南京ナンキン)” の例文
そこで、流星花火だの、南京ナンキン花火だの、ありとあらゆる花火を買いこんで、それをかばんに入れて、空のうえにとび上がりました。
これも三つばかりは毀れていましたが、南京ナンキンで買ったのだとか云うことで、わたしが満洲で見たものとちっとも変りませんでした。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
冷凍船虎丸タイガーまるには、僕(山路健二)のほかに、もう一人ボーイがいた。それは、南京ナンキン生れの陳秀峰チャンチューホーと、自ら名乗る紅顔の美少年だ。
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)
南京ナンキンでは張学良ちょうがくりょうが空軍総司令になった。彼は毎日毎日米国製のカーチス戦闘機に乗って、揚子江ようすこう碇泊ていはくしているわが駆逐艦の上を飛んだ。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
鼻汁をかんだ爽快そうかい等だ、それからノミや南京ナンキン虫にかまれた処をかいて快味をあじわって、しばらくこの世の苦労を忘れようとしたのであった。
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
風に吹かれた洗い髪の、さわさわとしたのを両手でたくしあげて、無造作な兵庫くずしに束ねた根元を南京ナンキン渡りの翡翠ひすいで止めた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
奇妙な悲鳴とともに、少尉の背後に組みついて勝ち誇っていた怪ソ連人の身体が、南京ナンキン花火のように一転して、どさりと前方へ飛んでいった。
空中漂流一週間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
南京ナンキン奇望街きばうがいの或家の一間には、色のあをざめた支那の少女が一人、古びたテエブルの上に頬杖をついて、盆に入れた西瓜すゐくわの種を退屈さうに噛み破つてゐた。
南京の基督 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
胴衣ジャケットは短く、前方にポケットが二つついていて、淡黄色の南京ナンキン木綿に似た布で出来ている。肌着は無い。腕には手首から肘にまで達する袖がある。
さてしばらくまどろんだと思ふ時分にくびの処に焼けるやうなかゆさを覚えて目をました。私は維也納ウインナ以来のしばしばの経験で直ぐ南京ナンキン虫だといふことを知つた。
南京虫日記 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
部屋の片隅にはアオイ・ホテルから小湊へ事件後返り咲いたお六が、南京ナンキン刈の男のウィンクに応じて立上るとショートオオダァのために別室に消えた。
スポールティフな娼婦 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
ノスタレ爺もオームのオシッコも眼が釣上っちゃって、今にもポンポンパリパリと破裂しちまいそうな南京ナンキン花火みてえな気もちになっちまいましてね。
人間腸詰 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
だから南京ナンキン条約で、この次は日本の番だということはイギリスを先頭とする資本主義列強の常識であったばかりではなく、日本にとっても常識であった。
黒船来航 (新字新仮名) / 服部之総(著)
散策、買物の後、南京ナンキン路で精進料理を試み、自余の時間は、街上に船中に、ひたすら麻雀売りの撃退に専念す。
「わたくし、南京ナンキン町の支那料理屋へはよく参りますのですが、神戸にこう云う家があるとは存じませんでした」
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
劉 南京ナンキンは、知つての通り気候も悪いし、この際、保養かたがた観光を兼ねて、日本の温泉巡りを思ひ立つたわけだ。そこで思ひ出したのは、君達のことだ。
昨今横浜異聞(一幕) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
南京ナンキン陥落をつげたその十二月であり、暦は廿二日だが——新劇運動の親、小山内かおる氏のなくなったのも、クリスマスの晩で、十年前のこの月廿五日のよいだった。
遠藤(岩野)清子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
あの言葉は、忘れ去つてゐた古傷に、さはられたやうな痛さである。赤羽の工兵隊に召集されて、南京ナンキン攻略に行つた時の、あの憂欝いううつな戦争が、脳裡なうりをかすめた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
「どっちだっていいじゃないか、第一そのへやの中には、何んにもありはしないんだよ、夜っぴて叩いて居たって、鼠の糞と南京ナンキン虫の卵が出て来るのが精々だろう」
呪の金剛石 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
拡げて見ると、絹糸のあらい網に金銀の南京ナンキン玉を結びつけた、まるで踊り子の舞台衣裳の様なものだ。
地獄風景 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そして、十月に上海シャンハイが陥ち、日本軍が首都南京ナンキンに迫るにいたって、ようやく世界動乱のきざしが見えて来た。
原子爆弾雑話 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
僕は、この不潔な思想の死骸しがいからのがれたくて、新しい学問にあこがれ故郷を捨てて南京ナンキンに出たのです。それから後の事も、全部あの時、松島で話したように思います。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
南京ナンキンの法庁にある者、殊に大きく象皮一枚を張り、大なる棒を高く荒縄でるしてこれを打つと。
またしてもここで、丁半、ちょぼ一、南京ナンキンばくちをはじめて、江戸ッ児のお角をいやがらせようというたくらみに相違ないが、その時、またも店の中がざわめき渡って
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
彼は支那ばかりでなく、最初は朝鮮、満洲へ渡って、仁川じんせんへも行き、京城けいじょうへも行き、木浦もっぽ威海衛いかいえい、それから鉄嶺てつれいまでも行った。支那の中で、一番気に入ったところは南京ナンキンだった。
