荒波あらなみ)” の例文
きたにゆくにしたがって、うみみずはますますあおくなりました。そらいろはさえてきました。いわするどくそびえて、荒波あらなみせていました。
北海の白鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
うらわかはゝともなはれし幼兒をさなごの、ひとるに、われもとてかざりしに、わらはよわくて、ばかりのふねにも眩暈めまひするに、荒波あらなみうみとしならばとにかくも、いけみづさんこと
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
望んでもいないのに、無理やり大人にされてしまったような、浮世の荒波あらなみの中へ急に押し出されたような、知らない他国で日が暮れかかったような、何とも頼りない、心細い気がする。
葡萄の酒の濃紫いろこそ似たれ荒波あらなみ
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
きこゆる急流きふりう荒波あらなみ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
どろくさくてほねかとうございましたけれど、容易よういることができましたので、荒波あらなみうえで、仕事しごとするようにほねをおらなくてすんだのであります。
馬を殺したからす (新字新仮名) / 小川未明(著)
それが次第しだいはげしくつて、かぞへてなゝツ、身體からだ前後ぜんごれつつくつて、いてはび、いてはびます。いはにもやまにもくだけないで、みな北海ほくかい荒波あらなみうへはしるのです。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そうして、くもったそらおおきくえがいてした荒波あらなみ見下みおろしながら、どこへともなくってしまったのでありました。
薬売り (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしは——白晝はくちう北海ほくかい荒波あらなみうへおこところ吹雪ふゞきうづことがあります。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「よくこの荒波あらなみうえ航海こうかいして、このみなとちかくまでやってきたものだ。なにかようがあって、このみなとにきたものだろうか。」
黒い旗物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
荒波あらなみやまくずるるごとく、心易こころやすかる航行は一年中半日も有難ありがたきなり。
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
日本海にほんかい荒波あらなみが、ドドン、ドドンといってきしっています。がけのうえに、一ぽんまつが、しっかりいわにかじりついて、くらおきをながめて、あらしにほえていました。
海の踊り (新字新仮名) / 小川未明(著)
彼女かのじょは、おとうとうえあんじました。あまりつよいほうではないが、これからなか荒波あらなみにもまれていけるだろうかと、へちまのつるをるたびにおもわれるのでした。
へちまの水 (新字新仮名) / 小川未明(著)
荒波あらなみきしはまほうへとんでいき、また、まちほうまでんでいったことがあります。
一本のかきの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしがまだ子供こども時分じぶんおやたちにつれられてとおったことのある地方ちほうは、やまがあり、もりがあり、みずうみがあり、そして、うみ荒波あらなみが、しろきしせているばかりで、さびしい景色けしきではあったが
がん (新字新仮名) / 小川未明(著)