むづ)” の例文
かくの如く山伏にはむづかしき事の御座候よし兼て師匠ししやうより聞及び候に私事は未だ若年じやくねんにて師匠の跡目あとめ相續の儀は過分くわぶんの儀なれば修驗のはふ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
近頃ちかごろ時々とき/″\我輩わがはい建築けんちく本義ほんぎなんであるかなどゝむづ質問しつもん提出ていしゆつして我輩わがはいこまらせるひとがある。
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
おつぎもみなみ女房にようばうゑてだまつていてた。勘次かんじむづしいかほをしてながらも熱心ねつしんいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
といつてこのお婆さんは、何もそれ以上に邪慳だといふのでもなく、むづ屋でもないのでした。
家族 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
うだ北八きたはち線路せんろわきもり鶯花園あうくわゑんだよ、いた天女てんによ賣藥ばいやく廣告くわうこくだ、そんなものに、見愡みとれるな。おつと、またその古道具屋ふるだうぐやたかさうだぜ、お辭儀じぎをされるとむづヶしいぞ。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
家の者も東京なり神戸なり、出て行く以上は、その土地々々に一生落着くことにして、生活くらしむづうなつて生家うちへ轉がり込まんやうにきつぱり極りをつけとかにやならんと思ふ。
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
井上の奥様がサウぢやない、是れ/\の話でツて、私なぞには解からぬ何かむづしいことつしやいましてネ、其れでモウ内相談がまつて、来月三日の教会の廿五年の御祝が済むと
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
其だから今夜は斯様こんなことを言出しもしたんだが、まあ、僕に言はせると、あまり君は物をむづしく考へ過ぎて居るやうに思はれるね。其処だよ、僕が君に忠告したいと思ふことは。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
と考へ夫々それ/\趣向しゆこうをいたし、一々いち/\口分くちわけにして番号札ばんがうふだけ、ちやんとたなへ、何商法なにしやうはふでもお好次第このみしだい世辞せじがあるといふまでに準備が出来できた、これで開店するといふのだが、うも家屋うち構造かゝりむづかしい
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
と云つて何もむづかしい由来がある訳ではないが、つまり必要は発明の母ですね、エスペラントの発明されたのも畢竟ひつきやう必要に促されたに外ならんので、昔から世界通用語の必要は世界の人が皆感じてゐた
エスペラントの話 (新字旧仮名) / 二葉亭四迷(著)
どうだ、貴様はお袋の様な音なしくつてかしこい女になれるか、チツトむづしいやうだな、今のみゝずの話しも十一のにしちやア余り馬鹿ばかげたやうだな、どうだ、アハヽヽ、そんな真面目まじめな顔をせずともだ。
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
うつたへるわけゆゑいは裁許さいきよ破毀やぶりの願ひなれば一ト通りのはこびにては貫徹つらぬくむづからんされば長庵とやらが大雨おほあめふるかさ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
勘次かんじ其麽そんなことははずにれゝばいゝのにとおもひながらむづかほをしてだまつてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
余り情ないと思ひますよ——私見たいな無学文盲にはむづしい事は少しも解りませぬけれど、あの山木さんなど、何年にも教会へ御出席おいでなされたことのあるぢや無し、それに貴郎、酒はめしあがる
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
最早もう斯の病人はむづヶしいと言はれた頃から、まだ幾日となく同じやうな容体ようたいが続いた。柿田はうちのもの皆なから好かれて、田舎出らしい女中ばかりでなく、店のものからも慣々しく言葉を掛けられた。
死の床 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
あざむとりしといふ事家内の者のみゝいり見世にても取々とり/″\うはさありけるを吾助は聞て心に思ふやう此事もしも宅兵衞がきかば事むづかしかるべし夫のみならず見世の者にも顏を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「どうしたえ、まゝよ/\でもやんねえか勘次かんじさん。まゝにならぬとおはちげりや其處そこらあたりはまゝだらけだあ、過多げえむづかしいことふなえ」かね博勞ばくらうこめめしみながらいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)