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鷹揚
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おうよう
ふりがな文庫
“
鷹揚
(
おうよう
)” の例文
「アイ、目出度いのい」——それが元日村の衆への
挨拶
(
あいさつ
)
で、お倉は胸を突出しながら、その時の父や夫の
鷹揚
(
おうよう
)
な態度を
真似
(
まね
)
て見せた。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
あまりに
鷹揚
(
おうよう
)
で軽率で金銭のことなんか気にかけないジョルジュでさえ、母親が利用されてることに気づいた。そして不快を感じた。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
莞然
(
にっこり
)
ともせず帽子も被ッたままで唯
鷹揚
(
おうよう
)
に
点頭
(
てんとう
)
すると、昇は忽ち平身低頭、何事をか
喃々
(
くどくど
)
と言いながら続けさまに二ツ三ツ礼拝した。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
何と云っても、こんな社会に日の浅い新九郎は、どこか
鷹揚
(
おうよう
)
、菖蒲の寮という金の尻押しがあるに任せて、よい食い物にされていた。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
西村は
鷹揚
(
おうよう
)
にうなずいて、封筒の中味を読み始めた。北川はそのうしろから、さも主人の身の上を気づかう
恰好
(
かっこう
)
で、手紙を
覗
(
のぞ
)
いている。
五階の窓:01 合作の一(発端)
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
▼ もっと見る
鷹揚
(
おうよう
)
に腰を下した、出札の河合は上衣の
袖
(
そで
)
を通しながら入って来たが、横眼で
悪々
(
にくにく
)
しそうに大槻を
睨
(
にら
)
まえながら、奥へ行ってしまった。
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
媚
(
こ
)
びず怒らず
詐
(
いつわ
)
らず、しかも
鷹揚
(
おうよう
)
に食品定価の差等について説明する、一方ではあっさりとタオルの手落ちを謝しているようであった。
三斜晶系
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
祖父は以前は何もかも祖母任せの
鷹揚
(
おうよう
)
な人だったと思いますが、祖母を先だて総領息子を亡くして、その上あの伯母に家出をされ
漱石氏と私
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
室
(
へや
)
のすみに腰かけて、
手携
(
てさ
)
げとパラソルとを
膝
(
ひざ
)
に引きつけながら、たった一人その
部屋
(
へや
)
の中にいるもののように
鷹揚
(
おうよう
)
に構えていた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
この奇怪にしてしかも
鷹揚
(
おうよう
)
なお嬢様は、今後必要に応じて、いくらでも兵馬のために、支出することを辞せない様子を見せている。
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
高柳君は口数をきかぬ、
人交
(
ひとまじわ
)
りをせぬ、
厭世家
(
えんせいか
)
の皮肉屋と云われた男である。中野君は
鷹揚
(
おうよう
)
な、円満な、趣味に富んだ秀才である。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
擦れ違った幾人かの行員たちの丁寧な会釈に対して
表面
(
うわべ
)
だけはいつもと変らぬ
鷹揚
(
おうよう
)
な会釈を返したことを、覚えているばかりであった。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
鴨料理の店「ツール・ダルジャン」のように堂々とした造りで、正装のボーイが
鷹揚
(
おうよう
)
に構えているようなお店では、声も出ないのだろう。
すき焼きと鴨料理――洋食雑感――
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
すみきった濃い
藍
(
あい
)
のいろにひろがった海ははるかのかなたまで
鷹揚
(
おうよう
)
なうねりをたたえ、しずかに渚にうちよせ、うちかえします。
人魚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
そのまた祇園の
歌妓
(
かぎ
)
、
舞妓
(
まいこ
)
は、祇園という名の見識をもたせて、諸事
鷹揚
(
おうよう
)
に、歌舞の
技業
(
わざ
)
と女のたしなみとを、幼少から仕込むのだった。
モルガンお雪
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
が、
大店
(
おおだな
)
の主人らしい
鷹揚
(
おうよう
)
さは失わず、どんな事を言い出されても驚くまいとするように、膝に置いた手は、
犇
(
ひし
)
と
単衣
(
ひとえ
)
を
掴
(
つか
)
んでおります。
