くわ)” の例文
あのう、今しがたわしが夢にの、美しい女の人がござっての、回向えこうを頼むと言わしった故にの、……くわしい事は明日話そう。南無妙法蓮華経なむみょうほうれんげきょう
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さういふ点で江戸期の釣書にはキスやボラの釣場、海図などをくわしく説明し、先づ東京湾の半分は探査が行き届いてゐる。
日本の釣技 (新字旧仮名) / 佐藤惣之助(著)
浄めると云うのはくわしく調べるのである。この取調べの末に、いつでも一人や二人は極楽へさえやって貰うのである。
二郎は心のうちで、どうして姉が斯様こんな山道をくわしくしっていようか……斯様なに暗いのにどうして斯様なにみちが分るだろうかといぶかしがりながらるいていた。
稚子ヶ淵 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ただ一人遺っていた太郎坊は二人の間の秘密をもくわしく知っていたが、それも今むなしくなってしまった。
太郎坊 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
此の間母が江戸見物に行った時孝助にめぐり逢い、くわしい様子を孝助から残らず母が聞取り、手引をして我を打たせんと宇都宮へ連れては来たが、義理堅い女だから
「滅相もない。この道を行けば棚倉たなぐらへ出てしまう。雲巌寺へはズット後戻りして、細い道を右へ曲って行かねば駄目だ」と、くわしく道を教えられて有難いやらガッカリやら。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
なおゴルチーン石壁法についてくわしく知ろうと思う者は、次の書に就いて読むがよかろう。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
実はその少し出立前しゅったつまえに私の知って居る薬舗くすりみせの紹介でいて来たのだからくわしい事はよく知らぬけれども、何してもラサ府では空飛ぶ鳥も落ちるようなお医者さんで非常な評判だ。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
自分の胸が事の真相をいちばんくわしく知っているのだ。腕を組んでみた。が、しばらく彼は窮鼠きゅうそのかたちであった。眼を光らせて、前にならんだ官員の顔をじろじろながめていた。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
乞食の老人は安宅先生や園芸手の葛岡の消息にくわしくそれをわたくしに告げ知らせて呉れましたほか、わたくしに面白そうな自然の現象や乞食自体の生活に就ても話して呉れました。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
くわしいね。道理で千代子と浩二はこの間帳面を持って隠居へ戸籍調べに来たよ」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
病勢が一寸防ぎ止められているそうです。これから熱が出ず食慾が増してゆけばもう大丈夫なんです。然し衰弱がひどいから安心は出来ないそうですが、種々くわしく手当を教わって来ました。
生あらば (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「そちは、越前に永く住いしていたこともあり、わけてこの地方から朝倉家の本城一乗谷の地の理にはくわしいはずであるに、何故、信長に献言もせず、小さい先鋒の功名などを争っておるか」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(のう、ご親類の、ご新姐しんぞさん。)——くわしくはなくても、向う前だから、様子は知ってる、行来ゆきき、出入りに、顔見知りだから、声を掛けて
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
兄の自滅をするという事をくわしく知って居ながら、ういう不都合をするとは云おう様ない人非人にんぴにん
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
くわしくは漁夫に案内させるのがよいが、船釣ばかりしている漁夫は、又案外に磯の海溝や岩礁の潮流や、魚の附き工合いを知らぬもので、これはむしろ潜水に経験のある者とか
荒磯の興味 (新字新仮名) / 佐藤惣之助(著)
晩餐後ばんさんご喫茶きつちやがはじまると、櫻木大佐さくらぎたいさをはじめ同席どうせき水兵等すいへいらは、ひとしくくちそろへて『御身おんみこのしま漂着へうちやく次第しだいくわしく物語ものがたたまへ。』といふので、わたくし珈琲カフヒー一口ひとくちんで、おもむろにかたした。
わたくしはここの場面をもくわしい説明することを省く。
雛妓 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
翌日とりも置かず篠田を尋ねて、一部始終くわしい話を致しますると、省みて居所も知らさないでいた篠田は、蒼くなってふるえ上ったと申しますよ。
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おい/\姉さん何だかくわしい訳は知りませんが、聞いていれば此の人は人違いでお前さんに悪戯じょうだんをしたのだそうだから、腹も立とうが成り替ってわしが詫びましょうから
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そいつをくわしく説明したら、艶笑魚アタリ草紙でも書かないと追つかぬ。
日本の釣技 (新字旧仮名) / 佐藤惣之助(著)
武村兵曹たけむらへいそうくわしくおまへからかたつてあげい。』
