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きりょう
ふりがな文庫
“
縹緻
(
きりょう
)” の例文
いつも重荷を担いでいる、田舎の百姓の女達が、早くその美を失うように、彼女も重荷を担いだため、俄然
縹緻
(
きりょう
)
を落としてしまった。
銀三十枚
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ことし十九になる惚々するような
縹緻
(
きりょう
)
よしで、さすが血すじだけあって、こだわりのない、さっぱりとした、いい気だてを持っている。
顎十郎捕物帳:12 咸臨丸受取
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
若いし——
縹緻
(
きりょう
)
は優れているし——それに世間
摺
(
ず
)
れていないので、
零落
(
おちぶ
)
れてもまだ多分に、五百石取の若奥様だった香いが
仄
(
ほの
)
かである。
死んだ千鳥
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
政はそっと小女の手に
触
(
さわ
)
った、「おめえもそういうことに気がつくようになったんだな、
縹緻
(
きりょう
)
もぐっとあがったし、気がもめるぜ」
あすなろう
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
もしこれが
聖林
(
ハリウッド
)
あたりの女優だと言っても決して恥ずかしくないだけの
縹緻
(
きりょう
)
をしていたが、写真ではもちろん皮膚の色もわからず
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
▼ もっと見る
その時、白雲も胸を打たれて、この年で、この
縹緻
(
きりょう
)
で、この病と、美しき、若き狂女のために泣かされたことを思い出しました。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
それ
等
(
ら
)
の
中
(
なか
)
には
橘姫
(
たちばなひめ
)
よりも
遥
(
はる
)
かに
家柄
(
いえがら
)
の
高
(
たか
)
いお
方
(
かた
)
もあり、
又
(
また
)
縹緻
(
きりょう
)
自慢
(
じまん
)
の、それはそれは
艶麗
(
あでやか
)
な
美女
(
びじょ
)
も
居
(
い
)
ないのではないのでした。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
俗にいう美人型の
面長
(
おもなが
)
な顔で、品格といい
縹緻
(
きりょう
)
といい、旗下の奥さんとして恥ずかしからぬ
相貌
(
そうぼう
)
の方で、なかなか立派な婦人でありました。
幕末維新懐古談:51 大隈綾子刀自の思い出
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
あれほどの
縹緻
(
きりょう
)
を持ちながら、茶屋女にも
町芸妓
(
まちげいしゃ
)
にもならず、進んで、両国の見世物小屋へ、ここから通っているのだと教えてくれました。
銭形平次捕物控:028 歎きの菩薩
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
それは新夫人の、あの
縹緻
(
きりょう
)
に
憚
(
はばか
)
る……麻地野、鹿の子は独り合点か、しぐれといえば、五月頃。さて
幾代餅
(
いくよもち
)
はどこにあろう。
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
大柄のおとなしい
縹緻
(
きりょう
)
よしで、受け口のつつましい村上さんに意地わるをする武さんという娘は、その頃珍らしい贅沢な洋服姿の登校であった。
なつかしい仲間
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
併しだ、あんたのような優れた
縹緻
(
きりょう
)
の御婦人が何もわざわざ労働者の中へ
這入
(
はい
)
っていくにもあたるまい。あんた達は、空想化した奴等をみとるよ。
罠を跳び越える女
(新字新仮名)
/
矢田津世子
(著)
その女が
俯
(
うつむ
)
いているので
縹緻
(
きりょう
)
のほどはわからない、只、はばかりに行こうとするのを邪魔立てしている眼の位置なのだ。
われはうたえども やぶれかぶれ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
木綿縞の
古布子
(
ふるぬのこ
)
垢づいて、髪は打かぶって居るが、
生
(
うみ
)
の
父母
(
ふたおや
)
の
縹緻
(
きりょう
)
も思われて、名に背かず磨かずも光るほどの美しさ。
漁師の娘
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
先妻に
縹緻
(
きりょう
)
よしの娘を生ませたが、奥女中
上
(
あが
)
りの後妻が
継児
(
ままこ
)
いじめをするので、早くから祖母の手にひきとられ、年下のあたしの父の
許婚
(
いいなずけ
)
となった。
旧聞日本橋:03 蕎麦屋の利久
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
女に女が
対手
(
あいて
)
になる時には、無意識に自分を対手に比較するもので、まづ
縹緻
(
きりょう
)
の好し悪し愛嬌の有無、
著物
(
きもの
)
の品質を調べて、まだ得心がいかない時には
散歩
(新字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
我
(
わが
)
まま
勝手
(
かって
)
に
育
(
そだ