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
和蘭オランダ南京ナンキンじゃ、そうなると、女なんかそっち除けじゃ、この皿鉢さえ一枚持ち出せば、今晩の散財は浮いてしまう、と云う、悪いことを考えだしたのじゃ、で、大引けまで、ちびり
幽霊の自筆 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
黄浦河を下り呉淞ウースンへ出、それから西して揚子江をさかのぼり、鎮江チンキャン南京ナンキン蕪湖ウーフー九江キューキャン漢口ハンカオ岳州ヨウチョウ沙市シャシあたりへまで、旅行をしなければならなかったので、大いに勇気づいていたのでした。
「あの、それ、南京ナンキン出刃打ちという見世物な、あの連中の仕事だというのだがね」
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それをじみちの方へ引戻そうとして、とらの日の一句は附けられたものと思うが、なお興味はそぞろいて次の「南京ナンキンつち」という句になったのである。じい独活苅うどかりなども原因は是とよく似ている。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
鶏の中でも極めて小さいもので、あしの高さがわずか一、二寸、それが低いほど、またからだが小さいほど好いものとなっています。小さいのは南京ナンキンチャボとか地※じすりとかいって脚もくちばしも眼も黄色です。
縄でしばった南京ナンキン袋の前だれをあてて、直径五寸もある大きな孟宗竹の根を両足の親指でふんまえて、桶屋がつかうせんという、左右に把手とってのついた刃物でけずっていた。ガリ、ガリ、ガリッ……。
白い道 (新字新仮名) / 徳永直(著)
佐伯氏は南京ナンキンの戦争で失明した名誉ある傷痍しょうい軍人である。
キャラコさん:03 蘆と木笛 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「それどころか、南京ナンキンまでたちまち落してしまった」
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
鼠は床にこぼれた南京ナンキン豆を取りに来る。
智恵子抄 (新字旧仮名) / 高村光太郎(著)
砲火そゝぐ南京ナンキン城は炉の如し
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
わかい南京ナンキンさんは涙顔。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
生憎あいにくこの夫婦の亜米利加人は、南京ナンキンで船を下りてしまったが、ずっと溯江を続けたとすれば、もっといろいろ面白い波瀾を巻き起していたのに相違ない。
長江游記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
私は戸に南京ナンキン錠とかけがねとを取りつけた。仕事をしていると男、女、娘、きたない顔をした子供達等が立ち並んで、私を凝視しては感嘆これを久しゅうする。
先人李石曹リーシーツワンは何故か同志の実戦に参加しないで上海より広東カントンに身を避けたのであった。それにもかかわらずいまでは南京ナンキンと広東の提携説さえつたわるに至った。
地図に出てくる男女 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
手に入れたとは、三根クンの一番大きいお手柄だ。ふーン南京ナンキンねずみが、そんなに高く売れたとは、おもしろい
怪星ガン (新字新仮名) / 海野十三(著)
けれどそれも南京ナンキンらしゃめんと云うと何か違った意味をもって聞えた。下級ということがはっきりしていた。
自分は父に死なれて以来、いよいよ周囲の生活に懐疑と反感を抱き、懊悩おうのう焦慮の揚句あげく、ついに家郷を捨て、南京ナンキンに出た。何でもかまわぬ、新しい学問をしたかったのである。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
私がはじめて小学校へはいったのは長崎であった。ざっこく屋と云う木賃宿から、その頃流行のモスリンの改良服と云うのをきせられて、南京ナンキン町近くの小学校へ通って行った。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
オリエンタルや南京ナンキン町の支那料理屋などへも案内しようと思っていたのに、そんな所へ連れて行ってもらうよりは、此処ここで誰に気がねもなくのんびりと手足を伸ばしていたい
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
日本では「かいうさぎ」、また外国から来た故南瓜とうなす南京ナンキンというごとく南京兎と称う。兎の一類はすこぶる多種でオーストラリアとマダガスカルを除き到る処産するが南米には少ない。
この戦争に、シナで人命を失うもの百万人、シナの港々は言うに及ばず、南京ナンキンの都まで英国に乗っ取られ、和睦わぼくを求めるためにシナより英国へ渡した償金は小判こばんにして五百万枚にも及んだ。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
北京ペキンにも南京ナンキンにも上海シャンハイにも漢口ハンコオにも、マア支那の目ぼしい都には悉くいたことがある。方々へ転々として商売をしていたというのですね。嘘か本当か分りません。本人がそう云っているのです。
偉大なる夢 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
高田はそれで売出したのである。水野好美や伊井蓉峰いいようほうも加入していた。戦争の場では、実弾に擬した南京ナンキン花火をぱちぱち飛ばして、しきりに観客をおびやかしたりして、この興行は大成功であった。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
見ると出がけに確かにかんのきを入れて南京ナンキン錠を卸しておいた筈の青ペンキ塗りの門の扉が左右に開いて、そこから見える玄関の向って左の一間四方ばかりの肘掛ひじかけ窓からは、百燭ぐらいの蒼白い電燈が
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そうして、南京ナンキンバクチと、丁半とをおっぱじめてしまいました。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)