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険呑
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けんのん
ふりがな文庫
“
険呑
(
けんのん
)” の例文
自分はさすがにそれほど大胆ではなかったので、どうも
険呑
(
けんのん
)
に思われて断行し得なかった。で、依然旧翻訳法でやっていたが、……
余が翻訳の標準
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
そこでコンナ処に居ては
険呑
(
けんのん
)
だと気が付いたから、出来るだけ深く水の底を潜って、慶北丸の左舷の
艙口
(
ハッチ
)
から機関室に潜り込んだ。
爆弾太平記
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「よろしい。わかいました。つまり浪が病気が
険呑
(
けんのん
)
じゃから、引き取ってくれと、おっしゃるのじゃな。よろしい。わかいました」
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
さア隠すなら
何所
(
どこ
)
へ隠す、着物の
衣嚢
(
かくし
)
とか其他先ず自分の身の
中
(
うち
)
には違い無いが其
鋭利
(
するど
)
いものを身の中へ隠すのは極めて
険呑
(
けんのん
)
だ
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
おもちゃに持たしておくと
険呑
(
けんのん
)
だから、実は、今夜にも宿で聞いて、私ン
許
(
とこ
)
まで取戻しに
行
(
ゆ
)
こうと思っていた処だったッて、そういいます。
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
知ってたって何も驚くにゃあたらないでしょう、何すこぶる
別嬪
(
べっぴん
)
だって?——倫敦にゃだいぶ別嬪がいますよ、少し気をつけないと
険呑
(
けんのん
)
ですぜ
倫敦塔
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この懸念される容体で寒い露国へ行くのは
険呑
(
けんのん
)
だから一応は健康診断を受けて見たらと口まで出掛ったが、幸いに何にも故障がなければだが
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
仕方がない、せめて髪の毛でも切って持っていってやりたいが、のそのそ出ていったら、まだちっと
険呑
(
けんのん
)
じゃ。ともかく
黒谷
(
くろだに
)
の巣へ引きあげよう
流行暗殺節
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
軍人のああした話に、
盲目的
(
もうもくてき
)
に引きずられるのも
険呑
(
けんのん
)
だが、感情的に
反発
(
はんぱつ
)
するのも険呑だ。時代はそんな反発でますます悪くなって行くだろう。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
「そう
無気
(
むき
)
になったッてしようがない、わ、ね。おッ母さんだッて、抜かりはないが、向うがまだ
険呑
(
けんのん
)
がっていりゃア、考えるのも当り前だア、ね」
耽溺
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
俊助
(
しゅんすけ
)
は
生酔
(
なまよい
)
の
大井
(
おおい
)
を連れてこの四つ辻を向うへ突切るには、そう云う周囲の
雑沓
(
ざっとう
)
と、
険呑
(
けんのん
)
な相手の足元とへ、同時に気を配らなければならなかった。
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
足場を組んで、少しでも屋根の出張りの外へ頭を出せば、忽ち上からピストルのお見舞だ。どんな仕事師だって、そんな
険呑
(
けんのん
)
な仕事を引受ける者はない。
黄金仮面
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
実際博士の疳癪玉は、眼医者にしては惜しい持物で、あれを競馬馬にでも持たせる事が出来たら、
騎手
(
のりて
)
は
険呑
(
けんのん
)
な代りに屹度素晴しい勝を得る事が出来る。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
空模様が
険呑
(
けんのん
)
であったのに、道具を肩にして出かけると、はたして
御成
(
おなり
)
街道から五軒町の裏を
妻恋坂
(
つまこいざか
)
にのぼりかけた時分に、夕立の空からポツリポツリ。
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
さて
其
(
それ
)
等の男に口を利かれて、
伊太利
(
イタリイ
)
の
険呑
(
けんのん
)
なのは
之
(
これ
)
だと思つたから、僕は答もせずにずんずんと附近の宏荘な商品陳列
所
(
じよ
)
※ツトリオ・エマヌエルの中へ
入
(
はひ
)
つた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
漁『上手な釣師も
険呑
(
けんのん
)
だね、僕等では、其様な談判を持ち込まるる心配も無いが。アハハ……。』
大利根の大物釣
(新字新仮名)
/
石井研堂
(著)
“そいつは
険呑
(
けんのん
)
な話だ。危なくメノコの下の口に丸呑みにされるところだったわい”
えぞおばけ列伝
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
いろいろ
穿鑿
(
せんさく
)
をしてみましたけれどもどうしてもネパールの首府からチベットの首府へ遠廻りをせずに行く間道はいずれも
険呑
(
けんのん
)
です。必ずひと所か二所は関所を通らなければならぬ。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
「いやその
安価
(
やすい
)
のが私ゃ気に
喰
(
く
)
わんのだが、先ず御互の議論が通ってあの予算で行くのだから、そう
安
(
やすっ
)
ぽい
直
(
す
)
ぐ
欄
(
てすり
)
の倒れるような
険呑
(
けんのん
)
なものは出来上らんと思うがね」と言って気を
更
(
か
)
え
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
「なにね、この家には女ばかりきりいないんです。大勢の若い娘さんたちですよ。私と顔を合わすのが
険呑
(
けんのん
)
だと見えましてね、鈴で知らしてやるんですよ。私が行くと、皆逃げていきます。」
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
しかも吾人の想像に絶する巨大なる力を有するものだとか“性情
頗
(
すこぶ
)
る
険呑
(
けんのん
)
なるもの”などと相当深い観察までが伝えられている。おまけに今後の調査団の強化までが決定されているじゃないか。
地球発狂事件
(新字新仮名)
/
海野十三
、
丘丘十郎
(著)
鎮守
(
ちんじゅ
)
八幡でも、乞食の火が
険呑
(
けんのん
)
と云うので、つい去年拝殿に厳重な戸締りを設けて了うた。安さんの為に
寝所
(
しんじょ
)
が一つ無くなったのである。それかあらぬか、近頃一向安さんの影を見かけなくなった。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
これは
険呑
(
けんのん
)
至極と思いましたが、前にも申す如く、奥の婦人たちに向って
強
(
た
)
って口を入れて我意を張り通すことも、とにかく、元、私が医師を世話した関係上、私としては言い兼ねもしたので、まず
幕末維新懐古談:28 東雲師逝去のこと
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
そが
険呑
(
けんのん
)
な尾で以て
荒
(
すが
)
れた岸を打つてゐた。
ランボオ詩集≪学校時代の詩≫
(新字旧仮名)
/
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー
(著)
険呑
(
けんのん
)
な仕事なら、自慢じゃないが、慣れっこになっている吾輩だ。尤も吾輩が乗ったからシャフトが折れたのかも知れないがね、ハッハッ。
焦点を合せる
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
余は
漸
(
ようや
)
く安心して進みながら「随分
険呑
(
けんのん
)
な犬ですね」と云う「なに
爾
(
そう
)
では
有
(
あり
)
ません心は
極
(
ごく
)
優いですが
番犬
(
ばんいぬ
)
の事ですから私し共夫婦の外は誰を ...
