あま)” の例文
「とても来手きてはねえな。すたり者のねえツていふあまだ。誰が物好きにあんな寺に行つてさびしい思ひをするものがあるもんか。」
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
「ちぇッ、いまいましいあまだ。ここを出たら、ひとつギュッと手綱たづなを締めなおさなくっちゃいけねえ」と、ごうを煮やして、寝返りを打つ。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると、いままで温顔をもって接していた司法主任は、急に眼をいからせ、顔じゅうを口にして、なめるな、このあまと、大喝するのだった。
金狼 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
『チェッ、畜生ッ……畜生ッ……あいつだ……あいつが盗んだんだ……手紙を盗んで逃出しやあがったんだ……太えあまめ……』
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
え、もし、そんなこッちゃああまにだって愛想をつかされますぜ。貴方ほどの方がどういうもんです。いや、それとも按摩さんにゃあ相当か。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なんぼなんでもひどすぎるじゃありませんかね!『おい、このあまはな、俺の氣持ひとつでお前のお母ちゃんになる人だぞ!』
「河童のせいなどにしやがって、とんでもねえあまだ。お上にも御慈悲がある、伊勢屋の悪いこともことごとく承知だ。残らず言ってしまえッ」
それからスパナか何か持って来て口をコジ開けるんだ。開けなけあそのナイフを噛ませて見ろ。強情なあまだな……そうそう。
焦点を合せる (新字新仮名) / 夢野久作(著)
じゃあ、あまっ子を一人つけてあげましょう。その子は、道をよく知っていますからね。ただ、いいかね、お前さま、その子を
「貴さまあ、何だな、法印、あのあまッ子の——お初の奴の手引きをして、不細工に、夜よなか、この宿屋まで、引ッぱって来やがったのだな?」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
恐ろしい憎い悪党あまだ! ……この京助めが、手前も手前だ! あくまでも拒むとは途方もない奴だ! よこせ! 馬鹿めが! こうしてやろう!
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「まーとう/\。ほんまに憎らしいのは其あまやつどすえなー、わたしなら死んでも其家を動いてやりややしませんで、」
夜汽車 (新字旧仮名) / 尾崎放哉(著)
「そんだがお内儀かみさん、そのあますぐげてつちめえあんしたね、いまぢやなんとかつてだらかまあねえさうでがすね」
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「へへへへへ、あの家もよかんべい。うめたにみたいなあまも二人いるだで——」と妙に笑う。形勢はなはだ穏かならん。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
「だんなだんな、大てがらですぜ。ホシのあましょっぴいてきましたから、さ、とっくり首実検をなせえましよ」
そんなこと言われる覚えはねえや! もともとこんなあまにおっ惚れた俺でもあるめえしさ……とにかく今になっちゃあこんな赤禿げだらけの猫婆ァの面よか
私は前から信じていた。またそうも云った。『己惚れてやがる。このあまめ』と殴られたこともあったが、やっぱり、私が手綱を握っていることは、たしかだった
婦人と文学 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
引張ろうというんだな。太えあまっちょだ。あんな者にかかり合っちゃあ、お前のためになんねえぞ。
土地 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
あいつらは、女をもてあそぶに、女を裸にして玩ばなければ満足のできないやからなのだ——ちぇッ、いいざまをして、このあまめ、笑ってやがる、小憎らしい笑い方だなあ——
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「あんな腐ったあまは欲しくはないが、てめえなんかに渡すものか、渡すようなら、首にして渡さあ」
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
手前は度胸がなくってもあまア度胸がいいから殺してくれエといい兼ねゝえ、キュウと遣ったな
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ああ口惜くやしい、このあまを、どうしてくれようか! 手前ら上院議員のステーンセン伯爵を、見損なったか? 伯爵は、王族だぞ! 王族も王族、国王陛下やフィリップ殿下の
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
川に落ちて水を飲んだ上に、汗の出花でばなを冷えたのが悪かったそうだ。森川さんは、日に二遍も見に来て呉れる。親切な人だ。此間赤んべいなんかしなければよかった。しかしお春はふとあまだ。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
しかも相手もあらうに風来船の青二才なんかと! この恥知らずのあまめ!
