何方いづく)” の例文
流轉るてんうまはせては、ひめばれしこともけれど、面影おもかげみゆる長襦袢ながじゆばんぬひもよう、はゝ形見かたみ地赤ぢあかいろの、褪色あせのこるもあはれいたまし、ところ何方いづく
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
七兵衛も此法師とおなじとしごろにて、しかも念仏の信者しんじやなれば打うなづき、御坊ごばうのたのみとあればいかで固辞いなみ申さん、火ともすころにべし、何方いづくにもあれかくれゐて見とゞけ申さん。
明日は何方いづくの何処ぢややら
枯草 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
人聞かばたまぬべきすごく無慘の詞を殘して我れは流石に終焉みだれず、合唱すべき佛もなしとや嘲けるが如き笑みを唇に止めて、行衞は何方いづくぞ地獄天堂、三寸息たえて萬事休みぬ
暗夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いかにするかと引れゆきしにはじめ濘落すべりおちたるほとりにいたり、熊さきにすゝみて自在じざいに雪を掻掘かきほり一道ひとすぢみちをひらく、何方いづくまでもとしたがひゆけば又みちをひらき/\て人の足跡あしあとある所にいたり
あとになしていだくるま掛聲かけごゑはし退一人ひとりをとこあれは何方いづく藥取くすりとりあはれの姿すがたやと見返みかへれば彼方かなたよりも見返みかへかほオヽよしさまことばいままろでぬくるま轣轆れきろくとしてわだちのあととほしるされぬ。
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
貴重きちよう尊用そんようはさら也、極品ごくひん誂物あつらへものは其しなよくじゆくしたる上手をえらび、何方いづく誰々たれ/\ゆびにをらるゝゆゑ、そのかずに入らばやとて各々おの/\わざはげむ事也。かゝる辛苦しんくわづかあたひため他人たにんにする辛苦しんく也。
まろ白玉しらたまつゆうるはしゝ、おもへばれもゆるなるを、一ツなきものにせば、何方いづくなんさわりかるべき、いとはしきはいまはじめたることならず、てんはかねてよりのねがひなり
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そのまゝ座敷牢ざしきらうえん障子しやうじ開閉あけたてにも乳母うば見張みはりのはなれずしてや勘藏かんざう注意ちゆうい周到しうたうつばさあらばらぬこととりならぬ何方いづくぬけでんすきもなしあはれ刄物はものひとれたやところかはれどおなみちおくれはせじのむすめ目色めいろてとる運平うんぺい氣遣きづかはしさ錦野にしきのとの縁談えんだんいまいまはこびしなかこのことられなばみな畫餠ぐわべいなるべしつゝまるゝだけは
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)