仰山ぎやうさん)” の例文
おれは余り人を信じ過ぎて、君をまで危地きちに置いた。こらへてくれたまへ。去年の秋からの丁打ちやううち支度したくが、仰山ぎやうさんだとはおれも思つた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「まあ、あんた……そないに一々やつて下さんすな……これ……。」と老母はそれと見て取つて仰山ぎやうさんさへぎつても駄目だつた。
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
その斷然だんぜんたる樣子やうすと、そのにぎこぶしちひさゝと、これはんして主人しゆじん仰山ぎやうさんらしくおほきな拳骨げんこつが、對照たいせうになつてみんなわらひいた。火鉢ひばちはたてゐた細君さいくん
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
烏が仰山ぎやうさん来た。寺の屋根へとまつたは。はれ屋根が青うく光つてきた。海のやうに光つて来たわ。
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
とりたてゝなに自分じぶんばかり美事みごとたからつてるやうにほこがほまをすことの可笑をかしいをおわらひにりましやう、だからわたしくちして其樣そん仰山ぎやうさんらしいことひませぬけれど
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かはづこゑがます/\たかくなる、これはまた仰山ぎやうさんな、何百なんびやくうして幾千いくせんいてるので、幾千いくせんかはづひとひとがあつて、くちがあつて、あしがあつて、身躰からだがあつて、みづなか
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
などとつて、ほとんひとにはくちかせぬ、さうして其相間そのあひまには高笑たかわらひと、仰山ぎやうさん身振みぶり
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
……今年も仰山ぎやうさん實がなりました。……けどもな、あの穴へ手を入れると、あの時に燒けたのが消し炭になつてゐて、黒う手に附きまツせ。……あゝこの銀杏いてふめんやこと、實がなつてへん。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
牡丹色の薔薇ばらの花、仰山ぎやうさんに植木のある花園はなぞのつゝましやかな誇、牡丹色の薔薇ばらの花、風がおまへのはなびらあふるのは、ほんの偶然であるのだが、それでもおまへは不滿でないらしい、僞善ぎぜんの花よ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
併し、彼の呼んだのは妙に落着いた大きな声のひとり言のやうであつたのに対して、お桑の答へは実に仰山ぎやうさんな叫びであつた。その声で、今まで淋しさをこらへて居た彼が飛び上らうとした程。
事實、世の中に樹木といふものが無くなつたならば、といふのが仰山ぎやうさんすぎるならば、若し其處等の山や谷に森とか林とかいふものが無くなつたならば、恐らく私は旅に出るのをやめるであらう。
「床屋だ?」老公は仰山ぎやうさんさうなその身装みなりをも一度じろつと見直した。大臣だつたら冷汗を掻き、次官局長のてあひだつたら神経衰弱にもなりさうな眼附だつたが、床屋はけろりとすました顔をしてゐた。
時子は仰山ぎやうさんに目を見張つてみせた。礼助は、真面目まじめな顔をして
曠日 (新字旧仮名) / 佐佐木茂索(著)
小谷は仰山ぎやうさんな表情になつた。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
そんなに仰山ぎやうさん手風琴てふうきん
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
臺所だいどころから縁側えんがは仰山ぎやうさんのぞ細君さいくんを「これ平民へいみんはそれだからこまる……べものではないよ。」とたしなめて「うだい。」と、裸體らたい音曲師おんぎよくし歌劇オペラうたふのをつてせて
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
露西亜の過激派のやうに腹が減つてるらしい蝦蟇ひきがへるが、草のなかからむつくり顔を出したり、自由恋愛家のやうないなごが雄と雌といだき合つて跳ね合つたりする度に、二人は仰山ぎやうさんさうに声を立てて吃驚びつくりした。
仰山ぎやうさんに驚いて
姉妹 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)