トップ
>
口吻
>
こうふん
ふりがな文庫
“
口吻
(
こうふん
)” の例文
燕雀生は必しも才人と言つてはならぬと言はず、しかしならぬと言はぬうちにもならぬらしき
口吻
(
こうふん
)
あれば、下問を仰ぐこと上の如し。
念仁波念遠入礼帖
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
お君はよく「——だけのこと」「——という
口吻
(
こうふん
)
。」それだけで切ってしまったり、受け答いに「そ」「うん」そんな云い方をした。
工場細胞
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
「そして、今少しは良い方なのですか、どんなです? 私も一遍様子を見たいです」と、いうと、母親は、それを
遮
(
さえぎ
)
るような
口吻
(
こうふん
)
で
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
ここの二階のすぐ下でも、駈けてゆく者、
佇
(
たたず
)
んでいる者、さまざまらしいが、その人々の口から口へ、異様な
口吻
(
こうふん
)
で、語られていた。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一生をこの一書に
厮殺
(
しさつ
)
したリー氏ですらこの書の内にある事を知り及ばない。だから馬琴の
口吻
(
こうふん
)
で書を読む事誠に難くもあるかなだ。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
▼ もっと見る
明智は思わず犯人を讃美するかの如き
口吻
(
こうふん
)
を漏らしたが、そこで何に気附いたのか、ふと言葉をとめて、鋭く宗像博士を睨みつけた。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「近頃の
升
(
のぼ
)
さんの句のうちでは面白いわい。」と何事にも敬服せない古白君は暗に居士の近来の句にも敬服せぬような
口吻
(
こうふん
)
を漏らした。
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
豈図
(
あにはか
)
らんや
嗅
(
か
)
ぎつけていたばかりでなく、道楽者の名を博しているSの
口吻
(
こうふん
)
から察すると、奴等は私たちを夫婦であるとは信じないで
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
大人か
小児
(
こども
)
に物を言うような
口吻
(
こうふん
)
である。美しい目は軽侮、
憐憫
(
れんみん
)
、
嘲罵
(
ちょうば
)
、
翻弄
(
ほんろう
)
と云うような、あらゆる感情を
湛
(
たた
)
えて、異様に
赫
(
かがや
)
いている。
余興
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
己を
為合
(
しあは
)
せだと云つて褒めて、それを自分の老衰に較べた。その
口吻
(
こうふん
)
が特別に不満らしかつた。己は気を着けて聞いてはゐない。
復讐
(新字旧仮名)
/
アンリ・ド・レニエ
(著)
ちょうど庸三は
用達
(
ようた
)
しに外出していたが、夜帰ってみると、彼女は教養ある青年たちのナイトぶりに感激したような
口吻
(
こうふん
)
を
洩
(
も
)
らしていた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
それから、「われこそ
益
(
ま
)
さめ
御思
(
みおもひ
)
よりは」の句は、情緒こまやかで、且つおのずから女性の
口吻
(
こうふん
)
が出ているところに注意せねばならない。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
わたしが榎本君に対して不平らしい
口吻
(
こうふん
)
を洩らしたのは、要するに
演劇
(
しばい
)
の事情というものに
就
(
つ
)
いて私の盲目を証拠立てているのであった。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「何と云われる。
儂
(
わし
)
の口からとは?」真斎は驚き呆れるよりも、瞬間変転した相手の
口吻
(
こうふん
)
に、嘲弄されたような憤りを現わした。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
「あゝ、あの
骨牌
(
かるた
)
と赤玉のうまい。あれでせう。」と手品師は重役の
口吻
(
こうふん
)
に満足して云つた。「あの人のは普通の手品です。」
手品師
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
口吻
(
こうふん
)
がなんとなく尖って見え、唇の切れ目の上には鼠のような
粗
(
あら
)
い
髯
(
ひげ
)
が生えているところが鼠くさいと感じたことがあった。
軍用鼠
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
せんじ詰めるとこれだけであるが、そのこれだけが、非常にもっともらしい
口吻
(
こうふん
)
と
燦爛
(
さんらん
)
たる警句とによって前後二十七ページに延長している。
三四郎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
