馬鹿気ばかげ)” の例文
旧字:馬鹿氣
慚愧ざんきの冷汗やら、散々なことでありましたが、それにつけても思うには、男と生まれて、こんな馬鹿気ばかげ真似まねの出来るものではない。
かつ如此かくのごとき事をこゝろみし事なし、こゝろみてそのはなは馬鹿気ばかげきつたる事をみとめたれば全然ぜん/\之を放棄はうきせり、みちおこなことみちく事なり
問答二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
あんに人からだまされて、働かないでもすんだところを、無理に馬鹿気ばかげた働きをした事になっているから、奥さんの実着な勤勉は、精神的にも
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
チト宇宙の真理を見ればよいのサ。政事家は政事家で、自己の議論を実行して世界を画一のものにしようなんという馬鹿気ばかげているのが有るし。
ねじくり博士 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「私の知ってる限りでは、一人の狂人きちがいからです」スメエル教授は言った。「それは長い物語です。そしてある意味において馬鹿気ばかげた事なのです」
世間では男子が生れると大造目出度めでたがり、女の子でも無病なればず/\目出度めでたいなんて、おのずから軽重があるようだが、コンな馬鹿気ばかげた事はない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
第一食事のために働くという馬鹿気ばかげた仕事がなくなっていいのだ、恋愛などもすぐ心と心が通じるのだからジメジメとした悩みなどもないのでいい
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
これは馬鹿気ばかげた一笑話であるが、実をいえば十七字の短詩形である俳句だけでは満足が出来なかったのである。
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
冗談じょうだんじゃねえ。おいらァいくらんだって、こんなにおいをかぎたくッて、かようような馬鹿気ばかげたこたァ。……」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
知らないで、うんとさえ云えば、立派な旦那が附いて、三十円るというのに、まさか囲者かこいものには成らないと云うのだよ、何ういう訳だか、本当に馬鹿気ばかげているよ
「いや秋山さん、嘘をつくならもっと上手にやらんといかんよ、そんな馬鹿気ばかげた話を、おいそれと私が信用すると思うかね。来たまえ、身体検査をさせていただく‼」
謎の頸飾事件 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「誰もかも手を使って働かなきゃならないなんて、お前の国でももっとも馬鹿気ばかげ律法おきてだ。こんなことを考えるのも言わばお前が馬鹿だからだ。賢い人は何で働くか知っているか?」
イワンの馬鹿 (新字新仮名) / レオ・トルストイ(著)
こんな馬鹿気ばかげた事のまない内はとても我邦に衛生思想の発達する気支きづかいがない。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
しかし要らない事に自分の命を棄てる程馬鹿気ばかげた事はないじゃないか。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
しかしそれはほとんど問題とするに足りない些細ささいな事柄です。ことに関係のないあなたにいわせたら、さぞ馬鹿気ばかげた意地に見えるでしょう。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
もとより自分で殿様なんて馬鹿気ばかげたことを考えるけもなければ、家内の者もその通りで、平生へいぜいと少しもかわった事はない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
その多くの見世物の中で、特に私の興味をとらえたものはたこめがねという馬鹿気ばかげた奴だった。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
「どうもこうもありませんが、あんまりはなし馬鹿気ばかげてるんで、とうとう辛抱しんぼう出来できなくなりやしたのさ。——師匠ししょう、ひとつあっしに、ちっとばかりしゃべらしておくんなせえ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
おまえの髪としっかり結びあわ喼喼きゅうきゅう如律令にょりつりょうとなえて谷川に流しすてるがよいとの事、憎や老嫗としよりの癖に我をなぶらるゝとはしりながら、貴君あなた御足おんあし止度とめたさ故に良事よいことおしられしようおぼえ馬鹿気ばかげたるまじない
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
もっとも惚れると云うと、馬鹿気ばかげて見えるものでございますが
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
しかし自分の財産を棄てて吾家わがいえを出るなんて馬鹿気ばかげている。財産はまあいいとして、——欽吾に出られればあとが困るから藤尾に養子をする。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
