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余韻
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よいん
ふりがな文庫
“
余韻
(
よいん
)” の例文
旧字:
餘韻
受けたものはコロコロと、太い管の中を転落して、タンクの中に入るから牛馬先生は、遥かに
余韻
(
よいん
)
嫋々
(
じょうじょう
)
たる
風韻
(
ふういん
)
を耳にするであろう。
発明小僧
(新字新仮名)
/
海野十三
、
佐野昌一
(著)
うど——ん、という声を続けるところで急に
咽喉
(
のど
)
が
塞
(
ふさが
)
ってしまったらしいから、せっかくの
余韻
(
よいん
)
が
圧殺
(
おしころ
)
されたような具合であります。
大菩薩峠:12 伯耆の安綱の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
茶の席入りにつかうあの
銅鑼
(
どら
)
、あれは非常に
余韻
(
よいん
)
を尊ぶ。客は、主の一打、一打に、身を澄まして、心でその音を聴くからである。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と
独
(
ひとり
)
ごちながら、いたずらの様に、白い
鍵盤
(
けんばん
)
をポンと叩いて見た。すると、ギーンという様な、少しも
余韻
(
よいん
)
のない、変てこな音が聞えた。
恐怖王
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
最後
(
さいご
)
に
吉彦
(
よしひこ
)
さんがじぶんで、
大
(
おお
)
きく
大
(
おお
)
きく
撞木
(
しゅもく
)
を
振
(
ふ
)
って、がオオんん、とついた。わんわんわん、と
長
(
なが
)
く
余韻
(
よいん
)
がつづいた。すると
吉彦
(
よしひこ
)
さんが
ごんごろ鐘
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
▼ もっと見る
物語から取った名前には何うしてもロマンチックな
余韻
(
よいん
)
がありますわ。殊に月小夜姫といえば何んな鈍感なものでも透き通るような美しい人を
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
そういう時の夜などに、ヘルンの書斎から法螺貝の音が聞えて来ると、それが広い家中に響き渡って、ボオボオと
余韻
(
よいん
)
の
浪
(
なみ
)
をうって伝って来る。
小泉八雲の家庭生活:室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
六々三十六
鱗
(
りん
)
を丁寧に描きたる
竜
(
りゅう
)
の、
滑稽
(
こっけい
)
に落つるが事実ならば、
赤裸々
(
せきらら
)
の肉を
浄洒々
(
じょうしゃしゃ
)
に眺めぬうちに神往の
余韻
(
よいん
)
はある。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
コンと云う金属性の美しい
余韻
(
よいん
)
を曳くようにするにはある
人為
(
じんい
)
的な手段をもって養成するそれは藪鶯の
雛
(
ひな
)
を
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
余韻
(
よいん
)
は長く、北洋の空に響いたが、それは、白人の密猟者に挑戦する、進軍ラッパのようだった。
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
いっそう凄惨な
余韻
(
よいん
)
を
罩
(
こ
)
めて、いかさま人の死にそうな晩だ、この濃い黒
闇々
(
あんあん
)
の底にどれだけ多くのたましいがさ迷っていることか——あらぬことまで思わせるのだった。
釘抜藤吉捕物覚書:08 無明の夜
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
次郎は、すぐ大河に代わって板木を打ちだしたが、その打ちかたは、一つ一つの音が
余韻
(
よいん
)
をひくいとまのないほど急調子で、いかにも
業
(
ごう
)
をにやしているような乱暴さだった。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
炎々
(
えんえん
)
と燃えあがった
塔上
(
とうじょう
)
の聖火に、おなじく塔上の聖火に立った七人の
喇叭手
(
らっぱしゅ
)
が、
厳
(
おごそ
)
かに
吹奏
(
すいそう
)
する
嚠喨
(
りゅうりょう
)
たる喇叭の音、その
余韻
(
よいん
)
も未だ消えない中、
荘重
(
そうちょう
)
に聖歌を合唱し始めた
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
そしてその
余韻
(
よいん
)
をきいてみた。するときゅうに大きく「ばかッ‼」と
怒鳴
(
どな
)
りたくなった。
雪の夜
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
その音は、明らかにただ最初の瞬間においてだけは言葉の明瞭さを保たせておくのだが、その
余韻
(
よいん
)
