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七宝
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しっぽう
ふりがな文庫
“
七宝
(
しっぽう
)” の例文
旧字:
七寶
白いカフスが
七宝
(
しっぽう
)
の
夫婦釦
(
めおとボタン
)
と共にかしゃと鳴る。一寸に余る金が
空
(
くう
)
を
掠
(
かす
)
めて橋の
袂
(
たもと
)
に落ちた。落ちた煙は
逆様
(
さかさま
)
に地から
這
(
は
)
い
揚
(
あ
)
がる。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
青木外務大臣夫人の賞品
七宝
(
しっぽう
)
花瓶とは、馬見所の玄関に飾られ、誰人がこの名誉の賞品をうべきかは、当場所第一の
談柄
(
だんぺい
)
なりき。
忘れ残りの記:――四半自叙伝――
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それは細いヴェニス式の鎖をつけた、
七宝
(
しっぽう
)
入りの立派な金時計で、ほかの
衣裳
(
いしょう
)
持物と比べると、恐ろしく不調和なものだった。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
いつの間にか、
七宝
(
しっぽう
)
で飾った車に従者まで用意されている。尊慧が乗ると、途端に、車は西北の空に向ってかけのぼった。
現代語訳 平家物語:06 第六巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
金殿玉楼
(
きんでんぎょくろう
)
その影を
緑波
(
りょくは
)
に流す処
春風
(
しゅんぷう
)
に
柳絮
(
りゅうじょ
)
は雪と飛び
黄葉
(
こうよう
)
は
秋風
(
しゅうふう
)
に
菲々
(
ひひ
)
として舞うさまを
想見
(
おもいみ
)
れば
宛
(
さなが
)
ら青貝の
屏風
(
びょうぶ
)
七宝
(
しっぽう
)
の古陶器を見る如き色彩の眩惑を覚ゆる。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
▼ もっと見る
少し離してみると、薄赤色に見えるほど細く
井桁
(
いげた
)
を組んだり、
七宝
(
しっぽう
)
で埋めたりするのが特徴といえる。
九谷焼
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
ただ音楽のみがその印象を語り得るであろう。極楽国土にある八つの池の一々には、六十億の
七宝
(
しっぽう
)
の
蓮華
(
れんげ
)
があり、一々の蓮華は真円で四百八十里の大きさを持っている。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
それへプラチナ鎖に
七宝
(
しっぽう
)
が菊を刻んだメタルのかかった首飾りをして紫水晶の小粒の耳飾りを京子はして居た。その京子は内気で何か言おうとしても中々声が出ないのだ。
春:――二つの連作――
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
と
煽
(
おだ
)
ててやった。「都に行くとお前は宝石店の飾り窓に
七宝
(
しっぽう
)
の
翅
(
はね
)
をもった黄金の玉虫を見出すであろう。マーメイドの恋人の愛をつなぎたかったら宝石店の玉虫を送り給え。」
吊籠と月光と
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
彼女は夫の顔色には
頓着
(
とんじゃく
)
なく、
七宝
(
しっぽう
)
入りの
両蓋
(
りょうぶた
)
の時計をキラリと胸のところで開いた。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
すなはち京都
四条坊門
(
しじょうぼうもん
)
に四町四方の地を寄進なつて、南蛮寺の建立を差許さるる。
堂宇
(
どうう
)
は
七宝
(
しっぽう
)
の
瓔珞
(
ようらく
)
、
金襴
(
きんらん
)
の
幡
(
はた
)
、
錦
(
にしき
)
の
天蓋
(
てんがい
)
に荘厳をつくし、六十一種の名香は門外に
溢
(
あふ
)
れて
行人
(
こうじん
)
の鼻をば打つ。
ハビアン説法
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
リラと暗紅色の
七宝
(
しっぽう
)
模様が
切嵌
(
モザイク
)
を作っていて、それと、天井に近い円廊を
廻
(
めぐ
)
っている壁画との対照が、中間に無装飾の壁があるだけいっそう引き立って、まさに形容を絶した色彩を作っていた。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
堪
(
たま
)
らず袖を巻いて唇を
蔽
(
おお
)
ひながら、
勢
(
いきお
)
ひ釵とともに、やゝ
白
(
しろ
)
やかな手の伸びるのが、
雪白
(
せっぱく
)
なる
鵞鳥
(
がちょう
)
の
七宝
(
しっぽう
)
の
瓔珞
(
ようらく
)
を掛けた
風情
(
ふぜい
)
なのを、
無性髯
(
ぶしょうひげ
)
で、チユツパと
啜込
(
すすりこ
)
むやうに、坊主は
犬蹲
(
いぬつくばい
)
に成つて
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
それは
燗徳利
(
かんどくり
)
を大きくした様な形で、
花瓶
(
かびん
)
を描いたものではないかと思われた。彼はその中へ、非常に
曖昧
(
あいまい
)
な書体で、「
七宝
(
しっぽう
)
」と書いた。それを見ると、私は好奇心にかられて、思わず質問した。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
金や宝石で
象嵌
(
ぞうがん
)
をして彫刻を施した
七宝
(
しっぽう
)
の高脚の盃に、
常春藤
(
きづた
)
の絡んだ壺から雪で冷やした
蕃紅花
(
サフラン
)
の香り高い酒が並々と注がれて、今沐浴から上ってきたらしい幾人かの美しい侍女が足許に
跪
(
ひざまず
)
いて
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
その前へ
毛氈
(
もうせん
)
を二枚敷いて、床をかけるかわりにした。鮮やかな
緋
(
ひ
)
の色が、三味線の皮にも、ひく人の手にも、
七宝
(
しっぽう
)
に
花菱
(
はなびし
)
の紋が
抉
(
えぐ
)
ってある、
華奢
(
きゃしゃ
)
な桐の
見台
(
けんだい
)
にも、あたたかく反射しているのである。
老年
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
七宝
(
しっぽう
)
の
夫婦釦
(
めおとボタン
)
は
滑
(
なめらか
)
な
淡紅色
(
ときいろ
)
を緑の上に浮かして、
華奢
(
きゃしゃ
)
な金縁のなかに暖かく包まれている。
背広
(
せびろ
)
の地は
品
(
ひん
)
の好い
英吉利織
(
イギリスおり
)
である。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「——
輪王
(
りんのう
)
位高けれど、
七宝
(
しっぽう
)
永くとどまらず。世は末だ!
