全滅ぜんめつ)” の例文
はたして、その、このまち大火たいかこりました。そして、ほとんど、まち大半たいはん全滅ぜんめつして、また負傷ふしょうしたひとがたくさんありました。
あほう鳥の鳴く日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それがいまではすっかりいはらわれて、もう全滅ぜんめつするばかりです。人里離れた二、三の場所に、その姿を見かけることがあるだけです。
獰惡だうあく野良猫のらねこ、おとなりのとり全滅ぜんめつさせたわるいヤツ、うちたひをさらつた盜癖とうへきのある畜生ちくせう、それがんだは、このやさしいうつくしいニヤンこうである。
ねこ (旧字旧仮名) / 北村兼子(著)
ところが、それからだんだん国元の様子が父に不利になって来て、近頃ちかごろではまるっきり音沙汰おとさたもありません。うわさには一族郎党ろうとう、ほとんど全滅ぜんめつだとの事です。
鯉魚 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
それはめったにないくらいおおきな時化しけで、一三浦みうら三崎みさきたい人家じんか全滅ぜんめつしそうにおもわれたそうでございます。
上官。私は決心いたしました。この饑餓陣営の中にきましては最早もはや私共の運命はさだまってあります。戦争のためにでなく飢餓の為に全滅ぜんめつするばかりであります。
饑餓陣営:一幕 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
この叶屋の全滅ぜんめつは、数多い罹災のうちでも、瓦本にまで読売りされて江戸中の人びとに知れ渡っていた。
そこでいよいよここに、○○国境を新戦場として、たがいほこりあう彼我ひがの精鋭機械化兵団が、大勝たいしょう全滅ぜんめつかの、乾坤けんこんてきの一大決戦を交えることになったのである。
未来の地下戦車長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ヴェスヴィオ噴火ふんかによるポムペイ全滅ぜんめつ慘事さんじまさるともおとることなきほどの出來事できごとであつた。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
それでたる貝塚かひづか探檢たんけんしたくなつたので、四十一ねんぐわつたるつてた。しかるにいま全滅ぜんめつして、わづかにはたけ貝殼かひがら點々てん/\いてくらゐで、とてそうこと出來できぬ。
あに一人ひとりあつたが戦地せんちおくられるともなく病気びやうきたふれ、ちゝ空襲くうしふとき焼死せうしして一全滅ぜんめつした始末しまつに、道子みちこ松戸まつど田舎ゐなか農業のうげふをしてゐる母親はゝおや実家じつかはゝともにつれられてつたが
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
畑が斯うだから、園の内も青い物は全滅ぜんめつ、色ある物は一夜にただれて了うのである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
東京の本所ほんじょで、やはり自転車屋をしていた彼女一家が、今どこにどうしているか、おそらくは三月九日の空襲くうしゅうで一家全滅ぜんめつしたのではなかろうかと考えだしたのは、戦争も終るころだった。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
砲弾ほうだんにて破損せる古き穀倉の内部、からくも全滅ぜんめつまぬかれしバナナン軍団、マルトン原の臨時幕営ばくえい
饑餓陣営:一幕 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
余等が帝劇のハムレットに喜憂きゆうそそいで居る間に、北多摩きたたまでは地が真白になる程雹が降った。余が畑の小麦こむぎも大分こぼれた。隣字となりあざでは、麦はたねがなくなり、くわ蔬菜そさいも青い物全滅ぜんめつ惨状さんじょううた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
警官隊は全滅ぜんめつです。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)