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十重二十重
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とえはたえ
ふりがな文庫
“
十重二十重
(
とえはたえ
)” の例文
あの中が
皆
(
みんな
)
謡本さ、
可恐
(
おそろし
)
い。……その他一同、
十重二十重
(
とえはたえ
)
に取囲んで、ここを一つ、と節を
突
(
つつ
)
いて、浮かれて謡出すのさえあるんです。
卵塔場の天女
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
白峰を写すには何処がよかろう、
十重二十重
(
とえはたえ
)
山は深い。富士のように
何処
(
どこ
)
からも見えるというわけにはゆかぬ。地図を調べ人にもきいた。
白峰の麓
(新字新仮名)
/
大下藤次郎
(著)
「この山中へ追い込めばもはや袋の鼠である、いずれへ行っても紀州領、帰れば我々の追手が
十重二十重
(
とえはたえ
)
、山中に永く迷いおれば食糧はなし」
大菩薩峠:05 龍神の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
このとき!
十重二十重
(
とえはたえ
)
にとり巻く警護の武士が、ドッ! とどよめきだったかと思うと、左膳の濡れ燕が闇にひらめいて!
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
何ともいえない郷愁に似たものがヒシヒシ
十重二十重
(
とえはたえ
)
に自分の心の周りを取り巻いてきた。ポトリ涙が目のふちに光った。
小説 円朝
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
▼ もっと見る
しかし
醒
(
さ
)
めたものに望むような徹底を、因襲をもって
十重二十重
(
とえはたえ
)
に縛られた貴族の家庭に多くの愚かな召使たちにかしずかれながら育った夫人に
芳川鎌子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
思えば思うほどなんの楽しみもなんの望みもなき身は
十重二十重
(
とえはたえ
)
黒雲に包まれて、この八畳の間は日影も漏れぬ死囚
牢
(
ろう
)
になりかわりたる
心地
(
ここち
)
すなり。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
そこへまた、熊手や火煙玉を持った泊軍があらわれて、
十重二十重
(
とえはたえ
)
にとりまき、いちめんな
阿鼻叫喚
(
あびきょうかん
)
を巻きおこした。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
夏の宵はまだ薄明るく、外を通る人の
跫音
(
あしおと
)
が、なんとなくあわただしいのさえ、この家一軒が、
十重二十重
(
とえはたえ
)
に取囲まれているような錯覚を起させます。
銭形平次捕物控:124 唖娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
ただ一筋の
出処
(
しゅっしょ
)
の裏には
十重二十重
(
とえはたえ
)
の
因縁
(
いんねん
)
が
絡
(
から
)
んでいるかも知れぬ。
鴻雁
(
こうがん
)
の北に去りて
乙鳥
(
いっちょう
)
の南に
来
(
きた
)
るさえ、鳥の身になっては相当の弁解があるはずじゃ。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「雪降り積もった
恵那
(
えな
)
の山を
十重二十重
(
とえはたえ
)
におっ取り巻き猪狩り致さば面白かろう。いざ猪狩りの用意致せ!」
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
この個性は外界によって
十重二十重
(
とえはたえ
)
に囲まれているにもかかわらず、個性自身に於て満ち足らねばならぬ。その要求が成就されるまでは絶対に飽きることがない。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
馬から
顛落
(
てんらく
)
した彼の上に、
生擒
(
いけど
)
ろうと構えた
胡兵
(
こへい
)
どもが
十重二十重
(
とえはたえ
)
とおり重なって、とびかかった。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
身は
十重二十重
(
とえはたえ
)
に縛りつけられ、二挺のピストルは胸の前に筒口を揃えている。
鬼神
(
きじん
)
にあらぬ明智小五郎、如何にして、この絶体絶命の大危難を逃れ得るであろうか。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
まず何より先にと供まわりの一隊が
十重二十重
(
とえはたえ
)
の
人楯
(
ひとだて
)
つくって、尾州侯豆州侯お二方のお召し駕籠をぐるりと取り巻きながら、とりあえず安全な地点へお運び申しあげる。
右門捕物帖:16 七化け役者
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
もうその時分には、群集は殿堂を降りて、我々の廻りを
十重二十重
(
とえはたえ
)
に取り
繞
(
ま
)
いていたが、笑いながらブルメナウ大尉の差し出した煙草を二、三人吸ってみる者も出てきた。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
本陣が
玉菜
(
たまな
)
と
里芋
(
さといも
)
としめじをもってきた。うまそうな葉を
十重二十重
(
とえはたえ
)
にかさねた玉菜と、毛むくじゃらの里芋と、まだほけない面白い形の茸が笊のなかで転り合っている。本陣は
島守
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
