分際ぶんざい)” の例文
そうすると色奴いろやっことか申してな、下司げす下郎の分際ぶんざい金糸きんしの縫いあるぴか/\した衣装で、お供におくれたという見得で出てまいります
そもそも、憎むべきものは、先に、ここの城主山名豊国を、家来の分際ぶんざいとして追放した山名の臣、中村春次はるつぐと森下道与どうよの二名です。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「狐のごときは実に世の害悪だ。ただ一言もまことはなく卑怯ひきょう臆病おくびょうでそれに非常にねたみ深いのだ。うぬ、畜生ちくしょう分際ぶんざいとして。」
土神ときつね (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
また学生の分際ぶんざいでありながら文展に絵を運ぶという事は少年が女郎買いすると同じ程度において人目をはばかったものである。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
殺せしやあまりと言へば恩知らずにつく仕方しかたなりサア尋常じんじやう白状はくじやうされよと云ひければ段右衞門輾々から/\打笑うちわらなんぢ女の分際ぶんざいとして何をしるべきや三五郎を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
各々分際ぶんざいがありまして、まるきり柄にもない字を初めからやったところで、とても追いつかないこともありますから
まあ、わたしたちは、そんな時分じぶんまできていないからいいが、だれでも、分際ぶんざいらないほど、おそろしいことはない。
おばあさんとツェッペリン (新字新仮名) / 小川未明(著)
摩登伽尼 ——証道の御許しのと、そんな至ったことはわたくしの分際ぶんざいでもなし、また望みでも御座いません。
阿難と呪術師の娘 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
と団さんも分際ぶんざいを守って、弟の礼を執る。兄さんと弟だからこれは何の不思議もない話だけれど、双方とも額の少々禿上る年配なので、一寸異様の感がする。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
佐助はこの事が春琴に知れたら定めし機嫌を損ずるであろうただ与えられた手曳きの役をしていればよいのに丁稚の分際ぶんざいで生意気な真似まねをすると憫殺びんさつされるか嘲笑ちょうしょうされるか
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「有るんでしょう。八木先生はそうおっしゃってよ。たしかに殿下様に化けたんだって、恐れ多い事だが化けて来たって——第一不敬じゃありませんか、法螺吹ほらふきの分際ぶんざいで」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
成年期に達している淑女の分際ぶんざいをも顧みず、寝ているコン吉の顔の上をまたいで通ったり、本業とする天地活写の勉強においても、とかく、静物は動物となり、動物はまた要するに
頭が高い! 控えおろうぞ! 陪臣またもの分際ぶんざいもって縛につけとは何を申すかッ。それとも参らばこの傷じゃ。幸いの夕啼き時刻、江戸で鳴らしたこの三日月傷が鼠呼きして飛んで参るぞッ
居合わした主人は、思わず勃然むっとして、貰う者の分際ぶんざい好悪よしあしを云う者があるか、としかりつけたら、ブツ/\云いながら受取ったが、門を出て五六歩行くと雑木林ぞうきばやしに投げ棄てゝ往った。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ところが、郡司の分際ぶんざいで無礼千万であると、兵力づくでひて入部し、国内を凋弊てうへいし、人民を損耗そんかうせしめんとした。武芝は敵せないから逃げかくれると、武芝の私物しぶつまで検封してしまつた。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「ナニ、覚悟がある? 覚悟とはどうしようというのじゃ、小倅こせがれ分際ぶんざいで」
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
何もできもしない百姓の分際ぶんざいで、金があるからといって、生意気な奴だと思った。初めての教員、初めての世間への首途かどで、それがこうした冷淡れいたんな幕で開かれようとはかれは思いもかけなかった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
犬の分際ぶんざいで人間を喰うというのは罪の深い事だと気が付いた、そこで直様すぐさま善光寺へけつけて、段々今までの罪を懺悔ざんげした上で、どうか人間に生れたいと願うた、七日七夜、椽の下でお通夜して
(新字新仮名) / 正岡子規(著)
簡明にツたら、女といふやつは、男を離れて生存する資格のない分際ぶんざいで、男に向ツて、男が女を離れて生存することが出來ないかのやうな態度を取ツてゐるのだ。げんにお前だツてうぢやないか。
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
腐肉くされにくたか蒼蠅あをばへでもロミオには幸福者しあはせものぢゃ、風雅みやびた分際ぶんざいぢゃ。
長崎屋は、広海屋とは、言わば振り出しの分際ぶんざいが違っていた。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「年寄りの分際ぶんざいで無礼な奴! これ返辞を何故しない」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
加多 斬る! 一旗本の分際ぶんざいで慮外の処置だ。
斬られの仙太 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
分際ぶんざいを忘れたお先ばしりの罰だ。
蜆谷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「新参者の分際ぶんざいで——」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
『これ楠平。若党の分際ぶんざいで、いらざる事に出洒張でしゃばるな。もう御城下を出奔したからには、男女ふたりの恋は命がけ、ここは二人が、恋に勝つか死ぬかの峠だ』
夕顔の門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
百姓の分際ぶんざいとして御ぢきに申上たしなどとは無禮なりと少しいかりをふくみて汝は當山を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
百姓下民の分際ぶんざいで、領主に逆らい事致すとは何ごとじゃッ。生かすも気まま、殺すも気まま、その方共百姓領民は、当知行所二千八百石に添え物として頂いた虫けらじゃ。不埒者達めがッ。
仏は人々の持つ心力の程度を実の如く知ろしめしたまう。今、お前に命ずる処のものは、お前に取って堪え得られる分際ぶんざいのものでしか無い。阿難よ。勇気を出すが宜い。心弱くては生命に到り難いぞ。
阿難と呪術師の娘 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「黙れ、穢多えた非人ひにん分際ぶんざいで」
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
微賤びせんな一廷尉の分際ぶんざいが、かくも長々と、愚言を奏したてまつろうなどとは、たれしも夢思わぬことではあったが、賜謁しえつをお取次いたした奏者そうじゃのつみも軽くない。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
願ひ度と申いでしが百姓の分際ぶんざいにて御ぢきに御目通りは叶ひがたしと申せしかばかくの仕合なりと言に方丈はうぢやうは其者是へとほせと申さるゝゆゑ侍者じしやの坊主立出たちいでコレ各々方おの/\がたしづまられよコリヤ百姓和尚樣をしやうさまあひなさるゝに因て此方へ通るべしと言を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
下種げす、身のほどこそ知れ。臣下のまた陪臣の分際ぶんざいで、この護良へ、なにをばかな……」
だまれッ、家臣の分際ぶんざいをもって、主人の意向もうかがわずに主人の客を追いかえす法やある。すでに落城したも同様なこの城を落すために、わざわざ手間ひまかけて、説客に来たり詭謀きぼう
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)