“十重二十重:とえはたえ” の例文
“十重二十重:とえはたえ”を含む作品の著者(上位)作品数
吉川英治8
泉鏡花5
野村胡堂3
林不忘3
中里介山3
“十重二十重:とえはたえ”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 小説 物語0.7%
文学 > 日本文学 > 小説 物語(児童)0.3%
文学 > 日本文学 > 評論 エッセイ 随筆0.1%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
何ともいえない郷愁に似たものがヒシヒシ十重二十重とえはたえに自分の心の周りを取り巻いてきた。ポトリ涙が目のふちに光った。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
このとき! 十重二十重とえはたえにとり巻く警護の武士が、ドッ! とどよめきだったかと思うと、左膳の濡れ燕が闇にひらめいて!
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「雪降り積もった恵那えなの山を十重二十重とえはたえにおっ取り巻き猪狩り致さば面白かろう。いざ猪狩りの用意致せ!」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
……その他一同、十重二十重とえはたえに取囲んで、ここを一つ、と節をつついて、浮かれて謡出すのさえあるんです。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
十重二十重とえはたえに投げかけるあやしの網を切り破るように、平次が神田へ帰って来たのは、もう夜中過ぎでした。
馬から顛落てんらくした彼の上に、生擒いけどろうと構えた胡兵こへいどもが十重二十重とえはたえとおり重なって、とびかかった。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
つばさの上から十重二十重とえはたえにグルグルきしめ、その首と首だけが、そうほうまっ赤な口から火焔かえんをふきあって
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この個性は外界によって十重二十重とえはたえに囲まれているにもかかわらず、個性自身に於て満ち足らねばならぬ。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
門前町まで来るうちに、百人以上にもなって、縄付きの武蔵ひとりを十重二十重とえはたえに警固して行くのだった。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただ一筋の出処しゅっしょの裏には十重二十重とえはたえ因縁いんねんからんでいるかも知れぬ。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「この山中へ追い込めばもはや袋の鼠である、いずれへ行っても紀州領、帰れば我々の追手が十重二十重とえはたえ、山中に永く迷いおれば食糧はなし」
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
曹操は、中央の式殿に、悠揚と陣座をとって、腹心の大将や武士に、十重二十重とえはたえ、護られていた。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「——が、いずれ敵は、長陣を覚悟のうえで、十重二十重とえはたえにこの城をとり巻こう」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
市長室に据えつけられた金庫の前は、たちまち十重二十重とえはたえに人垣で囲まれた。
深夜の市長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
令閨れいけいとおよび五三人はその中心になりて、十重二十重とえはたえに巻きこまれ
凱旋祭 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
美しいお糸を十重二十重とえはたえに包んで、昼のうちから水も漏らさぬ警戒振りです。
たとへばあやしき糸の十重二十重とえはたえにわが身をまとふ心地ここちしつ。
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
思えば思うほどなんの楽しみもなんの望みもなき身は十重二十重とえはたえ黒雲に包まれて、この八畳の間は日影も漏れぬ死囚ろうになりかわりたる心地ここちすなり。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
瞬間、血走った眼が部屋の中を見廻したが、どうせこの家の周囲まわり十重二十重とえはたえであろうと思うと、かれは、起とうとした膝をしずめて、眼のまえのお妙を見た。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
もうその時分には、群集は殿堂を降りて、我々の廻りを十重二十重とえはたえに取りいていたが、笑いながらブルメナウ大尉の差し出した煙草を二、三人吸ってみる者も出てきた。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
大きな力強い自然が私の周囲を十重二十重とえはたえに取り巻いている。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
その網を取払って、そうして、茂太郎の口から聞くところによれば、熟睡中に不意に襲いかかって、自分の口をおさえ、その上をこの通り十重二十重とえはたえに包んでしまった者がある。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ちかく水陸をかぎれる一帯の連山中に崛起くっきせる、御神楽嶽飯豊山おかぐらがたけいいとよさんの腰を十重二十重とえはたえめぐれる灰汁あくのごときもや
