自若じじやく)” の例文
これえらい!……畫伯ぐわはく自若じじやくたるにも我折がをつた。が、御當人ごたうにんの、すまして、これからまた澁谷しぶやまでくゞつてかへるとふにはしたいた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
円月堂ゑんげつだう、見舞ひにきたる。泰然自若じじやくたる如き顔をしてゐれども、多少は驚いたのに違ひなし。病をつとめて円月堂と近鄰きんりんに住する諸君を見舞ふ。
その觀念が、彼を入隊させる日まで續いてゐたことをたしかめて、私は妹を見ると、その自若じじやくたるに安心した。
四人の兵隊 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
掛くれば彼者かのもの自若じじやくとして予は大納言殿の三なん徳太郎信房のぶふさなり慮外りよぐわいすな此提灯このちやうちんあふひもんは其方どもの目に見えぬかと悠然いうぜんたる形容ありさまに與力は手荒てあらにすべからずと云付いひつけられたれば詮方せんかたなく立歸り奉行ぶぎやう大岡忠右衞門に此趣このおもむきを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
自若じじやくとして、顏の色も變へないお國です。
自若じじやくとして鶏鳴をきく心だ
詩集夏花 (新字旧仮名) / 伊東静雄(著)
あまつさドアには、觀世綟くわんぜよりぢやうもさゝず、一壓ひとおしにせばくものを、ときまで美少年びせうねんくだん自若じじやくたる態度たいどつゞけた。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それを知つた博物学の先生は驚いて医者を迎へにやつた。医者は勿論やつて来るが早いか、先生に吐剤とざいを飲ませようとした。けれども先生は吐剤と云ふことを知ると、自若じじやくとしてかう云ふ返事をした。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
おなところ自若じじやくとして一人ひとりると、まさにそのひるならんとして、ねずみが、幾度いくたびたりはひつたりした。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
で、立騰たちのぼり、あふみだれる蚊遣かやりいきほひを、もののかずともしない工合ぐあひは、自若じじやくとして火山くわざん燒石やけいしひと歩行あるく、あしあかありのやう、と譬喩たとへおもふも、あゝ、蒸熱むしあつくてられぬ。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
印半纏しるしばんてん一枚いちまいされて、いさゝかもめげないで、自若じじやくとしてむねをたゝいてるのに、なほまんちやんがある。久保田くぼたさんは、まるけのしかも二度目にどめだ。さすがに淺草あさくさにいさんである。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
片手かたてで、ほつよく、しかと婦人ふじんつたまゝ、そのうへこし椅子いす摺寄すりよせて、正面しやうめんをしやんとつて、いは此時このとき神色しんしよく自若じじやくたりき、としてあるのは、英雄えいゆう事變じへんしよして、しかるよりも
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なん難有ありがた信仰しんかうではないか。つよ信仰しんかうつて法師ほふしであつたから、到底たうてい龍神りうじんごときがこのおれしづめることは出來できない、波浪はらう不能沒ふのうもつだ、としんじてうたがはぬぢやから、其處そこでそれ自若じじやくとしてられる。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)