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むとんちゃく
ふりがな文庫
“
無頓着
(
むとんちゃく
)” の例文
そういう状態にある彼は、今この差出人の不明な、何物とも知れぬ球根の小包を受け取って
無頓着
(
むとんちゃく
)
でいるわけにはゆかなかったのである。
球根
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
私
(
わたし
)
は、あの
重
(
おも
)
い
荷物
(
にもつ
)
と
車室
(
しゃしつ
)
の
中
(
なか
)
で、そんなことには
無頓着
(
むとんちゃく
)
に、
笑
(
わら
)
ったり、
話
(
はな
)
したりしていた
人間
(
にんげん
)
が、
憎
(
にく
)
らしくてしかたがありません……。
負傷した線路と月
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
それとも実際
無頓着
(
むとんちゃく
)
に自己を
客観
(
かくかん
)
しているのかも知れない。それを心理的に判断することは、性格を知らないでは出来ない筈だと思った。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
一体
無頓着
(
むとんちゃく
)
なのに、
橘屋
(
たちばなや
)
ときたら、そのころはしどい借金だったのですからね。
厭
(
あ
)
きもあかれもしやあしないでしょうが、母親が承知しない。
一世お鯉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
私は
食物
(
くいもの
)
には割合に
無頓着
(
むとんちゃく
)
であって、何処でも腹が空けばその近所の飲食店で間に合わして置く方であるが、二葉亭はなかなか
爾
(
そ
)
う行かなかった。
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
▼ もっと見る
青天白日に徳利
夫
(
そ
)
れから私が世間に
無頓着
(
むとんちゃく
)
と云うことは少年から
持
(
もっ
)
て生れた性質、周囲の事情に
一寸
(
ちょい
)
とも感じない。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
御老年の
親御
(
おやご
)
さんが御病気におなりなすった時は
如何
(
いか
)
に食物の事へ
無頓着
(
むとんちゃく
)
な御主人でも子の義務として御老人の食物を研究なさらなければなりますまい。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
「味」のことばかりを言って、その背後にある「美」の影響力に
無頓着
(
むとんちゃく
)
なのが、言って悪いが当代の料理人、料理研究所あたりの大方ではないでしょうか。
「春夏秋冬 料理王国」序にかえて
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
摂生に関しては
無頓着
(
むとんちゃく
)
なところがあり、ややともすると医師の忠告をお用いにならない風があったので、再発の恐れが全くないとは云えなかったけれども
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
大よそ家主も
先
(
ま
)
ずこれくらい
無頓着
(
むとんちゃく
)
であったら、借家人も居心地がよかろうと、内心すこぶる得意であったが、よく考えて見ると、それでは何も巣箱などを
野草雑記・野鳥雑記:02 野鳥雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
多吉は西洋のことなぞに一向
無頓着
(
むとんちゃく
)
で、主人が西洋人から手に入れて珍重するという寒暖計の性質も知らず
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
昔の家というものは構えが大きくて、木口ががっしりと作られている代り、
無頓着
(
むとんちゃく
)
な採光や通風のせいか、言い知れぬ暗さが漂っているもんだなと思いました。
棚田裁判長の怪死
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
彼はその生涯の慰安たりし絵画人形絵本その他の美術品が博物館と呼ばれし
冷
(
ひややか
)
なる墳墓に輸送せられ、
無頓着
(
むとんちゃく
)
なる観覧人の無神経なる閲覧に供せられんよりは
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
ごく粗末な材料でつくった棺が、棺掛けもかぶせずに、数人の村人にかつがれてきた。教会の下役僧が先に立って、ひややかな
無頓着
(
むとんちゃく
)
な顔つきをして歩いていた。
寡婦とその子
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
家の狭さと、あるじの
無頓着
(
むとんちゃく
)
さとはこの
言葉書
(
ことばがき
)
の中にあらわれて、その人その光景目前に見るがごとし。
曙覧の歌
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
後に買った
大久保
(
おおくぼ
)
の家に、書斎を新しく建て増しする時、
一切
(
いっさい
)
の設計や事務を妻に一任して、自分は全く
無頓着
(
むとんちゃく
)
で居たが、それでも妻が時々相談を持ちかけると
小泉八雲の家庭生活:室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
私が彼にフロックを渡したのは、
無頓着
(
むとんちゃく
)
からでも慈悲心からでもなかった。いや、彼が私よりも強かったからだ。もし拒んだら、私はあの太い
拳
(
こぶし
)
でなぐられたろう。