天下の存在であるかのような
口吻
(
こうふん
)
を
洩
(
も
)
らして私に
堪
(
たま
)
らなく
気障
(
きざ
)
な思いをさせ、また相当
曰
(
いわ
)
くつきらしい女客達が麻川氏を囲んで大柄に
坐
(
すわ
)
りこみ
鶴は病みき
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
若し、道子が再び生き返って来て、同じ事を被告人に対して云ったなら恐くは十度でも、否百度でも、彼女を惨殺しそうな
口吻
(
こうふん
)
を洩したのです。
彼が殺したか
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
先代桂春團治が『らくだ』は、一度、紅梅亭の客薄き夏の夜に聴きたるのみなりしが、あの人独自の、おかしくもたあいなき
口吻
(
こうふん
)
、天下の珍にて
随筆 寄席囃子
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
老人はようやくこれだけ口をきいたのであるが、お前のような青二才に友釣りなどが、そうたやすく覚えられるものか、といった態度と
口吻
(
こうふん
)
である。
想い出
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
「志願兵が一名小銃で自殺しましたのです」と、警部は自殺者が無遠慮に夜なかなんぞに自殺したのに、自分が代つて謝罪するやうな
口吻
(
こうふん
)
で云つた。
死
(新字旧仮名)
/
ミハイル・ペトローヴィチ・アルチバシェッフ
(著)
彩牋堂主人とは有名な
何某
(
なにがし
)
株式会社取締役の一人何某君の
戯号
(
ぎごう
)
である。本名はいささか
憚
(
はばかり
)
あればここには
妓輩
(
ぎはい
)
の
口吻
(
こうふん
)
に
擬
(
ぎ
)
してヨウさんといって置こう。
雨瀟瀟
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
彼の長を取りてわが短を補うとは人の
口吻
(
こうふん
)
なれども、今の有様を見れば我は
悉皆
(
しっかい
)
短にして彼は悉皆長なるがごとし。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
妄談者流の
口吻
(
こうふん
)
に従えばそれこそ
鼠
(
ねずみ
)
になって
孔
(
あな
)
から
潜
(
もぐ
)
り込んだり、蛇になって樹登りをしたりして、或者は政宗の営を窺い或者は一揆方の様子を探り
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
その時はこれはてっきり
看破
(
かんぱ
)
されたと胸をドキつかせたが、清三のいつもの散歩癖を知っている関さんは、べつに疑うような
口吻
(
こうふん
)
をももらさなかった。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
次郎は、自分はどうせ喧嘩をするものだときめてかかっているような父の
口吻
(
こうふん
)
が、ちょっと不平だった。そして
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
主人の又左衛門が、死んだ和助の非難めかしい
口吻
(
こうふん
)
を漏らした時の、お妻の剣幕というものはなかったのです。
銭形平次捕物控:041 三千両異変
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
最後に弁護士が、落付いた
口吻
(
こうふん
)
で、云いおわったとき、庸之助は、大きな力でぶちのめされたような気がした。
日は輝けり
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
攘夷
(
じょうい
)
家の
口吻
(
こうふん
)
を免れずといえども、その
直截
(
ちょくせつ
)
痛快なる、
懦夫
(
だふ
)
をして起たしむるにあらずや。
述懐
(
じゅっかい
)
の詩にいわく
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
そうして後進に訓示をするような
口吻
(
こうふん
)
を
弄
(
ろう
)
するんですからいけませんや……それではトテも大物は出ませんね
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「猪股さんは
然
(
そ
)
ういう
口吻
(
こうふん
)
を洩らしていたから、間違ない、君も都合が好いし、僕も大いに助かる。有難う」
凡人伝
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
彼は独断と誇張と飛躍とをはばからず、独りよがりや
野狐禅的
(
やこぜんてき
)
口吻
(
こうふん
)
と受けとられがちなものをも挙揚する。
森の生活――ウォールデン――:01 訳者の言葉
(新字新仮名)
/
神吉三郎
(著)
彼は独断と誇張と飛躍とをはばからず、独りよがりや
野狐禅的
(
やこぜんてき
)
口吻
(
こうふん
)
と受けとられがちなものをも挙揚する。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
「これは!」と私は、この地方の
口吻
(
こうふん
)
で叫んだ。「
地球儀
(
ちきうぎ
)
