倫敦ロンドン)” の例文
倫敦ロンドンで二ヶ月ばかり下宿住いをしたことがあるけれど、二ヶ月のあいだじゅう朝御飯が同じ献立だったのにはびっくりしてしまった。
朝御飯 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
偶然のことで、私はこの発見の経過を知っているのであるが、倫敦ロンドンのキングス・カレッジの地下室で、実験をしていた時の話である。
科学と国境 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
ある倫敦ロンドンの婦人は、日本から行つた留學生を前に置いて、『あなたがたは大きな言葉をよく知つてゐるが、小さな言葉を御存じない』
桃の雫 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そうしたら倫敦ロンドンは二十四時間のうちに無人の廃墟となるであろう。一方にヴェルダンが陥落してカイゼルの宮廷列車が巴里パリに到着する。
戦場 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
Paul Jannussen の「倫敦ロンドンまでの地底三カ月の旅」の中に誌されたような、金剛砂エムリと熔岩塔の悲痛な原野でもなかった。
地底獣国 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
それはタイプライタアを叩く事で、この道にかけての陛下の手際は、倫敦ロンドンで名うてのタイピストに比べても決してひけは取られない。
丁度ちやうど日曜の勤行ごんぎやうに参り合せたのを初めに、今この筆を執る日まで丸八日やうか経つ間に倫敦ロンドン寺と博物館と名所とを一通り見物して仕舞しまつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
ようやく三ヶ月計り前に倫敦ロンドンへ来た坂口さかぐちはガランとした家の中で、たったひとり食事を済すと、何処というあてもなく戸外へ出た。
P丘の殺人事件 (新字新仮名) / 松本泰(著)
彼は倫敦ロンドンにいる自分の妻が危篤のために、上京するべく今は一瞬間も失ってはならないというのだ。奇妙な偶然である。真に偶然である。
倫敦ロンドンではなおなお少ない。少ないがこの留学費全体を投じて衣食住の方へ廻せば我輩といえども最少もうすこしは楽な生活ができるのさ。
倫敦消息 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
事実、聞くところによると、瑞西スイツルのホテルの給仕人や、チェンバア・メエドは、かならず英語の勉強に交代の倫敦ロンドンへ出て来るのだそうだ。
踊る地平線:11 白い謝肉祭 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
こうした悲劇のあった後、妾は生けるしかばねとなって倫敦ロンドンに帰って参りました。あの時から妾の内部的な生活は終っていたのです。
バルザックの寝巻姿 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
倫敦ロンドンタイムスで見たのですが、彼等の大切な秘密文書を、ある日本人に盗まれたので、それを取り返しに来たのだそうです」
銀三十枚 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
倫敦ロンドン市中にも無論に多く見られるのですが、わたしが先ず軽蔑の眼をぬぐわせられたのは、キウ・ガーデンをたずねた時でした。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
三日前に倫敦ロンドンから北行ほくこうして来るまでというもの正式の取調べはまだ行われてなかったくらいだから、行われぬままにしかし
倫敦ロンドン行の汽車は別のかと思つて居たのであるが、前と後になつて居る丈で未だ兩方繋がつて居る事に此時初めて氣が附いた。
巴里まで (旧字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
そもそも日本の浮世絵がはじめて欧洲の社会一般の注意する処となりしは千八百六十二年(文久ぶんきゅう二年)万国博覧会の英京倫敦ロンドンに開かれたる時なり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
と云うのは、その壁面を飾るものに、現在は稀覯きこう中の稀覯ともいう銅版画で、一六六八年版の「倫敦ロンドン大火之図」が掲げられているからだった。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「それは、これから旅行をしようとしてゐるからなの、ジエィン? あなたの食慾をなくしたのは倫敦ロンドンへ行くといふことを考へるからなの?」
すなわち紐育ニューヨーク倫敦ロンドン巴里パリーに行った。そしてこれらの大都市の生活が科学的であるだけ、それだけ犯罪を行うにはいかにも都合がよいと思った。
科学的研究と探偵小説 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
この人には二どめの妻君さいくんがあって、この妻君さいくんも死ぬことになるが、その死ぬ少し前に、ハークマはたし倫敦ロンドンへ行っていて、そして其処そこからえる。
不吉の音と学士会院の鐘 (新字新仮名) / 岩村透(著)
日本からの直接通信が始めて英京倫敦ロンドンに届いたといふのが新聞に出たが、それを読むと前に読んだ間接通信の記事内容よりももつと深刻であつた。
日本大地震 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
「もう二十年ばかりになります、———千九百九年に、倫敦ロンドンにいた時会ったのが最後でした、手紙は始終やりとりをしていましたけれど。………」
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
諸君は御記憶であろうか? 昨夏七月二十二日ブエノスアイレス発ユーピー特電が突如倫敦ロンドン各紙に第一声を送って以来、エーピー、ロイター、タス
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
和蘭オランダが不作のために、倫敦ロンドンから大口の注文があったからだ、とあの時皆は云っていたさ。ところが、今度小樽へ出て聞いてみると、そうでないんだ。