その年の五月、進んで翼賛政治会に入会したが、そこはもはや軍閥の策源地であり、彼は
十重二十重
(
とえはたえ
)
にめぐらされた憲兵の警戒の中にあって身動きもできなくなっている自分を見出した。
叛骨・中野正剛:――主観的な覚え書き
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
全身に、妙な白い
入墨
(
いれずみ
)
をした原地人兵が、手に手に、
盾
(
たて
)
をひきよせ、
槍
(
やり
)
を高くあげ、
十重二十重
(
とえはたえ
)
の
包囲陣
(
ほういじん
)
をつくって、海岸に押しよせる
狂瀾怒濤
(
きょうらんどとう
)
のように、醤の陣営
目懸
(
めが
)
けて攻めよせた。
人造人間戦車の機密:――金博士シリーズ・2――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
しかるに講和条件は明かにこれを裏切って、現に独逸人その物を極度に敵視し、あらゆる強暴苛酷な条件を以て七重八重は
疎
(
おろ
)
か、
十重二十重
(
とえはたえ
)
にその未来の発展を阻害しようとのみ計っています。
非人道的な講和条件
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
よせては六万余騎のぐんぜいをもって蟻のはいでるすきまもなく
十重二十重
(
とえはたえ
)
に打ちかこみ、のぶなが公をそうだいしょうとして、柴田しゅりのすけ、にわ五郎ざえもん、佐久間うえもんのじょうなど
盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
叛徒になりさがった蹶起部隊を
十重二十重
(
とえはたえ
)
に取りかこんだ。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
たとえば怪しき糸の
十重二十重
(
とえはたえ
)
にわが身をまとう心地しつ。しだいしだいに暗きなかに奥深くおちいりてゆく
思
(
おもい
)
あり。
竜潭譚
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
瞬間、血走った眼が部屋の中を見廻したが、どうせこの家の
周囲
(
まわり
)
は
十重二十重
(
とえはたえ
)
であろうと思うと、かれは、起とうとした膝を
鎮
(
しず
)
めて、眼のまえのお妙を見た。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
十重二十重
(
とえはたえ
)
に投げかける
妖
(
あや
)
しの網を切り破るように、平次が神田へ帰って来たのは、もう夜中過ぎでした。
銭形平次捕物控:030 くるい咲き
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
門前町まで来るうちに、百人以上にもなって、縄付きの武蔵ひとりを
十重二十重
(
とえはたえ
)
に警固して行くのだった。
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
農が
十重二十重
(
とえはたえ
)
の負担をしなければならない、さむらいという遊民を食わせて、これに傲慢と
驕奢
(
きょうしゃ
)
を提供する役廻りが、農民の上に負わされて来たという次第です
大菩薩峠:38 農奴の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
黒い絹糸のようなもので、かれのからだを
十重二十重
(
とえはたえ
)
にまきつけて、それで木の幹のほうへひっぱられるので、痛さに、知らず知らずじりじりとそのほうへいざっていく。
影男
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
灰色の煙空をおおい海をおおうて
十重二十重
(
とえはたえ
)
に渦まける間より、思いがけなき敵味方の
檣
(
ほばしら
)
と軍艦旗はかなたこなたにほの見え、ほとんど秒ごとに
轟然
(
ごうぜん
)
たる響きは海を震わして
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
市長室に据えつけられた金庫の前は、たちまち
十重二十重
(
とえはたえ
)
に人垣で囲まれた。
深夜の市長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
又私の身辺には有らゆる社会の活動と
優
(
すぐ
)
れた人間とがある。大きな力強い自然が私の周囲を
十重二十重
(
とえはたえ
)
に取り巻いている。これらのものの絶大な重圧は、この
憐
(
あわ
)
れな私をおびえさすのに十分過ぎる。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
たとへば
怪
(
あや
)
しき糸の
十重二十重
(
とえはたえ
)
にわが身をまとふ
心地
(
ここち
)
しつ。しだいしだいに暗きなかに奥深くおちいりてゆく
思
(
おもい
)
あり。
竜潭譚
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
四方
(
あたり
)
の暗黒を
十重二十重
(
とえはたえ
)
に囲んで、御用! 御用! の声も急に、邦之助の率いる捕手の一団が、雲のごとく、霧のごとく、群がり、どよめいて、迫り囲んだ。
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
曹操は、中央の式殿に、悠揚と陣座をとって、腹心の大将や武士に、
十重二十重
(
とえはたえ
)
、護られていた。
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
町家の
庇
(
ひさし
)
、塀の
袂
(
たもと
)
、——あらゆる場所から、御用の提灯が無数に現れて
巴
(
ともえ
)
になって斬り結ぶ三人を照らし、それに続いて、
十重二十重
(
とえはたえ
)
の捕物陣が、ヒタヒタと押し寄せます。