死刑囚最後の日
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
が、そんな事には一向に
無頓着
(
むとんちゃく
)
らしく、帰って来た大月は、秋田に一寸微笑して見せただけで、直ぐ隣室へその女を連れ込むと、間の扉をピッタリ閉めて了った……。
花束の虫
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
元来そんなことにはわりあい
無頓着
(
むとんちゃく
)
な俊亮も、さすがに無視するわけにはいかなかったのである。
次郎物語:02 第二部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
虚栄心などは少しもない、服装とか
身嗜
(
みだしな
)
みなどの
無頓着
(
むとんちゃく
)
さは、その無頓着さにおいて抜群である。
長屋天一坊
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
園はおぬいさんに
牽
(
ひ
)
きつけられている、おぬいさんについては一言もいわないではないか。……清逸はすぐそう思った。それともおぬいさんにはまったく
無頓着
(
むとんちゃく
)
なのか。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
博士は
無頓着
(
むとんちゃく
)
に、その大きな紙の四隅をピンでとめた。それから机の下をさぐっていたが押し
釦
(
ボタン
)
の一つをぷつんと押した。すると紙がぱっと
蛍光色
(
けいこうしょく
)
を呈して光りだした。
共軛回転弾:――金博士シリーズ・11――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
無頓着
(
むとんちゃく
)
な老師に先んじて、平常
斯
(
こ
)
うした俗事にまめな世話役某の顔を
莫迦
(
ばか
)
/\しく思ひ浮べた。
老主の一時期
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
なぜといえば今時ほんとうに良心と理性との目ざめた精神的要求の豊かな人が、自分を無良心だと思わずに、その門にまったく
無頓着
(
むとんちゃく
)
であることは不可能なことだからです。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
西伯利亜鉄道
(
シベリアてつどう
)
の汽車の中で、此一張羅の洋服を脱いだり着たりするたびに、
流石
(
さすが
)
無頓着
(
むとんちゃく
)
な同室の露西亜の大尉も技師も、眼を
円
(
まる
)
く鼻の下を長くして見て居た歴史つきの
代物
(
しろもの
)
である。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
米友が気づかっているのを
無頓着
(
むとんちゃく
)
に飛びは飛んだが、見事に飛び
損
(
そこ
)
ねてしまいました。
大菩薩峠:06 間の山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
相手は
無頓着
(
むとんちゃく
)
にこう云いながら、
剃刀
(
かみそり
)
を当てたばかりの
顋
(
あご
)
で、沼地の画をさし示した。流行の茶の背広を着た、
恰幅
(
かっぷく
)
の
好
(
い
)
い、消息通を以て自ら任じている、——新聞の美術記者である。
沼地
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
しかしそれは愚問であって、さっきから外の景色にも、車内の様子にも、まるで
無頓着
(
むとんちゃく
)
で、夢中になって読み
耽
(
ふけ
)
っているのだから、日本字の読めることは、きくまでもないことである。
日本のこころ
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
省作は
無頓着
(
むとんちゃく
)
で白メレンスの
兵児帯
(
へこおび
)
が少し新しいくらいだが、おはまは上着は
中古
(
ちゅうぶる
)
でも
半襟
(
はんえり
)
と帯とは、仕立ておろしと思うようなメレンス友禅の
品
(
ひん
)
の悪くないのに卵色の
襷
(
たすき
)
を掛けてる。
隣の嫁
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
父は
無頓着
(
むとんちゃく
)
で、当人が行くといえば行くも
好
(
よ
)
かろうといっていましたが、母は、たった一人の男の子を行く末
僧侶
(
そうりょ
)
にするは可愛そうだといって不承知であったので、この話は中止となった。
幕末維新懐古談:02 私の子供の時のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
世間では、
無頓着
(
むとんちゃく
)
な人だと思ってるけど、こりゃ間違いだ。そりゃ、気がつくんだからね。なんでも
額
(
ひたい
)
の奥へ
刻
(
きざ
)
み込んどく。だから、そのコップだって、指で押しやって、ただそれだけさ。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
ところが沖縄人はこの大問題に就いて至って
無頓着
(
むとんちゃく
)
であったのであります。
琉球史の趨勢
(新字新仮名)
/
伊波普猷
(著)
しかし芸術家の中には科学に対して
無頓着
(
むとんちゃく
)
であるか、あるいは場合によっては一種の反感をいだくものさえあるように見える。
科学者と芸術家
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
このとき、
無頓着
(
むとんちゃく
)
な
石
(
いし
)
は、
黙
(
だま
)
って
眠
(
ねむ
)
っていました。
小鳥
(
ことり
)
は、その
石
(
いし
