過渡人かとにん
三月の末に矢島さんは次のようなことを日記に書いた。——固より矢島さんは日記なんかつけはしない、これはただ比喩的に云うのである。 俺はこの頃妙な気持ちを覚ゆる。何だか新らしい素敵なことが起りそうな気がする。それはただ俺の内生活に於てでもない、 …