じょう)” の例文
おうめにお茶をれて、と云いながら、おみきは喜六を家へ招き入れた。その家は六じょうと四帖半二た間に、かわやと勝手という造りだった。
枡落し (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
序でに酒屋へ行って酒を二升、味淋みりんを一升ばかり、それから帰りに半紙を十じょうばかりに、煙草を二玉に、草鞋わらじの良いのを取って参れ
「ノート?」信一郎は、不審いぶかりながら、トランクき廻した。いかにもトランクの底に、三じょうつづりの大学ノートを入れてあるのを見出みいだした。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
厭わないがどうも出来ない。写生帖を机の上へ置いて、両眼がじょうのなかへ落ち込むまで、工夫くふうしたが、とても物にならん。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
枕山が同人集第三編に「温卿ノ書ハじょうノ出ルゴトニすなわち唐宋ノ名家トソノ工巧ヲ争フ。マタ元ノ人顧玉山こぎょくざんノ風ヲ慕フ。」
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
と伊賀の暴れん坊は、大あくびをかみしめながら、さし出した血刀を部下の一人に、懐紙一じょうですっとぬぐわせつつ
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
夕顔だの、松風だの、部屋の名は源氏のじょうの名をつけてある。桐壺は、離れだった。侍と云えば叔父ではないか、榊原健吉ではないか、と臆病おくびょうが先に立つ。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
トラ十へ、これをさしいれたいから頼みますと、にぎりずしが一おりと、鼻紙はながみじょうとをもってきたのです。
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
二人に別れて、やがて小糠雨こぬかあめを羽織に浴びながら、団子坂の文房具屋で原稿用紙を一じょう買ってかえる。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
ある教育家の子息むすこが薬局の主人と乗りで、十万金を投じて建てたものだったが、葉子の契約した四階の部屋は畳数も六じょうばかりで、瓦斯ガスはあったが、水道はなかった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ぢやが、海苔のりじょう煎餅せんべいの袋にも、贈物おくりものは心すべきぢや。すぐに其は対手あいてに向ふ、当方の心持こころもちしるし相成あいなる。……将軍家へ無心むしんとあれば、都鳥一羽も、城一つも同じ道理ぢや。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
彼は一滴の酒も飲まぬが、彼は色にはタワイもなく酔う。曾て戯れにある人のはがきじょう
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
源氏はその中のことにできのよいものでしかも須磨すま明石あかしの特色のよく出ている物を一じょうずつ選んでいながらも、明石の家のかれてある絵にも、どうしているであろうと、恋しさが誘われた。
源氏物語:17 絵合 (新字新仮名) / 紫式部(著)
栄二は傘をすぼめて戸袋に立てかけ、格子をあけてはいると、あがはなの六じょうではいつもの小僧が、麻の袋を持って板に打ちつけていた。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
面箱の底へしておいた、「ばてれん口書くちがき」の一じょうも、ぜひ、何とかして取り返さなければならない。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
油障子をめた小さな切窓から、朝あけのようにほの白い光がさしこんで、六じょうばかりの狭い部屋の中をさむざむとうつし出している。
柳橋物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
金泥きんでいのふすまに信玄しんげん今川家いまがわけからまねきよせた、土佐名匠とさめいしょうの源氏五十四じょう絵巻えまきりまぜがあるので、今にいたっても、大久保長安おおくぼながやす家中かちゅうみな源氏閣とよんでいる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とっつきの二じょうで、素読をさらっていた弟にそうこえをかけてあがったが、松之助は顔を隠すようにしてなんとも答えなかった。
日本婦道記:糸車 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
源氏のじょうが何冊も、かたわらに重ねてある。小机にひらかれてあるのは、その中の「空蝉うつせみの巻」で
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
畳八じょうほどのがらんとした、蒸れたようなほのかにかび臭い匂いのする部屋だった、北側に小窓があり片方は壁、片方はふすまになっていた。
晩秋 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
命をうけて、松平源次郎は、黙念と一礼して、ふところから一じょうじ物を取り出して読む。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこは十じょうほどの平座敷で、上段はなく、三方に丹塗にぬり勾欄こうらんのある廊をまわし、坐ったままひろい展望をたのしむことができた。
別にこれぞという物もなかったが、その懐紙挟かいしばさみの中に、一じょうの絵図がしのばせてあった。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
上りはなの三じょう轆轤鉋ろくろがんなを据え、一日じゅう椀の木地を作っているが、いい腕なのでかなりなかせぎになるのだ、といわれていた。
落葉の隣り (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
石神堂のぬれ縁に腰をかけて、伊兵衛が振分ふりわけの中から解き出したのはいうまでもなく、夜光の短刀の来歴をつぶさにした「ばてれん口書くちがき」の一じょうと、洞白どうはく仮面めんとを秘めたあの箱です。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
十二じょうほどの広さで、六尺四方の大きな炉が切ってあり、だんをとるのも、食事をし茶を飲むのも、すべてそこですることにきめられていた。
