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怏々
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おうおう
ふりがな文庫
“
怏々
(
おうおう
)” の例文
ところが、ブロム・ボーンズときたら、恋と
嫉妬
(
しっと
)
ですっかりいためつけられて、ひとりで片隅に
坐
(
すわ
)
りこみ、
怏々
(
おうおう
)
としていたのである。
スリーピー・ホローの伝説:故ディードリッヒ・ニッカボッカーの遺稿より
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
かれはその頃、すでに小牧の軍勢を収め、清洲をひき払い、浜松城に帰って、
怏々
(
おうおう
)
と、楽しまざる数日をここに過していた時だった。
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
母と姉とを非道に殺された私と父とは、不快なあさましい記憶から絶えず心を
苛
(
さい
)
なまれながら、
怏々
(
おうおう
)
としてその日を暮して居りました。
ある抗議書
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
彼は
怏々
(
おうおう
)
として楽しまず、
狂悖
(
きょうはい
)
の性は
愈々
(
いよいよ
)
抑え
難
(
がた
)
くなった。一年の後、公用で旅に出、
汝水
(
じょすい
)
のほとりに宿った時、遂に発狂した。
山月記
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
この
報知
(
しらせ
)
を耳にした時、豊後守の驚愕は
他
(
よそ
)
の見る眼も気の毒なほどで、
怏々
(
おうおう
)
として楽しまず自然
勤務
(
つとめ
)
も
怠
(
おこた
)
りがちとなった。
北斎と幽霊
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
▼ もっと見る
春琴はこの時から
怏々
(
おうおう
)
として楽しまず間もなく
脚気
(
かっけ
)
に
罹
(
かか
)
り秋になってから重態に
陥
(
おちい
)
り十月十四日
心臓麻痺
(
しんぞうまひ
)
で
長逝
(
ちょうせい
)
した。
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
主上が、
怏々
(
おうおう
)
として憂愁の日を送られていることを心配した者たちが、この小督に目をつけたのも無理はなかった。
現代語訳 平家物語:06 第六巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
彼はこの城の先祖の不正直なことを知って
怏々
(
おうおう
)
として楽しまなかった、それから幾分彼は一般に人間というものは不正直なものであると思うようになった。
作男・ゴーの名誉
(新字新仮名)
/
ギルバート・キース・チェスタートン
(著)
いよいよ財産は殖えるばかりで、この家安泰無事長久の有様ではあったが、若大将ひとり
怏々
(
おうおう
)
として楽しまず
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
へいげんは金時計を失いて、たちまち散策の興覚め、すごすご家に帰りて、燈下に愛妾と額を
鳩
(
あつ
)
めつつ、その失策を悔い且つ悲しみ、
怏々
(
おうおう
)
として
楽
(
たのし
)
まざりし。
金時計
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
男爵を得しも、実は生まれ所のよかりしおかげ、という者もありし。されば剛情者、わがまま者、
癇癪
(
かんしゃく
)
持ちの通武はいつも
怏々
(
おうおう
)
として不平を
酒杯
(
さけ
)
に漏らしつ。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
気の
所為
(
せい
)
か余り込んでいなかった。殊に僕の前に坐っていた商人らしい男は
怏々
(
おうおう
)
として幾度か溜息を吐いた。
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
客と共に
謔浪
(
ぎゃくろう
)
した玄機は、客の散じた後に、
怏々
(
おうおう
)
として楽まない。夜が更けても眠らずに、目に涙を
湛
(
たた
)
えている。そう云う夜旅中の温に寄せる詩を作ったことがある。
魚玄機
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
されどもその一旦の
憤
(
いきどほり
)
は、これを斥けしが為に消ゆるにもあらずして、その必ず得べかりし物を失へるに似たる
怏々
(
おうおう
)
は、吾心を
食尽
(
はみつく
)
し、
終
(
つひ
)
に吾身を
斃
(
たふ
)
すにあらざれば
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
あたら非凡な構想を胸に抱きながら、
荏苒
(
じんぜん
)
として日を送り、
怏々
(
おうおう
)
として楽しまなかったのであるが、遂に一日あるきっかけから、日頃の
鬱憤
(
うっぷん
)
を晴らすことが出来たのである。
メフィスト
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
心に物を思えばか、