の帽子だ(何のことやらさつぱり分らぬ)。」
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
スタニスラウスは妹の足の早いのを、慾望的な、現世的な努力を表現してゐるやうに感じて、妹を警醒するやうな
口吻
(
こうふん
)
で、「兄は
可哀
(
かはい
)
さうな男だつたな」と云つた。
祭日
(新字旧仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
すなわちアイヌ語起原論者の
口吻
(
こうふん
)
を借りていうと、古くクテ人種の住んでいた土地などということになるかも知れぬが、もとよりそういうもののあろうはずはない。
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
この
口吻
(
こうふん
)
を借りて云へば、我が閑天地がむさくるしき四畳半の中にありと云ふも何の驚く所かあらむや。
夫
(
そ
)
れ人、内に一の心あり、我が宇宙は畢竟ずるに我が心のみ。
閑天地
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
「いや。もう好い加減にして貰ひたいですからなあ。」説明を拒むやうな、不愉快な
口吻
(
こうふん
)
である。
板ばさみ
(新字旧仮名)
/
オイゲン・チリコフ
(著)
夏のこと、兄と私が一緒に行水を使っていたときに、硝子戸の向うにいてそれを見ていた、仲の町の大村という蕎麦屋の息子が、私達をうらやむような
口吻
(
こうふん
)
をもらした。
生い立ちの記
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
それにもかかわらず、とかくに自己を挙げて京伝を
貶
(
へん
)
する如き
口吻
(
こうふん
)
を洩らすは京山のいう如く全くこの人にしてこの病ありで、この一癖が馬琴の
鼎
(
かなえ
)
の軽重を問わしめる。
八犬伝談余
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
いきなりの激した
口吻
(
こうふん
)
で
度胆
(
どぎも
)
をぬかれた形だつたが、老人の様子でそれが愛国的公憤よりは蒋の幕僚たる息子についての不安から発してゐるのだと分ると、僕は説明した。
南京六月祭
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
といったような横着な
口吻
(
こうふん
)
でものを言う男だったが、見るところ、このゴイゴロフは、一種の沈鬱的人物であって、どこを叩いても、そんな陽気な調子が出てきそうもない。
犂氏の友情
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
女は我儘らしい
口吻
(
こうふん
)
で答へた。「兎に角戸を開けて下さいましな。わたくしは凍えてゐるのでございますよ。道に迷つたのだと云ふことは、さつき云つたぢやありませんか。」
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
ある朝偶然にも、ジルノルマン氏は手にした新聞のことから、国約議会のことを少し論じ、ダントンやサン・ジュストやロベスピエールに対して王党らしい
嘲
(
あざけ
)
りの
口吻
(
こうふん
)
をもらした。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
村川に交際を求めるような
口吻
(
こうふん
)
を
弄
(
ろう
)
し、やたらに、写真を撮らしたり、ぼく達四人の交友を、
針小棒大
(
しんしょうぼうだい
)
に言い
触
(
ふ
)
らすのをきいては、
癪
(
しゃく
)
に
触
(
さわ
)
るやら、心配やら、はらはらして
居
(
お
)
りました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
物理的操作とはセコンドメートの
口吻
(
こうふん
)
を借りたのである——そして、糞の分子と分子とがやや
空隙
(
くうげき
)
を生ずる時において熱湯を——この時決して物惜しみしてチビチビあけてはならない
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
わし一人の力で、天下の大事がなせるような
口吻
(
こうふん
)
じゃ。これは、大きにちがうぞ。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
とにかく一種侮蔑の念を抑える訳に行かなかった。日露戦争の時分には何でもロシアの方に同情して日本の
連捷
(
れんしょう
)
を呪うような
口吻
(
こうふん
)
があったとかであるいは
露探
(
ろたん
)
じゃないかという噂も立った。
イタリア人
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
ミルクを、もう一つ飲もう。わが未来の花嫁は、かの
口吻
(
こうふん
)
突出の婦人にして、わが未来の親友は、かの全身ポマードの悪臭高き紳士なり。この予言、あたります。外は、ぞろぞろ人の流れ。
正義と微笑
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
口
常用漢字
小1
部首:⼝
3画
吻
漢検準1級
部首:⼝
7画
“口”で始まる語句
口惜
口
口説
口髭
口籠
口許
口上
口調
口々
口吟