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濡衣
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ぬれぎぬ
ふりがな文庫
“
濡衣
(
ぬれぎぬ
)” の例文
取りもしないものを取ったと云って、あたしに泥坊の
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
を着せる。皆さんどうぞ加勢をして下さいと、泣き声で呶鳴るという始末。
半七捕物帳:58 菊人形の昔
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
身に覚えはありませんが、わたくしの身に
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
がかかるわけは存じております。……千住三丁目の大桝屋さんはわたしの永のご
贔屓
(
ひいき
)
。
顎十郎捕物帳:22 小鰭の鮨
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
自分に着せられた
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
——
聊
(
いさゝ
)
か小便臭い濡衣を、手もなく乾かしてくれさうな氣がして、眞にイソイソと先に立つて案内して行きます。
銭形平次捕物控:188 お長屋碁会
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「やかましいやいッ。てめえがおれたちに金入れを取られたといやあ、おれたちふたりは
泥棒
(
どろぼう
)
だ。よくも人に
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
を
着
(
き
)
せやがった」
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「それなれば、それなれば、私は今おめおめと死ぬべき時ではない。どうともして、この窮地を逃れ
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
をほさなければならぬ」
吸血鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
▼ もっと見る
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
を着せられちやいやだからなあ。さうかつて、こいつを山羊さんの耳に入れる手はないでせう。女はこれだから困るんだ
双面神
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
鳶「え、
往
(
い
)
きますとも、半分取ったろうなんて、飛んでもねえ
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
を着せられたんですもの、
直
(
すぐ
)
に行って来ます、少し
提灯
(
ちょうちん
)
をお貸しなすって」
闇夜の梅
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
さりとて打ち捨ておかば清吉の乱暴も
我
(
わ
)
が
命令
(
いいつ
)
けてさせしかのよう疑がわれて、何も知らぬ身に心地
快
(
よ
)
からぬ
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
被
(
き
)
せられんことの口惜しく
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
あなたも
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
をお
乾
(
ほ
)
しになれないでしょう。それも無情に私をお追いになった報いとお思いになるほかはないでしょう
源氏物語:39 夕霧一
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
「そうそう、わたしは盗人という
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
がまだ乾いていない身であった、
古市
(
ふるいち
)
へ姿を見せれば、直ぐに縄目にかかる身であった、さあ故郷へは帰れない」
大菩薩峠:07 東海道の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そして、日が
経
(
た
)
つに従うて、見もせず聞きもせぬけれど、
浮名
(
うきな
)
が立って
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
着た、その明さんが何となく、慕わしく、懐かしく、
果
(
はて
)
は恋しく、
憧憬
(
あこが
)
れる。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
生前間男の
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
を着せ、——世間へ見せしめ、二人の死骸、戸板へ打ち付け、水葬礼——ふん、そいつにしたんだからなあ。だって小平が
宜
(
よ
)
くねえからよ。
隠亡堀
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
父がこの雑談集を公に致しますのも、恐らく法律談は乾燥であるという
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
を
干
(
ほ
)
したい微意でありましょう。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
父がこの雑談集を公に致しますのも、恐らく法律談は乾燥であるという
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
を
干
(
ほ
)
したい微意でありましょう。
法窓夜話:01 序
(新字新仮名)
/
穂積重遠
(著)
拍子抜して
返
(
もど
)
れる貫一は、
心私
(
こころひそか
)
にその臆測の
鑿
(
いりほが
)
なりしを
媿
(
は
)
ぢざるにもあらざれど、又これが為に、
直
(
ただ
)
ちに彼の
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
を
剥去
(
はぎさ
)
るまでに釈然たる能はずして、好し
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
というようなわけで、あれ以来博士は、あられもない
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
をきせられて、しきりにくすぐったがっている。
