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不恰好
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ぶかっこう
ふりがな文庫
“
不恰好
(
ぶかっこう
)” の例文
しかし、そこに伏せてあったのは胴がふくれていてかたちが悪く、外側が青いペンキで塗ってあり、見るからに鈍重で
不恰好
(
ぶかっこう
)
だった。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
突然
庫裏
(
くり
)
の方から、声を震わせて
梵妻
(
だいこく
)
が現われた。手に
鍬
(
くわ
)
の
柄
(
え
)
のような堅い棒を持ち、
肥
(
ふと
)
った体を
不恰好
(
ぶかっこう
)
に波うたせ、血相かえて来た。
果樹
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
しかしその上にはあいにく一枚の紙もなかったので、彼はそこに備え付けの大きな吸取紙の上に
不恰好
(
ぶかっこう
)
な字をいくつもにじませて行った。
ルウベンスの偽画
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
こんな事を思っている内に、故郷の町はずれの、
田圃
(
たんぼ
)
の中に、じめじめした処へ土を盛って、
不恰好
(
ぶかっこう
)
に造ったペンキ塗の会堂が目に浮ぶ。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
そして年か衰弱のせいのように
傴僂
(
せむし
)
になっていて、
頭巾
(
ずきん
)
附の大きな古びたぼろぼろの水夫マントを着ているので、実に
不恰好
(
ぶかっこう
)
な姿に見えた。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
▼ もっと見る
血ぶくれになった
蚯蚓
(
みみず
)
の胴のようなものが関節ごとに
不恰好
(
ぶかっこう
)
にくびれ、ふやけた肉のかたまりとなって
匐
(
は
)
いずりまわっている。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
腰附、肩附、
歩行
(
ある
)
く
振
(
ふり
)
、
捏
(
で
)
っちて
附着
(
くッつ
)
けたような
不恰好
(
ぶかっこう
)
な
天窓
(
あたま
)
の工合、どう見ても按摩だね、
盲人
(
めくら
)
らしい、めんない千鳥よ。
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
この土地には多い
孟宗竹
(
もうそうだけ
)
の根ッこで竹の
柄杓
(
ひしゃく
)
とか
箸
(
はし
)
とかを作るのだが、
不恰好
(
ぶかっこう
)
で重たくてもまだ百姓達の間には売れた。
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
これを見た大辻は、大あわてで、そのあとから
不恰好
(
ぶかっこう
)
な巨体をゆるがせて、正太についてくる。正太は一生けんめいだ。
人造人間エフ氏
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
S村でたった一度話しをしたことのある山北鶴子の
面影
(
おもかげ
)
を、その
不恰好
(
ぶかっこう
)
な洋髪や、厚化粧の白粉の下から、ハッキリ思い浮べることが出来たのです
鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
右近はこれによって九州という所がよい所であるように思われたが、また昔の
朋輩
(
ほうばい
)
が皆
不恰好
(
ぶかっこう
)
な女になっているのであったから不思議でならなかった。
源氏物語:22 玉鬘
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
見れば、
不恰好
(
ぶかっこう
)
な短い羽をひろげて、舞揚ろうとして、やがてぱったり落ちるように草の中へ引隠れるのでした。
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
立って激しく活動をする人形がへんに
不恰好
(
ぶかっこう
)
なのは、そうすると下半身が宙に浮くことを防ぎきれないで、いくらかダークの操りの弊に陥るからであろう。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
そこを出ると、和泉屋は
不恰好
(
ぶかっこう
)
な長い二重廻しの
袖
(
そで
)
をヒラヒラさせて、
一足
(
ひとあし
)
先にお作の仲間と一緒に帰った。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
ただ、その身体の形を
不恰好
(
ぶかっこう
)
にして見せるのは、最初から両手を後ろに廻しっきりにしているからです。
大菩薩峠:18 安房の国の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
私はメリーのためにも、少し大きめの小屋をこしらえた。やがては、仔どもも産れることだし。私は小屋の作製にまる二日を費した。随分
不恰好
(
ぶかっこう
)
な小屋が出来上った。
犬の生活
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
そう「庭整はず」というほどの
不恰好
(
ぶかっこう
)
さは示さないのであるけれども、まだろくろく庭師を入れたというでもなく、手当り次第に
雑木
(
ぞうき
)
