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唖然
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あぜん
ふりがな文庫
“
唖然
(
あぜん
)” の例文
さすがに、有王も
唖然
(
あぜん
)
として言葉が出なかったが、すぐさま、抱き起こすと膝の上に抱きかかえて、むせび泣きながら、かき口説いた。
現代語訳 平家物語:03 第三巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
けれども、この大胆者は、兵馬を怖れしめないで、驚かせるには驚かせたが、むしろ
唖然
(
あぜん
)
として、あきれ返るように、驚かせたのです。
大菩薩峠:25 みちりやの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
これを知ったのはそれより二、三年後であって、アレが思案外史かと知った時は
唖然
(
あぜん
)
として、道理こそ都々逸に精しい人であると思った。
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
唖然
(
あぜん
)
となっていた私は思わず微苦笑させられた。それを見ると青木は
益々
(
ますます
)
乗り気になって、片膝で寝台の端まで乗り出して来た。
一足お先に
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
傍より言を
挾
(
はさ
)
みて曰、
式亭三馬
(
しきていさんば
)
が大千世界楽屋探しは
如何
(
いかん
)
と。二三子の言の出づる所を知らず、相顧みて
唖然
(
あぜん
)
たるのみ。(一月二十七日)
骨董羹:―寿陵余子の仮名のもとに筆を執れる戯文―
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
と、指令をいうような沈痛な語気の折竹に、ロイスもカムポスも
唖然
(
あぜん
)
となってしまった。
泥亀
(
すっぽん
)
でさえ、精々十尺とはもぐれまい。
人外魔境:05 水棲人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
しばらく
唖然
(
あぜん
)
と突っ立っていたぼくは、折から身体を
押
(
お
)
して行く銀座の
人混
(
ひとご
)
みに
揉
(
もま
)
れ、段々、酔いが覚めて白々しい気持になるのでした。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
A氏は
唖然
(
あぜん
)
とした。次いでさつと顔を紅らめた。次いで、ああ飛んでもないことを言はなくつてよかつたと胸を
撫
(
な
)
でおろした。
三つの挿話
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
と、ぽんと一本参りたまえば、待構えし
体
(
てい
)
にて平然と、「ありゃ
私
(
あっし
)
の
男妾
(
おとこめかけ
)
さ、
意気地
(
いくじ
)
の無い野郎さね。」一同聞いて
唖然
(
あぜん
)
たり。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
この言語道断な
狼藉
(
ろうぜき
)
、徹底した無神経ぶりは、当時の新聞をして「恐怖の満点」と叫ばしめ、「人性の完全な
蹂躙
(
じゅうりん
)
」と
唖然
(
あぜん
)
たらしめている。
女肉を料理する男
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
と
真先
(
まっさき
)
に立ちたる
未醒
(
みせい
)
君、
立留
(
たちど
)
まって、一行を顧みた。見れば
正
(
まさ
)
しく橋は陥落して、
碧流
(
へきりゅう
)
巌
(
いわ
)
を
噛
(
か
)
む。一行相顧みて
唖然
(
あぜん
)
たり。
本州横断 痛快徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
、
井沢衣水
(著)
現われたのは、紫の
振袖
(
ふりそで
)
を着て
竪矢
(
たてや
)
の字に結んだ、
小
(
ち
)
っこい小娘だったので、
唖然
(
あぜん
)
としてしまったが、その態度は落ちつきはらっていたと——
朱絃舎浜子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
ジャン・ヴァルジャンは、老コルネイユの用語を借りれば、「
唖然
(
あぜん
)
とした。」そして眼前のことが果たして現実であるかを疑ったほどである。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
私は、
先刻
(
さっき
)
から、このなんとも批評の仕様もない、
狂気染
(
きちがいじ
)
みた夢物語に、半ば
唖然
(
あぜん
)
として、眼ばかりぱちぱちさせていた。
腐った蜉蝣
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
みんな、はじめ自分の家だけ爆撃されたものと思い込んで、外に出てみると、何処も一様にやられているのに
唖然
(
あぜん
)
とした。
夏の花
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