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかし、一千の守兵が、十重二十重とえはたえの大軍に抗しながら、山上の厳冬にも耐えてきたのは、とてもそれまでにあった武門の旧知識や習慣だけでは、まにあわなかったに相違ない。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たとえば怪しき糸の十重二十重とえはたえにわが身をまとう心地しつ。
竜潭譚 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
白峰を写すには何処がよかろう、十重二十重とえはたえ山は深い。
白峰の麓 (新字新仮名) / 大下藤次郎(著)
「ぼくは賊の手なみに感心しているのですよ。彼はやっぱりえらいですなあ。ちゃんと約束を守ったじゃありませんか。十重二十重とえはたえの警戒を、もののみごとに突破したじゃありませんか。」
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「要心ぶかい。十重二十重とえはたえの警固がゆき届いている。また、あらゆる密偵が網の目のように光っている。しかも、智謀無類の李儒りじゅが側にいるし、武勇無双の呂布りょふが守っている」
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
本陣が玉菜たまな里芋さといもとしめじをもってきた。うまそうな葉を十重二十重とえはたえにかさねた玉菜と、毛むくじゃらの里芋と、まだほけない面白い形の茸が笊のなかで転り合っている。本陣は
島守 (新字新仮名) / 中勘助(著)
しかるに講和条件は明かにこれを裏切って、現に独逸人その物を極度に敵視し、あらゆる強暴苛酷な条件を以て七重八重はおろか、十重二十重とえはたえにその未来の発展を阻害しようとのみ計っています。
非人道的な講和条件 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
今までどこに伏せっていたものか、御用提灯の明りが、四方あたりの暗黒を十重二十重とえはたえに囲んで、御用! 御用! の声も急に、邦之助の率いる捕手の一団が、雲のごとく、霧のごとく、群がり、どよめいて、迫り囲んだ。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
竹矢来のそとは十重二十重とえはたえに、数千数百の群衆が、おもわずワーッと悲嘆の声をあげましたが、つづいて警固の役人のどなる声と、頭上にひらめく槍と刀のおどかしにキモをつぶして、水をうったようにしずまりかえります。
幻術天魔太郎 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
よせては六万余騎のぐんぜいをもって蟻のはいでるすきまもなく十重二十重とえはたえに打ちかこみ、のぶなが公をそうだいしょうとして、柴田しゅりのすけ、にわ五郎ざえもん、佐久間うえもんのじょうなど、きこゆるゆうしが加わっておりました。
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
全身に、妙な白い入墨いれずみをした原地人兵が、手に手に、たてをひきよせ、やりを高くあげ、十重二十重とえはたえ包囲陣ほういじんをつくって、海岸に押しよせる狂瀾怒濤きょうらんどとうのように、醤の陣営目懸めがけて攻めよせた。
で、全兵力はたちまち二万をこえ、全九州も風靡ふうびするかのような勢いで、延元元年二月二十七日には、もうこの大兵力のため、少弐妙恵みょうけいの守る太宰府——宝満山のふもと有智山うちやまの城——は十重二十重とえはたえにとりかこまれていたものだった。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
必定ひつじょう、正成兄弟はここをさいごの死所とえらび、残る兵をもって、死にものぐるいの一戦をとげに来たものと思わるる。——が、機鋒きほうわして、柔軟にあしらいおき、十重二十重とえはたえのうちに撃つは何の造作でもない。だが、正成はころすな。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかしめたものに望むような徹底を、因襲をもって十重二十重とえはたえに縛られた貴族の家庭に多くの愚かな召使たちにかしずかれながら育った夫人に、そしてあの空疎な今日の女学校の形式的な教育より受けていない夫人に期待するのは、するものの方が無理なのでありましょう。
芳川鎌子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
すわ珍事とばかりに、呼び叫んだ声といっしょで、めでたかりし参覲途上のお行列は、たちまち騒然と乱れたち、まず何より先にと供まわりの一隊が十重二十重とえはたえ人楯ひとだてつくって、尾州侯豆州侯お二方のお召し駕籠をぐるりと取り巻きながら、とりあえず安全な地点へお運び申しあげる。
この時目をあぐれば、灰色の煙空をおおい海をおおうて十重二十重とえはたえに渦まける間より、思いがけなき敵味方のほばしらと軍艦旗はかなたこなたにほの見え、ほとんど秒ごとに轟然ごうぜんたる響きは海を震わして、だんは弾と空中に相うって爆発し、海は間断なく水柱をけ上げて煮えかえらんとす。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
御尤ごもっともです、いにしえは兵が農を守りました、今は兵がことごとくさむらいという遊民になりました。この遊民を威張らせ、養って行くために、農が十重二十重とえはたえの負担をしなければならない、さむらいという遊民を食わせて、これに傲慢と驕奢きょうしゃを提供する役廻りが、農民の上に負わされて来たという次第です」
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)