すゞ)” の例文
眞正面に据ゑてある八足臺やつあしだいの上に注がれて、木の間を漏るゝ星明りに映し出されたすゞ神酒みき瓶手へいしが一つゐ、母を引き寄せるやうにして立つてゐた。
石川五右衛門の生立 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
ところがたゞのどうではやはらかすぎ、鑄造ちゆうぞうもむつかしいので、どうすゞをまぜて青銅せいどうといふ金屬きんぞくつくり、これを器物きぶつ材料ざいりようとしてゐた時代じだいがありました。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
組込くみこみの三きやくすゞくわんに、結晶けつしやうした酒精アルコールまつたのがつて、これ普通ふつう汽車中きしやちうかすうつわである。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「小判と見せかけたすゞの破片の財布。これは曲者のぢやねえ、此方の品だ。外に拔刄ぬきみが一本、あまり長くはない。脇差だが、相州物で、なか/\のワザ物らしいよ」
されど鑛山の出すものは黄金のみにあらず。白銀いだす脈もあり。すゞその外いやしき金屬を出す脈もあり。その卑きも世に益あるものにしあれば、只管ひたすらに言ひくたすべきにもあらず。
古渡こわたりすゞ真鍮象眼しんちゅうぞうがん茶托ちゃたくに、古染付ふるそめつけの結構な茶碗が五人前ありまして、朱泥しゅでい急須きゅうすに今茶を入れて呑もうと云うので、南部の万筋まんすじ小袖こそで白縮緬しろちりめん兵子帯へこおびを締め、本八反ほんはったん書生羽織しょせいばおり
あさには患者等くわんじやらは、中風患者ちゆうぶくわんじやと、油切あぶらぎつた農夫のうふとのほかみんな玄關げんくわんつて、一つ大盥おほだらひかほあらひ、病院服びやうゐんふくすそき、ニキタが本院ほんゐんからはこんでる、一ぱいさだめられたるちやすゞうつはすゝるのである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
いますぐつてげる」と云ひながら、折角けた洋盃コツプを其儘洋卓テーブルの上にいたなり、勝手の方へて行つた。ちやを通ると、門野かどのは無細工な手をしてすゞ茶壺ちやつぼから玉露をつましてゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「金魚の尾鰭に、すゞくわん。走れよ、走れと申されし」(類諺集)
希臘十字 (新字旧仮名) / 高祖保(著)
うら寒くすゞのやうなる雨降りぬイザルの川の秋の切崖きりぎし
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
實際じつさいのところ今日こんにちのこつてゐる種々しゆ/″\器物きぶつからかんがへますと、どうすゞとの合金ごうきんである青銅せいどうが、一番いちばんはやいしかはつてひろ使用しようされることになつたといふべきでありませう。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
愛想あいそかさず、こいつを病人びやうにんあつかひに、やしき引取ひきとつて、やはらかい布團ふとんかして、さむくはないの、とそでをたゝいて、清心丹せいしんたんすゞしろゆびでパチリ……にいたつては、ぶんぎたお厚情こゝろざし
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
またどうすゞをまぜるとるのに容易よういで、しかもかたくつて丈夫じようぶであるといふことも、最初さいしよ偶然ぐうぜんつたらしいのでありますが、幾度いくどかの經驗けいけんどう九分くぶすゞ一分いちぶをまぜあはすと
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)