)
てられて
来
(
き
)
たおこのは、たとい
役者
(
やくしゃ
)
の
女房
(
にょうぼう
)
には
不向
(
ふむき
)
にしろ、
品
(
ひん
)
なら
縹緻
(
きりょう
)
なら、
人
(
ひと
)
には
引
(
ひ
)
けは
取
(
と
)
らないとの、
固
(
かた
)
い
己惚
(
うぬぼれ
)
があったのであろう。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
ヘエ。……この
小女
(
あま
)
っちょが這入って来た時に、この界隈の者でない事は一眼でわかります。第一これ位の
縹緻
(
きりょう
)
の娘は直方には居りませんようで……ヘヘ。
骸骨の黒穂
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
酒もタチが善くない方で、道楽も可成りだそうな。細君は二つ下の二十六で大柄な女で、
縹緻
(
きりょう
)
は中位だが、よく働く
質
(
たち
)
だ。お針も出来るし、繰廻しもよくやって居た。
越後獅子
(新字新仮名)
/
羽志主水
(著)
さすれば人一倍色好みのきゃつのことじゃ、兄の口からこのようなこと言うのもおかしいが、江戸でもそう沢山はないそちの
縹緻
(
きりょう
)
ゆえ、きゃつがほっておく筈はない。
旗本退屈男:08 第八話 日光に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
恋愛の実境はそんな言では
悉
(
つく
)
し得ない、すべて少年は
縹緻
(
きりょう
)
を重んじ中年は意気を
尚
(
たっと
)
ぶ、その半老以後に及んではその事疎にして情
転
(
うた
)
た
熾
(
さか
)
んに、日暮れ道遠しの事多し
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
縹緻
(
きりょう
)
のすぐれた、
愛嬌
(
あいきょう
)
のあるその女の
噂
(
うわさ
)
が、いつまでもお千代婆さんなどの話の
種子
(
たね
)
に残っていた。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
世間で、女子にもまさるとか、たたえてくれる姿、形に産みつけて下されたも御両親——その御両親の御無念を、おはらし申すに、
縹緻
(
きりょう
)
を使ったとて、何が悪かろう。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
人間は猫の
縹緻
(
きりょう
)
の種々相を見わけるだけの神経を持たないが、猫はちゃんと持っているのである。
油絵新技法
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
美しい
歯並
(
はなみ
)
を隠している様な、非常に美しい人であるのに比べて、手を引かれている龍ちゃんの方は、両眼とも綴じつけられた様な盲目だし、その上ひどく
縹緻
(
きりょう
)
が悪いのだ。
悪霊
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
剥げかけた白粉と生地の青みがかった皮膚とが斑になり、頸部から寝巻の襟のはだけた、やせた胸廓が黒く脂じみているのが不健康らしくはあったが、いい
縹緻
(
きりょう
)
には相違ない。
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
彼女達は作業しないし、みんな
縹緻
(
きりょう
)
よしで、美しくしている方が『昇給率』がよかった。
工場新聞
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
家内にせんには、ちと、ま心たらわず、愛人とせんには
縹緻
(
きりょう
)
わるく、
妻妾
(
さいしょう
)
となさんとすれば、もの腰粗雑にして
鴉声
(
あせい
)
なり。ああ、不足なり。不足なり。月よ。汝、天地の美人よ。
虚構の春
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
あんな
縹緻
(
きりょう
)
のいい娘を持ってサ、おれならお
絹物
(
かいこ
)
ぐるみの
左団扇
(
ひだりうちわ
)
、なア、気楽に世を渡る算段をするのに、なんぼ男がよくっても、ああして働きのねえ若造にお艶坊をあずけて
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
忌々しい医者たちの授けた方法は、目に見えて效能を現わしはじめ、妻は体も肥えて来れば、
縹緻
(
きりょう
)
もよくなって、さながら晩夏に見られる名残の美とでもいうような趣を呈したのです。
クロイツェル・ソナタ:01 クロイツェル・ソナタ
(新字新仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
そして、
縹緻
(
きりょう
)
よしの踊子は、たえまなく富裕な旋律のなかにいた。
東京ロマンティック恋愛記
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
彼女が島田に結っているところを見るとまだ人妻でないことはすぐ知れることであったが、その
縹緻
(
きりょう
)
と、年輩とをもっていまだに独身でいるのはなぜかという
怪訝
(
けげん
)
も同時にだれにも起こるはずである。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
村いっとうの
縹緻
(
きりょう
)
よしで、評判の娘だっただ。
蕎麦の花の頃
(新字新仮名)
/
李孝石
(著)
おせいちゃんは二十歳くらいで、躯も痩せているし、ほそおもての、かなり
縹緻
(
きりょう
)