不在地主 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
スワンソン夫人は公園小路パークレーンの自邸で目が覚めた。彼女は社交季節が来ると、倫敦ロンドンの邸宅に帰って来る。彼女は昨日まで蘇格蘭スコットランドの領地で狐を狩って居た。
バットクラス (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
(2)この航海記は初め一八一七年(文化十四年)倫敦ロンドンに刊行し、翌年再版し、八年後更に版を加う。一八一八年(文政元年)の蘭訳本及仏訳本あり。
尤も一と頃倫敦ロンドンの社交夫人間にカメレオンを鍾愛しょうあいする流行があったというが、カメレオンの名代みょうだいならYにも勤まる。
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
倫敦ロンドン市民の何人だれとも、市の行政団体、市参事会、組合員などを引っ包めても——引っ包めてもと云うのは少し大胆だが、倫敦市中の何人だれとも同じように
英国ではそんな不徹底な事業家は育てませんよ。倫敦ロンドンで頑張っている人達の事を考えて下さい。それから今まで箇旧の錫鉱山に対して英国がどれだけの厚意を
雲南守備兵 (新字新仮名) / 木村荘十(著)
漱石が倫敦ロンドンの場末の下宿屋にくすぶつて居ると、下宿屋のかみさんが、お前トンネルといふ字を知つてるかだの、ストロー(わら)といふ字の意味を知つてるか
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
或晩夜廻りが倫敦ロンドンの町を廻って居ると、テンプルバアに近い所で、若い娘がみちに倒れているのを見付けた。
女の決闘 (新字新仮名) / 太宰治(著)
倫敦ロンドン塔』のなかで漱石の言つた通り、「英国の歴史を読んだもので彼女の名を知らぬ者はあるまいし、又の薄命と無残の最後に同情の涙をそそがぬ者はない」
ジェイン・グレイ遺文 (新字旧仮名) / 神西清(著)
(一生めとらず、俗世間の縁を避け、心血を結集して五大編を書きあげた。骨は倫敦ロンドン郊北の地に埋葬されて、ありあまる光輝は千年もよみじを照らすであろう。)
南半球五万哩 (新字新仮名) / 井上円了(著)
五十一 欧羅巴の方は更にこれよりもはなはだしい、倫敦ロンドンから時間を追って電報が来る、その伝える所によると
暗黒星 (新字新仮名) / シモン・ニューコム(著)
最初に出来た人造人間ロボットは、倫敦ロンドンの街をひょこひょこ歩いて、市民を驚かした。椅子から立ちあがったり、椅子に腰を下ろしたり、手をふったりすることが出来た。
人造物語 (新字新仮名) / 海野十三(著)
(三)彼は同時代の作家の中では、最もコスモポリタンだつた。南北戦争に従軍した事もある。桑港サンフランシスコの雑誌の主筆をした事もある。倫敦ロンドンに文を売つてゐた事もある。
点心 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
もっとも、亜米利加の二十世紀急行、倫敦ロンドン巴里パリー間の金矢列車ゴールド・アロウ、倫敦エディンバラ間の「飛ぶ蘇格蘭人フライング・スカッチマン
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
その探険隊が帰還して倫敦ロンドンに於ける報告会を開催するや、実物の標本として取り出した飛竜の雛が忽ち会場の天井の高窓から飛び去って、聴衆が大騒ぎを演ずるなど
大衆文芸作法 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
悠々として倫敦ロンドン三界さんがいから欧羅巴ヨーロッパの目抜きを横行して、維納ウィンナの月をながめて帰ることができました。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
芥川龍之介あくたがわりゅうのすけ氏に聞いた、西洋の怪談が一つ、それは、紐育ニューヨーク倫敦ロンドンだったかのもっとも繁華な町の真昼間一寸の間、人通りの絶えた時、ある人が町角を何の気なしに曲ったら
怪談 (新字新仮名) / 平山蘆江(著)
倫敦ロンドンの社交界に隠れもない伊達者ヘンリイ・ウォットン卿はたまたま、数年前にかの興奮から突然姿をくらまして色々と噂の高かった画家ベエシル・ハルワアドを訪れた。
チャーレを千島禮三ちしまれいぞうという金森家の御納戸役おなんどやくにいたし、巴里パリーの都が江戸の世界、カライの港が相州浦賀で、倫敦ロンドン上総かずさ天神山てんじんやま、鉄道は朝船あさふね夕船ゆうふねに成っておりますだけで
そこへ倫敦ロンドンからのお出迎へがございまして、わたくし、ほつといたしましたんですが、その船でまた日本へ帰つて参ります時は、精がなくて精がなくて、どなたの前でも
(新字旧仮名) / 岸田国士(著)
倫敦ロンドンタイムスとせいろん政府によって証明されたる世界的驚異・印度インドアウルヤ派の手相学泰斗・ヤトラカン・サミ博士、過去未来を通じて最高の適中率・しかも見料低廉。
ヤトラカン・サミ博士の椅子 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
其紀行は『日本アルプスの登山と探検』と題し、二十九年(一八九六年)に倫敦ロンドンで出版された。
山の今昔 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
倫敦ロンドン巴里パリー首府しゆふなり、巴里パリー羅馬ローマ首府しゆふなり、また羅馬ローマは——ア、みな間違まちがつてるわ、屹度きつとわたし松子まつこさんにへられたのだわ!わたしつてやう「うしてみがく、ちひさな——」
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
ただ普通には倫敦ロンドンの近郊グリーニッチを以て起算点とするが、それはこの村に天然に起算点とすべき物が備わっているためでもなく、天啓によりてこれをめたわけでもない。
東西相触れて (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
倫敦ロンドンフィルハーモニック管弦団が主体で、世間並の演奏であるが、後者の方が面白かろう。
インテルラーケンで落ち合う筈の近藤茂吉しげきち君は、倫敦ロンドンからやって来るんで、急がしくって急がしくってとか、何とかかんとか体裁のいい事ばかり並べたてて、旅行は一と月限り
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)