ことし十九になる惚々するような縹緻よしで、さすが血すじだけあって、こだわりのない、さっぱりとした、いい気だてを持っている。
顎十郎捕物帳:12 咸臨丸受取 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
その時、白雲も胸を打たれて、この年で、この縹緻で、この病と、美しき、若き狂女のために泣かされたことを思い出しました。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
幕末維新懐古談:51 大隈綾子刀自の思い出 (新字新仮名) / 高村光雲(著)
銭形平次捕物控:028 歎きの菩薩 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
われはうたえども やぶれかぶれ (新字新仮名) / 室生犀星(著)
旧聞日本橋:03 蕎麦屋の利久 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
さすれば人一倍色好みのきゃつのことじゃ、兄の口からこのようなこと言うのもおかしいが、江戸でもそう沢山はないそちの縹緻ゆえ、きゃつがほっておく筈はない。
旗本退屈男:08 第八話 日光に現れた退屈男 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説 (新字新仮名) / 南方熊楠(著)
世間で、女子にもまさるとか、たたえてくれる姿、形に産みつけて下されたも御両親——その御両親の御無念を、おはらし申すに、縹緻を使ったとて、何が悪かろう。
剥げかけた白粉と生地の青みがかった皮膚とが斑になり、頸部から寝巻の襟のはだけた、やせた胸廓が黒く脂じみているのが不健康らしくはあったが、いい縹緻には相違ない。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
忌々しい医者たちの授けた方法は、目に見えて效能を現わしはじめ、妻は体も肥えて来れば、縹緻もよくなって、さながら晩夏に見られる名残の美とでもいうような趣を呈したのです。
クロイツェル・ソナタ:01 クロイツェル・ソナタ (新字新仮名) / レオ・トルストイ(著)
そして、縹緻よしの踊子は、たえまなく富裕な旋律のなかにいた。
東京ロマンティック恋愛記 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死―― (新字新仮名) / 長与善郎(著)
鯨の背中には、先刻のべたような服装の縹緻よしの女口上つかいが桃割にさした簪のビラビラを振りながら、いい声で鯨の口上。
顎十郎捕物帳:19 両国の大鯨 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「それはもう、あの縹緻ですから、毎日たいへんな騒ぎで、裏口へ来てウロウロして居るのが、いつでも二三人はあります」
銭形平次捕物控:213 一と目千両 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
本当に図々しい、不人情ならばとにかく、あの若さで、あの縹緻だから、相当に納まっているはずなのに、それができない。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
御領内残らずの女共の中から縹緻よしばかりをえりすぐって、次から次へと目星をつけているゆえ、領民共とて、人の子じゃ、腹立てるのは当り前でおじゃりますわい。
旗本退屈男:08 第八話 日光に現れた退屈男 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
いかばかりであったろうぞ! 三斎の意をうけた同類が、どのように、母御をおびやかし、おどかしつづけたかも、思うてもあまりがある——とうとう、長崎一の縹緻よし
芸人を妻や妾にするとか、女髪結の娘でも縹緻がよければ一足飛びに奥さんにするとかいう風であったから、こういう一体の風習の中へ綾子刀自のことも一緒に巻き込まれて
幕末維新懐古談:51 大隈綾子刀自の思い出 (新字新仮名) / 高村光雲(著)
縹緻もよいみほ子、勤め先での評判もいいみほ子を眺めるおむらの眼には、その頃よく新聞などにさわがれたデパートの美人売子がどこそこの次男に見込まれたというような