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気紛
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きまぐ
ふりがな文庫
“
気紛
(
きまぐ
)” の例文
旧字:
氣紛
いかにも人の不幸のところへ心ない
遊蕩児
(
ゆうとうじ
)
の
気紛
(
きまぐ
)
れな
仕業
(
しわざ
)
と人に取られるかも知れなかったが、思う人には何とでも思わせておいて
生不動
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
人々は、緊張が去ってざわめきはじめ、やれやれ、
気紛
(
きまぐ
)
れにもせよ五十万ミルは
高価
(
たか
)
いと、ようやく、方々で扇の音が高まってきた。
人外魔境:05 水棲人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
帆村荘六は早く起き出ると、どうした
気紛
(
きまぐ
)
れか、洋服箪笥からニッカーと鳥打帽子とを取り出して、ゴルフでもやりそうな
扮装
(
ふんそう
)
になった。
赤外線男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
それでも
気紛
(
きまぐ
)
れな株さえやらなかったら、新婚当時養家で建ててくれた邸宅まで人手に渡るようなことにもならなかったかも知れなかった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
此
(
こ
)
の求婚を、
気紛
(
きまぐ
)
れだとか、冗談だとか、華族の娘を貰いたいと云うような単なる虚栄心だとは、何うしても思われなかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
▼ もっと見る
大将の
気紛
(
きまぐ
)
れで浮び上ったんだから影が薄い。調子に乗って馬鹿なことをやると、御用済みになっても、
旧
(
もと
)
の
木阿弥
(
もくあみ
)
に戻れないかも知れないぜ
ガラマサどん
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
私もまだ若かったものですから、
気紛
(
きまぐ
)
れに近くの写真屋へ行って、子供と一緒に写真を撮りましたが、その写真はいつの間にかなくなりました。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
かうして歩いてゐる事も、
気紛
(
きまぐ
)
れのやうな気がしたが、何しろ、四囲は
稀
(
まれ
)
な巨木の常緑濶葉樹が
欝蒼
(
うつさう
)
として繁つてゐる。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
その署名たるや、水に石を投げ込んだように、正確で、しかも
気紛
(
きまぐ
)
れな線の、波と
渦
(
うず
)
だ。そして、それが、ちゃんと
花押
(
かきはん
)
になり、小さな傑作なのだ。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
何かの拍子で、檻を放れたのが、
気紛
(
きまぐ
)
れにこの席へ姿を現わしたまでのようです。それを人間が狼狽するから、熊もまた狼狽しているものに相違ない。
大菩薩峠:30 畜生谷の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
(殿、ふと
気紛
(
きまぐ
)
れて出て、
思懸
(
おもいがけ
)
のう
懇
(
ねんごろ
)
申した
験
(
しるし
)
じゃ、の、殿、望ましいは
婦人
(
おなご
)
どもじゃ、何と
上﨟
(
じょうろう
)
を奪ろうかの。)
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
私は、最後の十銭の白銅を牛飯にかえて五六時間地上の生活をのばす代わりに、ついふらふらと
気紛
(
きまぐ
)
れでそれをこの動物園の入場料にかえてしまったものらしい。
動物園の一夜
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
それをご承知置き願って、これから僕の話すことを聞いて頂き度いのです。でないと、僕がここへ来て急に結婚に
纏
(
まと
)
まるのが、単なる
気紛
(
きまぐ
)
れのように当りますから
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
いつか、
梅雨前
(
つゆまへ
)
のじめ/\した、そして窒息させるやうに
気紛
(
きまぐ
)
れに照りつけるやうな、日が来てゐた。
哀しき父
(新字旧仮名)
/
葛西善蔵
(著)
物が歴史的になるためには、批評を通過するということだけでは足りない、噂という更に
気紛
(
きまぐ
)
れなもの、偶然的なもの、不確定なものの中を通過しなければならぬ。
人生論ノート
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
趙家の内の者は皆待ち焦れて、欠伸をして阿Qの
気紛
(
きまぐ
)
れを恨み、鄒七嫂のぐうたらを怨んだ。
阿Q正伝
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
雨は軒に響くというよりもむしろ風に乗せられて、気ままな場所へ
叩
(
たた
)
きつけられて行くような音を起した。その間に三味線の音が
気紛
(
きまぐ
)
れものらしく時々二人の耳を
掠
(
かす
)
め去った。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
しかし、彼はこの寒さに何の
気紛
(
きまぐ
)
