人相にんさう)” の例文
大岡殿見らるゝに痩衰やせおとろへ眼中ばしりしていじつ亂心らんしんの樣子なれども傳吉始めより申立し梅の人相にんさうに似たるゆゑ如何にも言葉ことば
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
無法むはふ水夫等すゐふら叱付しかりつけてつた人相にんさうわる船長せんちやう帽子ぼうしを、その鳶糸たこいと跳飛はねとばしたので、船長せんちやう元來ぐわんらい非常ひじやう小八釜こやかましいをとこ眞赤まつかになつて此方こなた向直むきなほつたが
其後そのあと自轉車隊じてんしやたいて、居合ゐあはせた農夫のうふに、二人連ふたりづれの、人相にんさうわる男子をとこが、此邊このへんをうろ/\してなかつたかとうてると、農夫のうふすこぶふるつたこたへをした。
うろ/\徘徊はいくわいしてゐる人相にんさうの悪い車夫しやふ一寸ちよつと風采みなり小綺麗こぎれいな通行人のあとうるさく付きまとつて乗車をすゝめてゐる。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「私、氣を付けて見ましたの。私には人相にんさうが判るんでございますのよ。それで、あの女には、あの階級の缺點がすつかり、あらはれてゐると、私、思ひますの。」
無駄むだばなしのりやりに調子てうしづいて旦那だんなのお商買しようばいあてませうかとおたかがいふ、何分なにぶんねがひますとのひらを差出さしだせば、いゑそれにはおよびませぬ人相にんさうまするとて如何いかにもおちつきたるかほつき
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
……ふちあをくつて、いろあかちやけたのに、あつくちびるかわいて、だらりといて、したしさうにあへぎ/\——下司げす人相にんさうですよ——かみながいのが、帽子ばうししたからまゆうへへ、ばさ/\にかぶさつて
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
申すやと有しかば雲源うんげんまつたいつはりは申上ず私し盜賊たうぞくまぎれ之なく候御仕置おしおき仰付おほせつけらるべしと云に大岡殿おほをかどのいや彼の吉三郎は其方と兄弟にあらずや人相にんさう恰好かつかう音聲おんせいまでもよく似たりなんぢおとゝ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
人相にんさうわる望生ぼうせい。それが浴衣ゆかたがけに草鞋わらじ脚半きやはんかま萬鍬まんぐわつてる。東京とうきやうだとつたり、また品川しながはだともこたへる。あやしむのは道理だうりだ。それがまたいしるといふのだから、一そう巡査じゆんさあやしんで。
のべざるも不忠ふちうと存候此儀私事には候はず天下の御爲おんためきみへの忠義ちうぎにも御座あるべく依てつゝまず言上仕り候越前儀未熟みじゆくながら幼少えうせうの時より人相にんさういさゝ相學あひまなび候故昨日あひへだち候へ共彼の方を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)