をすっかり破壊してしまって、正しく聞き取ったかどうかわからないようにするほどだった。
変身
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
一時
雅楽
(
ががく
)
は平安朝の宗教全盛期と共に大いに起ったけれども、僅かに三、四曲の大阪の天王寺辺にその
余韻
(
よいん
)
を止むるばかりで、その他は全く
亡
(
ほろ
)
び了り、淫猥なる三味線がもっぱら温柔郷裡に
跋扈
(
ばっこ
)
し
婦人問題解決の急務
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
お婆さんの言葉には、悲壮、というような
余韻
(
よいん
)
があった。
蜜柑
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
谷のような地形では、木の実の落ちる音さえ高く聞こえるのに、四方、山ばかりに囲まれた盆地の鐘、なんともいえない
余韻
(
よいん
)
です。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その声が、ガランとした部屋の中に、物凄くこだまして、
余韻
(
よいん
)
も消えやらぬ内に、妙子は已に、長い廊下を玄関へと走っていた。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
言葉が
余韻
(
よいん
)
を引いて、姿が隠れてしまいました。水門の蔭に没したようでもあり、水の底に沈んでしまったようでもあります。
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「僕も大いに同感だ。十日も旅行をして何一つ持物をなくなさないようじゃ
余
(
あんま
)
り実務的で人間としての
余韻
(
よいん
)
がない」
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
同じ谷渡りや高音にも
節廻
(
ふしまわ
)
しの
上手下手
(
じょうずへた
)
余韻
(
よいん
)
の長短等さまざまであるから良き鶯を
獲
(
と
)
ることは容易にあらず獲れば授業料の
儲
(
もう
)
けがあるので価の高いのは当然である。
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
そして
二人
(
ふたり
)
は
耳
(
みみ
)
をすましてきいていたが、
余韻
(
よいん
)
がわあんわあんと
波
(
なみ
)
のようにくりかえしながら
消
(
き
)
えていったばかりで、ぜんそく
持
(
も
)
ちの
痰
(
たん
)
のような
音
(
おと
)
はぜんぜんしなかった。
ごんごろ鐘
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
端粛とは人間の活力の動かんとして、未だ動かざる姿と思う。動けばどう変化するか、
風雲
(
ふううん
)
か
雷霆
(
らいてい
)
か、見わけのつかぬところに
余韻
(
よいん
)
が
縹緲
(
ひょうびょう
)
と存するから
含蓄
(
がんちく
)
の
趣
(
おもむき
)
を
百世
(
ひゃくせい
)
の
後
(
のち
)
に伝うるのであろう。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
四十六歳の忠相は、もう一度、あくびをした。あくびの
余韻
(
よいん
)
を口の中でころがしているうちに、それが、謡曲とも詩吟ともつかないうなり声になって、忠相は、いつまでもそれをつづけているのだ。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
頭のいただきから、
山嵐
(
さんらん
)
をゆする
三井寺
(
みいでら
)
の
大梵鐘
(
だいぼんしょう
)
が、ゴウーン……と
余韻
(
よいん
)
を長くひいて湖水のはてへうなりこんでいった。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
北川さんの笑い声の
余韻
(
よいん
)
のように、どこからか、ハハハハ……という声が、かすかに、聞こえてきたではありませんか。
おれは二十面相だ
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
浄瑠璃
(
じょうるり
)
でもない。相生町の屋敷でよく聞いた琵琶の歌に似て、悲壮にして、なお哀哀たる
余韻
(
よいん
)
の残るものがある。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
刻をしらせる拍子木の音が、遠く
余韻
(
よいん
)
をひいて城内に渡っていた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
すると、その時、まるで彼女の笑い声の
余韻
(
よいん
)
ででもあるように、ソーッとドアをあけてはいってきた白いものがあった。
黒蜥蜴
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
打出ヶ浜の波音にまじって、鐘の
余韻
(
よいん
)
が遠くうすれて行くと、弦之丞はフイと立って、向うの瓦小屋から歩みだした。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「いいんや——うたがぽつりと消えたのが心外じゃ、あれだけに意気込んで唄っていたのだから——向うへ下るにしても