を植えたというに過ぎない庭であるから
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
袖
(
そで
)
が長過ぎて、
襟
(
えり
)
がおっ
開
(
ぴら
)
いて、
背中
(
せなか
)
へ池が出来て、
腋
(
わき
)
の下が釣るし上がっている。いくら
不恰好
(
ぶかっこう
)
に作ろうと云ったって、こうまで念を入れて形を
崩
(
くず
)
す訳にはゆかないだろう。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
道化役の白い
衣裳
(
いしょう
)
が
不恰好
(
ぶかっこう
)
に
歪
(
ゆが
)
んで
吊
(
つる
)
されたやうにエクランの中心を横切つたりした。その白ぼけた光がある時はエクラン一ぱいに膨らみ、客席の人の顔を鈍く照し出すのだつた。
青いポアン
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
鬱蒼
(
こんもり
)
とした
楊
(
やなぎ
)
の緑がかれの上に
靡
(
なび
)
いた。
楊樹
(
やなぎ
)
にさし入った夕日の光が細かな葉を一葉一葉明らかに見せている。
不恰好
(
ぶかっこう
)
な低い屋根が地震でもあるかのように動揺しながら過ぎていく。
一兵卒
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
良吉はもはや出立したのかしらんと、急いで階下へ下りると、弟は竹の手のついた煙草盆を
膝
(
ひざ
)
に載せている父親の前に
不恰好
(
ぶかっこう
)
なお辞儀をして、これから出かけようとするところだった。
入江のほとり
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
函館の停車場に着くと彼はもうその建物の宏大もないのに
胆
(
きも
)
をつぶしてしまった。
不恰好
(
ぶかっこう
)
な二階建ての板家に過ぎないのだけれども、その一本の柱にも彼れは驚くべき費用を想像した。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
その
不恰好
(
ぶかっこう
)
なざまは、
忽
(
たちま
)
ち、皆に発見され、どッと笑いものにされて
了
(
しま
)
いました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
垢
(
あか
)
だらけの手で、そら豆のような莫迦に大きな、
不恰好
(
ぶかっこう
)
な丸薬を
揉
(
も
)
みだした。
勧善懲悪
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
それは単に博士ばかりではなく、傍にそれを見ている私でさえが、首を切断した胴体は、首のついていたときよりも更に大きく
不恰好
(
ぶかっこう
)
で無気味で、何んとなくこう変になって来るのであった。
三稜鏡:(笠松博士の奇怪な外科手術)
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
不恰好
(
ぶかっこう
)
の下駄をはいて、
法達
(
ほうたつ
)
の姿がそこの縁先から消えると、日本左衛門はただひとりで、
寂
(
せき
)
とした方丈のなかに坐ったまま、何か考えこむように、左の
掌
(
て
)
へかろいこぶしをくり返している。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そう叫んで、私は百姓の向う
臑
(
ずね
)
を泥靴で力いっぱいに
蹴
(
け
)
あげた。蹴たおして、それから澄んだ三白眼をくり抜く。泥靴はむなしく空を蹴ったのである。私は自身の
不恰好
(
ぶかっこう
)
に気づいた。悲しく思った。
逆行
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
たとえば、庭の
隅
(
すみ
)
から、ちょろちょろと走り出て人も
居
(
い
)
ないのに
妙
(
みょう
)
に、ひがんで、はにかんで、あわてて引き返す、トカゲとか、重い
不恰好
(
ぶかっこう
)
な胴体を
据
(
す
)
えて、まじまじとして居る、ひきがえるとか。
岡本一平論:――親の前で祈祷
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
不恰好
(
ぶかっこう
)
な挨拶を云い出したかも知れなかったのである。
田舎医師の子
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
木の根のように
不恰好
(
ぶかっこう
)
に大きいザラザラした手だった。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
それでも、例の
不恰好
(
ぶかっこう
)
な腹は、相変わらず動いている。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
彼はそこにあった、鉛の
屑
(
くず
)
を叩き固めた様な重い
不恰好
(
ぶかっこう
)
な
文鎮
(
ぶんちん
)
で、机の上を
滅多無性
(
めったむしょう
)
に叩きつけながら、やけくその様にそんなことを
怒鳴
(
どな
)
ったりした。
夢遊病者の死
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
籠
(
かご
)
を出た鳥のように、町を、山の方へ、ひょいひょいと
杖
(
つえ
)
で飛んで、いや
不恰好
(
ぶかっこう
)
な蛙です——両側は家続きで、ちょうど
大崩壊
(
おおくずれ
)
の、あの街道を見るように