)
の
頭
(
あたま
)
で、くちばしを
磨
(
みが
)
きました。そして、
花
(
はな
)
を
見守
(
みまも
)
って
公園の花と毒蛾
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
その上に二葉亭は、ドチラかというと浪費家であって、
衣服
(
きもの
)
や道具には
無頓着
(
むとんちゃく
)
であったが
食物
(
くいもの
)
にはかなりな
贅沢
(
ぜいたく
)
をした。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
我邦の医者は食餌療法という事に極く
無頓着
(
むとんちゃく
)
で医者自身すら豚の
生肉
(
なまにく
)
を煮て食べるような始末だけれども西洋の医者は薬物療法と相並んで食餌療法を実行する。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
かれは、田川の声には
無頓着
(
むとんちゃく
)
なように、
並
(
なら
)
べられていく机の列をじっとにらんでは、そのみだれを正していた。——二人とも、それぞれに室長に選ばれていたのである。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
というは、亭主多吉が町人の家に生まれた人のようでなく、世間に
無頓着
(
むとんちゃく
)
で、巡査の言い置いて行ったような実際の事を運ぶには全く不向きにできているからであった。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
しかし若い僧は国太郎がじろじろ見上げ見下ろす眼ざしには一向
無頓着
(
むとんちゃく
)
になお進んで
訊
(
たず
)
ねる。
とと屋禅譚
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
もし以前におぬいさんに送った星野の手紙がもっと違った内容を持っていたとすれば、おぬいさんがこの手紙を開封する時、ああまで園の存在に
無頓着
(
むとんちゃく
)
でいられるだろうか。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
かねて用心のために背に負う
手裏剣
(
しゅりけん
)
用の小さい刀の
柄
(
つか
)
に手を掛け、近く来ると打つぞと大きな声でどなったが、老翁は一向に
無頓着
(
むとんちゃく
)
で、なお笑いながら傍へ寄ってくるので
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
あの甘くして柔かく、
忽
(
たちま
)
ちにして冷淡な
無頓着
(
むとんちゃく
)
な運命の手に
弄
(
もてあそ
)
ばれたい、という
止
(
や
)
みがたい空想に駆られた。空想の翼のひろがるだけ、春の青空が以前よりも青く広く目に映じる。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
田舎の先生は一向
無頓着
(
むとんちゃく
)
にて
不相変
(
あいかわらず
)
元勲崇拝なるも腹立たしき訳に候。
歌よみに与ふる書
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
細
(
こま
)
かしいことには
無頓着
(
むとんちゃく
)
な須磨子の話しをした。
松井須磨子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
心配が胸に
閊
(
つか
)
えて食物の味が解らんような豪傑は一向ありがたくない。今の人たちにも食物に
無頓着
(
むとんちゃく
)
な事を自慢する者があるけれども僕には一向訳が分らんよ。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
科学者と芸術家が別々の世界に働いていて、互いに
無頓着
(
むとんちゃく
)
であろうが、あるいは互いに相反目したとしたところが、それは別にたいした事でもないかもしれない。
科学者と芸術家
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
ふだん
無頓着
(
むとんちゃく
)
をよそおっている逸作も、このときだけは、妙に
凄
(
すご
)
い顔付きになっていった。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
洋服
(
ようふく
)
のボタンが一つ
取
(
と
)
れて、ひじのあたりが
破
(
やぶ
)
れている
具合
(
ぐあい
)
までが、
無頓着
(
むとんちゃく
)
で、
直
(
なお
)
してあげるといってもめんどうくさがる、お
父
(
とう
)
さんのようすを
彷彿
(
ほうふつ
)
させて、
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
のようにも
汽車は走る
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
次郎は、しかし、みんなのそうした様子には、まるで
無頓着
(
むとんちゃく
)
なような顔をしていた。彼はともすると、むっつりして、ひとりで何か考えこんだ。それが子供達を一そう気味悪がらせた。
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
そして困ったことでもあった時、相談をしかけたら、すぐてきぱき始末をつけてくれそうだけれども、その先の先がどう変ってゆくのか、渡瀬さん自身でさえ
無頓着
(
むとんちゃく
)
でいるようにも見える。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
無
常用漢字
小4
部首:⽕
12画
頓
常用漢字
中学
部首:⾴
13画
着
常用漢字
小3
部首:⽬
12画
“無頓”で始まる語句
無頓著