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いささ
ふりがな文庫
“
些
(
いささ
)” の例文
そのご奉公に
瑾
(
きず
)
のないようにするためには、
些
(
いささ
)
かでも家政に緩みがあってはなりません、あるじのご奉公が身命を
賭
(
と
)
しているように
日本婦道記:梅咲きぬ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
取るに足らぬ女性の
嫉妬
(
しっと
)
から、
些
(
いささ
)
かの
掠
(
かす
)
り傷を受けても、彼は
怨
(
うら
)
みの
刃
(
やいば
)
を受けたように得意になり、たかだか二万
法
(
フラン
)
の借金にも、彼は
虚構の春
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
新しく気の付いたことは、剣の角度が胸と正確に直角なことと、刃が水平に
些
(
いささ
)
かの狂いもなく肋骨の間に突っ立っていることなどです。
銭形平次捕物控:067 欄干の死骸
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
まず表になる方を比較的ゆっくり丁寧に焼き、裏は
些
(
いささ
)
か強く焼き上げる。焼くときは
団扇
(
うちわ
)
を用いて脂をよけることが肝心である。
若鮎の塩焼き
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
では森下雨村氏と
雖
(
いえど
)
も気遅ればかりを標榜し(或いは
然
(
そ
)
うでは無いかもしれぬが)創作をしないという事は、
些
(
いささ
)
か当を得ないようである。
探偵小説を作って貰い度い人々
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
▼ もっと見る
あのゲーム取りと南洋の男に、
些
(
いささ
)
かも関係はなかったと誰が云い得る? そして犯行は、決して物盗りが原因とは云えないのではないか。
撞球室の七人
(新字新仮名)
/
橋本五郎
(著)
この訴えから
些
(
いささ
)
かでもよいものを聴き分けるよい耳の持主があったならば、そしてその人が彼の為めによき環境を準備してくれたならば
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
余輩は区々たる一二
鼠輩
(
そはい
)
を相手に論議する事を好まずと雖も、陋劣なる平凡主義者の実例として更に
些
(
いささ
)
か記する処なき能はず。
警戒すべき日本
(新字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
一日も早く父に代り度いが為の策謀と明らかに知れ、趙簡子も
流石
(
さすが
)
に
些
(
いささ
)
か不快だったが、一方衛侯の忘恩も又必ず懲さねばならぬと考えた。
盈虚
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
その苦しみが如何ほど深くとも、それはしかくあるべき事で、それは
些
(
いささ
)
かも
矜
(
ほこ
)
りとす可きでは無い。それはよく知つてゐる。
雀の卵
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
私は俳句は季題諷詠、即ち花鳥諷詠の詩であるということを当然過ぎるほど当然な言葉であるとして
些
(
いささ
)
かも疑う所がない。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
況んや蘇峰先生の名は反動思想の
些
(
いささ
)
か頭を
擡
(
もた
)
げんとしつゝある今日に於て又少からず社会の注目を惹くべきに於てをや。
蘇峰先生の「大正の青年と帝国の前途」を読む
(新字旧仮名)
/
吉野作造
(著)
困ったことになったと
些
(
いささ
)
か
悄気
(
しょげ
)
ていると、これは幸いにして帝国ホテルへ着いて当座の荷を解くと、その鞄の一つから現れたのでまずほっとした。
踊る地平線:12 海のモザイク
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
これに反して停車場内の待合所は、最も自由で最も居心地よく、
些
(
いささ
)
かの気兼ねもいらない無類上等の
Café
(
カフェー
)
である。
銀座界隈
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
とばかりも言っておられまいから、
些
(
いささ
)
か泣言を並べることにする。飜訳をしながら
先
(
ま
)
ず何よりも苦々しく思うのは、現代日本語のぶざまさ加減である。
翻訳遅疑の説
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
礼助は否、と云ひ切れはしなかつた。彼は固いままの顔を
些
(
いささ
)
か赤くして、
咄嗟
(
とつさ
)
に何とか云はなければならなかつた。
曠日
(新字旧仮名)
/
佐佐木茂索
(著)
然るに此神輿は、旧き獅子頭のみにて
些
(
いささ
)
かの彩りなく、古風に不器用なるものなり。家の如き形したる物に入れて、
禰宜
(
ねぎ
)
一人して頭に頂きて行くなり。
獅子舞雑考
(新字新仮名)
/
中山太郎
(著)
そういう折にまた娘婿のこの哀れなさまを見せ、その無残な死にざまを話さねばならぬと思うと、先生も
些
