下部しもべ)” の例文
鉾持(放免) 放免とは検非違使庁けびいしちやう下部しもべにて、元来罪人の放免せられしものを用ひて、盗賊の追捕囚禁などに従事せしめしものなり。
放免考 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
「さ、上がられい。——今日は侍どもから下部しもべまで、水分神社の雨乞い祭りの用意に出向き、屋敷は、このとおり無人の涼しさだ」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
下部しもべらもこのおとにみなはせよりて、くづれおちたる雪にまみれたる人を見れば、此家へも常にきたる福一といふ按摩あんまとりの小座頭こざとう也けり。
私はそのためにこの何日か、煩悶はんもんに煩悶を重ねて参りました。どうかあなたの下部しもべ、オルガンティノに、勇気と忍耐とを御授け下さい。——
神神の微笑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
きょうの泊りのことを知りて出迎えし「リフレエ」着たる下部しもべに引かれて、白石はくせききざはしのぼりゆくとき、園の木立をるゆう日朱のごとく赤く
文づかい (新字新仮名) / 森鴎外(著)
一 若き時は夫の親類友達下部しもべ等の若男わかきおとこには打解けて物語ものがたり近付ちかづくべからず。男女のへだてかたくすべし。如何なる用あり共、若男に文などかよわすべからず。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
下部しもべも小僧もない、唯物草太郎ものくさたろうの男が一人で自炊をしておるのであるから、漬物を出すのも自分でせなければならぬ。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
下部しもべ風情の、我等が出しや張る幕でないと、こらへてはをるものの、この間もこの間とて奥様の、お艶の留守を気にせられお艶殿が早う帰つてくれずでは
野路の菊 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
見ながら如何いかわたくし事下部しもべいたし候へども取迯とりにげなどつかまつりしおぼ御座ござなく是まで多く粂之進くめのしん方へ女中の奉公ほうこう人來り候へども一ヶ月とはつとめずいつれも早々さう/\に暇を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
叔父は此の前日に数名の下部しもべを引き連れて此の家へ来、松谷秀子も今朝来たと云うことで二人とも非常な好い機嫌である、来客も中々多く、後から後からと遣って来る
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
それは下部しもべらしい小男であった。くずれた堤の上にはその主人らしい男が立っていた。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
この冬、十二月二十四日愛宕のいちへ、私のうちの下部しもべは正月の買物に行った。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
その日の四ツごろようように仕度したくが出来て、城下を去ること半里はんみちばかりの長井戸の森をさして出かけた,同勢は母と、姉と、娘と、自分と、女中二人に下部しもべ一人、都合七人であッたところへ
初恋 (新字新仮名) / 矢崎嵯峨の舎(著)
又主人の為にこそあだならめ、郎従下部しもべごときに至て、いまだ一ことのいさかひもせざる人なれば、あたりへさまよひ来たる敵も、わが心おくれて打ちがたき物也とかく義ばかりこそおもからめ
応仁の乱 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
そのときの印象は、もう助かりそうにもないように見えた……枕元のサイド・テーブルに下部しもべ鉱泉の瓶とコップが載っている……私がロッジに来る前に、鉱泉に催眠剤を仕込んでおいた奴がある。
肌色の月 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
わしは無聊ぶりょうに堪えられない、今日、ひとり馬をせめていると、下部しもべの申すことには、昨日、これへ珍しい少年の剣客が見えたとのこと、なにほどのこともあるまいとは思うたが、来て見ると、全く
大菩薩峠:30 畜生谷の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
家の下部しもべが、かゞ
かさぬ宿 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
「あちこち、下部しもべの者を、走らせて見にやりましょう。ま、お涼やかに、冷やしうりなと召しあがって、少々お待ちなされませ」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
業畜ごふちく御主おんあるじ『えす・きりしと』の下部しもべに向つて無礼むらいあるまじいぞ。」と申しも果てず、てうと傾城のおもてを打つた。
きりしとほろ上人伝 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
幸ひにきずもうけずあたまなでまはしこしをさする、こは福一なりとてみなわらへばおのれもわらふ。下部しもべらはおちたる雪をとりのけまどをもかりにつくろひなどす。
葵祭に出る放免は検非違使庁の下部しもべとして、勅使の警固に立つ検非違使の官人に随行しているものである。
放免考 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
このとき、武士の下部しもべたちが彼を襲い衣類一枚残らず剥ぎ取ったので、真裸のまま寒風にさらされて呆然ぼうぜんと立っていた。頃は十一月十九日の朝であるから寒さもきびしい。
八月二十九日 小海線に搭乗、甲州下部しもべ温泉に到る。下部『ホトトギス』六百号記念俳句会。
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
下部しもべいそがわしくしょくをみぎひだりに立つれば、メエルハイムは「いずれの譜をかまいらすべき」と楽器のかたわらなる小卓にあゆみ寄らんとせしに、イイダ姫「否、譜なくても」とて
文づかい (新字新仮名) / 森鴎外(著)
一 下部しもべあまた召使めしつかうともよろずの事自から辛労を忍て勤ること女の作法也。舅姑の為に衣を縫ひ食を調へ、夫に仕て衣を畳みしきものを掃き、子を育てけがれを洗ひ、常に家の内に居てみだりに外へいづべからず。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
