じょう)” の例文
旧字:
ジュリアは夜陰やいんじょうじてポントスの寝室を襲い、まずナイフで一撃を加え、それからあのレコードで『赤い苺の実』を鳴らしたんです。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
むろんそれは、手組てぐみいかだにのってほりをこえ、たちのそうどうにじょうじて、ここへ潜入せんにゅうしてきた、木隠龍太郎こがくれりゅうたろう巽小文治たつみこぶんじのふたりである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
余はきょうじょうじた。運転手台に前途を睥睨へいげいして傲然ごうぜんとして腰かけた。道があろうと、無かろうと、斯速力で世界の果まで驀地まっしぐらに駈けて見たくなった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
しこうして露国またそのきょじょうぜんとす。その危機きき実に一髪いっぱつわざるべからず。し幕府にして戦端せんたんを開かば、その底止ていしするところいずれへんに在るべき。
そうして、騒ぎが静まるのを待ち、人知れず上陸して、夜陰やいんじょうじて逃亡しようという企らみであったに相違ない。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
武者之助はキッと鋭い眼で右門の様子を打ち見守り、じょうずべき隙がちょっとでもあったら飛びかかろうと身構えた。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
若い地鶏は、勝にじょうじてそのあとを追ったが、やがて、築山の頂に立って大きな羽ばたきをした。そして牝鶏の群を見おろしながら、たかだかと喉笛のどぶえを鳴らした。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
多勢が四方から、き入る先生をなでるやら、さするやら、半暗はんあんのひとのうちが、ざわざわ騒ぎたったすきにじょうじて、お蓮さまはするりと脱け出て、廊下に立ちいでた。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
いろ/\の話の中に英人が薩摩湾に碇泊ていはく菓物くだものが欲しいと云うと、薩摩人が之を進上する風をしてその機にじょうじて斬込きりこもうとして出来なかったと云うような種々しゅじゅ様々な話がありますが
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
万一の場合をおもんぱかりてあるいは貯蓄ちょちくするなり、あるいは新事業に手を出すことをつつしむなり、あるいは繁昌にじょうじて驕奢きょうしゃを極むることをめたりすれば、不幸にして利あらぬ事ありとするも
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
摩訶止観まかしかんとか止観十じょうとかいって、観法というのはむずかしいものなんだ。
予言 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
その時、きょうじょうじて左の拙句せっくいてみた。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
かねがね電話使用を禁じたのは、例の時限爆弾のことで、博士に面会しようというやからじょうぜられるのを恐れてのことであった。
英邁えいまいではあらせられるが、一面のご気性には、周囲の虚勢、排他、利害などの私心にじょうじられるおそれも多分にないではない。
右のごとき始末しまつにして、外国政府が日本の内乱にじょう兵力へいりょくを用いておおい干渉かんしょうを試みんとするの意志いしいだきたるなど到底とうていおもいも寄らざるところなれども
右のごとく上士の気風は少しく退却たいきゃくあとあらわし、下士の力はようやく進歩の路に在り。一方にきんじょうずべきものあれば、他の一方においてこれをもくせざるもまた自然のいきおい、これを如何いかんともすべからず。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
火事の騒ぎにじょうじて、彼女を奪い返そうと企てたのだ。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
蜂矢は、そのじょうじて、長い繃帯をといた。なるほど、繃帯はどこもまっ白で血にそまっているところは見あたらなかった。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
一つ 混乱にじょうじて、部下の兇兵を使嗾しそうし、宮に害刃を加えたてまつる。天人ともに憎むところ。その罪の八。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あるいは商人のごときは兵乱へいらんのために兵器へいき売付うりつくるの道を得てひそかによろこびたるものありしならんといえども、そのすきじょうじて政治的干渉かんしょうこころみるなどくわだてたるものはあるべからず。
宮廷内の割れ目や、新政府不信の民心にじょうじて、がぜん、諸国に高まってきた春早々からの兆候ちょうこうはそれだった。
「オイみんな。元気を出せ」と警部が低いが底力そこぢからのある声で云いました。「この機にじょうじて一同前進ッ」
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
鹿之介ほどの人物にも、じょうじられる隙はあった。骨肉の情には、つい心のすべてを、奪われていたとみえる。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夫人を美酒びしゅに酔わせるか、鴉片あへんをつめた水管の味に正体を失わせるか、それとも夫人の安心をかちえたエクスタシーの直後の陶酔境とうすいきょうじょうじて、堕胎手術を加えようか
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
西風にじょうじて火をはなたば、前方のけん城兵じょうへい墓穴はかあな、とりでも自滅じめつのほかはあるまいと思うがいかに
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この機会にじょうじて、金博士の最近の発明兵器を調べておいてやろうと、たちまちチーア卿は先祖から継承の海賊眼かいぞくまなこ炯々らんらんと輝かし、そこらをごそごそやりだしたことである。
「何とか、筑前どのへ、お取做とりなしをもって、主人成政の一命、お救い上げねがわしゅう存じまする。そのため、夜陰やいんじょうじ、恥をしのんで、おすがりに参った次第で……」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おおむね、内に理由をもち、自壊にじょうぜられ、強力な野性に取って代られること、古今、歴史のあかすところです。これを、保元、平治の大乱にみても、例外ではありません。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
時雲じうんじょうじて、大坂城のあるじとなり、意志のまま、私生活も、政治上の理想も、やや行い得る身になってみると、自分以外の、同じ月日の下の人間たちが、なおさら不愍でならなくなった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たまたまの風雲にじょうじ、関東の野より、俄に、中原ちゅうげんへ兵馬を張って出た私への、かずかずなる御寵恩ごちょうおんやら、また人をも超えた御信任を賜わったことなどは、日はても、何で忘れておりましょう
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うまうまとじょうじられた呂宋兵衛るそんべえは、まったく竹童ちくどうげん惑酔わくすいして穴山あなやま残党ざんとうがなんといおうと、とどろき昌仙しょうせんのやからがうたがわしげに反省をもとめても、がんとしてきかず、秘法の星まつりを行うべく
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、みかどのおいかりにじょうじて、正成の処置を仰ぎに出たものだった。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「もし、せんを打たれて、宮のたくみにじょうぜられたら?」