(
いささ
)
か辛すぎて身を切られるような心持がする。
平賀源内捕物帳:長崎ものがたり
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
ところが、
仮令
(
たとえ
)
これだけの
疑題
(
クエスチョネーア
)
を提供されても、その結論に至って、僕等は
些
(
いささ
)
かもまごつくところはないのだよ。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
ほんとうに筋道立てた議論を吐く押しの
利
(
き
)
く人物というものがあまり居りませんし、あなたの属している中立や政友会などの党派には
些
(
いささ
)
かも驚きませんが
糞尿譚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
このように
些
(
いささ
)
か感傷の
痕
(
あと
)
をとどめた文体は気になる点が多いのだけれども、
敢
(
あえ
)
て気のついた誤植をただすほか、一切文章に手を加えないでもとのままに止めた。
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
何しろ横浜のメリケン
波戸場
(
はとば
)
の事だから、
些
(
いささ
)
か
恰好
(
かっこう
)
の
異
(
ちが
)
った人間たちが、
沢山
(
たくさん
)
、気取ってブラついていた。
淫売婦
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
で武蔵の著した兵法三十五ヵ条を見ても、二刀の利とか用いようなどということは
些
(
いささ
)
かも書いていない。
随筆 宮本武蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
これに対して東洋諸国はどうであるか、その弱点多き中にもこの重要なる婦人問題の解決されぬ事は、少なくとも東洋の道徳に
些
(
いささ
)
かの進歩なきを証するものである。
婦人問題解決の急務
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
即ち作者は圓朝若き日のそが悶々の姿をば、
些
(
いささ
)
か写し出さむと試みたりけり。拙筆、果たしてよくその大任を為し
了
(
おわ
)
せたるや否や。
看官
(
みるひと
)
、深く咎め給わざらむことを。
小説 円朝
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
案に相違して
碌
(
ろく
)
なものはやって来なかったので、私は
些
(
いささ
)
かならず自尊心を傷けられたものであった。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
だもんで下にいて、
些
(
いささ
)
か能率低下なの。家で夏をすごすのは四年目です。ではどうか御機嫌よく。
獄中への手紙:03 一九三六年(昭和十一年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
病巣に
石灰壁
(
せっかいへき
)
を作る方法と
些
(
いささ
)
か似ているが、白石博士の固化法では、病巣の第一層を、或る有機物から成る新発明の材料でもって、
強靱
(
きょうじん
)
でしかも
可撓
(
かとう
)
な
密着壁膜
(
みっちゃくへきまく
)
をつくり
振動魔
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
上等のバタを使うので、
出来上
(
できあが
)
りがねっとりしていて
些
(
いささ
)
か
無気味
(
ぶきみ
)
に感ぜられる。蛙は
寧
(
むし
)
ろラードのようなものでからりと
揚
(
あ
)
げた方があっさりしていてよくはないだろうか。
異国食餌抄
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
乃ちこゝろにこれをたづねつつ漫吟し得て
些
(
いささ
)
か意を遣りぬ。詞の稚拙は既に恥ぢざるなり。
我が一九二二年:02 我が一九二二年
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
土人かしらと、
些
(
いささ
)
か
唖然
(
あぜん
)
としていると「あなた達、英語出来ないんですねエ」と
軽蔑
(
けいべつ
)
したように、初めて日本語を使った——その小生意気な運転手君に連れられて一同と共に
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
ですから、虚偽の体形書でもなければ詐欺でもなく
些
(
いささ
)
かも犯罪は構成してはおりませぬ。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
「実に武略の人よ」と家康は、讃嘆したとあるが、これは
些
(
いささ
)
かテレ隠しであったろう。
真田幸村
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
きゃつ何を言うかと
些
(
いささ
)
か好奇心も手つだって、それとなく注意していた満座の中で、妙に油御用のことにこだわって長ながと
饒舌
(
しゃべ
)
り出したのだから、つまらないことであるだけに
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
『八犬伝』もまた末尾に近づくにしたがって