書画骨董と称する古美術品の優秀清雅と、それを愛好するとか称する現代紳士富豪の思想及生活とを比較すれば、誰れか
唖然
(
あぜん
)
たらざるを得んや。
妾宅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
(これは意外なことを聞く)といったように、ちょっと
唖然
(
あぜん
)
としているし、念仏房念阿も、勢観房源智も、その他のほとんどといっていい大勢が
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
平凡の二字に尽きていたが、幸子はそれを読まされたあと、暫く
唖然
(
あぜん
)
として開いた口が
塞
(
ふさ
)
がらない思いであった。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
一同の者は僕の
女々
(
めめ
)
しい醜態に接して
唖然
(
あぜん
)
とした。何故なら僕は常々所有の物資に関してはおそらく
恬淡
(
てんたん
)
げな高言を持って彼らに接していたからである。
吊籠と月光と
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
唖然
(
あぜん
)
たる眼つきをしか期待できないような
擦
(
す
)
れ違う男にたいしてさえ、そうである。クリストフはしばしばそういうくだらない
孔雀
(
くじゃく
)
の
雛
(
ひな
)
どもに出会った。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
自分たちの助平の責任を、何もご存じない天の神さまに転嫁しようとたくらむのだから、神さまだって
唖然
(
あぜん
)
とせざるを得まい。まことにふとい
了見
(
りょうけん
)
である。
チャンス
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
辰の
唖然
(
あぜん
)
としたのはいうまでもないことですが、しかし、名人右門は期するところのあるもののごとく、居合わした店の者に、突如ずばりときき尋ねました。
右門捕物帖:17 へび使い小町
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
こと、ここまでに至っては何ごとを説こうとしても、説く者に恥があるのだと経之は
唖然
(
あぜん
)
とするだけだった。
野に臥す者
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
私がこの話をしかけると豆鉄砲をくらった
鳩
(
はと
)
のように
唖然
(
あぜん
)
として(これは
喋
(
しゃべ
)
っている私の方も唖然とした)つづいて
羨望
(
せんぼう
)
のあまり長大息を
洩
(
も
)
らした男があった。
天才になりそこなった男の話
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
云い捨てるように警部補は
自動車
(
くるま
)
に乗り込んだ。そのあとから、
唖然
(
あぜん
)
たる一行が乗込む。自動車はバックして、箱根口へ向って走り出した。時速十
哩
(
マイル
)
の徐行だ。
白妖
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
夫人の言葉は、信一郎を
唖然
(
あぜん
)
たらしめた。彼は呆気に取られて、夫人の美しい冷かな顔を見詰めていた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
老人はそう叫びながら、やがて、片手で棒を握り、それで漕いで、
躄者車
(
くるま
)
を前へ進め、片手で刀を頭上に振りかぶり、頼母の方へ寄せて来た。頼母は、
唖然
(
あぜん
)
とした。
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
唖然
(
あぜん
)
たる対馬守の顔へ、宗匠は相変わらず、百年を
閲
(
けみ
)
した静かな笑みを送りながら、また筆をとって
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
悲喜哀楽うたた相生じ、ときとしては
唖然
(
あぜん
)
口を開きて大笑し、ときとしては
潸然
(
さんぜん
)
目をしばたたきて悲しむ。花を見ては美なりと呼び、音楽を聞きては快なりと感ず。
迷信と宗教
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
二月五日の衆議院で、
東条
(
とうじょう
)
首相が堂々とこの新製鉄法を述べ、これで今次の大戦を
賄
(
まかな
)
うべき鉄には不自由しないと演述した。議員は皆
喝采
(
かっさい
)
した。私たちは
唖然
(
あぜん
)
とした。
千里眼その他
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
「あなたは……わたくしにおっしゃるので?」地主のマクシーモフは
唖然
(
あぜん
)
たるかたちで口ごもった。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
寿司屋としての店頭は、古臭い寿司屋形式を排し、一躍近代感覚に富むところの新建築をもって
唖然
(
あぜん
)
たらしめるものがあり、高級寿司屋を説明して余りあるものがある。
握り寿司の名人