銭形平次捕物控:126 辻斬
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
その網を取払って、そうして、茂太郎の口から聞くところによれば、熟睡中に不意に襲いかかって、自分の口をおさえ、その上をこの通り
十重二十重
(
とえはたえ
)
に包んでしまった者がある。
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「ぼくは賊の手なみに感心しているのですよ。彼はやっぱりえらいですなあ。ちゃんと約束を守ったじゃありませんか。
十重二十重
(
とえはたえ
)
の警戒を、もののみごとに突破したじゃありませんか。」
怪人二十面相
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
十重二十重
(
とえはたえ
)
に囲まれては、老功な武者でも
籠城
(
ろうじょう
)
がしにくいぞ。ええ
情
(
なさけ
)
ない、お家の没落を見てどうしておめおめと生きておられよう、
先殿
(
せんとの
)
への申訳、まッこの通り。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
が、
機鋒
(
きほう
)
を
交
(
か
)
わして、柔軟にあしらいおき、
十重二十重
(
とえはたえ
)
のうちに撃つは何の造作でもない。だが、正成はころすな。なるべくは生けどれ。その令を、直義へつたえおくのだ。
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
竹矢来のそとは
十重二十重
(
とえはたえ
)
に、数千数百の群衆が、おもわずワーッと悲嘆の声をあげましたが、つづいて警固の役人のどなる声と、頭上にひらめく槍と刀のおどかしにキモをつぶして
幻術天魔太郎
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
令閨
(
れいけい
)
とおよび五三人はその中心になりて、
十重二十重
(
とえはたえ
)
に巻きこまれ、
遁
(
のが
)
るる
隙
(
ひま
)
なく
伏
(
ふし
)
まろび候ひし。
凱旋祭
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「要心ぶかい。
十重二十重
(
とえはたえ
)
の警固がゆき届いている。また、あらゆる密偵が網の目のように光っている。しかも、智謀無類の
李儒
(
りじゅ
)
が側にいるし、武勇無双の
呂布
(
りょふ
)
が守っている」
三国志:03 群星の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
美しいお糸を
十重二十重
(
とえはたえ
)
に包んで、昼のうちから水も漏らさぬ警戒振りです。
銭形平次捕物控:002 振袖源太
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
しかし、一千の守兵が、
十重二十重
(
とえはたえ
)
の大軍に抗しながら、山上の厳冬にも耐えてきたのは、とてもそれまでにあった武門の旧知識や習慣だけでは、まにあわなかったに相違ない。
私本太平記:07 千早帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鶴喜
(
つるき
)
の
離屋
(
はなれ
)
を借りて、年に一度の参会を開いていた道具屋の一隊は、石原の利助の子分を先鋒とする、八丁堀の組子に
十重二十重
(
とえはたえ
)
に取囲まれ、多勢の怪我人まで拵えて、
尽
(
ことごと
)
く召捕りになりました。
銭形平次捕物控:071 平次屠蘇機嫌
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
邇
(
ちか
)
く水陸を
画
(
かぎ
)
れる一帯の連山中に
崛起
(
くっき
)
せる、
御神楽嶽飯豊山
(
おかぐらがたけいいとよさん
)
の腰を
十重二十重
(
とえはたえ
)
に
縈
(
めぐ
)
れる
灰汁
(
あく
)
のごとき
靄
(
もや
)
は、
揺曳
(
ようえい
)
して
巓
(
いただき
)
に
騰
(
のぼ
)
り、
見
(
み
)
る見る天上に
蔓
(
はびこ
)
りて、怪物などの今や時を得んずるにはあらざるかと
取舵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
なんに
吸
(
す
)
いつけられているのかと見れば、じっさい、おどろくべき
怪物
(
かいぶつ
)
——といってもよい大うわばみが、
鞍馬山
(
くらまやま
)
にはめずらしい
大鷲
(
おおわし
)
を、
翼
(
つばさ
)
の上から
十重二十重
(
とえはたえ
)
にグルグル
巻
(
ま
)
きしめ
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「ヘエ——、下っ引が五六十人、
十重二十重
(
とえはたえ
)
に囲んでいますよ」
銭形平次捕物控:100 ガラッ八祝言
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「——が、いずれ敵は、長陣を覚悟のうえで、
十重二十重
(
とえはたえ
)
にこの城をとり巻こう」
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
全九州も
風靡
(
ふうび
)
するかのような勢いで、延元元年二月二十七日には、もうこの大兵力のため、少弐
妙恵
(
みょうけい
)
の守る太宰府——宝満山のふもと
有智山
(
うちやま
)
の城——は
十重二十重
(
とえはたえ
)
にとりかこまれていたものだった。
私本太平記:11 筑紫帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
十
常用漢字
小1
部首:⼗
2画
重
常用漢字
小3
部首:⾥
9画
二
常用漢字
小1
部首:⼆
2画
十
常用漢字
小1
部首:⼗
2画
重
常用漢字
小3
部首:⾥
9画