近道ちかみち)” の例文
うさぎにたんぽぽをやっていると、用吉君ようきちくんが、いまおろすところだよ、といってたので、おくれちゃたいへんと、桑畑くわばたけなか近道ちかみちはしっていった。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
御坊様おばうさま血気けつきはやつて近道ちかみちをしてはなりましねえぞ、草臥くたびれて野宿のじゆくをしてからが此処こゝかつしやるよりはましでござるに。はい、けてかつしやれ。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そして、子供こどもらはそのなかあそび、通行つうこうするひとたちは、近道ちかみちするために、そのよこぎったのであります。
山へ帰りゆく父 (新字新仮名) / 小川未明(著)
山から山に渡るには頂上より頂上まで行くのが最も近道ちかみちであるが、実際山より山にうつるには、一度ふもと渓間たにまに降りてまたまたけわしき峰をよじ登らねばならぬ。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
その若日下王わかくさかのみこが、まだ河内かわち日下くさかというところにいらしったときに、ある日天皇は、大和やまとからお近道ちかみちをおとりになり、日下くさか直越ただごえというとうげをおえになって
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
なにもかにもあったもんじゃねえ。かにならよこにはうのが近道ちかみちだろうに、人間にんげんはそうはいかねえ。ひろいようでも世間せけんせめえものだ。どうかすぐいてあるいておくんなせえ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
いつもなら諭吉ゆきちは、便所べんじょへいくのに、その部屋へやをとおらないのですが、いまはいそいでいるものですから、近道ちかみちをして、つい、ほごをふんでしまったのです。すると
長吉ちやうきち何処いづこも同じやうな貧しい本所ほんじよまちからまちをばてく/\歩いた。近道ちかみちを取つて一直線に今戸いまどうちへ帰らうと思ふのでもない。何処どこへか𢌞まはり道して遊んで帰らうと考へるのでもない。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
取出し漸々やう/\蝋燭らふそくともしければさあ/\音吉注意きをつけて又風に火を取れぬやう急げ/\と急立せきたつれば音吉は見返りつゝ旦那樣近道ちかみちに致しませうかと問に平兵衞如何樣小篠堤をざさつゝみ近道ちかみちを行ふと音吉を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
信如しんによ何時いつ田町たまちかよときとほらでもことめどもはゞ近道ちかみち土手々前どてゝまへに、假初かりそめ格子門かうしもん、のぞけば鞍馬くらま石燈籠いしどうろはぎ袖垣そでがきしをらしうえて、縁先ゑんさききたるすだれのさまもなつかしう
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
おとうとは、そうおもうと、ゆきうえをひたはしりにはしりはじめたのです。かわもどこも平坦へいたんしろたたみめたようでありましたから、どんな近道ちかみちもできるのでありました。
白すみれとしいの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あなのやうな眞暗まつくら場末ばすゑ裏町うらまちけて、大川おほかはけた、近道ちかみちの、ぐら/\とれる一錢橋いちもんばしふのをわたつて、土塀どべいばかりでうちまばらな、はたけいけ所々ところ/″\侍町さむらひまち幾曲いくまがり、で
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そして、この荒野あれのしてやまをあちらにまわれば、となりくに近道ちかみちがあったのです。もうこちらのくにおもわしくないとみえて、そのひとたちは、となりくにへゆこうとしたのでしょう。
春になる前夜 (新字新仮名) / 小川未明(著)