この賊は私の祖父の所の下部しもべであった。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
かつ 下部しもべ鉱泉ミネラルがございますが。
喪服 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
この不審が、もっとも露骨にささやかれているのは、下司げすの陰口といわれる通り、何といっても、下部しもべの仕えびとたちである。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ちかごろふつと悪魔ぢやぼ下部しもべと相成つて、はるばるこの『えじつと』の沙漠まで参つたれど、悪魔ぢやぼ御主おんあるじ『えす・きりしと』とやらんの御威光には叶ひ難く、それがし一人を残し置いて
きりしとほろ上人伝 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
下部しもべいそがはしくしょくをみぎひだりに立つれば、メエルハイムは「いづれの譜をかまゐらすべき、」と楽器のかたはらなる小卓こづくえにあゆみ寄らむとせしに、イイダ姫「否、譜なくても」とて
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
句意は下部しもべなり下女なり、いずれにせよ召使っているものが期限がきて出がわりをする、何もわきまえぬ子ども心にも多年召使っていたものの去る、それがもの哀れに感じられるというのであります。
俳句とはどんなものか (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
それに、もっとも、いやなことには、職掌がら、配下に「放免ほうめん」だの「はし下部しもべ」などという、ふだつきの雑人ぞうにんを、手あしに使っていることだ。
けふのとまりのことを知りて出迎へし「リフレエ」着たる下部しもべに引かれて、白石はくせききざはしのぼりゆくとき、園の木立をもるるゆふ日あけごとく赤く、階の両側ふたがわうずくまりたる人首じんしゅ獅身ししんの「スフィンクス」を照したり。
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
こなたの廊の端へ来た草心尼は、びッくりして、いちどは下部しもべのいる下屋しもやへと走りかけたが、そんな処置の間にあわないのを見ると、われを忘れて。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まず私自身が、家の下部しもべどもをひきつれ、その中に弁ノ殿をまぎれ籠めて、一たん古市ふるち出屋敷でやしきの方へ移って行きます。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もしまた、明日にでもあれ、怪しき男がこのへんを徘徊していたら、おそれいるが、お下部しもべでも走らせて、ちょっと月ノ輪のたむろまでお知らせくださるまいか。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
朧夜おぼろよを、一鞭あてて、増上寺の伊達家の宿坊へ行って、うかがってみると、何と、青畳の香がぷーんと高い。下部しもべの部屋まで、畳は新しく替えられてあるではないか。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、放っておけ。下部しもべの者や、長屋の子らと、一つになっているなどはいいことだ。……なあ久子」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
初めの四、五日は、あし(安静村)の漁夫の家に、妻子を隠して、近くを警戒しながら潜伏していたが、偵察に出した梨丸なしまるや、走り下部しもべ子春丸ししゅんまるなどが、立ち帰って来て
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
無駄ごとばかりする晩だ、よし、月輸公の下部しもべの者をたたき起して将来をいましめておいてやろう
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、いちいち爺からいわれなくても、中間ちゅうげんから下部しもべ女のはしにまで心構えはできている。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
むしろその子らにも、生きて還らぬ部下たちにも、一椀の温かい汁でも——と彼女はつい今し方まで、下部しもべたちを指図し、自身も大厨おおくりやに立ち働いて、水仕みずしわざをしていたのであった。
日本名婦伝:大楠公夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あちらの形勢など深い事情は余りわきまえぬかのようなはし下部しもべにすぎませぬが」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
、宮門より先に走り返らせたのも、まずもって、小右京に覚悟させおいて欲しいためだった。……このに、何を嘆こうぞ。助光、下部しもべに命じて庭なと掃き清め、書院に夜の支度をしておけ
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その代りに、りん弥はもう、紹由しょうゆうにいいつけられて、吉野太夫を連れてくる使いをわすれていた。足がよごれたので、下部しもべの女にかかえられて、あかぼうみたいに、どこかへ持って行かれてしまった。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
将門方の走り下部しもべに、子春丸というわらべ上がりの郎党がいた。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
下部しもべの者を町へ見せにやっても
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
丞相府の下部しもべたちは
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、驚くには足りませんが、いま、せがれが下部しもべの者から聞いたところによると、早朝より坂下ノ辻に、六波羅くさいうさんな山伏が、うろついておるとか。——せっかくなお立ち際なるに、不吉な影がと、苦慮いたしおるわけでございますが」
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)