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邪慳
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じゃけん
ふりがな文庫
“
邪慳
(
じゃけん
)” の例文
そしてその児が意地の悪いことをしたりする。そんなときふと
邪慳
(
じゃけん
)
な娼婦は心に浮かび、
喬
(
たかし
)
は
堪
(
たま
)
らない自己
嫌厭
(
けんお
)
に
堕
(
お
)
ちるのだった。
ある心の風景
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
「なに、
私
(
わたし
)
が、そんなことを
知
(
し
)
ったものかね、
私
(
わたし
)
は、
下
(
した
)
に
置
(
お
)
いたばかしなのだよ。」と、
女
(
おんな
)
は、
邪慳
(
じゃけん
)
にいって、
相手
(
あいて
)
にしませんでした。
初夏の不思議
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
孫四郎は
邪慳
(
じゃけん
)
にこういい捨てて敷けばかえって冷たそうな板のように重い座ぶとんをドサリとわきへほうりなげ、
長煙管
(
ながぎせる
)
の
雁首
(
がんくび
)
で
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
今この
婦人
(
おんな
)
に
邪慳
(
じゃけん
)
にされては木から落ちた猿同然じゃと、おっかなびっくりで、おずおず控えていたが、いや案ずるより
産
(
うむ
)
が安い。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
客室へ出る小さな扉が、
邪慳
(
じゃけん
)
に外から打ち開かれて、そこから、ここの飛行場旅客係の男の、呶鳴るような声が飛び込んで来た。
旅客機事件
(新字新仮名)
/
大庭武年
(著)
▼ もっと見る
あなた自身は本当に美しい心をもつてゐらつしやるのですけれどあなたの周囲は何時でもあんまりあなたに
邪慳
(
じゃけん
)
すぎたのですね。
九州より:――生田花世氏に
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
同時に自分は「そこに血がある、血がある」といって新聞紙で蔽った血痕を指して云った、自分の声が恐ろしく
邪慳
(
じゃけん
)
に自分の耳に響いた。
病中記
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
君はもともと、独りきりになったら生きて行けないほどの寂しがり屋のくせに、側に人が来ると、
邪慳
(
じゃけん
)
にあっちに行け、と言う。
二十歳のエチュード
(新字新仮名)
/
原口統三
(著)
上さんは、宿屋の主人がいつでもするように、
邪慳
(
じゃけん
)
な顔つきをすぐに和らげた。そして新来の客の方をむさぼるようにながめた。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
お玉が逃げ出したと見た捕方が追いかけようとする、
真先
(
まっさき
)
の男に飛びついたムクは、
咽喉笛
(
のどぶえ
)
をグサと
啣
(
くわ
)
えて、
邪慳
(
じゃけん
)
に横に振る。
大菩薩峠:06 間の山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
それを
邪慳
(
じゃけん
)
に突き放すすべもない彼は、いっそ此の家を逃げ出して、どこか静かなところに隠れて思うような絵をかいてみたいとも思ったが
半七捕物帳:33 旅絵師
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
何を思って吹いたのかと尋ねたら何でもいいと何時になく
邪慳
(
じゃけん
)
な返事をした。その日は
碌々
(
ろくろく
)
口もきかないで
塞
(
ふさ
)
ぎ込んでいた。
幻影の盾
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼
(
あれ
)
が私を
※
(
ほし
)
殺そうと思って
邪慳
(
じゃけん
)
な奴でございます、藤原も
彼
(
あ
)
んな奴ではございませんでしたが、此の頃は
馴合
(
なれあ
)
いまして私を責め
折檻
(
せっかん
)
致します
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
陸軍主計
(
りくぐんしゅけい
)
の軍服を着た牧野は、
邪慳
(
じゃけん
)
に犬を
足蹴
(
あしげ
)
にした。犬は彼が座敷へ通ると、白い背中の毛を
逆立
(
さかだ
)
てながら、
無性
(
むしょう
)
に
吠
(
ほ
)
え立て始めたのだった。
奇怪な再会
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「
邪慳
(
じゃけん
)
なことを言いなさんな。おれだって、兄貴あっての弟だ。だがネ、兄貴も悪い弟を持ったもんで、ときどき、風邪も引きたくなるだろうな」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「食べんの、
厭
(
いや
)
……」私はおばあさんが私の傍で小さなアルミニウムのお弁当箱をあけようとするのを
邪慳
(
じゃけん
)
に
遮
(
さえぎ
)
った。
幼年時代