よしであり、私たちは近所づきあいの仲であった。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
鯨の背中には、先刻のべたような服装の
縹緻
(
きりょう
)
よしの女口上つかいが桃割にさした簪のビラビラを振りながら、いい声で鯨の口上。
顎十郎捕物帳:19 両国の大鯨
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「それはもう、あの
縹緻
(
きりょう
)
ですから、毎日たいへんな騒ぎで、裏口へ来てウロウロして居るのが、いつでも二三人はあります」
銭形平次捕物控:213 一と目千両
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
使うとお前さんの
縹緻
(
きりょう
)
が、——綺麗すぎるほど綺麗な小次郎が、一度に田舎者になってしまって、どうにも嬉しくないのだよ
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
櫺子
(
れんじ
)
の下へ涼み台を持ち出して川長の一人娘、お米の待つのは誰であろうか。恋とすれば、よすぎる
縹緻
(
きりょう
)
が心にくくもある。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
本当に図々しい、不人情ならばとにかく、あの若さで、あの
縹緻
(
きりょう
)
だから、相当に納まっているはずなのに、それができない。
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
母親
(
はは
)
が
大
(
たい
)
へん
縹緻
(
きりょう
)
よしなので、
娘
(
むすめ
)
もそれに
似
(
に
)
て
鄙
(
ひな
)
に
稀
(
まれ
)
なる
美人
(
びじん
)
、
又
(
また
)
才気
(
さいき
)
もはじけて
居
(
お
)
り、
婦女
(
おんな
)
の
道
(
みち
)
一と
通
(
とお
)
りは
申分
(
もうしぶん
)
なく
仕込
(
しこ
)
まれて
居
(
お
)
りました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
縹緻
(
きりょう
)
がよくって
孝行
(
こうこう
)
で、その
上
(
うえ
)
愛想
(
あいそう
)
ならとりなしなら、どなたの
眼
(
め
)
にも
笠森
(
かさもり
)
一、お
腹
(
なか
)
を
痛
(
いた
)
めた
娘
(
むすめ
)
を
賞
(
ほ
)
める
訳
(
わけ
)
じゃないが、あたしゃどんなに
鼻
(
はな
)
が
高
(
たか
)
いか。……
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
「可哀相なのはお高さんだなあ。あんな
縹緻
(
きりょう
)
よしがさ。どうだ、時さん、ひとつ、あたってみないかい」
凍雲
(新字新仮名)
/
矢田津世子
(著)
三味線も踊りも、歌も駄目で、芸妓としては
温柔
(
おとな
)
し過ぎる事、
縹緻
(
きりょう
)
は十人並のポッチャリした方で、二十五だというのにお酌みたいに初々しい内気な女であった。
近眼芸妓と迷宮事件
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
御領内残らずの女共の中から
縹緻
(
きりょう
)
よしばかりをえりすぐって、次から次へと目星をつけているゆえ、領民共とて、人の子じゃ、腹立てるのは当り前でおじゃりますわい。
旗本退屈男:08 第八話 日光に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
いかばかりであったろうぞ! 三斎の意をうけた同類が、どのように、母御をおびやかし、おどかしつづけたかも、思うてもあまりがある——とうとう、長崎一の
縹緻
(
きりょう
)
よし
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
芸人を妻や妾にするとか、女髪結の娘でも
縹緻
(
きりょう
)
がよければ一足飛びに奥さんにするとかいう風であったから、こういう一体の風習の中へ綾子刀自のことも一緒に巻き込まれて
幕末維新懐古談:51 大隈綾子刀自の思い出
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
縹緻
(
きりょう
)
もよいみほ子、勤め先での評判もいいみほ子を眺めるおむらの眼には、その頃よく新聞などにさわがれたデパートの美人売子がどこそこの次男に見込まれたというような
道づれ
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
何とやら
憂鬱
(
ゆううつ
)
で、しょっちゅう
一途
(
いちず
)
に物を思いつづけている様な、しんねりむっつりとした、それで、
縹緻
(
きりょう
)
はと申せば、今いう透き通る様な美男子なのでございますよ、それがもう
人でなしの恋
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「それじゃ、清葉さんばかり
縹緻
(
きりょう
)
がよくって、貴方は、だらしが無いんだわね。」
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お増の田舎では、
縹緻
(
きりょう
)
のよい女は、ほとんど誰でもすることになっている茶屋奉公に、お増もやられた。百姓家に育ったお増は、それまで
子守児
(
こもりこ
)
などをして、苦労の多い日を暮して来た。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
縹
漢検1級
部首:⽷
17画
緻
常用漢字
中学
部首:⽷
16画
“縹緻”で始まる語句
縹緻佳
縹緻美