澆季澆季
(
ぎょうきぎょうき
)
」泣くように、月へさけんで、悠々と歩みをつづけて行く。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
七宝
(
しっぽう
)
の花瓶
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
冷たそうに
燦
(
ぎら
)
つく
肌合
(
はだあい
)
の
七宝
(
しっぽう
)
製の
花瓶
(
かびん
)
、その花瓶の
滑
(
なめ
)
らかな表面に流れる
華麗
(
はなやか
)
な模様の色、卓上に運ばれた銀きせの丸盆、同じ色の角砂糖入と牛乳入
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
王允
(
おういん
)
は、秘蔵の
黄金冠
(
おうごんかん
)
を、
七宝
(
しっぽう
)
をもって飾らせ、
音物
(
いんもつ
)
として、使者に持たせ、呂布の私邸へ贈り届けた。
三国志:03 群星の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その上に
紫
(
むらさき
)
のうずまくは
一朶
(
いちだ
)
の暗き髪を
束
(
つか
)
ねながらも
額際
(
ひたいぎわ
)
に浮かせたのである。金台に
深紅
(
しんく
)
の
七宝
(
しっぽう
)
を
鏤
(
ちりば
)
めたヌーボー式の
簪
(
かんざし
)
が紫の影から顔だけ出している。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それは、
七宝
(
しっぽう
)
の珠玉や金銀のかがやかしいものではなかった、
氷柱
(
つらら
)
の
簪
(
かんざし
)
と
棘
(
いばら
)
の
環
(
わ
)
にひとしいものである。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
城は
本丸
(
ほんまる
)
、二ノ丸、三ノ丸にわかれ、
中央
(
ちゅうおう
)
に八
層
(
そう
)
の
天主閣
(
てんしゅかく
)
が
聳
(
そび
)
えていた、二
重
(
じゅう
)
以下
(
いか
)
は
惣塗
(
そうぬ
)
りごめ、五
重
(
じゅう
)
には
廻廊
(
かいろう
)
をめぐらし、
勾欄
(
こうらん
)
には
鳳龍
(
ほうりゅう
)
の
彫琢
(
ちょうたく
)
、千
畳
(
じょう
)
じきには
七宝
(
しっぽう
)
の
柱
(
はしら
)
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いざと云えば、
突
(
つ
)
っかい
棒
(
ぼう
)
に、尻を挙げるための、
膝頭
(
ひざがしら
)
に
揃
(
そろ
)
えた両手は、雪のようなカフスに
甲
(
こう
)
まで
蔽
(
おお
)
われて、くすんだ
鼠縞
(
ねずみじま
)
の袖の下から、
七宝
(
しっぽう
)
の
夫婦釦
(
めおとボタン
)
が、きらりと顔を出している。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
木鹿大王は白象に
騎
(
の
)
ってきた。象の
頸
(
えり
)
には金鈴をかけ
七宝
(
しっぽう
)
の鞍をすえている。また身には
銀襴
(
ぎんらん
)
の
戦袈裟
(
いくさげさ
)
をかけ、金珠の
首環
(
くびわ
)
、黄金の
足環
(
あしわ
)
、腰には
瓔珞
(
ようらく
)
を垂れて、大剣
二振
(
ふたふ
)
りを
佩
(
は
)
いていた。
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして、この高野の大自然と
七宝
(
しっぽう
)
の
大伽藍
(
だいがらん
)
の中につつまれて生き直った時
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“七宝”の意味
《名詞》
仏教における七種類の宝物。
(出典:Wiktionary)
“七宝”の解説
七宝(しっぽう)とは、主に金属の素地にガラス質の釉を焼きつけて装飾する技法、および、その製品。古今東西世界各地で類例が見られる。日本における名称の由来は、仏教用語の「七宝(しちほう)」あるいは「七宝瑠璃」まで遡り、時代や地域によって「七宝流し」、「びいどろざ」、「七宝象嵌」など変遷してきた。
(出典:Wikipedia)
七
常用漢字
小1
部首:⼀
2画
宝
常用漢字
小6
部首:⼧
8画
“七宝”で始まる語句
七宝寺
七宝焼
七宝配
七宝焼擬
七宝珠玉
七宝瓔珞
七宝細工
七宝荘厳