れからして、あんなに物思ひに沈んだ表情でこの地帯を行くのかと、人は問ふかも知れぬ。それは過去をなつかしむ感情に駆られた結果である。
釜ヶ崎
(新字旧仮名)
/
武田麟太郎
(著)
仕方がなしに
暫
(
しばら
)
く捨てて顧みなかった花壇の花をいじくって、せっせと土を掘り返したり、種を
蒔
(
ま
)
いたり、水をやったりしましたけれど、それも一時の
気紛
(
きまぐ
)
れに過ぎませんでした。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「おや、水の字がさし合ひになつてゐる。死ぬ迄の
気紛
(
きまぐ
)
れに一つ考へ直してみよう。」
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
その時
気紛
(
きまぐ
)
れの夏の雨が、雷鳴と共に降って来た。今死ぬという間際にも、雨に濡れるということは決して嬉しいことではない。彼は雨を避けようとして、急いで
四辺
(
あたり
)
を見廻わした。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
父は、初めから
忰
(
せがれ
)
の
企画
(
もくろみ
)
を賛成してはゐなかつた。忰が生涯を捧げようとまでしてゐる理想に対しても、たゞ、ほんの若い者の
気紛
(
きまぐ
)
れ位にしか考えてゐなかつた。父は二言目にはよく
新らしき祖先
(新字旧仮名)
/
相馬泰三
(著)
なにしろ、ああいう
気紛
(
きまぐ
)
れな人だから、種々な服装をしてみるんだろうよ……ある
婦人
(
おんな
)
があの人を評した言葉が好い、
他
(
ひと
)
が右と言えば左、他が白いと言えば黒いッて言うような人だトサ
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その頃どこかの
気紛
(
きまぐ
)
れの外国人がジオラマの
古物
(
ふるもの
)
を横浜に持って来たのを椿岳は早速買込んで、唯我教信と相談して伝法院の庭続きの茶畑を
拓
(
ひら
)
き、西洋型の船に
擬
(
なぞら
)
えた大きな
小屋
(
こや
)
を建て
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
その
気紛
(
きまぐ
)
れの洋傘直しと
園丁
(
えんてい
)
とはうっこんこうの
畑
(
はたけ
)
の方へ五、六歩
寄
(
よ
)
ります。
チュウリップの幻術
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
いかに若い者が
気紛
(
きまぐ
)
れな家出をする世の中になっても、なおその中には正しく神に召された者がありうることを我々の親たちが信じていようとした、努力の
痕跡
(
こんせき
)
とも解しえられぬことはない。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「あなたのご意見にはどうも同意しかねますなあ」といかにもうれしそうな様子で、ルージンは
弁駁
(
べんぱく
)
した。「もちろん、一時の
気紛
(
きまぐ
)
れから出た軽薄な熱中もあれば、間違ったこともあります。 ...
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
それともまたほんの
気紛
(
きまぐ
)
れの旅行だろうか……。
蝗の大旅行
(新字新仮名)
/
佐藤春夫
(著)
気紛
(
きまぐ
)
れにこの土地へ
御輿
(
みこし
)
を
舁
(
かつ
)
ぎ込んだものだったが、銀子がちょっと
気障
(
きざ
)
ったらしく思ったのは、いつも
折鞄
(
おりかばん
)
のなかに入れてあるく
写真帖
(
しゃしんちょう
)
であった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
それは
気紛
(
きまぐ
)
れな妖精めいた、
豊麗
(
ほうれい
)
な逸楽的な、しかも、ある驚くべき霊智を持った人間以外は、とうていその不思議な感性に触れることが出来ないのだ。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
「いや、実に
気紛
(
きまぐ
)
れだ。僕達は二月続けて上ったから、占めたものだと思っていたら、もう些っとも上らない」
負けない男
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
中のどれかが、折々
気紛
(
きまぐ
)
れの鳥影の
映
(
さ
)
すように、
飜然
(
ひらり
)
と幕へ
附着
(
くッつ
)
いては、一同の姿を、
種々
(
いろいろ
)
に描き出す。……
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
相手が、あの
儘
(
まま
)
思い切ったと思ったのは、やっぱり自分の
早合点
(
はやがてん
)
だったと瑠璃子は思った。求婚が一時の
気紛
(
きまぐ
)
れだと思ったのは、相手を善人に解し過ぎていたのだ。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
旅に出ると、誰でも出来心になり
易
(
やす
)
いものであり、
気紛
(
きまぐ
)
れになりがちである。人の出来心を利用しようとする者には、その人を旅に連れ出すのが手近かな方法である。
人生論ノート
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
競うのは持ち前の負けじ魂に発しているのでその目的に
添
(
そ
)
わぬ限りは
妄
(
みだ
)
りに浪費することなくいわゆる死に金を使わなかった
気紛
(
きまぐ
)
れにぱっぱっと
播
(
ま
)
き散らすのでなく使途を考え効果を
