旧字:氣取
こうして笠を被って合羽を着て、大小を差して並んでみれば、それは物騒な破牢者とは誰にも気取られることではありません。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
茶話:04 大正七(一九一八)年 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
女教師はびつくりして振り向いたが、その驚きを人に気取られないやうにと思つて、子供に物を言つた。
祭日 (新字旧仮名) / ライネル・マリア・リルケ(著)
すると、こちらはすぐにそれを気取って、これまたはなはだ感情をそこねてしまった。こうした発端は無事な結末を予想させるはずがない。やがて一同は席についた。
罪と罰 (新字新仮名) / フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー(著)
(木村ニハ見エナイハズデアッタガ気取ッタカモ知レナイ)木村ハ寝室マデ手伝ッテ運ンデカラ「先生、今夜ノヿハ私ヲオ信ジニナッテ下サイ、オ嬢サンガスベテ御存ジデス」
「ただその様子を何げなしに見て来りゃあいいんだ。まご付いて気取られるなよ」
半七捕物帳:13 弁天娘 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット (新字新仮名) / ヴィクトル・ユゴー(著)
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
プラスビイユと部下の刑事等は別段急いだ様子もなく、最後に室内をズッと見渡して、何等気取られる様な痕跡のない事を確めた上悠々と引き上げた。ルパンの位置が困難になって来た。
そっと遠回しに、気取られないように聞くからね。イエスかノウか、それだけわかればいいんだもの。(間)もしノウだったら、もうここへは来て頂かないことにしましょうね。そうだわね。
ワーニャ伯父さん:――田園生活の情景 四幕―― (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
いなせに、腰低く、べらべらと並べ立てて近づく鳶の者、片手に、こぶしを固めて、いざと言わば、張り倒そうとしているのだが、気の上ずった、心の狂った長崎屋には、それが、気取れない。
誰か庵寺の玄関に来ていることを気取ったけれど、青嵐は承知しながら聞流しにしている。米友がかえって落着かない気持で
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「ああ、それでよかった。うッかり先生が知らずに行ったりなどしたら、武蔵が気取って、どんな先手を打つかもしれねえ」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
若旦那に気取られぬように、出来るだけ顔を近付けて見ましたけれども、白い紙はやはり白い紙で、いくら眼をこすりましても、物が書いてある模様は見えません。
茶話:02 大正五(一九一六)年 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
彼は相手に気取られまいと苦心しながら、ラスコーリニコフの方へ意地わるげな視線を投げ、いまいましい貧乏男が行ってしまって、自分の番の来るのをじれったそうに待っている。
罪と罰 (新字新仮名) / フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー(著)
「それは大丈夫だと思います。かたく申しつけてまいりましたから——あなた様をはじめ、一同道場にいるようにつくろって、よもや、源三郎一派に気取られるようなことはあるまいと存じます」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「あなたのお内ではもう何か気取つてゐるのですか。」
駆落 (新字旧仮名) / ライネル・マリア・リルケ(著)
大菩薩峠:16 道庵と鯔八の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
といって、これから大がかりに、所司代やお目付が手を廻せば、向うで気取ってしまうから、この探索は弦之丞様一人がいいという御方針になったらしい。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
暗に乗じて、捕虜が逃走を企てたことは確実で、それを気取った一同は、同じく暗の中を手さぐりで、捕虜を追いかけると同時に、この室を退散。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)