銭形平次捕物控:111 火遁の術
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
その出会いがしらに、思いもかけぬ経蔵の裏の闇から、
僧形
(
そうぎょう
)
の人の姿が現われて、妙に
鷹揚
(
おうよう
)
な
太刀
(
たち
)
づかいで先登の者を
斬
(
き
)
って
棄
(
す
)
てました。
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
娘は片親でも
鷹揚
(
おうよう
)
に美しく育って行った。いつの間に聞き込んだか、木下と
許婚
(
いいなずけ
)
の間柄だと知って、木下を疑わず頼りに思い込んでいる。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
■
豊前
(
ぶぜん
)
や
筑後
(
ちくご
)
は好く存じませんが、
筑前
(
ちくぜん
)
殊に福岡は
鷹揚
(
おうよう
)
な人が多い、
久留米
(
くるめ
)
などのこせ/\した気性に比ぶれば余程男らしい処があります。
福岡の女
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
表面だけ
鷹揚
(
おうよう
)
に構えてはいるが、どうして、どうして、清盛の鋭く光る目は、院の御所に向ってひときわ、きびしい光を見せるのであった。
現代語訳 平家物語:03 第三巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
こう
平太夫
(
へいだゆう
)
が口軽く、扇の音と一しょに申しますと、摩利信乃法師はまるでまた、どこの殿様かと疑われる、
鷹揚
(
おうよう
)
な
言
(
ことば
)
つきで
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
俺は
鷹揚
(
おうよう
)
に言った。見事なトントン(ごまかし)だと俺はいい気持だったが、いい気持の俺自身、内心いささか恥を感じないでもなかった。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
円解の句はこの二句ほど気が
利
(
き
)
いていないかも知れない。しかしこう三句並べて見ると、一番
鷹揚
(
おうよう
)
で上品な趣に富んでいる。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
「君は大将でしょうね。見せ物の大将に違いないでしょうね。」先生は、何事も意に介さぬという
鷹揚
(
おうよう
)
な態度で、その大将にお酌をなされた。
黄村先生言行録
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「退屈しきった貴婦人」の
体
(
てい
)
よろしく、ひとしきり
鷹揚
(
おうよう
)
に抗弁してみたが、ついにそこの建物の奥深い一室へつれ込まれる。
戦雲を駆る女怪
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
田舎
(
いなか
)
びた
鷹揚
(
おうよう
)
な、鈍重なその日その日だった。激しい江戸の生活で疲労していた若松屋惣七の神経は、恐ろしいスピイドで
恢復
(
かいふく
)
しつつあった。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
声は濁りなくさえていて、そうして不断に部下に対して、命令することに慣れている人の、
鷹揚
(
おうよう
)
さと威厳とを持っていた。
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
襟に西田屋と染めぬいた隣りの客引きを
鷹揚
(
おうよう
)
にさし招くと、これもまた一興というように打ち笑みながら呼びかけました。
旗本退屈男:07 第七話 仙台に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
一二度来たことのあるらしい京子は、夫婦と
鷹揚
(
おうよう
)
にあいさつすると、自分の家に入るよりも、もっと気軽に倭文子をうながしながら中へ入った。
第二の接吻
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
鼻尖
(
はなさき
)
から右の眼にかけ茶褐色の
斑
(
ぶち
)
がある外は真白で、四肢は将来の発育を思わせて伸び/\と、
気前
(
きまえ
)
鷹揚
(
おうよう
)
に、坊ちゃんと云った様な小犬である。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
密
(
そっ
)
と起して、先生がおっしゃった、愛吉さんもお泊り、という時、お夏はぱっちり目を開けたが、極めて
鷹揚
(
おうよう
)
に無雑作に
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
こう云って、私は子供の方を向いてなつかしそうに挨拶をしたが、信一は例の品のある顔をにこりともさせず、唯
鷹揚
(
おうよう
)
にうなずいたゞけであった。
少年
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
案外に正直らしい、
鷹揚
(
おうよう
)
な、しかもその底には怖ろしい野性がひそんでいるらしい彼の前に曳き出された時に、栄之丞は言い知れぬ怖れを感じた。
籠釣瓶