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
蔭間
(
かげま
)
を呼んでみるなんぞといったことは、一時の
気紛
(
きまぐ
)
れに過ぎないので、それに執心を持って来たわけでもなんでもないから、そんなことは、どうでもいいように眠くなったのです。
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ルピック氏——ああ、そうか、また例の
気紛
(
きまぐ
)
れだな。うるさい
真似
(
まね
)
はよせ。一体、どうすりゃいいんだ! 行きたいっていうかと思うと、もう行きたくない。じゃ、いいから家にいろ。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
「ええ、僕は
気紛
(
きまぐ
)
れ者で困るんですが、芸の方はしっかりやるつもりですよ」
恐怖の口笛
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
『今昔物語』以来の多くの実例では、ウブメに限らず道の神は女性で喜怒恩怨が一般に
気紛
(
きまぐ
)
れであった。或る者はこれに逢うて命を危くし、或る者はその因縁から幸運を
捉
(
とら
)
えたことになっている。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「なにね、僕の説だってその実グラグラなんだから、試しに、眼で見えなかった人間を作り上げようとしたところさ」と法水は
気紛
(
きまぐ
)
れめいた調子で云ったが
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
取り分けて心配なのは
気紛
(
きまぐ
)
れなお父さんがひょっとして旅行を思い止まりはしまいかということだ。計画と実行を全く別問題にしている人だから実際心許ない。
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
こんな不潔な
絃歌
(
げんか
)
の
巷
(
ちまた
)
で、女に家をもたせたりして納まっている自分を
擽
(
くすぐ
)
ったく思い、ひそかに反省することもあり、そんな時に限って、
気紛
(
きまぐ
)
れ半分宗教書を
繙
(
ひもと
)
いたり
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
他の種類の俗物は時として
気紛
(
きまぐ
)
れに俗物であることをやめる。しかるにこの努力家型の成功主義者は、決して軌道をはずすことがない故に、それだけ俗物として完全である。
人生論ノート
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
その
頃
(
ころ
)
私は
或
(
あ
)
る
気紛
(
きまぐ
)
れな
考
(
かんがえ
)
から、
今迄
(
いままで
)
自分の身のまわりを
裹
(
つつ
)
んで居た
賑
(
にぎ
)
やかな
雰囲気
(
ふんいき
)
を遠ざかって、いろいろの関係で交際を続けて居た男や女の圏内から、ひそかに逃れ出ようと思い
秘密
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
生豌豆
(
なまえんどう
)
を一つ
抛
(
ほう
)
るように、
気紛
(
きまぐ
)
れにぽいと
啼
(
な
)
いていた
鶫
(
つぐみ
)
、ペンキ塗りの
喉
(
のど
)
から、やたらにごろごろという声を
絞
(
しぼ
)
り出すところを、にんじんもさっきから見ていた山鳩、それから例の
鵲
(
かささぎ
)
の尾の
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
吻
(
ほっ
)
と
呼吸
(
いき
)
を
吐
(
つ
)
く
状
(
さま
)
に吹散らして、雲切れがした様子は、そのまま
晴上
(
あが
)
りそうに見えるが、淡く濡れた
日脚
(
ひあし
)
の根が定まらず、ふわふわ
気紛
(
きまぐ
)
れに暗くなるから……また直きに降って来そうにも思われる。
妖術
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
なに手術? そりゃどんな名外科医があって
気紛
(
きまぐ
)
れにやらないとも限らないが、獏の方は身長二メートル半だし、鸚鵡は大きいものでもその五分の一に達しない。それではどこで接合するのだろう。
獏鸚
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
あの
気紛
(
きまぐ
)
れ者が、僅かの隙にずらかったのだな、千鳥足でフラフラとさまよい歩き、結局は自分の家か、例の清月とかなんとかへでも納まったのだろう——とりとめのない奴だ、と
呆
(
あき
)
れながら兵馬は
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
それも生やさしいものでなく、三抱えもありそうなのが、潮風に揉まれる為めか、あらゆる
気紛
(
きまぐ
)
れな形をしている。田子浦辺まで続いていると仙夢さんが説明してくれた。
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
松の下に、墓石や石地蔵などのちらほら立った丘のあたりへ来たとき、
先刻
(
さっき
)
からお島が
微
(
かすか
)
な予感に
怯
(
おび
)
えていた青柳の
気紛
(
きまぐ
)
れな思附が、到頭彼女の目の前に、実となって現われた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
気
常用漢字
小1
部首:⽓
6画
紛
常用漢字
中学
部首:⽷
10画
“気紛”で始まる語句
気紛屋