強弩
(
きょうど
)
の末
魯縞
(
ろこう
)
を
穿
(
うが
)
つあたわざる
憾
(
うら
)
みが
些
(
いささ
)
かないではないが、二十八年間の長きにわたって喜寿に近づき、殊に最後の数年間は眼疾を憂い
八犬伝談余
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
患者が身体の何処かに
些
(
いささ
)
かでも
疼痛
(
とうつう
)
を感じたような場合には、間髪を入れず外科医を招いて処置しなければ手後れになる危険がある、それは実に寸秒を争うのである、と云っていた。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
栄二
些
(
いささ
)
か不審尋問の形をそなえていますね。姉さんの話というのはそれですか。
女の一生
(新字新仮名)
/
森本薫
(著)
今夜どういうものか機嫌が悪くて、
些
(
いささ
)
か持てあましていたマタ・アリが、急に天候回復して少女のようにねだりだしたのだから、彼は、カイゼルが
降参
(
こうさん
)
したように嬉しかったのだろう。
戦雲を駆る女怪
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
実行をして
些
(
いささ
)
かの危なげのないことをお松が信じているから、それで、いつもよりは、一層の晴々しさをもって、与八に提言してみたのは、むろん与八も二つ返事と信じきっていたのに
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
しかも、落葉のずれはあたらしい
些
(
いささ
)
かの乱れを見せていたが、
紛
(
まご
)
う方もない女の足あとだった。経之は池をまわり、広庭につづく、ひとつは
塗籠
(
くら
)
へ、ひとつは定明の館に通ずる径を行った。
野に臥す者
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
有体
(
ありてい
)
にいえば、妾は幼時の男装を恥じて以来、天の女性に賜わりし特色をもて
些
(
いささ
)
かなりとも世に尽さん考えなりしに、
図
(
はか
)
らずも殺風景の事件に
与
(
くみ
)
したればこそ、かかる誤認をも招きたるならめ。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
彼は角井の悪意に満ちた言葉に
些
(
いささ
)
かも疑いを挟まなかった。いよいよ自分の直観の鋭さを示す時が来たと
躍起
(
やっき
)
になって、彼は今度は朝鮮民族を検分するかのような物腰で自分から先に口を切った。
天馬
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
奇異ともいおう、
一寸
(
ちょっと
)
微妙なまわり合わせがある。これは、ざっと十年も後の事で、糸七もいくらか稼げる、東京で
些
(
いささ
)
かながら業を得た家業だから雑誌お
誂
(
あつら
)
えの随筆のようで、一度話した覚えがある。
遺稿:02 遺稿
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
私の精神に
些
(
いささ
)
かの条件反射のあともない
智恵子抄
(新字旧仮名)
/
高村光太郎
(著)
邪魔だったから、そうしなければ都合が悪かったから、親子の情などは感じもせず、
些
(
いささ
)
かのみれんもなく遣ってしまったのである。
いさましい話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
私は今日初めて明るい
紫紺
(
しこん
)
に
金釦
(
きんぼたん
)
の
上衣
(
うわぎ
)
を引っかけて見た。
藍鼠
(
あいねずみ
)
の大柄のズボンの、このゴルフの服は
些
(
いささ
)
かはで過ぎて
市中
(
しちゅう
)
は歩かれなかった。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
現在我々の味わいつつある感動が直ぐに其の儘作品の上に現れることを期待するのも
些
(
いささ
)
か性急に過ぎるように思われる。
章魚木の下で
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
誰も見ていないと思って自分の寝室でいかなる行動に
出
(
いづ
)
るか——聖なる神秘はあなた方の行手に! これによってまず
些
(
いささ
)
かの御満足を与え得れば
踊る地平線:06 ノウトルダムの妖怪
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
泳ぎにかけては、丹波丹六のなんとか流には及びませんが、オールを取っては学生時代から
些
(
いささ
)
かの自信があります。
奇談クラブ〔戦後版〕:11 運命の釦
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
だが話が
些
(
いささ
)
か横道にそれた。チェーホフのユーモアは大切な問題で、節を改めて別に考察する必要があるだろう。
チェーホフ序説:――一つの反措定として――
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
些
漢検準1級
部首:⼆
7画
“些”を含む語句
些少
些々
些事
些細
些末
些子
些程
些中
些細事
露些
一些事
今些
些額
些許
些計
些箇
些末事
些末主義
些技
些小
...