心痛しんつう)” の例文
園長邸を訪ねた帆村は心痛しんつうしている夫人をなぐさめ、遺留いりゅうの上衣を丹念に調べてから何か手帖に書き止めると、ほかに園長の写真を一葉借り
爬虫館事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しかし、いま其樣そんこと悠長いうちやうかんがへてるべき塲合ばあひでない。此時このとき心痛しんつうじつ非常ひじやうであつた。櫻木大佐さくらぎたいさとの約束やくそくすで切迫せつぱくしてる。
あひだ婦人ふじん心痛しんつう恐怖きようふはそも、をしぼるあせつて、くれなゐしづく垂々たら/\ちたとふ。くるしみまたきはまつて、ほとん狂亂きやうらんして悲鳴ひめいげた。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ロミオ はて、それは深切しんせつ爲過しすごし。いっそ迷惑めいわく。おのが心痛しんつうばかりでも心臟しんざういたうなるのに、足下きみまでがいてくりゃると、一だんむねせまる。
へてれとらさぬ用心ようじんむかし氣質かたぎいつこくを立通たてとほさする遠慮ゑんりよ心痛しんつうおいたはしやみぎひだり御苦勞ごくらうばかりならばおよめさまなり舅御しうとごなり御孝行ごかうかう御遠慮ごゑんりよらぬはず
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
このごろの楽しい生活のあいだに、ただ一つこの心痛しんつうがわたしの心をくもらせた。
しかるに、大佐たいさ言葉ことばと、その顏色かほいろとでさつすると、その心痛しんつうみなもとんでも其處そこおこつたらしい、わたくしいそげんをつゞけた。
「実に容易ならぬ密報をうけたのじゃ」と軍団長は青白い面に深い心痛しんつうみぞりこんで一同を見廻した。「白軍にはおどろくべき多数の新兵器が配布されているそうな。 ...
(新字新仮名) / 海野十三(著)
ぎしりするほど腹立はらたゝしく、此老婆このばゞはりたほすにことけれど、たゞならぬ美尾みを心痛しんつういてはにまでおよぼすべき大事だいじむねをさすりて、わたしとても男子おとこはし御座ござりますれば
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
日頃ひごろ沈着ちんちやくで、何事なにごとにも動顛どうてんしたことのない大佐たいさおもてには、此時このとき何故なにゆゑか、心痛しんつうきはまりなきいろえたのである。
ふーむ、こんなにわしに心痛しんつうをさせるあの油学士の奴は、憎んでもあまりある奴じゃ
婦人をんなはかなしとおももひたえて、松野まつの忠節ちうせつこゝろより、われ大事だいじもふあまりに樣々さま/″\苦勞くらう心痛しんつう大方おほかたならぬこゝろざしるものから、それすらそらふくかぜきて、みゝにだにめんとせざりし
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)