横目よこめ)” の例文
長庵は横目よこめでジロリとなが空嘯そらうそふけば十兵衞は何れ歸村きそんを致せし上御禮の仕樣もありぬべしとちかしき中にも禮義れいぎを知る弟が心ぞしほらしき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その水へ半分顔をひたしておよぎながら横目よこめで海岸の方を見ますと、泥岩でいがんの向うのはずれは高い草のがけになって木もゆれ雲もまっ白に光りました。
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
彼は横目よこめで時計を見た。時間は休みの喇叭らっぱまでにたっぷり二十分は残っていた。彼は出来るだけ叮嚀ていねいに、下検べの出来ている四五行を訳した。
保吉の手帳から (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その絵巻えまきひろげた川筋かわすじ景色けしきを、るともなく横目よこめながら、千きちおに七はかたをならべて、しずかにはしうえ浅草御門あさくさごもんほうへとあゆみをはこんだ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「かまきりもおおきいから、かまをげて、横目よこめで、じっとひきがえるをていたぞ。」と、おとうさんは、こたえました。
宿題 (新字新仮名) / 小川未明(著)
さてやがて乗込のりこむのに、硝子窓ガラスまど横目よこめながら、れいのぞろ/\と押揉おしもむでくのが、平常いつもほどはだれ元気げんきがなさゝうで、したがつてまで混雑こんざつもしない。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
矢倉温泉の駅から、東京の方に近い第一番めの駅は、横目よこめ駅で、そこに、横目町という、小さい町があるのです。
天空の魔人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
おだやかならぬ一族の様子がかみに聞えた。横目よこめ偵察ていさつに出て来た。山崎の屋敷では門を厳重にとざして静まりかえっていた。市太夫や五太夫の宅は空屋になっていた。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
われわれとて、軒並食って歩いたわけではないが、通りがかりに横目よこめで見て、上・中・下どんな寿司を売る店か分るのである。もちろん、こうなるまでには、大分だいぶ寿司代をはらっている。
握り寿司の名人 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
勘次かんじたけはどうしたんだな」巡査じゆんさ横目よこめ勘次かんじていつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
蝸牛かたつむりめがこたへてつた、『はやい、はやい!』と横目よこめめて——
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
ラクダルはさまをぢろり横目よこめたが、だまつてた。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
時に獄丁ごくてい横目よこめと申す者が
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
立会たちあう“横目よこめ
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
七輪しちりんうへ見計みはからひ、風呂敷ふろしき受取うけとつて、屋臺やたいち、大皿おほざらからぶツ/\とけむりつ、きたてのを、横目よこめにらんで、たけかはしごきをれる、と飜然ひらりかはねるうへ
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さぎをつかまえてせいせいしたとよろこんだり、白いきれでそれをくるくるつつんだり、ひとの切符きっぷをびっくりしたように横目よこめで見てあわててほめだしたり、そんなことを一々考えていると
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
くるおとこは、昨日きのうおなじほどのおもかせたのです。うしは、あせらしてくるまきました。そのうち、あんころもちをみせまえへさしかかると、おとこは、ちょっとみせほう横目よこめ
ある男と牛の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
拜見はいけん致しますから何卒どうぞ夫までお寢なさらずにお待なすつて下さいといひつゝ一寸ちよつと男の顏横目よこめで見たはお光の方に深き意の有とも知ず音羽小町と言るゝ程の美人びじんにてらされ庄兵衞五たい宛然さながらとろける如くいつもピンシヤンる娘が今日に限つて自分のはうから夜がふけたらば忍んで行うと言のは
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
横目よこめかまちをすかして、片頬かたほゑみふくむで、たまらないといつたやうなこゑ
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)