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
滑
(
なめら
)
かな石の上に折重ねて小さな
槌
(
つち
)
でコンコン
叩
(
たた
)
いてくれたりした、その白い新鮮な感じのする足袋の
綴
(
と
)
じ紙を引き切って、甲高な、
不恰好
(
ぶかっこう
)
な足に
宛行
(
あてが
)
って見た。
足袋
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
彼は、前に言ったように舷牆に突き当って、そこで、気味の悪い
不恰好
(
ぶかっこう
)
な人形のようにころがっていた。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
老人はつと立って、例の
不恰好
(
ぶかっこう
)
な厚着をした身体をぶるんとふるわせると、物もいわずに逃げだした。
四次元漂流
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
梳
(
くしけず
)
らない毛髪や
不恰好
(
ぶかっこう
)
に結んだネクタイや悪い顔色などのなかに、踊り子の感化を見出している間
聖家族
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
中にはお銀が十六、七の時分、伯母と一緒に写した写真などがあった。顎が括れて一癖ありそうな顔も体も
不恰好
(
ぶかっこう
)
に肥っていた。笹村はそれを高く持ちあげて笑い出した。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
頸
(
くび
)
の細い貧弱な男だからといって、姉さんはあの
不恰好
(
ぶかっこう
)
な老人を
良人
(
おっと
)
に持って、今だって知らないなどと言って私を
軽蔑
(
けいべつ
)
しているのだ。けれどもおまえは私の子になっておれ。
源氏物語:02 帚木
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
その隣に
冠木門
(
かぶきもん
)
のあるのを見ると、色川国士別邸と
不恰好
(
ぶかっこう
)
な木札に書いて
釘附
(
くぎづけ
)
にしてある。妙な姓名なので、新聞を読むうちに記憶していた、どこかの議員だったなと思って通る。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
女のほうはその感じが特にひどい。
頭蓋
(
ずがい
)
のあらわな
不恰好
(
ぶかっこう
)
さ、躯を動かすたびに揺れる重たげな乳房、厚く肉付いて、圧倒するような量感のある広い腰、そうして
畸型
(
きけい
)
かと思われる曲った短い足。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
と言って、大熊の方は、まるで失神でもしたように、
不恰好
(
ぶかっこう
)
に倒れたまま動かなかった。ただ虎の方で勝手に飛びかかり、勝手に飛び退いているように見えた。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
それは山家の者が
手造
(
てづくり
)
にする
不恰好
(
ぶかっこう
)
な
平常穿
(
ふだんばき
)
を指したもので、
醜男子
(
ぶおとこ
)
という意味をあらわしたものです。
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
また、耳に環を
嵌
(
は
)
め、頬髯をくるくるとちぢらせ、タールまみれの弁髪を下げて、肩で風を切りながら、
不恰好
(
ぶかっこう
)
な水夫歩きをやっている、老練な水夫たちをたくさん見た。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
不恰好
(
ぶかっこう
)
な洋服を着たり、自転車に乗ったりして、一年中働いている自分が、
都
(
すべ
)
て見くびっているつもりの男のために、好い工合に駆使されているのだとさえしか思われなかった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「なるほど、そういえばちと
不恰好
(
ぶかっこう
)
だね。でもいいよ、ちゃんと役に立つんだから」
諜報中継局
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「これへ載せておあげなさいまし。手で
提
(
さ
)
げては
不恰好
(
ぶかっこう
)
な花ですもの」
源氏物語:04 夕顔
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
という字を
不恰好
(
ぶかっこう
)
に書いた。
聖家族
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
将軍ひげいかめしい闘牛士は、金モールの胸から血を流して
不恰好
(
ぶかっこう
)
にくずおれていた。彼は包囲の警官たちを
威嚇
(
いかく
)
していたピストルで、われとわが胸を
射貫
(
いぬ
)
いたのだ。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
腐りかけた草屋根の軒に近く、毎年虫に食われて弱って行く
林檎
(
りんご
)
の幹が高瀬の眼に映った。短い
不恰好
(
ぶかっこう
)
な枝は、その年も若葉を着けた。微かな甘い香がプンと彼の鼻へ来た。
岩石の間
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
不
常用漢字
小4
部首:⼀
4画
恰
漢検準1級
部首:⼼
9画
好
常用漢字
小4
部首:⼥
6画
“不恰”で始まる語句
不恰当