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
扉を
邪慳
(
じゃけん
)
に締めるなら締めろ。そんなことは平気だ。窓ガラスを透して、
頬髯
(
ほほひげ
)
を
生
(
は
)
やした貴様の支配人
面
(
づら
)
が、唇をもぐもぐさせているのを
一瞥
(
いちべつ
)
する。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
と、信一が
邪慳
(
じゃけん
)
に襟頸を捕えて、仰向かせて見れば、いつの間にか仙吉は泣く真似をして汚れた顔を筒袖で半分程拭き取ってしまって居る
可笑
(
おか
)
しさに
少年
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
私はその寝癖のついた断髪の後姿からヘンなものを感じて、部屋に
這入
(
はい
)
ると
邪慳
(
じゃけん
)
に薬台の
抽斗
(
ひきだし
)
を開け、歯刷子とチューブを掴み出してすぐあとに続いた。
蝱の囁き:――肺病の唄――
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
そして何か手伝おうとして、笹村に一ト声
邪慳
(
じゃけん
)
に叱り飛ばされて、そのまま手を引っ込めてしまうのであった。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
と、死闘の場を
窺
(
うかが
)
いながら、半ば失心の体の男の袖を引くと、かの男は
邪慳
(
じゃけん
)
に袖を払って、スタスタと出る。
くろがね天狗
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
至誠はかならず天に通ずる、チビ公の真剣な労働は
邪慳
(
じゃけん
)
のお仙の
角
(
つの
)
をおってしまった、三人は心を一つにして、
覚平
(
かくへい
)
が作る豆腐におとらないものを作りあげた。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
厚ぼったい刺子は、しぼりにくそうなので、五郎が手伝おうとすると、女は
邪慳
(
じゃけん
)
にその手を払いのけた。
幻化
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
私は決して気難しい男ではないが、ただあまり
邪慳
(
じゃけん
)
な感じのする女には、ぶつかりたくないと思った。
朴歯の下駄
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
自分等の一族のみこの大天災を逃れようとするのはいささか他に対して
邪慳
(
じゃけん
)
な振舞いでは無かろうか。
暗黒星
(新字新仮名)
/
シモン・ニューコム
(著)
そんな
邪慳
(
じゃけん
)
な
詞
(
ことば
)
は省三はまだ一度も女から聞いたことはなかった。彼は女はどうかしていると思った。
水郷異聞
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
かつて、貴方があんまり私を
邪慳
(
じゃけん
)
にするので、私はこんな詩を雑誌にかいて貴方にむくいた事がある。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
「ナニ
些
(
ち
)
とばかりなら
人様
(
しとさま
)
に悪く言われても
宜
(
いい
)
からもう
些
(
すこ
)
し優しくしてくれると
宜
(
いいん
)
だけれども、
邪慳
(
じゃけん
)
で親を親臭いとも思ッていないから
悪
(
にく
)
くッて成りゃアしません」
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
とだけいったが、すぐ眼を転じて、わたしを頭の尖から爪尖まで
邪慳
(
じゃけん
)
な
一瞥
(
いちべつ
)
で見て取るや、「さよなら」といって、わたしたちの傍は憚るように駆け足ですり抜けた。
美少年
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
夫
(
それ
)
だのに藻西太郎と云う奴は本統に
酷
(
ひど
)
い奴ですよ、
何
(
ど
)
うでしょう其泣て居る我が女房を
邪慳
(
じゃけん
)
にも
突飛
(
つきとば
)
しました、本統に自分の
敵
(
かたき
)
とでも云う様に荒々しく突飛しました
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
よろける奴を
邪慳
(
じゃけん
)
にこづきまわした。このとき、
度胆
(
どぎも
)
をぬいてくれた松岡は
慥
(
たし
)
かに一歩機先を制していたのだ。もはや相手は彼の云うなりであった。
叱咤
(
しった
)
して歩かせた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
お杉は黙って、いかにも
邪慳
(
じゃけん
)
に、廊下を去り、二階へあがっていった。部屋はまっ暗になった。
花も刀も
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
然
(
しか
)
しその眼元はあの
無垢
(
むく
)
な光を失って一種鋭どい酷薄な光りを帯び
柔
(
やさ
)
しく
綻
(
ほころ
)
びかかった花の
莟
(
つぼみ
)
のようであった唇の辺りには、妙に残忍な
邪慳
(
じゃけん
)
な調子が表われているのです。