約束したからと云て時勢によったものだ、この大変な騒動中に屋敷を買うと云うような馬鹿気ばかげたことがあるものか。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ふん、んて馬鹿気ばかげはなしなんだろう。こっちからおたのもうしててもらったわけじゃなし。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
これをき直して、小供は学校行きの弁当に入れてもらい、家では今日はお父さんのお手柄で久しぶりの洋食や、という事になるのかも知れない、などと私は馬鹿気ばかげた想像をめぐらした。
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
「甲野が神経衰弱だから、そんな馬鹿気ばかげた事を云うんですよ。間違ってる。よし出るたって——叔母さんが甲野を出して、養子をする気なんですか」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「面倒と云いや、面倒ですがね。そう面倒と云うよりむしろ馬鹿気ばかげています。まあいい加減に書いては来ますが」
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
禎二ていじさんが蒲団ふとんの横へ来て、どうですと尋ねたが、返事をするのが馬鹿気ばかげていて何とも云う了見りょうけんにならない。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
現に今筆をって人格と書き出したら、何となく馬鹿気ばかげていて、思わずき出しそうになったくらいである。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さんざっぱらひやかされて、さあ御帰り、用はないからと云う段になって、もう御免蒙ごめんこうぶりますと立ち上ったようなものだ。こっちは馬鹿気ばかげている。あっちは得意である。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
漢学の先生は蒟蒻版こんにゃくばんたたんだり、延ばしたりしてる。山嵐はまだおれの顔をにらめている。会議と云うものが、こんな馬鹿気ばかげたものなら、欠席して昼寝でもしている方がましだ。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「そりゃ馬鹿気ばかげている。一人で六十円使うのはもったいない。家を持っても楽に暮せる」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「そう他の云う事が通じなくっちゃ困るのね。現在自分がちゃんとそこに控えていながら、その自分が解らないで、他に説明してもらうなんてえのは馬鹿気ばかげているじゃありませんか」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
御俊おしゅん伝兵衛は大層面白かった。あれはほかのもののように馬鹿気ばかげた点がない。芸術と、人情と、頭脳が、平均を保っている。また渾然融合こんぜんゆうごうしている。幕の開いた時の感じもよかった。
「あの時は感心もしたが、こうなって見ると馬鹿気ばかげていらあ。君ありゃ真面目まじめかい」
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
三四郎にも馬鹿気ばかげてゐる所が頗る可笑おかしいんだが、はゝいひ条が、全く事実を離れた作りばなしでないのだから、其所そこに気が付いた時には、成程軽卒な事をしてわるかつたと少しく後悔した。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
一応はもっともだが、説明が少し科学的でないようである。第一それほどの所なら穀類野菜ともに、もっとよくできなければならないはずだと思ったが、馬鹿気ばかげているから議論もしなかった。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
迷亭も馬鹿気ばかげた調子で「僕は知らん、知っていりゃ君だ」とつまらんところで謙遜けんそんする。「いえ御両人共おふたりとも御存じの事ですよ」と鼻子だけ大得意である。「へえー」と御両人は一度に感じ入る。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
こんな馬鹿気ばかげたものはない。い時分に出稼でかせぎなどゝ云ふものはなかつた。みんな戦争の御かげだ。何しろ信心しんじんが大切だ。生きて働らいてゐるにちがひない。もう少し待つてゐれば屹度きっと帰つて来る。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
馬鹿気ばかげた感じだから滑稽こっけいのように思われるけれどもその時は正直にこんな馬鹿気た感じが起ったんだから仕方がない。この感じが滑稽に近ければ近いほど、自分は当時の自分を可愛想かわいそうに思うのである。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
是ばかりは馬鹿気ばかげてゐて、くちへ出す勇気がなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)