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
ひょっとこれがさかさまで、わたしが肺病で、浪の
実家
(
さと
)
から肺病は
険呑
(
けんのん
)
だからッて浪を取り戻したら、
母
(
おっか
)
さんいい
心地
(
こころもち
)
がしますか。
同
(
おんな
)
じ事です
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
僕の失恋も
苦
(
にが
)
い経験だが、あの時あの
薬缶
(
やかん
)
を知らずに貰ったが最後生涯の
目障
(
めざわ
)
りになるんだから、よく考えないと
険呑
(
けんのん
)
だよ。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
兎で辛抱出来るものなら、
女房
(
かない
)
は取らぬに越した事がない。
達
(
たつ
)
て取らなければならぬとすれば、履だけは穿かせないに限る。履は
険呑
(
けんのん
)
な上に
蹠
(
あしのうら
)
を台なしにする。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「そんな事をいわずに墓碑の篆額を書くツモリで書いてくれ」と重ねていうと、「墓碑なら書くよ、生きてる中は
険呑
(
けんのん
)
だから書かんが、死んだら君の墓石へ書いてやろう、」
鴎外博士の追憶
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
町の中には
険呑
(
けんのん
)
な空気が
立罩
(
たてこ
)
めて、ややもすれば
嫉刀
(
ねたば
)
が走るのに、こうして、朧月夜に、鴨川の水の音を聞いて、
勾配
(
こうばい
)
の
寛
(
ゆる
)
やかな三条の大橋を前に、花に匂う華頂山、霞に迷う
如意
(
にょい
)
ヶ岳
(
たけ
)
大菩薩峠:03 壬生と島原の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「どうも少し
険呑
(
けんのん
)
のような気がしまして」と僕が云うと、先生は落ちついて、「いえ格別の事もございますまい」と云う。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
険呑
(
けんのん
)
な世の中だ、七人の女に心臓を約束した男よ、汝は何よりも先きに鼠を
要心
(
えうじん
)
しなければならぬ。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
ああ、川島か、いつだッたか、そうそう、威海衛砲撃の時だッてあんな
険呑
(
けんのん
)
な事をやったよ。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
その
診方
(
みかた
)
の親切なこと、そうして暗い中で、どこがどう、ここがこうということを
掌
(
たなごころ
)
を指すように言ってみせるから、はじめは
険呑
(
けんのん
)
がっていた老人が、そぞろに信頼の念を高めてしまいました。
大菩薩峠:06 間の山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
こいつの云う事は一々
癪
(
しゃく
)
に
障
(
さわ
)
るから妙だ。「しかし君注意しないと、
険呑
(
けんのん
)
ですよ」と赤シャツが云うから「どうせ険呑です。こうなりゃ険呑は
覚悟
(
かくご
)
です」
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
敵味方とも
牛乳
(
ミルク
)
や新しい肉に
饑
(
かつ
)
ゑてゐるので、
何
(
ど
)
うとかして、自分達の塹壕に引張り込まうとするが、ひよつくり頭でも出すと、直ぐ
弾丸
(
たま
)
が鳴つて来るので、そんな
険呑
(
けんのん
)
な真似も出来なかつた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
しかし明治三十八年の
今日
(
こんにち
)
こんな馬鹿な真似をして女の子を売ってあるくものもなし、眼を放して
後
(
うし
)
ろへ
担
(
かつ
)
いだ方は
険呑
(
けんのん
)
だなどと云う事も聞かないようだ。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
思ひがけぬ心は心の底より出で来る、容赦なく
且
(
かつ
)
乱暴に出で来る、海嘯と震災は、
啻
(
たゞ
)
に三陸と濃尾に起るのみにあらず、亦自家三寸の
丹田
(
たんでん
)
中にあり、
険呑
(
けんのん
)
なる
哉
(
かな
)
人生
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
して見ると時には自転車に乗せて殺してしまうのがあるのかしらん英国は
険呑
(
けんのん
)
な所だと
自転車日記
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
険呑
(
けんのん
)
だと八合目あたりから下を見て
覘
(
ねらい
)
をつける。暗くて何もよく見えぬ。
琴のそら音
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「何だか抱くと
険呑
(
けんのん
)
だからさ。
頸
(
くび
)
でも折ると大変だからね」
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
険
常用漢字
小5
部首:⾩
11画
呑
漢検準1級
部首:⼝
7画
“険”で始まる語句
険
険悪
険阻
険難
険岨
険峻
険相
険隘
険崖
険所