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ふたたび
ふりがな文庫
“
再
(
ふたたび
)” の例文
風の声も浪の
水沫
(
しぶき
)
も、或は夜空の星の光も今は
再
(
ふたたび
)
彼を誘つて、広漠とした太古の天地に、さまよはせる事は出来なくなつた。
老いたる素戔嗚尊
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
其が次第に
蔓
(
ひろが
)
って、過ぎた日の様々な姿を、短い
聯想
(
れんそう
)
の
紐
(
ひも
)
に貫いて行く。そうして明るい意思が、彼の人の
死枯
(
しにが
)
れたからだに、
再
(
ふたたび
)
立ち直って来た。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
彼は
何時
(
いつ
)
になく少し赤面して
俯向
(
うつむ
)
いた。然し
再
(
ふたたび
)
顔を上げた時は、平生の通り静かな悪びれない態度を回復していた。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
代匠記に、「草深キ野ニハ鹿ヤ鳥ナドノ多ケレバ、宇智野ヲホメテ
再
(
ふたたび
)
云也
(
いふなり
)
」。古義に、「けふの御かり御
獲物
(
えもの
)
多くして御興
尽
(
つき
)
ざるべしとおぼしやりたるよしなり」
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
千代子は夫の説明を聞いても、怖いもの見たさの奇妙な誘惑に
抗
(
こう
)
し難くて、
再
(
ふたたび
)
三度
(
みたび
)
、この廣介のいたずら半分のレンズ装置を、覗き直して見ないではいられませんでした。
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
▼ もっと見る
勿論
這入
(
はい
)
ったところで面白い話をするでもなければ用があるのでもない、ただ彼の顔を見るばかりだ。それで彼は
再
(
ふたたび
)
踵を返した。今度は勇気天を
衝
(
つ
)
くようで足は軽くて早い。
愛か
(新字新仮名)
/
李光洙
(著)
一度その中に
這入
(
はい
)
つて善くその内部を研究し而して後に
娑婆
(
しゃば
)
に出でなば
再
(
ふたたび
)
陥る
憂
(
うれい
)
なかるべし、月並調を知らずして
徒
(
いたずら
)
に月並調を恐るるものはいつの間にか月並調に陥り居る者少からず
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
やがて相応の身分となり幾分の余裕を得て後
再
(
ふたたび
)
筆を執るも何ぞ遅きにあらんや。
小説作法
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
叶
(
かな
)
ふまじき由申し聞け候所、
一度
(
ひとたび
)
は泣く泣く帰宅致し候へども、翌八日、
再
(
ふたたび
)
私宅へ参り、「一生の恩に着申す可く候へば、
何卒
(
なにとぞ
)
御検脈下され
度
(
たし
)
」
尾形了斎覚え書
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
再
(
ふたたび
)
の我に帰るの意にして、再の我に帰るとは、願いにもあらず、望みにもあらず、気高き信者の見たるあからさまなる事実なれば、聖徒イノセントの墓地に横たわるは
三四郎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
其「ほ」が積極消極両方面に現れて来たものが、段々不当不正の場合にばかり出現を乞ふ事になつたのであるが、かしりになると、
再
(
ふたたび
)
形を変へて「ほ」が出て来る事になつた訣である。
「ほ」・「うら」から「ほがひ」へ
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
人の
生命
(
いのち
)
にはまた生れ替る来世とやらも御座いましょうが、金銀珠玉の細工物は一度壊されては
再
(
ふたたび
)
この世には出て参りませぬ。先生。海老蔵が折入って御願いと申まするは
斯様
(
かよう
)
の次第で御座ります。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
予は
是
(
ここ
)
に於て、予が警告を
再
(
ふたたび
)
するの、必要なる
所以
(
ゆゑん
)
を感ぜざる
能
(
あた
)
はず。予は全然
正気
(
しやうき
)
にして、予が告白は徹頭徹尾事実なり。卿等
幸
(
さいはひ
)
にそを信ぜよ。
開化の殺人
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
唯
再
(
ふたたび
)
、固定断片化する事によつて、今日でも認容せられる形になつて了つた。
副詞表情の発生
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
生
(
い
)
きるとは、
再
(
ふたたび
)
の
我
(
われ
)
に
帰
(
かへ
)
るの意にして、
再
(
ふたゝび
)
の
我
(
われ
)
に帰るとは、
願
(
ねがひ
)
にもあらず、
望
(
のぞみ
)
にもあらず、
気高
(
けだか
)
き信者の見たる
明白
(
あからさま
)
なる
事実
(
じじつ
)
なれば、聖徒イノセントの墓地に
横
(
よこた
)
はるは
猶
(
なお
)
埃及
(
エジプト
)
の
砂中
(
さちう
)
に埋まるが如し。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