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
「なんだって?」と大江山は
唖然
(
あぜん
)
として、帆村の顔を穴の明くほど見詰めた。そして、やがて
流線間諜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
この整然たる言いかたは、初めはKを
唖然
(
あぜん
)
とさせたが、次に彼は画家と同様声を低めて言った。
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
そう言ってまた豪傑笑いをしたが、その笑いぶりといい、人を食った話しぶりといい、支那浪人めいたハッタリがすっかり板についた感じなのに、俺が
唖然
(
あぜん
)
としていると
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
たましいは
愉悦
(
ゆえつ
)
のあまり自分の本来の状態を忘れつくして、
唖然
(
あぜん
)
として嘆賞しながら、日に照らされた物体のうちの最も美しいものに、すがりついて離れない——それどころか
ヴェニスに死す
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
社員一同まんまと
欺
(
あざむ
)
かれ、室内に這入って再び岩見をみるや
唖然
(
あぜん
)
とした次第である。
琥珀のパイプ
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
唖然
(
あぜん
)
としていたガラッ八は、
漸
(
ようや
)
く人心地が付くと、そそくさと鈴の箱を開けました。
銭形平次捕物控:008 鈴を慕う女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
と低い声で
細々
(
こまごま
)
と教えてくれた。若崎は
唖然
(
あぜん
)
として驚いた。徳川期にはなるほどすべてこういう調子の事が行われたのだなと
暁
(
さと
)
って、今更ながら世の
清濁
(
せいだく
)
の上に思を
馳
(
は
)
せて
感悟
(
かんご
)
した。
鵞鳥
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
青年は
唖然
(
あぜん
)
として、道也を見た。道也は孔子様のように
真面目
(
まじめ
)
である。馬鹿にされてるんじゃたまらないと高柳君は思う。高柳君は大抵の事を馬鹿にされたように聞き取る男である。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そして
唖然
(
あぜん
)
としている家扶に背を向け、力足を踏んで宇野邸を出ていった。
評釈勘忍記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そして、彼の姿は、
唖然
(
あぜん
)
たる、弟子や男衆の前を、すぐに消えてしまった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
唖然
(
あぜん
)
とした私は、急にムカムカしてくると、残りのビールびんをさげて、その男の後を追って行った。銀行の横を曲ろうとしたその男の黒い影へ私は思い切りビールびんをハッシと投げつけた。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
かくと聞ける直道は
余
(
あまり
)
の不意に拍子抜して、喜びも
得為
(
えせ
)
ず
唖然
(
あぜん
)
たるのみ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
すると、その言葉の終らないうちに、一同は
唖然
(
あぜん
)
とした。というのは、ちょうどそのとき饒舌家の
傍
(
そば
)
に立っていた女学生ふうの女が、いきなり高々と——上げたのである。下には——彼女だった。
踊る地平線:06 ノウトルダムの妖怪
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
留公が
頬
(
ほ
)
っぺたでも殴られたように
唖然
(
あぜん
)
とした顔をした。
五階の窓:03 合作の三
(新字新仮名)
/
森下雨村
(著)
唖然
(
あぜん
)
としてすくみしわれらのうつけ姿。
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
わたくしは
唖然
(
あぜん
)
とした。
百万人のそして唯一人の文学
(新字旧仮名)
/
青野季吉
(著)
巡査
(
じゆんさ
)
、
唖然
(
あぜん
)
として。
探検実記 地中の秘密:05 深大寺の打石斧
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
と、澄み渡った声で、白雲の出ばなを抑えたものがあったものですから、
唖然
(
あぜん
)
として一時沈黙することのやむを得ない事態に至りました。
大菩薩峠:34 白雲の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
“唖然”の意味
《名詞》
唖然(あぜん)
呆れて何も言えないこと。
(出典:Wiktionary)
唖
漢検準1級
部首:⼝
10画
然
常用漢字
小4
部首:⽕
12画
“唖”で始まる語句
唖
唖者
唖々
唖女
唖気
唖児
唖鈴
唖子
唖々子
唖妣烟