水に沈むロメオとユリヤ (新字旧仮名) / 神西清(著)
的が違いやしょう、俺あ大八楼のあまじゃねえ。ハハハハ。
斬られの仙太 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
「どのあまも一年に一人しかよう生まねえだからの。」
「いつになったら払おうというんだ、ふてあまめ。」
かえる——「何を言ってやがるんだ、あのあまは」
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
ふてえあまだ。なぶり殺しにしてくれる!
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「生意気な、此のあま!」
女給 (新字新仮名) / 細井和喜蔵(著)
そのあまツ子、ちひせい時から知つてるだよ。それに、気も合つてただ。夫婦になるべいかなんて思つたこともねえぢやねえだよ。
船路 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
「おい、甘く見ると、たいへんな間違いだぜ。裸に剥いただけじゃすまさねえから。……何をするか、待っていろ、あまめ!」
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「あのあま、手をかえ、品をかえやがって、さもしおらしい娘ッ子が、恋に狂って飛び込んで来たもののように装いやがったのだな! 馬鹿め!」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
ついには誰も彼を構わなくなって、『あま』とからかうのさえもよしてしまったばかりではなく、この意味で彼に同情をもって見るようになった。
ほんとに、彼奴ときたら、どんなつまらないあまでも、見のがしっこないんだからなあ。彼奴はそれを、⦅野苺のいちごを摘む⦆のだって言ってやがるのだぜ。
こっちのあまはどうするって?……はっはっ。いやに気にするじゃねえか。今日はここいらで見切を付けてえるんだ。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
第一貴女あなたが御ゆるいのどすえなー、れつきとした女房で居やはつてなー、そんな何処どこの馬の骨だか牛の骨たやうなあまに、何程なんぼ御亭主ごていしゆ御好おすきぢやふたつて
夜汽車 (新字旧仮名) / 尾崎放哉(著)
と多四郎は鼻で笑ったが、「おいらアそんな甘いんじゃねえよ。……部落のあまがどうしたって云うんだい」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「エエ、このあまめ! よい程に、あしらっておけばつけ上がって、ふざけた真似まねをしやがると、俵括たわらぐくりにして船底へほうりこんでも、阿波へ突ッけえすからそう思え」
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なに仕方のねえあまでがさあ。……打たれた位では平気でしゃあしゃあしています。いえそう度々打つんじゃねえんでがすが、わっちの方も年とって力が無くなったんでさあ。
過渡人 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
甚「うぬ、いけッぷてえ奴、能くもの谷へ突落しやアがったな、お賤も助けちゃア置かねえ能くもおれだましやアがったな、サア出ろ、いけッ太え奴だ、お賤のあまも今見ていろ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「言ひ譯はお白洲しらすでするがいゝ、さア、來い、——俺までだしに使ひやがつて太てえあまだ」
あま心中立しんじゅうだてを物珍らしそうに、世の中にゃあ出ねえの、おいらこれッきりだのと、だらしのねえ、もう、情婦いろを拵えるのと、坊主になるのとは同一おんなじものじゃあございませんぜ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「みっちりかけあった、ひと亀鑑てほんにならなくちゃならない富豪の細君ともあろうものが、しからんと云って、みっちり意見をしたものだから、あのあま、泣いてあやまりやがった」
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
いつぞやお杉のあまをおびやかした海竜でも、本当に出現したのかな。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
内儀かみさん、夫婦ふうふそろつてなくつちやれるもんぢやありあんせんぞ、親爺おやぢだつてお内儀かみさん自分じぶんあま女郎ぢよらうつて百五十りやうとかだつていひあんしたつけがそれけえりに軍鷄喧嘩しやもげんくわかゝつて
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
的が違いやしょう、俺ぁ大八楼のあまじゃねえ。ハハハハ。
天狗外伝 斬られの仙太 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
「覚えてろ、このあまめ!」と彼は言って唾をふいた。
「どけ、あまっちょが、仕事の邪魔をするな。」
「やいあま! まだ、じたばたしやがるか!」
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)