よし)” の例文
三兩出て博奕友達ばくちともだちよしみだと言てひらに頼む故おれ詮方無せんかたなやいて仕舞てほねは利根川へ流したに相違は無いぜこれサ段右衞門今此彌十に顏を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
隋起って南北両朝の諸国を統一するに至り、推古天皇は久し振りに小野妹子を遣わして、さらに国際間のよしみを通ぜしめ給うたのであった。
国号の由来 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
それは以前に何のよしみもなくて雇はれて来た子安こやす君達とは違ふ。それで居ながら私達の間には妙に奥歯へ物の挟まつたやうなものが出来た。
突貫 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「わがザックセンに日本の公使おかれんおりは、いまのよしみにて、おん身の来んを待たん」などねもごろに聞えさせたもう。
文づかい (新字新仮名) / 森鴎外(著)
鼎に似ると、るもくも、いずれ繊楚かよわい人のために見る目も忍びないであろう処を、あたかもよし、玉を捧ぐる白珊瑚しろさんごなめらかなる枝に見えた。
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
是故に人たるものゝさががこの二者ふたりの性の如くになれること先にもあらず後にもあらずと汝の思ふを我はよしとす 八五—八七
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
従っては一切の情慾が弱くなり其代り堪弁かんべんと云う者が強くなっおりますから人を殺すほどの立腹は致しませずよしや立腹した所で力が足らぬから若い者を
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
全軍殆んど覆没し、陣代の高森上野こうつけ婿むこしゅうとよしみを以てあわれみを敵の桑折(福島附近の桑折こおりにあらず、志田郡鳴瀬川附近)
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
わずかに日頃よしみある岩村の城主に使者つかいを遣わし、事の次第を知らせたばかりで、兵を出そうとさえしなかった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
沼田の下新田に鹽原角右衞門と申する百姓が居り、わしと同じ名前のよしみを以て、乳のない所から悴の多助を育てゝくれろと頼まれたゆえ、余儀なく引受け
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
犬が竜之助を慕うのか、竜之助が犬を愛するのか、桑名の城下、他生たしょうの縁で犬と人とによしみが出来ました。この二つがどこまで行って、どこで別れることであるやら。
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「まア、然し、そのくらゐの義務は負つても好いでせう。同じ船に乗つたよしみだけでも……」
(新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
異国の者どもとて油断はなりませぬ。大明の使いはしばしば西国に往来して、菊池なんどの一族とよしみを通ずるやにも承わる。かれらの或る者が菊池にたのまれて、間者の役目を
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
白城の城主狼のルーファスと夜鴉の城主とは二十年来のよしみで家の子郎党ろうどうの末に至るまでたがいに往き来せぬはまれな位打ち解けた間柄であった。確執の起ったのは去年こぞの春の初からである。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
されど村人は皆彼が謹直なるを思い、この家とのふるよしみを思い、勇蔵とともに戦地におもむきしことを思い、勇蔵が亡き後事大小となく皆彼が義務なるを思いつ、ただに彼を怪しまざるのみならず
空家 (新字新仮名) / 宮崎湖処子(著)
土の土たるは、不潔を排斥して自己の潔を保つでなく、不潔を包容し浄化して生命の温床おんしょうたるにある。「吾父は農夫也」と耶蘇の道破した如く、神はまさしく一の大農夫である。神は一切をよしと見る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
と僕も朋輩のよしみで意地をつけてやった。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
ダンテは彼が同郷のよしみをもてウェルギリウスをよろこび迎ふるを見、己が郷國を思ふの念に堪へず、悲歌慷慨す
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
白粉しろいは屋敷だから常は薄うございますが、十九つゞ二十はたちは色盛り、器量よしの娘お照、親の前へ両手を突いて
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
立今こそ肥前屋の旦那などと横柄面わうへいづらをして居れども元はといへばおれと同樣に人をゆすり取又は追落おひおとしをしたる事もあり今己が斯の如くおちぶれたればとて其よしみを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いいかえ、臆えて置玉え、妙な理屈だゼ。マアこうサ。第一、人間というものは愚なものだ、という事は承知するだろう。その愚なものによしと思われる論は愚論サ。
ねじくり博士 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
わが家もこの国にて聞ゆるうからなるに、いま勢いある国務大臣ファブリイス伯とはかさなるよしみあり。
文づかい (新字新仮名) / 森鴎外(著)
土岐津ときつの城主土岐頼金が伊那五郎盛常と、いつか互いによしみを通じ、花村一族の立てこもる苗木の孤城を攻めるという、そういう通信しらせが来た時でさえ甚五衛門は沈着おちついていた。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
よしや居るにしても居るとはいわぬよ、事に由れば余温ほとぼりさめるまで当分博賭ばくちやめるかも知れぬ何うして其様な未熟な事でいける者か、差当り其家へは行かずにほかの所で探偵するのが探偵のいろはだよ
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
同門のよしみから、この人はなにくれとなく彼の相談相手になってくれる。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
たびこれだからい——陽氣やうきよしと、わたしじつとしてつてた。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
のう佐太郎これまでのよしみもあれば、面倒ついでに今一度墓を
空家 (新字新仮名) / 宮崎湖処子(著)
下され五十兩には百五十石三百兩ならば千石其餘は是にじゆんじて宛行あておこなはるゝ思召なりれば各々方おの/\がたも今の内に御用金を差上られなば御直參ぢきさんに御取立に成樣師檀しだんよしみを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いで抽斎は再び弘前へ往って、足掛三年淹留えんりゅうした。留守に父の亡くなった旅である。それから江戸に帰って、中一年置いてよしが生れ、その翌年また八三郎が生れた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
北条も此方に対しては北条陸奥守むつのかみ氏輝が後藤基信によしみを通じて以来仲を好くしている
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
揃って容色きりょうよし、また不思議にみんな別嬪べっぴんだ。知ってるだろう。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
田辺の主人と民助とは同郷のよしみも有るのである。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
洗ッて何うかするとコンガラかすのも矢張やっぱり逆毛が交ッて居るからの事です逆毛と順の毛と鱗が掛り合うからコンガラかッてとけぬのです頭の毛ならば順毛ばかりですからよしんばコンガラかッても終にはとけますそれう女髪結にきいても分る事(荻)夫が何の証拠に成る(大)サア此三本の中に逆毛が有て見れば是は必ず入毛です此罪人は
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
天保十二年には、岡西氏とく二女じじょよしを生んだが、好は早世した。じゅん正月二十六日に生れ、二月三日に死んだのである。翌十三年には、三男八三郎はちさぶろうが生れたが、これも夭折ようせつした。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
抽斎の子にして父にさきだって死んだものは、尾島氏のしゅつ長男恒善つねよし、比良野氏の出馬場玄玖げんきゅう妻長女いと、岡西氏の出二女よし、三男八三郎、山内氏の出三女山内とう、四男幻香、五女癸巳きし
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)