怏々
(
おうおう
)
たる顔の色、
動
(
ややと
)
もすれば
太息
(
といき
)
を吐いている折しも、表の
格子戸
(
こうしど
)
をガラリト開けて、案内もせず
這入
(
はい
)
ッて来て、
隔
(
へだて
)
の障子の
彼方
(
あなた
)
からヌット顔を差出して
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
自慢の種になるような手錬の者がいないから、殿様は
怏々
(
おうおう
)
としてたのしまない。
落語・教祖列伝:01 神伝魚心流開祖
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
愛
(
いと
)
しい人形ではいなかったから、彼女は
怏々
(
おうおう
)
と楽しまない日がつづいて、そのうちに坪内先生のお
棺
(
ひつぎ
)
を送り、すぐまた、五十余年を、一日も
傍
(
かたわら
)
を離れなかった、浜子の老母が、ぽくりと
朱絃舎浜子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
永楽帝の
儲
(
ちょ
)
を立つるに当って、
丘福
(
きゅうふく
)
、
王寧
(
おうねい
)
等
(
ら
)
の武臣
意
(
こころ
)
を高煦に属するものあり。高煦
亦
(
また
)
窃
(
ひそか
)
に戦功を
恃
(
たの
)
みて期するところあり。
然
(
しか
)
れども永楽帝
長子
(
ちょうし
)
を立てゝ、高煦を漢王とす。高煦
怏々
(
おうおう
)
たり。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
教職員を指揮して重要書類を保護させ、防火に尽力せしめた沈着勇敢な態度は人々の賞讃する処となったが、事後、三番町の下宿に
謹慎
(
きんしん
)
して何人にも面会せず、
怏々
(
おうおう
)
として
窶
(
やつ
)
れ果てているので
少女地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
時には遠方の納屋庭で何か
怏々
(
おうおう
)
としている牝牛の啼きごえも聞いた。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
怏々
(
おうおう
)
として楽しまざる日を送っていた。
世界怪談名作集:14 ラザルス
(新字新仮名)
/
レオニード・ニコラーエヴィチ・アンドレーエフ
(著)
「安土退去このかた、光秀の胸に
怏々
(
おうおう
)
として
霽
(
は
)
れやらぬものあることを、お
汝
(
こと
)
としたことが、察してはいなかったのか。——
左馬介
(
さまのすけ
)
」
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
が、忠次郎は
怏々
(
おうおう
)
として楽しまなかった。その上、兄弟についての世評が、折々二人の耳に入った。それは、決して良い噂ではなかった。
仇討三態
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
爾来
(
じらい
)
若殿頼正の心は
怏々
(
おうおう
)
として楽しまなかった。第二回目を試みようとしても応ずる者がないからである。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
菊太郎君が電車に乗ろうと言っても、僕は応じなかった。
怏々
(
おうおう
)
として、学業が手につかない。二三日、悲観のドン底にいるのだった。頭が好いから、よく覚えている。
勝ち運負け運
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
左門の心は然し
怏々
(
おうおう
)
として晴れなかつた。文子があまりにいぢらしく、痛々しくみえてならないのである。無残にも卓一に棄てられたやうな、哀れの感が深いのである。然しそれも奇妙な話だ。
吹雪物語:――夢と知性――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
権兵衛兄弟は次第に
傍輩
(
ほうばい
)
にうとんぜられて、
怏々
(
おうおう
)
として日を送った。
阿部一族
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
そうだろう、何しても、
怏々
(
おうおう
)
と楽しめない。たえず曇天にあたまを押しかぶせられているようなここちから自分を救い出せんのだ。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼女は、
怏々
(
おうおう
)
として、暗いむすぼれた心持で電車に乗った。今までは楽しく明るい世の中が、何だか急に
翳
(
かげ
)
って来たようにさえ思われた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
鏡葉之助はその時以来
怏々
(
おうおう
)
として楽しまなかった。自然心が
欝
(
うっ
)
せざるを得ない。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
手張りをやる元気もなく、得意を
失策
(
しくじ
)
らない程度で
怏々
(
おうおう
)
として勤めつゞけた。
勝ち運負け運
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
一週間ぐらゐは
怏々
(
おうおう
)
