がさ)” の例文
これは無理むりなことでありました。そこで人力曳じんりきひきの海蔵かいぞうさんも、まんじゅうがさをぬいで、利助りすけさんのためにあやまってやりました。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
まるでりすのようなはやさでかけのぼっていったのは、たけがさ道中合羽どうちゅうがっぱをきて旅商人たびあきんどにばけた丹羽昌仙の密使、早足はやあし燕作えんさくだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
千両ばこ、大福帳、かぶ、隠れみの、隠れがさ、おかめのめんなどの宝尽くしが張子紙で出来て、それをいろいろな絵具えのぐで塗り附ける。
おに大将たいしょう約束やくそくのとおり、おしろから、かくれみのに、かくれがさ、うちでのづちに如意宝珠にょいほうじゅ、そのほかさんごだの、たいまいだの、るりだの
桃太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
何んに致せ、あの大勢のいる宴会の中で、隠れみの、隠れがさをでも持っているように致す事の出来た二人でございますから。
僕の母の話によれば、法界節ほうかいぶしが二、三人がさをかぶって通るのを見ても「敵討かたきうちでしょうか?」と尋ねたそうである。
追憶 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その頃兄はしきりに水墨画に親しんでいられました。私の学校通いにかぶったあじろがさに、何かかれたのもその頃でしょう。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
彼の男それ結構けつこうなこと隨分ずゐぶん御達者で御歸りなされましハイ然樣さやうならばとわかゆくを重四郎は振返ふりかへり見れば胸當むねあてをして股引もゝひき脚絆きやはんこしには三度がさを附大莨袋おほたばこいれ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
竹の子がさと白手ぬぐいは、次第に黄ばめる麦に沈みて、やがてかげも見えずなりしと思えば、たちまちはたのかなたより
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
女学生やバスガアルの帽子を見るに、何ゆえか素晴らしく大きなもので、ことに前後へ間延びしている。師直もろなおかぶる帽子の如く、赤垣源蔵あかがきげんぞうのまんじゅうがさでもある。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
脚絆きゃはんをはいてたびはだしになり、しりばしょりをして頭にほおかむりをなしその上に伯父さんのまんじゅうがさをかぶった母の支度したくを見たときチビ公は胸が一ぱいになった。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
このくらゐのあめは、たけがさおよぶものかと、半纏はんてんばかりの頬被ほゝかぶりで、釣棹つりざをを、いてしよ、とこしにきめた村男むらをとこが、山笹やまざさ七八尾しちはつぴき銀色ぎんいろ岩魚いはなとほしたのを、得意顏したりがほにぶらげつゝ
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
時を移さず姿をやつして、鳥追いがさに、あだめかしい緋色ひいろ裳裾もすそをちらちらさせつつ、三味線しゃみせん片手にお由がやって参りましたので、名人は待ちうけながら、ただちにしのぶおか目ざしました。
一つの注意——日中正午前後は、ちょっとの外出にも、東印度帽ソラ・タピイ——ソラという樹木の髄で作った一種の土民がさ——をかぶるか、または洋傘こうもりをさすかして、正確に太陽の直射を拒絶すべきこと。
ヤトラカン・サミ博士の椅子 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
というのは、竹ノ子がさ燕作えんさくが、正則まさのり密書みっしょをわたしたようすを、休息所のまどから、とっくりにらんでいたのである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すかし見れば彼の十七屋となやのの飛脚に相違なしよつて重四郎は得たりとしりひつからげて待つほどに定飛脚ぢやうひきやくかきたりし小田原挑灯を荷物にもつ小口こぐち縊付くゝりつけ三度がさ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
と、海蔵かいぞうさんが、まんじゅうがさをかむりながらいいました。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
花笠をかぶった娘も、とががさの若者も、夜露頭巾の武家も、のままな老人も、わらべも、百姓町人も、僧侶も、ひとつ輪になり、ひとつ手振りを揃えて、唄っていた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
福島正則は、家来の可児才蔵かにさいぞうと顔をあわせて、しばし、あきれたように竹ノ子がさを見送っていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「……あぶない」と、静かにいって、飛んできた懐剣の光から、そっと身をわした。がさをかむって、竹の杖をついていた。——年景が、ぎょっとして、その僧をめつけた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
がさのひさしに手をかけ、元気もなく、ただキョロキョロと道ばかり見廻して来る。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、どこからともなく姿を現わし、彼の前へ来て初めてそのがさのひもを解いた。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
僧正というからには定めし金襴きんらん袈裟けさ払子ほっすを抱き、威儀作ろった人かと思えば、これはこのままがさと杖をもたせて、世間の軒端に立たせても、恥かしくないそのままの人だった。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
沿道の人目を恥じてか、はすがさ眉深まぶかにふせて、悄々しおしおと列の中に交じった。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どこで支度をととのえたか、旅合羽たびがっぱ道中差どうちゅうざし、一文字もんじがさを首にかけて
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
がさを片手に、観音堂の外へ降りた。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)