不沈軍艦の見本:――金博士シリーズ・10――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
蒙りたるも
最前
(
さいぜん
)
まで
澄
(
すむ
)
か
濁
(
にごる
)
か分らざりしが今は
譯
(
わか
)
れど
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
を
干
(
ほす
)
よしもなき身の
因果
(
いんぐわ
)
と思ひ廻せば廻すほど又も
泪
(
なみだ
)
の種なるを思ひ返へしてゐる
節
(
をり
)
から後の方より
背中
(
せなか
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
とんでもない
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
を着せられて追い出されちゃったんだよ。僕の
妻
(
かない
)
が非常に可愛がっていたんだがね。イヤ。本人も喜んでいるよ。この間と昨日と二度電話をかけてね。
少女地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
またある時は名門の出の某男爵が
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
に扮したおり、彼女は
八重垣姫
(
やえがきひめ
)
を振りあてられて
真面目
(
まじめ
)
に
化粧
(
けわ
)
い衣装をして、自ら「はじかき姫」だと言っていたことをも思いだす。
豊竹呂昇
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
母をはじめ
親戚
(
しんせき
)
朋友のかれこれといいすすむるに。勤は余義なくてありし次第を打ちあけて述べたるに。もとよりあらぬ
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
にもあらざれば。誰もしからんにはとの答えのみなれば。
藪の鶯
(新字新仮名)
/
三宅花圃
(著)
「
厄介
(
やっかい
)
だな。それじゃ
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
を着るんだね。
面白
(
おもしろ
)
くもない。
天道是耶非
(
てんどうぜかひ
)
かだ」
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
こりゃあ何かの間違えだ。いくら先様が
大分限
(
だいぶげん
)
でもみすみす
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
を
被
(
き
)
せられて泣寝入り——じゃあない、突出されだ、その突出されをされるわきゃあない、とこうあっしは思いましたから——。
早耳三次捕物聞書:02 うし紅珊瑚
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
珠
(
たま
)
のようだといわれたその肌は、
年増盛
(
としまざか
)
りの
愈〻
(
いよいよ
)
冴
(
さ
)
えて、わけてもお旗本の
側室
(
そくしつ
)
となった身は、どこか昔と違う、お屋敷風の品さえ
備
(
そな
)
わって、
恰
(
あたか
)
も
菊之丞
(
きくのじょう
)
の
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
を見るような
凄艶
(
せいえん
)
さが
溢
(
あふ
)
れていた。
歌麿懺悔:江戸名人伝
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
お
褒
(
ほ
)
めにあずかって当然のところ、おろかな言い繕いだの、破れかぶれだのおっしゃって
嘲笑
(
ちょうしょう
)
なされ、はては、嫉妬なぞと思いも掛けぬ
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
を着せようとなさるので、ポローニヤスもつい我慢ならず
新ハムレット
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「いやはや、宣長翁も飛んだ
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
を着たものさね。」
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
心にもあらぬ恨みは
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
の
聞書抄:第二盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
五 不思議の
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
冒頭に置いての責道具ハテわけもない
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
椀の
白魚
(
しらお
)
もむしって食うそれがし
鰈
(
かれい
)
たりとも
骨湯
(
こつゆ
)
は頂かぬと往時権現様得意の逃支度冗談ではござりませぬとその夜冬吉が
金輪奈落
(
こんりんならく
)
の底尽きぬ腹立ちただいまと小露が座敷戻りの
挨拶
(
あいさつ
)
も
長坂橋
(
ちょうはんきょう
)
の
張飛
(
ちょうひ
)
睨んだばかりの勢いに小露は顫え上りそれから明けても三国割拠お互いに気まずく笑い声は
かくれんぼ
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
捕えた者は彼こそ確かに我来也であると主張するのであるが、捕えられた本人はおぼえもない
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
であると主張する。
自来也の話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
と
典侍
(
ないしのすけ
)
へお言いになった。典侍はきまり悪さも少し感じたが、恋しい人のためには
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
でさえも着たがる者があるのであるから、弁解はしようとしなかった。
源氏物語:07 紅葉賀
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
とんだ
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
を着なきゃならないんだ——いつか江戸を荒し廻った強賊の「
疾風
(
はやて
)
」が、偽の
中気病
(
ちゅうきや
)
みになって居たことがあるから一応は釜六も疑って見たのさ」
銭形平次捕物控:239 群盗