として楽しまなかつたやうである。
牧野さんの死
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
鵜沼の猛虎——といわれる豪勇な彼も、近頃は、
怏々
(
おうおう
)
と心の楽しまない顔だった。病気と称して、一切、人を避けているのである。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
が、その人達を招いた彼
丈
(
だけ
)
は、たゞ一人
怏々
(
おうおう
)
たる心を
懐
(
いだ
)
いて、
長閑
(
のどか
)
な春の日に、悪魔のような考えを、考えている。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
斯うなると
覿面
(
てきめん
)
だ。その週は
怏々
(
おうおう
)
として楽まない。
脱線息子
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
それが
募
(
つの
)
ると、
怏々
(
おうおう
)
として楽しまない人間になった。復讐の意志さえなくなって、人に
面
(
おもて
)
を見られるのも
厭
(
いと
)
うようなふうに変って来た。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
が、生死の間に彷徨している彼らは、みんな
怏々
(
おうおう
)
として楽しまなかった。
乱世
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
勝家は、玄蕃允へ、六回もやった使者が、ついに全くの
徒事
(
とじ
)
と
帰
(
き
)
して、
怏々
(
おうおう
)
として楽しまず、万事休す——とまで歎じていた。そして
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
が、瑠璃子の心は、
怏々
(
おうおう
)
として楽しまなかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
が、それは用いられず、堂上の笑いぐさとなり、みかどのご
逆鱗
(
げきりん
)
にふれたらしくもある。……いらい、
怏々
(
おうおう
)
として、浮かぬお顔。
私本太平記:11 筑紫帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
怏々
(
おうおう
)
として御憂悶の深かった上皇の侍側にあって、一糸、烏丸光広などと共に、
陰
(
かげ
)
にあって、勤王精神に
篤
(
あつ
)
かった傑僧であった。
随筆 宮本武蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
怏々
(
おうおう
)
と、楽しまない日を、幾月もうそこで暮したことか、人知れず
葉隠
(
はがく
)
れに燃えて腐って、やがて散るしかない——
真紅
(
しんく
)
の花の悩みのように。
夏虫行燈
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
然りわれは、
兄
(
けい
)
と
袂
(
たもと
)
を分ってより、女色の
檻
(
おり
)
に飼われ、
懶惰
(
らんだ
)
の肉を
蝕
(
むしば
)
まれて生く、
怏々
(
おうおう
)
として無為の日を送るすでに五年。
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
世間の見えぬ所では、こういう世相に
怏々
(
おうおう
)
として、ふんまん
遣
(
や
)
る
方
(
かた
)
ない正直まッ法な良民も少なくなかったにちがいない。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その推移をながめながら、
怏々
(
おうおう
)
と、ひと知れず心を苦しめていたひとは、この
国舅
(
こっきゅう
)
とよばるる車騎将軍——
董承
(
とうじょう
)
であった。
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それゆえ、小牧山からもどる途中も、
途々
(
みちみち
)
、
怏々
(
おうおう
)
と心も楽しまず、さだめし御不審にも思われたでござろうが、どうか、御疑念をはらして下さい。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
日々、朝廷に上がって、政務にたずさわっていても、
王允
(
おういん
)
はそんなわけで、少しも勤めに気がのらなかった。心中ひとり
怏々
(
おうおう
)
と
悶
(
もだ
)
えを抱いていた。
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それからというもの、呂布は日夜酒宴に溺れて、帳にかくれれば貂蝉と戯れ、家庭にあれば厳氏や娘に守られて、しかも酒がさめれば
怏々
(
おうおう
)
としていた。
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして、それがすんでも灯を横に、良人の影は、
怏々
(
おうおう
)
と揺れ悩んでいるかにみえる。久子は、側に
冷
(
ひ
)
んやり
侍
(
じ
)
した。多聞丸も二郎丸もみな寝たらしい。
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
怏
漢検1級
部首:⼼
8画
々
3画
“怏々”で始まる語句
怏々鬱々