余韻
(
よいん
)
というものが残らなければならない」
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
偽装
(
ぎそう
)
のためではない。なぜか自然に、そういう気持になった。口笛の
余韻
(
よいん
)
が、月にかすむように、空へ消えて行った。
月と手袋
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
一同、弾奏を終って、礼をすましたあとも、
余韻
(
よいん
)
はなお、盲人たちの明日への希望をどこかにただよい
繞
(
めぐ
)
らせていた。
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その
余韻
(
よいん
)
が次第次第に下へおりて来た時分に、前の潜り戸のところへ姿を現わした盲法師の手には、前と同じような
青銅
(
からかね
)
の釣燈籠が大事に抱えられていましたけれど、持って来た時とは違って
大菩薩峠:18 安房の国の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
壮
(
そう
)
な
音色
(
ねいろ
)
、
悲愁
(
ひしゅう
)
な叫び、または
嘈々
(
そうそう
)
としてさわやかに転変する笙の
余韻
(
よいん
)
が、
志賀
(
しが
)
のさざ波へ
微
(
び
)
に
妙
(
たえ
)
によれていった——
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鏡の像に声はなくとも、彼女は恐しい悲鳴を発したことでありましょう。私は
甲斐
(
かい
)
なくも、堅い鏡の表から、その悲鳴の
余韻
(
よいん
)
をでも聞き出そうとする様に、じっとそこを見つめていました。
湖畔亭事件
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
むしろ一時代前の東山趣味ともいえる、
燻
(
くす
)
んだ墨と、粗描の線と、多くの余白との中に甚だしく
余韻
(
よいん
)
を尊んでいた。
随筆 宮本武蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして、その微妙な
余韻
(
よいん
)
が、風の様に部屋部屋を吹き過ぎたかと思うと、その途端、軽やかな、半ば押殺した様な一つの笑い声が、消えて行く時鐘の音を追い駈けるものの如く、陰欝に聞えて来た。
黄金仮面
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
血戦の
巷
(
ちまた
)
に聞く貝はいんいんと
悽愴
(
せいそう
)
な
余韻
(
よいん
)
をひいて何ともいえぬ凄味のあるものだが、かかる朝の貝の音はいかにもおおどかな悠々と
寛
(
くつろ
)
いだ気もちのするものであった。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
井原氏は、話の
余韻
(
よいん
)
でも
味
(
あじわ
)
う様に
暫
(
しばら
)
く黙っていた。
二癈人
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
一切衆生ハ無生ノ中ニ
於
(
オイ
)
テ、
妄
(
ミダ
)
リニ生滅ヲ見テ
惑
(
ワク
)
ス——語の
余韻
(
よいん
)
がお胸の底に重たく沈む。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鬼
(
き
)
一
管
(
かん
)
とか
天彦
(
あまひこ
)
とかいう
名笛
(
めいてき
)
の
音
(
ね
)
のようだ。なんともいえない
諧調
(
かいちょう
)
と
余韻
(
よいん
)
がある。ことに、笛の音は、
霧
(
きり
)
のない
月明
(
げつめい
)
の夜ほど
音
(
ね
)
がとおるものだ。ちょうど今夜もそんな
晩
(
ばん
)
——。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
らんと、眼をあげて、
余韻
(
よいん
)
を聞いている大和守のひとみに、篝の火が、煮えていた。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
人情の
余韻
(
よいん
)
を残すというものだ。すでに赤壁においてすらあの
大捷
(
たいしょう
)
を博した我軍のまえに、南郡の城のごときは
鎧袖
(
がいしゅう
)
一
触
(
しょく
)
、あんなものを取るのは手を
反
(
かえ
)
すよりやさしいことじゃないか
三国志:08 望蜀の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
余韻
(
よいん
)
津々
(
しんしん
)
たるものがある。
随筆 宮本武蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“余韻”の意味
《名詞》
主な音の後に残る響き。余音。
余情。言外の趣き。
(出典:Wiktionary)
余
常用漢字
小5
部首:⼈
7画
韻
常用漢字
中学
部首:⾳
19画
“余韻”で始まる語句
余韻嫋々