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蒐
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あつ
ふりがな文庫
“
蒐
(
あつ
)” の例文
「だからさ、今年もすでに、心がけて、すでに十万貫に価する珍器
重宝
(
ちょうほう
)
は、この
北京
(
ほっけい
)
の古都を探って、ひそかに庫に
蒐
(
あつ
)
めてあるわさ」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ラシイヌは静かに歩きながらも、左右に鋭く眼を配って、全身の注意を耳に
蒐
(
あつ
)
め、ある唄声を聞こうとした。しかし唄声は聞こえない。
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それらは貧しい中から苦心して
蒐
(
あつ
)
めたもので、兄から貰った小使で買った
其角
(
きかく
)
の五元集、支考の俳諧十論などの古い和本も入れてある。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
彼は一刻も早く
此
(
この
)
席を脱したかった。彼は
其処
(
そこ
)
に
蒐
(
あつ
)
まっている男性に対しても、激しい
憎悪
(
ぞうお
)
と反感とを感ぜずにはいられなかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
左の二の腕に桃の実の小さい刺青をしていた。骨董道楽で、家には祖父の
蒐
(
あつ
)
めたものがかなりあったが、震災のときに焼失した。
生い立ちの記
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
▼ もっと見る
万葉巻十六は、叙事詩のくづれと見えるものを多く
蒐
(
あつ
)
めて居る。其中、殊に異風なのは、「乞食者詠」とある二首の長歌である。
国文学の発生(第二稿)
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
誰れか大いにこれを
蒐
(
あつ
)
め楽むという人が出そうなものだがと実はこの東洋に著名な花木のために
私
(
ひそ
)
かに希望して止まないのです。
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
うけたまわれば、あなたはいろいろの珍しい物をお
蒐
(
あつ
)
めになっているそうでございますから、これを献上したいと存じて持参いたしました。
中国怪奇小説集:08 録異記(五代)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
いつの間にやらいくつかの作品が手元に
蒐
(
あつ
)
まり、それがまた店や居間に掲げられ、唯一の装飾となって、落着きのない騒がしい生活の中で
一商人として:――所信と体験――
(新字新仮名)
/
相馬愛蔵
、
相馬黒光
(著)
家は烏川の上流にある室田の旧家で、その家から山の薬草を
蒐
(
あつ
)
めて出す取引先の高崎の薬種問屋に青年は預けられていました。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
留学中に余が
蒐
(
あつ
)
めたるノートは
蠅頭
(
ようとう
)
の細字にて五、六寸の高さに達したり。余はこのノートを唯一の財産として帰朝したり。
『文学論』序
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
その新道端に店を開き、所有地を住宅のために貸してそれで生活をして行こうと云う人達は、新道へ砂利を敷くための寄附金を
蒐
(
あつ
)
めに奔走した。
都会地図の膨脹
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
または彼が生前愛好した家具調度の類にいたるまでを一堂に
蒐
(
あつ
)
めまして、研究者の参考に供するということであります。
イプセン百年祭講演
(新字新仮名)
/
久保栄
(著)
両者とも
数多
(
あまた
)
美術品は
蒐
(
あつ
)
めてみても、美の魂とかかわりなくつき合ってきた者というものは、真にみじめなもので、御殿山氏といい、青山翁といい
現代茶人批判
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
桃太郎
猿蟹合戦
(
さるかにかっせん
)
の
類
(
たぐい
)
も珍らしからざるべく、また『
韓非子
(
かんぴし
)
』『
荘子
(
そうじ
)
』などに
出
(
い
)
でたるも珍らしからざるべければ、日本支那のは
姑
(
しばら
)
く
措
(
さしお
)
きて印度の古話を
蒐
(
あつ
)
め
綴
(
つづ
)
り
印度の古話
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
好きで
蒐
(
あつ
)
めたってものじゃありません。これは水をやらなくてはいけず、やり過ぎていけず、なかなか面倒なものですよ。枯らしちゃって文句を云われますがね。
私は隠居ではない
(新字新仮名)
/
吉田茂
(著)
教育博物館の方はなかなか
整頓
(
せいとん
)
していて、植物などはいろいろな珍しいものが
蒐
(
あつ
)
めてあったが、或る方面は草
茫々
(
ぼうぼう
)
として樹木
繁
(
しげ
)
り、蚊の多いことは無類で、全く
