そうして、眼に見えない分銅ふんどうが足の先へついてでもいるように、体が下へ下へと沈んで行く——と思うと、急にはっと何かに驚かされて、思わず眼を大きく開いた。
黄粱夢 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
竹流し分銅ふんどうの黄金が、いま現に存在するか否かを確めた上、その一箇を手に入れてみたいということ。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
珠運が一身二一添作にいちてんさくの五も六もなく出立しゅったつが徳と極るであろうが、人情の秤目はかりめかけては、魂の分銅ふんどう次第、三五さんごが十八にもなりて揚屋酒あげやざけ一猪口ひとちょく弗箱ドルばこより重く、色には目なし無二無三むざん
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そして硬い物質で出来あがっているから、相当乱暴に取扱っても壊れたりったりすることがない。そこに目をつけて分銅ふんどう代りに用いる。十銭白銅貨の重量はザッと一もんめである。
白銅貨の効用 (新字新仮名) / 海野十三佐野昌一(著)
職責を分銅ふんどうとせず強い実生活を支持としない芸術、おのが肉体のなかに日々の務めの針を感じない芸術、パンを得る必要のない芸術は、そのもっともよき力と現実性とを失うものである。
分銅ふんどうのついた安ものの小さな掛け時計が、急調子でかっきり十二時を報じた。
光る街路樹と暗黒のベンチと、その上の男女の影とその下の野良犬と、ある広場にはあせちりん瓦斯ガスをともして、襯衣シャツ一枚の大力士が次つぎに分銅ふんどうを持ち上げて野天に人と鳥目スウを集めていたり
よく尋ねるとボーラズをしたんで、ボ様の物が英国にないので遠く多少の似た点がある故棓を当てたのだが、実は日本で言おうなら、棓よりは鎖鎌くさりがまとともに使う分銅ふんどうが一番ボーラズに似居る。
ふつうの衡器こうきは、棒の根もとに近いところははかりのがあり、それを下げていて他の一方のはしのほうへ、分銅ふんどうを送って行くしかけであったが、薬や金銀のような少しの物をはかる天秤というものだけは
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
武田勢は、夜明けもまたず、それへじ登って、銃口を並べ、またほのおの枯れ柴や油布あぶらぬの分銅ふんどうをつけて、火の鳥のように、大手門の内へ投げこんだ。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「二た月俺は辛棒したぜ。ヨボヨボの年寄馬に乘つて、一かど遠乘りのつもりで來たこの物置で手頃の棒秤ぼうばかり分銅ふんどうを見付けたのが、あの馬鹿息子の運の盡きさ」
もんめ分銅ふんどうを一分間吊した後と、一時間あるいは一昼夜吊しておいた後とは幾分の差がある。
方則について (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
日本につぽんぢやがはりのくび武士道ぶしだうとかがあつたけれど、しまぢやげると不可いけないからつて、あししばつて、くびからけて、またあひだてつ分銅ふんどうるんだつて……其處そこへ、あの、くろ
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「十一はんさ、近頃ちかごろどうもやすくつてな」商人あきんどはいひながらあさ目笊めざるたまごれて萠黄もえぎひものたどりをつてはかりさをにして、さうして分銅ふんどういとをぎつとおさへたまゝ銀色ぎんいろかぞへた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
なにげなくバッテーラのうちを見ますとな、笠を被って羅紗らしゃの筒袖を着て、手に巻尺と分銅ふんどうのようなものを持って舳先へさきに立っていた人、それがどうも駒井甚三郎殿としか見えないのでござった。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と、投げ上げた二丈の捕縄とりなわは、崖の上へ這い上がりかけた曲者の首すじへからみついた。旋回した分銅ふんどうは、彼の首から、胴なかを、蛇のように巻いた。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「でも、勇太郎のはかりは見付かりましたよ、分銅ふんどうにはうんと血が付いて——」
そのうち、豊臣家から分捕った「竹流し分銅ふんどう」という黄金がある。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
さけんだときは大吉だいきちのどに、いついたような独楽の分銅ふんどう、ブーンとひとつきついて、ふれるところに火焔かえんをまわした。そして見るまにかれは顔をかれて悶絶もんぜつした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「でも、勇太郎のはかりは見付かりましたよ、分銅ふんどうにはうんと血が附いて——」
と、その者は、手に持っている分銅ふんどう付キの細鎖ほそぐさりで、双互の間を分けへだて
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
十合とも太刀打ちせずに潘璋は逃げはしった。追いまくって密林の小道へ迫りかけた時、四方の巨木から乱離らんりとしてかぎのついた投縄なげなわ分銅ふんどうが降った。関羽の駒はまた何物かに脚をからまれていなないた。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
分銅ふんどうだのかぎのついた鎖だのが、彼の体へからみついた。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)