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
間の山から紀州へ向っての山中で、盗賊の
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
を乾かすためにあの女の裸体姿を見て、自分は何とも思わないのに、相手の女をして
面
(
かお
)
を赤くさせたこともある。
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
どういう了簡で
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
を着たかは存じませぬが、江戸橋にて友之助の引廻し捨札を見れば、
斯
(
こ
)
う/\
云々
(
うんぬん
)
、よしや目指す敵は討ち得ずとも、我に代って死罪の言渡しを受けたる友之助を助けずば
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
仇
(
あだ
)
し男と戯れるところ……生んだばかりの私生児を圧殺するたまらなさ……
嫁女
(
よめじょ
)
に
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
を着せて、首を
縊
(
くく
)
らせる気持よさ……憎い
継子
(
ままこ
)
を井戸に突落す痛快さなぞ……そのほか大勢で
生娘
(
きむすめ
)
を
苛
(
いじ
)
める
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
けれども、ほかの事と違って、そんな
淫奔
(
いたずら
)
をしたという
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
をきせて追い出すというのはあんまりだ。里へ帰って親兄弟や親類にも顔向けが出来ない。
半七捕物帳:16 津の国屋
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
とんだ
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
を着なきやならないんだ、——いつか江戸を荒し廻つた強賊の『
疾風
(
はやて
)
』が、僞の中氣病みになつてゐたことがあるから一應は金六も疑つて見たのさ
銭形平次捕物控:239 群盗
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「驚いたね、ああして、男世帯の
銀床
(
ぎんどこ
)
に
無
(
ね
)
えものは女っ気と亭主の片腕だと、町内でこんな評判を立てられているところへ、お前だけが俺に
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
を着せようというものだ」
大菩薩峠:10 市中騒動の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
決していいかげんなことを言ったのではありませんよ。それは
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
というものです
源氏物語:52 東屋
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
どうも身に覚えのない
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
で
袂
(
たもと
)
から巾着が出て板の間の
悪名
(
あくみょう
)
を付けられたからは、お
父
(
とっ
)
さんが物堅いから言訳を申しても立たない、
誰
(
たれ
)
にも顔を合されないから
寧
(
いっ
)
その事一と思いに死のうというので
政談月の鏡
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
身に覚えのない不義の
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
を
被
(
き
)
て、しばらく何処にか隠れていてくれれば、三年の後にはきっと取り立ててやる。
半七捕物帳:20 向島の寮
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
一方で私のためにそうした
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
を着せられておいでになる方もお気の毒なものだ
源氏物語:39 夕霧一
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
あられもない
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
をきせて、たった一人の姉を狂い死にさせた七人のかたきを唯そのままに置くまいと堅く決心したが、なにをいうにも相手はみな大の男である。
半七捕物帳:24 小女郎狐
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
松島のあまの
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
馴
(
な
)
れぬとて脱ぎ変へつてふ名を立ためやは
源氏物語:40 夕霧二
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
おらちは身におぼえのない
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
であることを説明しても、お福はなかなか承知しなかった。
馬妖記
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
そりゃあ思いもつかねえ
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
だ。なるほど友達のつきあいで、列び茶屋の不二屋へ
此中
(
このじゅう
)
ちょいちょい遊びに行ったこともあるが、なにも乙に
絡
(
から
)
んだことを言われるような覚えはねえ。
両国の秋
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
その筋道がよく判りませんで、妹が何かの
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
でも着るようでございますと、妹は気の小さい女でございますから、あんまり心配して気ちがいにでもなり兼ねません。それが
不便
(
ふびん
)
でございまして……。
勘平の死
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
濡
漢検準1級
部首:⽔
17画
衣
常用漢字
小4
部首:⾐
6画
“濡”で始まる語句
濡
濡縁
濡手拭
濡色
濡鼠
濡羽
濡々
濡髪
濡手
濡須