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
彼は、
肱
(
ひじ
)
を上げて防ぐ身構えをする。癖になっているからだ。しかし、彼女は、
鷹揚
(
おうよう
)
に、みなの前で、彼に接吻をする。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
校長は
鷹揚
(
おうよう
)
にめがねを
外
(
はず
)
しました。そしてその武田金一郎という狐の生徒をじっとしばらくの間見てから云いました。
茨海小学校
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
由良は、大ホステスの風格で、椅子に掛けたまま
鷹揚
(
おうよう
)
にあいさつをかえすと、子供の手首のようにくびれた二重のあごを、芳夫のほうへしゃくった。
あなたも私も
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
百済観音のほのぼのとした
鷹揚
(
おうよう
)
の調べとも、また中宮寺思惟像の幽遠の微笑とも異なり、むしろ野性をさえ思わしむる不思議な生気にみちた像である。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
若侍は
鷹揚
(
おうよう
)
に二ツ割の青竹の筒を出した。それを開くと中から錦の袋が出た。その袋の中からは普通の
脇差
(
わきざし
)
が
一口
(
ひとふり
)
。
備前天一坊
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
「別れてからもう
幾年
(
いくねん
)
になるかなあ、しかし君も落ち着いて結構だ。今に立派なお
知識
(
ちしき
)
さんになるだろうよ」と父は
鷹揚
(
おうよう
)
にかつからかい半分に言った。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
勇気に富みながら平生は
沈着
(
おちつ
)
いて
鷹揚
(
おうよう
)
である
咄
(
はなし
)
をして、一匹仔犬を世話をしようかというと、苦々しい顔をして
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
大山はそののんびりした性格どおり、太刀筋に極めて
鷹揚
(
おうよう
)
なところがあった。しかし決して下手ではなかった。
次郎物語:04 第四部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
そうして悠々然と
四方
(
あたり
)
に人もおらぬといった風に構えている処は
鷹揚
(
おうよう
)
といって好いか、寛大といって好いか
幕末維新懐古談:54 好き狆のモデルを得たはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
いやご免ご免、
堪忍
(
かに
)
しておくれ。お前の言うとおりだろうとも。……お前は気前のいい、
鷹揚
(
おうよう
)
な女だからな。
かもめ:――喜劇 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
僕婢
(
おとこおんな
)
は陰にわが世なれぬをあざけり、子供はおのずから寛大なる父にのみなずき、かつ
良人
(
おっと
)
の何事も
鷹揚
(
おうよう
)
に東洋風なるが、まず夫人不平の
種子
(
たね
)
なりけるなり。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
玉村という男は事務机に向かって何か忙しそうに書き物をしていたが、私が上がってゆくと、急に、私の方へ向き直って、さあどうぞと
鷹揚
(
おうよう
)
に椅子をすすめた。
私はかうして死んだ!
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
「そうさ」と猿沢は、初めて蟹江の存在に気付いたような顔をよそおって、しごく
鷹揚
(
おうよう
)
にうなずきました。
Sの背中
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
老人は喫茶店の
卓
(
テーブル
)
にでも
凭
(
よ
)
った調子で、ひどく
鷹揚
(
おうよう
)
な口のきき方をした。氏の胸には朝からの、いやふた月この方の苦しさを感じる健康が、次第に回復してきた。
地図にない街
(新字新仮名)
/
橋本五郎
(著)
前後を一渡り見まわしてから、如何にも貴族らしく、
鷹揚
(
おうよう
)
にうなずきながら二ツ三ツ
咳払
(
せきばら
)
いをしました。
死後の恋
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
メリーのために手足を働かすたびに、私は自分の心が活溌と
鷹揚
(
おうよう
)
の度合を増していくような気がした。
犬の生活
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
さももったいらしくほとんど眉ぎわよりはえだした濃い縮れ髪を撫でて、
鷹揚
(
おうよう
)
にあたりを
四顧
(
みまわ
)
して、さてまたソッと帽子をかぶッて、大切な頭をかくしてしまった。
あいびき
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
鷹
漢検準1級
部首:⿃
24画
揚
常用漢字
中学
部首:⼿
12画
“鷹揚”で始まる語句
鷹揚自若