ちくしょう谷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
世阿弥がお綱に託した隠密遺書はどうしたろう? 一念、り返さずにはおけないのはあの血筆の一じょうだ。あれをつかんで遺志をとげないうちは、命のある限り、闘わなければならない。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もちろん古い木造の日本建築で、表に面した六じょう二間をぶっとおして、古畳の上に机と椅子を並べたのが編集室なんだった。
陽気な客 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
つては、将軍の台覧にも供え、元禄年中の城主柳沢吉保やなぎさわよしやすも、垂涎すいせんかなかったといわれる——土佐光吉とさみつよしの歌仙図に近衛信尹このえのぶたださんのある——紙数にすればわずか十二、三枚の薄いじょうだった。
夏虫行燈 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
仕切方というのは奉行所の中でも人数が少ない、八じょうばかりの役部屋の三方は戸納で、そこにはぎっしり書類が詰っている。
思い違い物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そして、ふところから例の血筆けっぴつの一じょうをとりだして、お綱の手へ持たせて
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
狭い玄関には、たつ女が出迎えていて、すすけたような六じょうの客間へ案内をし、言葉少なに、みまってもらった礼を述べた。
門下生たちは、高台付きの白扇はくせんか、箱入蝋燭ろうそくか、小菊紙十じょうほどな品物に、半年分の授業料として、金一(百ぴき)をつつんで上に「謝儀しゃぎ」と書き、うやうやしく、添えて出すのが、例なのである。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
聞いているうちに、同心と書役かきやくが来たので、千之助は二階へあがっていった。現場は端にある八じょうで、井田十兵衛が退屈そうにたばこをふかしていた。
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
首の細いおそめ人形や久松人形も血泥ちどろによごれて、箱と一緒に踏みつぶされていたが、ふと、有村が隙を狙って拾い取ったのは、その人形とともに箱の中から飛びだしていた桐油紙とうゆで包んだ一じょう秘冊ひさつ
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私は長に、タクシーをこっちへ廻すように云ってくれ、と頼み、せいぜい四じょう半くらいの狭い、ごたごたした部屋へ同伴者といっしょにあがった。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
『余の儀でもないが、今度は、前よりも重大なのだ。殿のお居間に近い御文庫のうちから、先頃紛失した板絵図どころではない、公儀へお届けの地割図面と、お邸の間取図の二じょうの写しが、いつの間にか失くなっているのじゃ』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
じょうはんと六帖の、裏長屋のその住居には、火のない長火鉢と小さな茶箪笥ちゃだんす、そして竹行李たけごうりが一つしかなかった。
へちまの木 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
じょうの血書!
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
朝日屋は堀一橋の近くで、河岸かし通りに面している。間口六尺、奥行十二尺。五色揚を揚げて売る店台みせだいと狭い三尺の土間、部屋は六じょうが一と間だけしかない。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
発着所の桟橋さんばしと道を隔てたところに建ってい、ほんの二坪足らずの小屋であるが、奥に畳が二じょう敷いてあった。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
こちらの三じょうの小部屋からは見えないけれども、炉のあるその部屋には十人ばかりも滞在客がいる筈である。
雨あがる (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そこは六じょうを二つつなげたような、縦に長い部屋で、向うに腰高窓があり、左右は三段の戸納とだなになっていた。
土堤の上はずっと上流の徳行とくぎょう町まで続く道があり、人の往来はあまりないが、話しながら通る者があると、四じょう半で机に向っていても、その話し声はよく聞えた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
奥の六じょうで、菊太郎をゆり起こすおそのの声がした。飲み直しよ、起きなさいな、まだ宵のくちじゃないの。もうだめですよ、という菊太郎のねぼけ声も聞えた。
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
女中はまず金盥かなだらいの水へ手拭を添えて持って来、次に酒肴しゅこうをはこんで来た。このあいだに、得石は家の中を見たが、部屋数は二た間、そこが六じょうで、隣りは四帖半。
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
じょうに三帖の狭い住居で、どこもかしこもとりちらしたなかに、枕屏風まくらびょうぶを立てて和助が寝かされていた。
柳橋物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
間取りは六じょうふた間に、八帖ほどの板の間。勝手にかわやが付いていた。井戸はすぐ裏で、勝手には造りつけのへっついがあり、手桶から水瓶みずがめ鍋釜なべかままで揃っていた。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
香和堂は三げんまぐちで、そのうち二間が板敷の仕事場。奥に六じょうの部屋が三つあった。小舟町から伴れて来た小僧の半次も十八歳になり、ほかに二人の小僧がいる。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
じょうに八帖二た間と、小部屋が四つばかりあり、かよのほかに青山家の老女と、二人の下婢がいた。
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)