幕末維新懐古談:65 学校へ奉職した前後のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
私もこちらで買って掛けかえました——何か
蒐
(
あつ
)
めてる物? そう、行ったところで
匙
(
さじ
)
をあつめています。
踊る地平線:03 黄と白の群像
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
もし阿園が望まんには彼はなお幾個の遺物をも
蒐
(
あつ
)
むべかりし、されど今は寡婦の満足ようやくに薄らぎ、遺物という詞も夫という詞も、早やその耳に幻力を失いたり
空家
(新字新仮名)
/
宮崎湖処子
(著)
また柳田君の『山島民譚集』に
蒐
(
あつ
)
めた、
河童
(
かっぱ
)
が接骨方を伝えた諸説の原話らしい、『幽明録』の
河伯女
(
かはくのむすめ
)
が夫とせし人に薬方三巻を授けた話などを取り
雑
(
ま
)
ぜた作と見ゆ。
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
其処
(
そこ
)
にはボチセリイの作も多くあつたが、ミケランゼロの彫像には巨大なダ※ツドを初め多数に傑作を
蒐
(
あつ
)
めて居た。予は
此処
(
ここ
)
ですつかり彫刻が好きになつて
仕舞
(
しま
)
つた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
揚子江を
逆航
(
ぎゃっこう
)
して奇勝名勝を探り得て帰り、
蒐
(
あつ
)
むるところの山水百余景を五巻に表装して献上した。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
吾人は屡々諸教会の教師より其の講題を
蒐
(
あつ
)
めて日本の講壇は重もに何を説くかを観察せんと欲したりき。吾人未だ之を為すに暇あらざりしと雖も、其事大抵察すべきのみ。
信仰個条なかるべからず
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
族長制度の真相は
蛛網
(
ちゆまう
)
なり。その中心に於て、その制度に適する、すべての精神を
蒐
(
あつ
)
むるなり。
明治文学管見:(日本文学史骨)
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
日本の文学はさておき世界中の美文を
蒐
(
あつ
)
めてもこの上に出ずる句はありますまい。これこそ実に世界的の美文で天下
万世
(
ばんせい
)
に誇るべきものです。人の心は誰もかくこそありたけれ。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
然るに時代の進むに従って、書物の数は殖える一方で、
殊
(
こと
)
に印刷術の発明以後の殖え方が著しく目立って来た。そこで、如何に本好きでも、読み切れなくなり、
蒐
(
あつ
)
め切れなくなる。
愛書癖
(新字新仮名)
/
辰野隆
(著)
是等に関する英書は随分
蒐
(
あつ
)
めたもので、殆ど十何年間、三十歳を越すまで研究した。
呉博士
(
くれはくし
)
と往復したのも、参考書類を読破しようという熱心から独逸語を独修したのも、此時だ。
予が半生の懺悔
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
もう
救荒本草
(
きうくわうほんざう
)
類の圖書を
蒐
(
あつ
)
める便宜もなくなり、專ら
親試
(
しんし
)
に頼るのみである。そして既に五十幾種かの自然生の葉莖を食べ試みた。少し
煩瑣
(
はんさ
)
に
亙
(
わた
)
るが、その名を、思ひついた順序に書き附けて見よう。
すかんぽ
(旧字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
「これが昨夜中に
蒐
(
あつ
)
まった録音です」
地球要塞
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
こういうのを
蒐
(
あつ
)
めるといいな。
台湾の民芸について
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
しかも、彼の眼にとまったのは、その一槍だけだったが、事実はうしろからも一本の槍がいちどに彼の身ひとつへ
蒐
(
あつ
)
まっていたのである。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼は、あらゆる手段で、朝野の名流を、その
披露
(
ひろう
)
の式場に
蒐
(
あつ
)
めようとした。彼は、あらゆる縁故を
辿
(
たど
)
って、貴族顕官の列席を、頼み廻った。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
他
(
ほか
)
のものはよほど前から材料を
蒐
(
あつ
)
めたり、ノートを
溜
(
た
)
めたりして、
余所目
(
よそめ
)
にも
忙
(
いそが
)
しそうに見えるのに、私だけはまだ何にも手を着けずにいた。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
畦
(
あぜ
)
の
玉蜀黍
(
とうもろこし
)
の一列で小さく仕切られている畑地畑地からは甘い糖性の
匂
(
にお
)
いがして、前菜の卓のように
蔬菜
(
そさい
)
を盛り
蒐
(
あつ
)