くわしくは云うにも及ばないけれど、……若いお嬢さんさ、その色の白いお嬢さん——恩人だし、仙女、魔女と思うから、お嬢さんと言うんです。
見ているうちに喧嘩となり、汝の父を討ったる刀、中身は天正助定なれば、是を汝に形見としてつかわすぞ、又此のつゝみうちには金子百両とくわしく跡方あとかたの事の頼み状、これをひらいて読下よみくだせば
この両様ともくわしくその姿を記さざれども、一読の際、われらが目には、東遊記に写したると同じさまに見えていと床し。
一景話題 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
猶お御老中方に長二郎を初め其の関係かゝりあいの者の身分行状、並に此の事件の手続等をくわしくおたゞしになりましたから、御老中方から明細に言上ごんじょういたされました処、成程半右衞門はんえもん妻柳なる者は
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
するとだ……まだその踏切を越えて腕車くるまを捜したッてまでにもかず……其奴そいつ風采ふうつきなんぞくわしく乗出して聞くのがあるから、私は薄暗がりの中だ。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
左様な事を申さず早くけ、もし此の事が人の耳にりなば飯島の家に係わる大事、くわしい事は書置かきおきに有るから早くかぬか、これ孝助、一旦主従しゅうじゅうの因縁を結びし事なれば、あだは仇恩は恩
赤門寺のお上人は、よく店へお立寄り下さいますが、てまえどもの方の事にも、それはおくわしゅうございましてな。
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私よりおくわしいと存じますが、浅草の観世音に、旧、九月九日、大抵十月の中旬なかば過ぎになりますが、その重陽ちょうようせつ、菊の日に、菊供養というのがあります。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その因縁いんえんでおいらちょいちょい父親おやじの何とかてえ支那の家へ出入でいりをするから、くわしいことを知ってるんだ。
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その因縁でおいらちよいちよい父親おやじの何とかてえ支那の家へ出入をするから、くわしいことを知つてるんだ。
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
人にも言わぬ積り積った苦労を、どんなに胸にたくわえておりましたか、その容体ではなかなか一通りではなかろうと思う一部始終を、くわしく申したのでありまする。
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まして打明けた蝶吉の身の上をくわしく知ってからは、うべからざる同情の感に打たれたのである。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
早瀬はくわしく懺悔ざんげするがごとく語ったが、都合上、ここでは要を摘んで置く。……
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
けれども、軍隊のことに就いては、何にも知っちゃあいないので、赤十字の方ならばくわしいから、病院のことなんぞ、悉しく謂って聞かしてやったです。が、そんなことは役に立たない。
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
けれども、軍隊のことについては、何にも知つちやあゐないので、赤十字の方ならばくわしいから、病院のことなんぞ、悉しくいつて聞かしてつたです。が、其様そんなことは役に立たない。
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
客はこの近辺ちかまわりの場所には余り似合わぬ学生風、何でも中洲に住んでるとより外くわしくは知らないが、久しい間の花主とくいで紋床はただ背後うしろの私立学校で一科目預っている人物と心得て、先生
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いきなり(目は一つだけか。)と言われてから以来こっち、ほんとうに大師匠だと恐入って、あとあとまでも、くわしくこまかく、さしあいのない処でさえあれば、話すのを、按摩も、そっちこっちから
今もって、取留めた、くわしい事は知らないんだが、それも、もう三十年。
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小さな白髪の祖母おばあさんの起居たちいの様子もなしに、くわしく言えば誰が取次いだという形もなしに、土間から格子戸まで見通しのかまちの板敷、取附とっつきの縦四畳、框を仕切った二枚の障子が、すっと開いて
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ほかの二三の新聞にもいてあるですが。このA……が一番くわしい。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ああ、看護婦がいいます、勿論くわしいことは話さない。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「大分くわしいじゃないか。」
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「いずれくわしいお話を。」
露萩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
くわしく聞こうよ。」
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)