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
そして、
手肢
(
てあし
)
をバタバタさせている唖の怪物を、
邪慳
(
じゃけん
)
にも、かたわらの叢の中に
抛
(
ほう
)
り出した。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
どうぞそう
邪慳
(
じゃけん
)
にしないでください。それだけでもう、僕はほんとに仕合せなんです。……
ワーニャ伯父さん:――田園生活の情景 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
声は笛みたいだけれど、そんなに
邪慳
(
じゃけん
)
な性質とも見えぬ。むしろ子供らしい
無邪気
(
むじゃき
)
なわがまま者らしく思われる。蘭子は、この様子なら当分ご奉公がつづけられそうに思った。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「放っておいて!」と、新子は肉親らしい遠慮のない
邪慳
(
じゃけん
)
さで、姉の手から身を引いた。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
手を取り合った暁に邪魔になるのはこの忠的! そこで
邪慳
(
じゃけん
)
におっしゃいましょうねえ。
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そして、父が寝巻き姿のまま起き上って来て、母を
邪慳
(
じゃけん
)
に部屋の外へ突き出したことをも。でもたまには父は、夜更けた町を大きな声で歌をうたいながら帰って来ることもあった。
父
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
将来有為の男児をば
無残々々
(
むざむざ
)
浮世の風に
晒
(
さら
)
し、なお一片
可憐
(
かれん
)
なりとの
情
(
こころ
)
も浮ばず、ようよう尋ね寄りたる子を追い返すとは、何たる
邪慳
(
じゃけん
)
非道
(
ひどう
)
の鬼ぞやと、妾は同情の念
已
(
や
)
みがたく
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
馭者は黙って返事もせず、
轡
(
くつわ
)
をとると
邪慳
(
じゃけん
)
に馬の首を引っ張って位置をなおした。
黄昏
(新字新仮名)
/
水野葉舟
(著)
邪慳
(
じゃけん
)
にし、誰もいなくなると、ひしと抱きしめる、女は死んだように深く眠る、女は眠るために生きているのではないかしら、その他、女に就いてのさまざまの観察を、すでに自分は
人間失格
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
もしおれに
邪慳
(
じゃけん
)
な女房さえなかったならだ、そいからこの
可哀
(
かええ
)
そうな子供に邪慳なおっ母さえなかったならばだ、おれあ、先週なんざあ、悪いように祈られたり、
目論
(
もくろみ
)
の裏をかかれたり
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
背後を振向いた時には、大きなお尻を振り振り、表口を
邪慳
(
じゃけん
)
に開けて出て行く、豚芸者の後姿が見えた。……何という変な芸者だ。そんなに待たせもしないのに……と思っただけであった。
山羊髯編輯長
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「あなたはなんだって、今の場合に、わたしをそう
邪慳
(
じゃけん
)
になさいますの?」
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
三年越し
同棲
(
いっしょ
)
に成って来たと云うが、苦味走った男振りも、変な話だが、
邪慳
(
じゃけん
)
にされる所へ、細君の方が打ち込んで、随分乱暴で、
他所目
(
よそめ
)
にも非道いと思う事を為るが、
何様
(
どう
)
にか治まって来た。
越後獅子
(新字新仮名)
/
羽志主水
(著)
よし一度は思いあまって
邪慳
(
じゃけん
)
な心となった鬼親でござりましょうとも、やはり真底は子どもがかわいいに相違ござりませぬゆえ、もしや置き去りにしたわが子が捨てられたのではなかろうかと
右門捕物帖:25 卒塔婆を祭った米びつ
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
色んな押問答の挙句に、母は私を引きずり起して(私は畳の上をごろごろしてゐた)、縁側まで引立てて行き、そこから私を
邪慳
(
じゃけん
)
に突き落した。私は砂地にまばらに生えてゐる芝草の上に落ちた。
母たち
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
千代之助は娘の膝へ手を掛けて、少し
邪慳
(
じゃけん
)
に自分の方へ振り向け乍ら
百唇の譜
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「なぜこのごろはそう
邪慳
(
じゃけん
)
だろう?」ト頭をうなだれたままで言ッた。
あいびき
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
“邪慳”の意味
《名詞》
慈悲の心が無く、物事を荒く扱うこと。意地が悪いこと。
(出典:Wiktionary)
邪
常用漢字
中学
部首:⾢
8画
慳
漢検1級
部首:⼼
14画
“邪慳”で始まる語句
邪慳一国