めている。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
近代文明——欧亜の粋と、欧亜の罪悪とを一緒に
蒐
(
あつ
)
めた、魔都の姿の大写であると、そういうことも出来ましょう。
さまよう町のさまよう家のさまよう人々
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
一番愚にもつかぬ物を持っているのは大町氏だ。ここまで低級になると、もはや論外で滑稽に終る。これを
蒐
(
あつ
)
めるのは銀座の夜店では集まらない場末の屑屋だ。
墨蹟より見たる明治大正の文士
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
唯啄木のことは、自然主義の唱えた「平凡」に注意を
蒐
(
あつ
)
めた点にある。彼は平凡として見逃され勝ちの心の微動を捉えて、抒情詩の上に一領域を
拓
(
ひら
)
いたのであった。
歌の円寂する時
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
夫の好きな新しい野菜を料理して、帰りを待っていたお雪は、家のものを
蒐
(
あつ
)
めて夕飯にしようとした。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
よしは
黒奴
(
くろんぼ
)
の小娘のように、すっかり土にまみれながら、父親が土の中から掘り出した木の根を、一本ずつ運んで行って、冬籠りの薪を
蒐
(
あつ
)
める役を、自ら引き受けていた。
土竜
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
談
(
はなし
)
はもうこれで沢山であるのに、まだ続くから罪が深い。廷珸が前に定窯の鼎類数種を
蒐
(
あつ
)
めた中に、なお唐氏旧蔵の定鼎と号して大名物を以て人を
欺
(
あざむ
)
くべきものがあった。
骨董
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
柳田君の『山島民譚集』に、河童の類語を夥しく
蒐
(
あつ
)
めたが、水蛇については一言も
為
(
さ
)
れ居ぬ。
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
このすぺいん扇はなかなか高価なもので、女はまるで宝石でも溜めるようにこれをたくさん
蒐
(
あつ
)
めて威張ってるくらいだが、主材料の竹の関係上、その大部分は日本出来である。
踊る地平線:07 血と砂の接吻
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
その地域を極て広大にしこれに我邦に在る全部の桜の種類を
蒐
(
あつ
)
め
種
(
う
)
うる事である。
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
家庭の経済は原料の
廉
(
やす
)
き品物を
蒐
(
あつ
)
めて味
佳
(
よ
)
き料理を作るにあり。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
酒井
左衛門尉
(
さえもんのじょう
)
、石川
伯耆
(
ほうき
)
などの家老たちが、家中の人々が聞き知ったところを
蒐
(
あつ
)
めてのはなしによると、
惟任日向守
(
これとうひゅうがのかみ
)
光秀の帰国については
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
暗い
燈火
(
あかり
)
の下に
蒐
(
あつ
)
まっている瑠璃子と女中達を、もっと脅かすように、風は空を狂い廻り、波は
断
(
しきり
)
なしに岸を
噛
(
か
)
んで殺到した。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
真理
(
まこと
)
の性質、美しい性質を
蒐
(
あつ
)
め、世の中は、天地の貯えておるあらゆる宝を取出して飾り、みんな無上の幸福や、文化の頂上を味わうというのです。
仏教人生読本
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
が、ここに一番困ったことには、家中一般の同情が、密夫密婦に
蒐
(
あつ
)
まって密夫されたお前に集まらなかったことだ。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
カーライルの歿後は有志家の
発起
(
ほっき
)
で彼の生前使用したる器物調度図書典籍を
蒐
(
あつ
)
めてこれを各室に
按排
(
あんばい
)
し
好事
(
こうず
)
のものにはいつでも
縦覧
(
じゅうらん
)
せしむる
便宜
(
べんぎ
)
さえ
謀
(
はか
)
られた。
カーライル博物館
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
延珸が前に定窯の鼎類数種を
蒐
(
あつ
)
めた中に、猶ほ唐氏旧蔵の定鼎と号して大名物を以て人を欺くべきものが有つた。延珸は杭州に逃げたところ、当時潞王が杭州に寓して居られた。
骨董
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
蒐
漢検準1級
部首:⾋
13画
“蒐”を含む語句
蒐集
追蒐
蒐集家
飛蒐
差蒐
蒐集癖
取蒐
蒐集物
躍蒐
目蒐
蒐集品
来蒐
蒐集狂
蒐録
蒐覧
首蒐
蒐集中
蒐蔵
蒐集官
蒐集慾
...