時に先生
筆硯
(
ひっけん
)
甚
(
はなはだ
)
多忙なりしがため余に題材を
口授
(
こうじゅ
)
し
俄
(
にわか
)
に短篇一章を作らしむ。この作『
夕蝉
(
ゆうせみ
)
』と題せられ
再
(
ふたたび
)
合作の署名にて同誌第一号に掲げられぬ。『伽羅文庫』は二号を出すに及ばずして廃刊しき。
書かでもの記
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
と
思
(
おも
)
ふか
思
(
おも
)
はない
内
(
うち
)
に、
妻
(
つま
)
は
竹
(
たけ
)
の
落葉
(
おちば
)
の
上
(
うへ
)
へ、
唯
(
ただ
)
、
一蹴
(
ひとけ
)
りに
蹴倒
(
けたふ
)
された、(
再
(
ふたたび
)
、
迸
(
ほとばし
)
る
如
(
ごと
)
き
嘲笑
(
てうせう
)
)
盜人
(
ぬすびと
)
は
靜
(
しづ
)
かに
兩腕
(
りやううで
)
を
組
(
く
)
むと、おれの
姿
(
すがた
)
へ
眼
(
め
)
をやつた。
藪の中
(旧字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
さめざめと泣き沈み、種々申し慰め候へども、一向耳に掛くる体も御座無く、且は娘容態も詮無く相見え候間、止むを得ず
再
(
ふたたび
)
下男召し
伴
(
つ
)
れ、
匇々
(
そうそう
)
帰宅仕り候。
尾形了斎覚え書
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
記録は、大体ここまでしか、悪魔の消息を語つてゐない。唯、明治以後、
再
(
ふたたび
)
、渡来した彼の動静を知る事が出来ないのは、返へす返へすも、
遺憾
(
ゐかん
)
である。……
煙草と悪魔
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
翌年の春の或夜、宋金花を訪れた、若い日本の旅行家は
再
(
ふたたび
)
うす暗いランプの下に、彼女と
卓
(
テエブル
)
を挾んでゐた。
南京の基督
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
卿等にして若し当時の予が、如何に傷心したるかを知らんとせば、予が帰朝後旬日にして、
再
(
ふたたび
)
英京に去らんとし、為に予が父の激怒を招きたるの一事を想起せよ。
開化の殺人
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
金花はさう考へると、急に心が暗くなつて、今朝は
再
(
ふたたび
)
彼の顔を見るに堪へないやうな心もちがした。
南京の基督
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
久しく自然主義の
淤泥
(
おでい
)
にまみれて、本来の面目を失してゐた
人道
(
ユウマニテエ
)
が、あのエマヲのクリストの如く「日
昃
(
かたぶ
)
きて暮に及んだ」文壇に
再
(
ふたたび
)
姿を現した時、如何に我々は氏と共に
あの頃の自分の事
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
翁の声は
再
(
ふたたび
)
気づかはしげな、いたましい祈りの
言
(
ことば
)
となつて、夜空に高くあがつたのでござる。
奉教人の死
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
されど——されど、予は予が
再
(
ふたたび
)
明子を失ひつつあるが如き、異様なる苦痛を免るる事能はず。
開化の殺人
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「あの
女
(
をんな
)
はどうするつもりだ?
殺
(
ころ
)
すか、それとも
助
(
たす
)
けてやるか?
返事
(
へんじ
)
は
唯
(
ただ
)
頷
(
うなづ
)
けば
好
(
よ
)
い。
殺
(
ころ
)
すか?」——おれはこの
言葉
(
ことば
)
だけでも、
盜人
(
ぬすびと
)
の
罪
(
つみ
)
は
赦
(
ゆる
)
してやりたい。(
再
(
ふたたび
)
、
長
(
なが
)
き
沈默
(
ちんもく
)
)
藪の中
(旧字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ことに不思議なるは同人の頸部なる
創
(
きず
)
にして、こはその際
兇器
(
きょうき
)
にて
傷
(
きずつ
)
けられたるものにあらず、全く日清戦争中戦場にて負いたる創口が、
再
(
ふたたび
)
、破れたるものにして、実見者の談によれば
首が落ちた話
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
私が
再
(
ふたたび
)
こう念を押すと、田代君は
燐寸
(
マッチ
)
の火をおもむろにパイプへ移しながら
黒衣聖母
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
とかうする程に、
再
(
ふたたび
)
火の前に群つた人々が、一度にどつとどよめくかと見れば、髪をふり乱いた「ろおれんぞ」が、もろ手に幼子をかい抱いて、乱れとぶ焔の中から、
天
(
あま
)
くだるやうに姿を
現
(
あらは
)
いた。
奉教人の死
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
再
常用漢字
小5
部首:⼌
6画
“再”を含む語句
再度
再三
再従兄弟
再昨日
再建
再来年
再生
再現
再縁
趙再思
再造
再法庵
再従兄
再発
再興
一再
再挙
再會
再来
再応
...