いかづち)” の例文
さてこのあたりは夜たりがたく晝たりがたき處なれば、我は遠く望み見るをえざりしかど、はげしきいかづちをもかすかならしむるばかりに 一〇—
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
この畜類ちくるゐ、まだ往生わうじやうしないか。』と、手頃てごろやりひねつてその心臟しんぞうつらぬくと、流石さすが猛獸まうじうたまらない、いかづちごとうなつて、背部うしろへドツとたをれた。
すずの(種々)御供養ごくやう送給畢おくりたびをはんぬ大風たいふうくさをなびかし、いかづちひとををどろかすやうに候。よのなかに、いかにいままで御信用候けるふしぎさよ。
さるほどに「れぷろぼす」は両軍の唯中に立ちはだかると、その大薙刀をさしかざいて、はるかに敵勢を招きながら、いかづちのやうな声でよばはつたは
きりしとほろ上人伝 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
いかづち、大風のやうに聞えければ、平家のつはものども、あはや源氏の大勢の向ひたるは——”と名手の声曲で聞かせられると、真に迫ること一倍である。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このうたは、持統天皇じとうてんのうのおともをして、いかづちをか——また、神岳かみをかともいふ——へ行幸ぎようこうなされたときに、人麿ひとまろたてまつつたものなのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
清きうしほにひたりつつ、かうべをあげてまさに日の出でむとする方に向へば、刃金はがねいかづちの連亙起伏する火山脈の極るところ
松浦あがた (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
はるか木隠こがくれの音のみ聞えし流の水上みなかみは浅くあらはれて、驚破すはや、ここに空山くうざんいかづち白光はつこうを放ちてくづれ落ちたるかとすさまじかり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
大小数百千こと/″\しかくをなしてけずりたてたるごとく(かならずかくをなす事下にべんず)なるもの幾千丈の山の上より一崩頽くづれおつる、そのひゞき百千のいかづちをなし大木ををり大石をたふす。
あわただしい気圧の変化や、小さな波を呑み尽してしまうような大波の出現、いかづちのような海底地震の轟き——などに気を打たれていたが、やがて、海の階調ハーモニーのすべてを知り尽くしてしまうと
人魚謎お岩殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
大君おほきみかみにしませば天雲あまぐもいかづちのうへにいほりせるかも 〔巻三・二三五〕 柿本人麿
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
立雲たちぐもいかづちこもる傍空かたへぞら風前かぜさきしるしここのまつかぜ
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
いかづちちて
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
イタリアの二の岸の間、汝の郷土ふるさとよりいと遠くはあらざる處にいかづちの音遙に下に聞ゆるばかり高く聳ゆる岩ありて 一〇六—一〇八
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
中にも娘はけたたましう泣き叫んで、一度ははぎもあらはに躍り立つたが、やがていかづちに打たれた人のやうに、そのまま大地にひれふしたと申す。
奉教人の死 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
法華經云、諸法實相しよほふじつさう天台云てんだいにいはく聲爲佛事等云々せいゐぶつじとううんぬん。日蓮又かくの如く推したてまつる。たとへばいかづちおとみゝしい(つんぼ)の爲に聞くことなく、日月の光り目くらのためにことなし。
おほきみはかみにしませば、あまぐもの いかづちうへにいほりせるかも
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
皇は神にしませば天雲のいかづちの上にいほりせるかも (柿本人麻呂)
愛国百人一首に関連して (旧字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
きらめくはいなづまか、とゞろくはいかづちか。 砲火ほうくわ閃々せん/\砲聲ほうせい殷々いん/\
立雲たちぐもいかづちこもる傍空かたへぞら風前かぜさきしるしここのまつかぜ
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
いかづちおとにひらきぬ。
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
くるまわが對面むかひにいたれるときいかづちきこえぬ、是に於てかかのたふとき民はまた進むをえざるごとく 一五一—一五三
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
やうやくに秋のふかまむやまかひ朝のいかづち鳴りとどろけり
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
その半身をもて坎をかこめる岸を卷けり(ジョーヴェはいまもいかづちによりて天より彼等をおびえしむ) —四五
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
はげしきいかづちはわがかうべのうちなる熟睡うまいを破れり、我は力によりておこされし人の如く我にかへり 一—三
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
およそ我に遇ふ者我を殺さむといひ、雲にはかに裂くればおとほそりてきゆるいかづちのごとく過ぐ 一三三—一三五
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
人の目いかなる海の深處ふかみに沈むとも、いかづちの鳴るいと高きところよりその遠くへだたること 七三—七五
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
されど我はそのいかづちに堪へずして、聲の何たるをせざりき 一四二—一四四
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)